【インタビュー】イーヴル・インヴェ
イダーズ「もはや単純なスラッシュ・
メタルではないよ」

新世代スラッシュ・メタルを抬頭するベルギーのイーヴル・インヴェイダーズの、2017年にリリースされたセカンド『フィード・ミー・ヴァイオレンス』がついにここ日本でもリリースとなる。怒り、そしてオリジナリティに満ちあふれた『フィード・ミー・ヴァイオレンス』は、21世紀だからこそ生まれ得たスラッシュ・メタルと言える快作だ。
──2ndアルバム『フィード・ミー・ヴァイオレンス』は、デビュー・アルバムや過去のEPと比べてどんな点が進化していると言えるでしょうか。
ジョー:このアルバムは、イーヴル・インヴェイダーズの新しい面を見せていると思う。デビュー・アルバムはかなりストレートな内容だったけど、『フィード・ミー・ヴァイオレンス』を聴いてもらえれば、曲がバラエティに富んでいることがわかってもらえるんじゃないかな。テンポ・チェンジも多いし、「ブロークン・ドリームズ・イン・アイソレーション」みたいなほとんどプログレッシヴ・デス・メタルと言ってもいいようなスローな曲すらある。アルバム全体を通して、予測もできないようなひねりがたくさんあるよ。もちろん速い曲も多く入っているけど、今回はクリーン・ギターのセクションや、もっと深い聴きやすいヴォーカル、遅い曲なんかも入れた。こうすることによって曲作りや曲の雰囲気にもコントラストが生まれるからね。収録されている曲がみな違ったサウンドを持っていて、かつ完璧に一貫性も保っているという出来栄えにとても満足しているよ。
──歌詞はどのようなテーマなのでしょう。フラストレーションについて歌っているものが多いように見受けられますが。
ジョー:今回の歌詞は主にメンタル上の問題…例えば鬱であるとかフラストレーション、それから避けることのできない争いとかについてだよ。日常的にみんな気分が盛り上がったり落ち込んだりを経験すると思うんだけど、中でも落ち込む方について歌っているんだ。歌詞の中でもフラストレーションは大きなパートを占めている。ギタリストのマックスが半年くらいに精神的な問題を抱えていてね。それで二人で一緒に歌詞を書いたんだ。そのころフラストレーションもすごくてさ。スタジオの作業でうまくいかなくて、すべて一からやり直しになったりして。そんなわけで音楽にも歌詞にも、怒りというものが感じられるんじゃないかな。もちろん歌詞については聞く人たちに自由に解釈してもらいたいと思うけど、きっと共感してもらえることも多いはずだよ。俺たちの歌詞の中では、感情というのが一番大事なんだ。
──イーヴル・インヴェイダーズというバンド名は、どのようにして決めたのですか?これはカナダのスラッシュ・メタル・バンドRazorのアルバム・タイトルですよね。あなたたちの音楽にRazorからの影響は感じられないのだけれど。
ジョー:バンド名はもちろんRazorからだけど、確かに俺たちがやっている音楽にはRazorからの影響はないね。イーヴル・インヴェイダーズはさまざまな音楽から影響を受け、自分たち自身のサウンドを作りだしているんだ。インスピレーションはあらゆるところからやって来る。デス、スラッシュ、ヘヴィ・メタル、スピード・メタルに限らずね。俺たちは、最近の他の若いバンドとは違う曲作りのアプローチをするのが好きなんだ。SlayerIron MaidenBlack Sabbathのマネをしたいわけじゃないからさ。俺たちは俺たちが好きな曲やアーティストのある一面をインスピレーションとしつつ、新鮮で新しいものを作るようにしているんだ。
──しかしなぜ「イーヴル・インヴェイダーズ」だったのですか?「Executioner's Song」や「Violent Restitution」ではなく。
ジョー:バンド名を決めたのは2009年だったと思う。そのころたまたまRazorの「Evil Invaders」を聴いたんだ。それ以前は、Razorの他の曲はまったく聴いたことがなかった。で、曲を聴いてタイトルを見て「これしかない」と思ったんだよ。当時ずっとバンド名を考えていて、いくつか候補もあったのだけどなかなかしっくりくるのが見つからなかった。だけど「Evil Invaders」というタイトルを見て「これだ!」ってピンと来たんだ。今でもこの名前にした事に凄く満足している。俺たちのサウンドを実によく表しているからね。
──音楽的に影響を受けたバンドというのは?
ジョー:俺のお気に入りはMotorheadExodusJudas PriestSavatageMercyful Fate、そしてCrimson Gloryだね。もちろん他のメンバーはまた違うバンドからの影響を受けている。たとえばマックスはデス・メタルからグラインドコアまで何でも聴くよ。彼は『フィード・ミー・ヴァイオレンス』の曲作りをしているころ、ずっとドゥーム・メタルを聴いていたのだけど、その影響がアルバムの曲にも反映されているんじゃないかな。
──1991年生まれという若さでスラッシュ・メタルにハマったきっかけというのは?
ジョー:初めてきちんと聴いたメタルは兄貴がくれたテープだった。兄貴も学校の友達からもらったようだけど。「これ聴いてみろ、すごく変な音楽だぞ」って言われて聴いて見たら、確かに変な音楽だった。兄貴も俺も、これがどういう音楽なのかまったくわからなかったんだ。それがスウェーデンのメロディック・デス・メタル・バンドUnanimatedだった。だけど俺はこれにすごい衝撃を受けてね。もっとこういう音楽を探そうと思ったんだ。それでObituaryを聴いたり、最初はデス・メタルに凄くハマっていたんだ。それからBlack SabbathやAC/DCのような、クラシックなバンドも聴くようになった。いろいろなバンドを聴いていくうちに、ある時Exodusを発見したんだ。「Holy Shit! これはアグレッシヴだ。これは興奮する」と一発でハマったよ。それが『Tempo of the Damned』だった。スティーヴ・スーザのヴォーカルも素晴らしかったし、当時の俺にとってはリフ、ソロ、プロダクション…すべてが斬新だった。13歳~14歳のころかな。これがスラッシュ・メタルと呼ばれる音楽であることを知り、このジャンルのバンドをいろいろ聴き始めたんだ。
──イーヴル・インヴェイダーズの音楽をカテゴライズするとしたらどうなりますか。
ジョー:『フィード・ミー・ヴァイオレンス』を聴いてもらえばわかるけど、スラッシュ・メタルやスピード・メタルというよりも、エクストリーム・メタルという方が適切だと思う。俺たちはスラッシュ・メタル・バンドとしてスタートしたけれども、今ではヘヴィ・メタル、デス・メタル、そしてプログレッシヴ・メタルまでも採り入れるようになったからね。もはや単純なスラッシュ・メタル・バンドではないよ。最近のスタイルはスラッシュやスピードといった箱からはみ出してしまっていると思う。エクストリーム・テクニカル・スラッシュ・メタルみたいな感じがいいかな(笑)。Metallicaが『Master of Puppets』でやったようなことに近いかもしれない。あのアルバムはスラッシュ・メタル、スピード・メタルだろうか。それとも単純に“Metallica”としか言いようのないものかもしれない。そういう意味で、もしかしたら俺たちはイーヴル・インヴェイダーズ以外の何ものでもなく、何か新しいものを作っていると言えるのかもしれない。俺たちはさまざまな種類の曲を書いているし、おそらくそのバリエーションというのは今後の作品で増していくと思う。だからなかなかカテゴライズするというのは難しいな。自分たちの耳で確かめてもらうのが一番だよ。
──好きなギタリストは誰ですか?
ジョー:Savatageのクリス・オリヴァー。彼のギター・ソロは最高だよ。彼のソロは速いリックとフィーリングの完璧なミックスさ。速いフレーズを弾いたと思ったら、1音をグッと伸ばしてさ。最高だよ。彼のソロを聴くと、いつも鳥肌が立つ。リズム・ギターという観点だとゲイリー・ホルトが好きだ。彼のリフにおける音の選び方というのは、本当にアドレナリンを噴きださせるものだろ?
──最近のスラッシュ・シーンについてはどう思われますか?
ジョー:正直に言うと、最近のスラッシュ・メタル・バンドというのはどれも同じように聴こえる。ほとんどのバンドは、スケート・ロックっぽいクロスオーバーをやるか、スレイヤーをコピーするかのどっちかになってしまっている。リフを聞いても、過去に聞いたことがあるようなものばかりだし、いくつものバンドが同じようなリフを演奏していたりする。例えばOverkillのファーストなどを聞いてみるといい。ForbiddenやExodus、みんな違うサウンドを持っていただろ?最近のスラッシュ・メタル・バンドにはこういうバラエティが欠けていると思うんだ。彼らは過去のスラッシュ・メタルからしか影響を受けていない。ハードロックやヘヴィ・メタル、NWOBHMなどからも影響を受けて、スラッシュ・メタルのヴァイブの中に新しいスタイルを作る方が面白いと思うんだ。俺たちと他のスラッシュ・メタル・バンドと俺たちが違うのはそこだと思う。俺たちはプログレッシヴ・ヘヴィ・メタルやデス・メタル、普通のヘヴィ・メタルからも影響を受けていて、いろいろな要素が入り混じっている。ただのスラッシュじゃない。自分のバンドのことを判断するのは難しいけど、影響のバラエティというものが欠けているバンドは多いと思う。
──そういえばイーヴル・インヴェイダーズは、アメリカに入国できず強制送還されたという事件がありましたが。
ジョー:あれは最悪だったね。ライヴもやれず週末ずっと拘置所に入れられた(笑)。22時間拘置所に入れられるために13時間飛行機に乗っていたようなものさ。俺とドラマーは何の問題もなく入国できたんだ。そしたら突然ベーシストから電話がかかってきて「戻ってきてくれ、警官がお前を探してるんだ」って。一体何事かと思ったら、マックスが入国審査で止められていた。ビザに問題があってね。俺たちはとっくに入国して、すでにドライバーに行き先を告げてたんだよ。バーでフリー・パーティーがある予定だったからね。ミルウォーキーでプレイするなんて、どんなに最高な体験何だろうなんて話しながらとてもエキサイトしていた。ところが突如全部アウトだろ。それでベルギーへ帰るフライトまで拘置所に押し込まれてさ。次回はうまく行くことを願うよ。プロモーターのせいなんだ。あの時Loudnessも同じ理由で入国できなかっただろ?彼らも同じフェスに出る予定だったんだ。Loudnessが初日のヘッドライナーで、俺たちが翌日のコ・ヘッドライナーの予定だった。その2バンドがキャンセルになったんだからね。酷い話だよ。
──日本には二度来ていますが、印象はいかがでしたか?
ジョー:最高だった。最初はTrue Thrash Festでプレイしたんだ。Possessedと2度ね。ステージダイヴやクラウドサーフも起こって本当にクレイジーだった。ヨーロッパとは大違いでさ、曲間に俺が喋ると、みんなきちんと聞いてくれるんだよ。騒いだりせずに。こっちじゃみな叫んだりしてるのに(笑)。2度目は東京と大阪でプレイした。この時も最高だったから、早くまた日本に行きたいね。『フィード・ミー・ヴァイオレンス』が日本でもリリースされるから、ぜひチェックしてみてくれ。一刻も早くまた日本に行きたいよ。
取材・文:川嶋未来/SIGH

イーヴル・インヴェイダーズ『フィード
・ミー・ヴァイオレンス』

【日本盤限定仕様CD+『イン・フォー・ザ・キル』CD】2,600円+税

【CD】2,000円+税

1.メンタル・ペネテンシュアリー

2.アズ・ライフ・スローリー・フェイズ

3.サスペンデッド・リアニメーション

4.ブロークン・ドリームズ・イン・アイソレーション

5.フィード・ミー・ヴァイオレンス

6.オブリヴィオン

7.シェイズ・オブ・ソリチュード

8.アンガー・ウイズイン

9.アマング・ザ・デプス・オブ・サニティー

《日本盤限定ボーナストラック》

10.ヴァイオレンス・アンド・フォース(エキサイター カヴァー)

【EP『イン・フォー・ザ・キル』】

1.アズ・ライフ・スローリー・フェイズ

2.レイジング・ヘル

3.パルシズ・オブ・プレジャー(ライヴ・バージョン)

4.ヴィクテム・オブ・サクリファイス(ライヴ・バージョン)
【メンバー】

ジョー(ヴォーカル/ギター)

マックス・メイヘム(ギター)

ユーリ・ファン・デ・スコット(ベース)

センヌ・ヤコブス(ドラムス)

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