【インタビュー】PassCode、再構築A
L『Locus』完成「ライブでいつもやっ
ている事をそのまま閉じ込めた」

PassCodeとは何者なのか? という問いを再考するタイミングに来ている。大阪出身の女性4人組グループ、ライブでのシャウトやスクリームを惜しまず、ラウドロックを中心にしたボーダレスな楽曲群で音楽シーンを駆け上がってきた彼女たち。結成時こそアイドル色が強かったが、現在の彼女たちはそんなアイドルやロックグループといった既成概念の括りをみずから進んで破りに行っているように見える。
そんな彼女たちの軌跡をインディーズ時代の名曲群から振り返り、現在の姿へと再構築するニューアルバム『Locus』が2月28日にリリースされる。収録曲の再レコーディングを終え、「ここまでやってきた事全部を合わせた」と語る彼女たちに話を訊いた。
■昔から現状には常に満足できないというか、ずっと足りていない感じがしているんですよ。(南)
──今のPassCodeに結成時のメンバーはいませんが、2013年2月スタートのグループなので、ニューアルバム『Locus』発売タイミングが5周年になります。
南 菜生(以下、南):そうか、5年もグループあんのや。
高嶋 楓(以下、高嶋):この4人での体制になってからの事しか全然頭にないから。
今田 夢菜(以下、今田):ビックリだね。
──南さんは結成年の7月加入なので今年で5年目ですよ。
南:わー、ベテランですね(笑)。
──正直ここまで続くグループだと思っていました?
南:入った時が、既に人数が足りないので入ってくれないと続かないって時だったので、思っていなかったです。
──続いている理由は何だと思います?
南:運がよかったからですかね。周りに集まってくれた人がPassCodeに対して熱意のある方たちばかりなので、そういうありがたい環境でやらせてもらっている事が理由なのかな。
──メンバーの脱退やジャンルの壁など色々な困難を乗り越えてきたグループですが、今のPassCodeはチームとして凄く良い状態にあるように外からは見えるんですけど。
南:昔から現状には常に満足できないというか、ずっと足りていない感じがしているんですよ。もっとやらなきゃ、もっと頑張らなきゃって。
──でも前よりはやりたかった事ができる環境になってきていますよね。
南:確かに。段々PassCodeとしてやるべき事が見えてきたっていうか、こういう風にしていけばいいのかっていうのはわかってきた気はします。
今田:恵まれた環境にはいるけど、まだまだ未完成だからもっともっと行けるんじゃないかなとはいつも思っていますね。
▲『Locus』

──今作『Locus』はインディーズ時代の曲を録り直したアルバムですが、以前レコーディングした時は大分違う環境で録っていたと聞きましたけど。
南:サウンドプロデューサーの平地さんの部屋で、マイク前に毛布を置いて防音したりして録っていたんですけど、ボーカル入れをしているとトイレを流す音とかが聞こえてくるんですよ(笑)。だから今の環境で録らせてもらった今回は、同じ曲でも全然違いますね。サウンドも全部バンドの生オケになったし、アレンジも全部変えてもらっていて、前よりカッコよくなっていると思います。
──『Locus』は日本語だと軌跡という意味だし、ライブで人気のある曲が収録されている作品ということで、現時点でのベスト盤的な意味合いもあったりするのかな?とも思ったのですが。
南:メンバー的にはそういう意識はないですね。これを作れて良かったなという思いはありますけど、これで一区切りみたいな感覚はないし、先を踏み出すための今年の一枚としかとらえていないです。今は前作『ZENITH』のツアーが終わった所で、ライブでも『ZENITH』の中の曲をやる事が増えたから、今やっている事と前やっていた事の距離を埋めるというか、ここまでやってきた事全部を合わせたらこうなりましたっていうものを出した感じのアルバムですね。
──収録曲に関してはどんな基準で選んだのですか?
南:平地さんがいいと思った曲を選んでくれたんですけど、それに関しては自分たちとあまりズレはなかったです。メンバーも直したいなと思っていた、ライブでよくやる曲が入っていたので。意外だったのは「Now I Know」を録り直したって事ですね。この曲だけアレンジもガラッと大きく変わっていたし。
今田:「Now I Know」は、ライブでやると結構違うなって毎回感じていた曲なんです。
──それはどういう所が?
今田:お客さんのノリが全然ノレていないというか、巻き込めない感じがいつもあって。それでライブでは段々やらなくなっていった曲なんですよ。でも新しくなったらめっちゃ良くなりました。
──僕は「Now I Know」が曲順の真ん中にあるのが凄くいいなと思ったんですけど。
南:うん。凄くいいですよね、好きです。メンバーで聴いた時も、流れがいいってみんな話していたんですよ。この曲は前よりもメッセージ性が強くなった気がして、サビで明るくなる所とかあえてそうした事で重さが出たというか、そこがいいなって思いました。
──曲順はどうやって決めたんですか?
南:それも平地さんです。ライブのセットリストはメンバーが決める事が多いんですけど、アルバムとか平地さんが作ったものは平地さんが決めるのがベストだと思っているので。1曲目が「Toxic」なのとかは、『ALL is VANITY』(1stアルバム)の1曲目が「Toxic」だから、そういう所で平地さんらしいこだわりを感じましたね。軌跡ってタイトルにあるように、今まで辿ってきた道が「Toxic」で始まる事でわかりやすくなっているアルバムだなって思いました。
■「Kissの花束」のシャウトが、ずっと叫んでいた歌詞とホンマの奴がちゃうくて。(今田)
──アイドル的側面がまだ強かった初期曲「Kissの花束」が入っているのが意外だった半面、個人的には嬉しかったんですけど。
大上 陽奈子(以下、大上):最初から好きでいてくれた人はこの曲嬉しいと思うんですよ。今回の収録曲が発表された時も「意外や、嬉しい」って声が多かったし、そういう昔から応援してくれている人たちの事も考えて入れたのかなって、自分的には思いました。
──レコーディングはどんな感じだったんですか?
南:普段新曲を録る時は平地さんがこうやって欲しいっていう録り方をするんですけど、今回はライブでいつもやっている事をそのまま閉じ込めたっていう感じが強いです。
▲『Locus』

──ライブでやっている曲ってスタジオで録ると、大概ライブの時よりも勢いがなくなるパターンが多いんですけど、『Locus』はライブと変わらない勢いや力強さがパッケージされていますね。
今田:やちい(南)とかは、めっちゃライブのままって感じ。
南:メンバーによってレコーディングで求められる事が違うんですけど、私は『ZENITH』ぐらいからライブ感というのを言われていて、それを音源に詰め込む事を最近のレコーディングではやってきていたんです。そういう意味でも今回はライブでずっとやっている曲だったから凄くやりやすかったです。
──南さん以外の人もライブを意識して歌った感じですか?
今田:今田はライブの時とは違って、可愛い感じや優しい感じをレコーディングでいつも求められるんです。「もうちょっと可愛く」とか「もうちょっとファンタジーに」とか。でもいざライブになると全然それが出ない(全員笑)。
──それはスクリーモやシャウトをする今田さんとは違う部分を歌パートでは聴かせたいという平地さんの考え?
今田:うーん、どうなんですかね。今田の歌って優しい感じが多くて、平地さんはそれを求めて歌割に当てはめてくれるんです。でも優しい声とか可愛い声の歌い方だと、小さい声しか出ないから全然マイクにのらないんですよ。だからライブでは上手くできなくて太くなっちゃう。
南:元々の声質が今田は柔らかくて歌うとそれが出るから、パート的にもほわっと見せる所に歌詞割りをつけているんだろうなって思うんですよね。大上だったらクリーンでツンと通る所をいつも歌っているし。そういう風に最近は新曲が来た時に、誰がどこを歌うのかわかるようになってきました(笑)。
──ライブで歌い慣れているからイメージは作りやすそうですけど、スタジオでそこのテンションまで気持ちを持っていくのは難しくなかったですか?
今田:ライブ中の顔を作ったら行けます(全員笑)。シャウトやったら睨むとか。いつも壁を睨んだりしてレコーディングしているんですけど、表情付けたらテンション感は大体合う気がします。
南:かえちゃん(高嶋)はテンション上げるのが割と時間かかるタイプなので、平地さんと2人で「イエィ!イエィ!」とか言って録っています(笑)。
高嶋:「かっぴちゃん行くよ、イエィ!」「イエィ!」って5分から10分ぐらいやって(笑)。私は結構テンションの高いパートが多いので、そういう事をやってから歌録りに入ったりしますね。
大上:いつも新曲を録る時って、それぞれがどんな風に歌っているのか聴くまでわからないんですよ。でも今回は普段のライブの感じだってわかっていたから、自分のパートの前後はきっとこう歌っているやろうなっていうのが想像できたし、雰囲気が作りやすかったかもしれないです。
南:うん。みんなの目指している場所が同じでわかっていたから、やりやすかったっていうのはありましたね。
──今回歌い直したことで新たな発見があった曲とかはありました?
今田:「Kissの花束」のシャウトが、ずっと叫んでいた歌詞とホンマの奴がちゃうくて(全員爆笑)。それがビックリしました。
──ライブでさんざんやっているのにずっと間違っていたって事ですか?
今田:そうです。新たな発見(笑)。
南:ゆなが今回のレコーディングで間違えているのかと思っていた。
今田:いや、こっちが本物。あれ、こんな事言ってたんやって驚いた(全員笑)。
大上:私は「Now I Know」を歌う前に「感情を入れて歌って」と言われたので、そういう気持ちでレコーディングに行ったんですけど、いざ歌ってみたら「苦しい感情の入れ方じゃなくて明るめに歌って」ってお願いされたんですよ。「生きてる裏じゃ悲しみあふれている」っていう歌詞なんですけど、それをポジティブに歌うっていうのが意外でした。
■「PARALLEL」は全員の声の特徴がわかりやすくて、メンバーの個性を出してくれた曲だなと思いました。(大上)

■歌詞が凄く深くてZENITHツアーを思い出すっていうか。(高嶋)
──新曲として収録されている「PARALLEL」についても聞きたいのですが、めちゃめちゃいい曲ですね。
南:いいんですよー! 今までPassCodeがやってきた事ってわかりにくかったり難しかったりもしたんですけど、一回聴いたらスッと入ってくるというか。『ZENITH』とはまた違った方向で攻めている感じがします。
──クリーンパートを重視した最近のポストメタルコアの感じと、平地さんらしいエモーショナルなメロディが上手くミックスされていて、何度も繰り返して聴きたくなる曲だと思いました。
南:平地さんの曲って激しい曲でもボーカルラインが綺麗なんですよ。それが際だっている曲なので、歌っていても気持ちがいいし、早く聴いてもらいたいです。
大上:ボーカルラインが綺麗っていうのは勿論あるんですけど、ピアノのサウンドが綺麗っていうのもあって、緩急が凄く多い曲だなと聴いた時に思ったんです。静かになる所が多いから、さっき話に出ていた今田のファンタジーな声も活かされているし、面白い曲ですね。
南:ファンタジーのBメロな(全員笑)。
大上:あとはオートチューンがいつもより少ないので、全員の声の特徴がわかりやすくて、メンバーの個性を出してくれた曲だなと思いました。
南:レコーディングの時平地さんに、「これかけた方がいいと思う? かけん方がいいと思う?」ってオートチューンの話をされたから、「かけるパートとかけないパートがあっても面白いですよね」って言ったんですよ。平地さん的には全部かけるか悩んだらしいんですけど、多分結果これがベストだったんだと思います。
──僕もこれがいいと思いました。
南:いいですよね!
大上:うん。凄い新鮮やったし。
──今田さんは何か「PARALLEL」に関して思った事はありました?
今田:このアルバムの最後に適しているなと思ったのと、最後の歌の所のピアノが良くて、続きが聴きたくなる曲やなって思いました。ところどころピアノを入れてくるのがズルい(笑)。
高嶋:「PARALLEL」は平地さんがZENITHツアーの時のメンバーを見て作ったって言っていたんです。4人ギクシャクしたり、バラバラになる事が多かったから。
──そんな事があったんですね。
高嶋:あったんですよ(全員笑)。だから歌詞が凄く深くてツアーを思い出すっていうか。
南:(高嶋の顔を見ながら笑顔で)きつかったなー。
──そんな話をされたら、ZENITHツアーの事を聞かないといけないじゃないですか。
南:なんか珍しくて、この4人でそういう風になるっていうのが。ライブ一つ一つに納得ができなくて、それぞれやりたい事が強かったり、目指す所がもっと上って思っているがゆえにちょっとギクシャクしたというか、もっといいものをやりたいのに、やりきれなくて気持ちがモヤモヤしちゃったみたいな。仲が悪くなったとか、そういう事ではないんですよ。いいものをひたすらやりたいっていうのが、そのギクシャクにつながっていたという感じなんです。だけどそういう事があったから、次ライブをやった時には一段階上がったPassCodeがきっと見せられるんじゃないかなと今は思っていて。そこまでツアーが終わってから持ち直しました。
──ZENITHツアーの前はそういう事はなかったんですか?
南:この4人になってからはあまりなかったですね。一つの事に関して全員が同じベクトルで怒っているみたいな、「ここがダメやんな、こうしよう」っていうのはあったけど、今回はメンバー一人一人思う事があって、それぞれがこうしたいとか、どうしたいっていうのがバラバラになっちゃった部分があったんです。でもツアーのファイナルシリーズを3本やった事で大体固まってきたというか、ツアーが終わってから珍しく色々と話もしたので、今は全然大丈夫なんですけど。
大上:2年前ぐらいと比べて今は考える事が真剣になったっていうか、悩みが高い所になってきたっていうか。前は全然考えてなかったような事を考える事が多くなったので、それはみんなの意識が高まってきたからなのかなと思ってたりします。
──なるほど。成長する過程でぶつかる事は必然だと思いますよ。
南:うん。それがこのタイミングだったんだろうなって。だからマイナスになる事はなかったし、これは必要やったなって思います。ツアーもそうだし、その内容もそうだし、これから大きな壁がもっと沢山あると思うんですよ。それを乗り越えるための力を得るために全てあった事なんだろうなっていうのは、凄く感じましたね。
──ZENITHツアーのあと今年に入って少しライブをお休みしていますが、今後の大きなライブとしては、日本での開催が発表になった世界的フェスツアー<WARPED TOUR>への出演が決まっています。
南:楽しみですね。とりあえず見てもらえればわかると思うし、大丈夫だという自信はあるので。
大上:これって外国の方も結構来ます?
──<WARPED TOUR>に張り付いて開催地を回っているファンもいるし、沢山来ると思いますよ。
大上:最近ツアーに外国の方がちらほら来てくださるんですよ。だからそういう海外の方たちにも聴いてもらえたら、好きになってもらえるんじゃないかなっていう自信があるので、是非見に来て欲しい。
南:PassCodeって、音源を出すたびに海外でのチャートがいいんですよ。特にこちらから何か発信しているわけではないんですけど、好きって言ってくれる人が多いって事は、こういうツアーに出して頂けるのにも意味があると思うし、「PassCodeってどんなんやろう?」って思ってもらえる一個目の出来事になればいいですね。
──海外のビッグネームとの共演ですが、意気込みみたいなものはありますか?
南:かえちゃん言っときなって。
高嶋:とりあえず見てくれっ!(全員爆笑)。私たちも発表をTwitterで見たんですけど、「PassCodeには早いわ」とか「アイドルなのに出るなよ」とか書かれていたから、そういう人たちには絶対見て欲しいですね。
取材・文◎山村哲也
■PassCode Early Works ReconstructIon Album『Locus』
2018年2月28日(水)発売

UICZ-4417 ¥2,500 (税込)

収録曲:

1.Toxic

2.AXIS

3.Nextage

4.激動プログレッシブ

5.Never Sleep Again

6.Now I Know

7.Kissの花束

8.Club Kids Never Die

9.Seize the day!!

10.PARALLEL
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/album/locus/1342621200

■『Locus』リリースイベント


2018年3月2日(金)名古屋 RAD HALL

2018年3月3日(土)大阪 バナナホール

2018年3月4日(日)東京 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース

・予約・購入受付店舗などの詳細はオフィシャルサイトにて

■PassCode ライブ・イベント出演情報


Zephyren presents A.V.E.S.T project vol.12>

2018年3月10日(土) TSUTAYA O-EAST
Fear, and Loathing in Las Vegas “New Sunrise” Release Tour>

2018年3月21日(水) 仙台PIT
<Vans Warped Tour Japan 2018 presented by XFLAG>

2018年4月1日(日) 幕張メッセ 9-11ホール
<百万石音楽祭2018 ~ミリオンロックフェスティバル~>

2018年6月2日(土)3日(Sun) 石川県産業展示館 (1-4号館)

※2日・3日どちらかの出演になります。
<SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018>

2018年6月30日(土) 仙台市内ライブハウス一帯

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