METライブビューイング2017-18《トス
カ》(新演出)、石丸幹二トークショ
ー「今まで見た中で最高の《トスカ》

METライブビューイングで現在上映されているプッチーニのオペラ《トスカ》(新演出)。このほど新宿ピカデリー(東京)に俳優の石丸幹二を招き、上映前にトークショーが行われた。
今回の《トスカ》はデイヴィッド・マクヴィカーによる新演出で、ローマに現存する舞台となった建物が忠実に再現されている。出演はトスカにソニア・ヨンチェヴァ、カヴァラドッシにヴィットーリオ・グリゴーロ、スカルピアにジェリコ・ルチッチというスターを並べた舞台は、「今まで《トスカ》のなかで最もドラマチック」と石丸も絶賛だった。
■特等席で世界最高峰のオペラを存分に楽しめる
トークショー当日はオリンピック・フィギュアスケート男子の活躍に沸く日曜の朝。にもかかわらず、会場はほぼ満席の大盛況だ。
今回上映されるオペラ《トスカ》はMETでは1月27日に上映されたもの。現地の上演からほとんど間を置かずに、また数台のカメラを駆使して収録した作品を大スクリーンでたのしめるのは「ある意味特等席ですね」と石丸。
クラシック番組の司会を務める石丸は昨年、オペラの名曲などを録音したCD「石丸幹二のクラシックへようこそ」をリリースした。実はその中に今回上演されるオペラ《トスカ》のカヴァラドッシが3幕で歌うアリア『星は光りぬ』が収録されている。
「以前、プラシド・ドミンゴが出演した《トスカ》を観たが、ピアニッシモが絶妙だった。それ以来、《トスカ》は自分の中では外せない、大切なオペラなんです」と話す。
■憎々しいのにセクシーなスカルピア。出演者の迫力ある演技にも注目
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
プッチーニの《トスカ》は1800年代のローマが舞台。ナポレオン戦争により共和制となったローマが、ナポレオンの没落と共に再び保守派の圧政にあるなかで、共和主義者の画家カヴァラドッシとその恋人である歌姫トスカ、そして警視総監のスカルピアの3人が繰り広げる愛憎入り混じる悲劇だ。
石丸は「非常にドラマチック。《トスカ》はいろいろな作品を観ましたが、今回のMETのものはとても演劇的。オペラ歌手は歌う役者だと思っているが、まるで演劇を見ているような臨場感がある。歌がなければ普通のドラマと同じで、演技も自然で心理描写が素晴らしい。見ていてワクワクしました」と話す。
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
主演のヨンチェヴァをはじめグリゴーロ、ルチッチについても「みんなハマっている。とくに主演のトスカ(ヨンチェヴァ)はオペラ歌手という設定で当然技術が要求される。また、トスカはわがままで奔放な女性だと言われるが、ヨンチェヴァのトスカは私が今まで見たトスカのどれとも違う。我儘だけじゃない何かがあるんです」という。
悪役スカルピア(ルチッチ)についても「ホントに悪い。最悪(笑) でも攻め方が憎々しいのにとてもセクシー。あの演技、盗もうと思いました(笑)」とも。
■ローマの実在の場所が舞台。リアリティ満点
このオペラ《トスカ》は実在するローマの名所を舞台としているのも話題の一つだ。
1幕の聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会、2幕のファルネーゼ宮殿、3幕のサンタンジェロ城など、幕間のインタビューでスタッフが「現存する場所は何も手を加える必要がないほどに、十分に美しい」と語ったように、すべてが現存する建物を忠実に模している。そしてそれが生々しい物語に、一層のリアリティを与えている。
「特に2幕のスカルピアの部屋。トスカとスカルピアのやり取りの後ろで暖炉の炎がチラチラと燃えているのがとても効果的。火にあおられるように燃える男女のやり取りという感じでゾクゾクしました」と石丸。
またカヴァラドッシが描く聖母マリアの絵、3幕冒頭の演出などの見どころを紹介し、さらに「セットは実は傾斜している。それによる遠近感と奥行きの効果が素晴らしいんです」と役者らしいコメントも語ってくれた。
ライブビューイングは幕間の歌手やスタッフへのインタビューも見どころのひとつだ。「インタビュアーもオペラ歌手だから質問もツボを突いているし、回答も理路整然としている。同じ舞台人として参考になりました」(石丸)。
(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
さらに今回カヴァラドッシを演じるグリゴーロはローマ生まれのローマっ子。しかも13歳のときにパバロッティがカヴァラドッシを演じた際に、3幕冒頭の羊飼いの少年の歌を歌っていたという。「この役はどうしてもやりたかった」と幕間のインタビューで語るグリゴーロのエピソードも「必見です!」とも。
オペラは敷居が高いという印象を抱く人も少なくはないが、石丸は「ミュージカルもオペラも、どちらも歌を介して物語を伝えるもの。ミュージカルは現代のオペラともいえます。役者としてもオペラから学ぶことはとても多い」と話す。そして最後に「『愛のために死ねる』のは、現実には無理ですが、オペラの中でならあり得ます。オペラは大人の夢物語。皆様どうぞ、ハンカチを忘れずに」と締めくくった。
19世紀のローマがそのまま再現されたオペラ《トスカ》。瞬く間に時間が過ぎる見応えのある作品だ。

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