(C) 2017 Felt Film Holdings.LLC

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【映画コラム】トランプ政権に対する
不信感が反映された『ザ・シークレッ
トマン』

 1972年。当時の米大統領ニクソン(共和党)側が、元FBIなどを使って、対立する民主党本部に盗聴器を仕掛けようとしたことが発覚したウォーターゲート事件。5人の工作員が逮捕されたこの事件をきっかけとして、後にニクソンは辞任に追い込まれた。
 そのウォーターゲート事件の全容を告発した「ディープ・スロート」を名乗る謎の人物の正体は、何と当時のFBI副長官マーク・フェルトだった、という衝撃の事実を描いた『ザ・シークレットマン』が公開された。
 かつて『大統領の陰謀』(76)は、事件を報道(ワシントン・ポストの記者)の側から描いたが、本作は、まさに当事者であるFBIの内部から描いているだけに生々しいことこの上ない。本作を見ていると、FBIは独立した調査機関であるべきだと考えていたフェルトが、政治的理由からFBIを操ろうとしたニクソン政権を許せなかったことがよく分かる。
 監督は『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(13)のピーター・ランデズマン。『JFK』(91)や『ニクソン』(95)で、扇情的、暴露的な視点から政治ドラマを描いたオリバー・ストーンとは違い、いかにもジャーナリスト出身らしい冷静な視点で描いたところが新鮮だ。
 また、このところアクション映画づいていたリーアム・ニースンが、フェルトに扮(ふん)して久しぶりに演技派としての本領を発揮。その他、実在の人物に扮した渋い脇役たちの好演も光る。
 ところで、本作や、ワシントン・ポスト社におけるウォーターゲート事件の前夜談を描いた、スティーブン・スピルバーグ監督の最新作『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』などが今作られた背景には、トランプ大統領を巡る「ロシア疑惑」などに対する不信感が反映されているのだろう。
 ランデズマン監督も「この映画の製作中に、トランプ政権に取り沙汰されている、さまざまな疑惑がウォーターゲート事件当時と似ていると気付いた」と語っている。
 それは、先頃来日した『リメンバー・ミー』のリー・アンクリッチ監督が「メキシコを舞台にしたこの映画を世に出すことで、トランプ大統領が発信したメキシコやメキシコ人に対するネガティブな感情へのカウンターになればいいと考えた」と語っていたことにも通じる気がする。
 国や政府の汚点に対して、映画を通じて告発したり、自浄作用を促すところがハリウッドの長所の一つなのだ。本作と『大統領の陰謀』、または、本作と『ペンタゴン・ペーパーズ~』との2本立てが見たくなる。(田中雄二)

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