【連載】フルカワユタカはこう語った
第21回『僕はこう語った』

DOPING PANDAが「the way to you」「GAME」「CRAZY」という3曲を予定通り演奏し、<ユタカ祭>は盛大なフィナーレを迎えるはずだった。が、バンアパ (the band apart)、フロンティア (FRONTIER BACKYARD)、ホリエ君 (ホリエアツシ / ストレイテナー)、ベボベ (Base Ball Bear)、ケイシ (Keishi Tanaka)、それからフルカワユタカバンドと、この日ここまでに計6回演奏された「Transient Happiness」を「本家本元のドーパンがやらずに終幕するとは何事だ!」とステージ袖の出演者達から物言いがつき、急遽僕らはそれを演奏する事になった。
冷静に考えればお客さんですら「そりゃそうだろう」と考えていたのではないかと思うぐらい当然な展開なのだが、ドーパンをやるということで頭の中がいっぱいだった僕は、恥ずかしながらそう指摘されるまでこれっぽっちも7回目をやるつもりがなかった。
こういうのはさっと始めてしまうに限る。「オッケーやろう」と即時にスイッチを切り替えてギターを構えた僕の横で、大木 (大木伸夫 / ACIDMAN)が隼人 (DOPING PANDA)とタロティー (DOPING PANDA)に演奏できるかかどうかを確認してくれていた。僕はソロバンドでもよく演奏してるから良いが、2人は本当に6年ぶりだ、いくら何百回と演奏してきた曲とはいえ簡単なことではない。事実、タロティーははっきりと大木に「できない。覚えてない」と演奏拒否の意思を告げたらしい。「なのに俺の発言は流されたし、ぶっちゃけビックリするぐらい弾けてないから」とは正真正銘彼の言葉なのだが、あんたニコニコ笑いながらそんなこと俺に言っちゃ駄目だろ、だけど、それを言えてしまうのがドーパンのベーシスト=タロティーだからやっぱり最高よね。
6年の歳月はやはり長く、隼人も構成を間違え、演り続けていた僕こそが本当に生命線だったのだが、ここ数年ポジションを変えてプレイしていたので (ドーパンは半音下げチューニングでフルカワユタカはレギュラーチューニング。なので押さえるフレットが1つずれる。って言い訳すね・汗)、ギターソロで異次元へワープ。せっかく2人が駆けつけてくれて、当時を越えるような歓声に迎えられて、そりゃあ出来る事ならビシっと決めて終わりたかったというのが本音ではあったが、それでも振り返ってみると、予定してた3曲よりもむしろ少しグダったこのダブルアンコールにこそ「バンドは奇跡」という、この日のどのアクトからも (ある意味では、ケイシやホリエ君からさえも) 感じたテーマがにじみ出ていて、7回目の「Transient Happiness」、やって本当に良かったなと。含め、7回の「Transient Happiness」全てが最高だったなと。
この“天丼”のオーガナイザー荒井岳史 (the band apart)をはじめ、みんなの愛ある“いじり”に心から感謝です。ちなみに、出演者には事前にドーパンをやることを告知していたのだが、あえて夜ダン (夜の本気ダンス)には内緒に。彼らはミュージシャンの後輩であると同時にドーパンのファンでもあるので、そこは会場のみんなと同じ感動を、特に生粋のメイニア米田君にはがっつりと味わって欲しかったのです。鈴鹿はともかく。
記念撮影の前にステージ上から配られていたTシャツ。髭の須藤君 (須藤寿)がデザインしてくれたイベントTなのだが、実はあれ、市川さん(LOW IQ 01)のロゴが上下逆になっているミスプリント非売品で、それを田上さん (TGMX / FRONTIER BACKYARD)とトシローさん (TOSHI-LOW / BRAHMAN)が「お蔵にするのは勿体ないから配ろうぜ」と言ってみんなで配っていたという次第。“01”と“IQ”がひっくり返しても成立するようなトリックデザイン“風”になっていて、ミスプリントを見落としてしまう要素は確かにあったのだが、そこはチームフルカワ一生の不覚、幾重かのチェックをまんまとかいくぐられて、結局逆さまのまま製品にしてしまった。
本番の二日前にデザインを公表したのだが、僕のインスタを見たダゼ(DAZE / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS) がアップロードから間髪入れずに誤植を指摘してくれたおかげで、運よくネット上の画像は即削除できた。しかしながら、ダゼから指摘されたときは正直震えた。他アーティストならば許されるというわけではないので、「よりによって」という言い方は甚だ間違っているが、その時ばかりは「よりによって」と頭の中が真っ白になった。ちょうどベボベのリハーサル中だったのだが、<ユタカ祭>を直前に控え、景気よく喋っていた僕が急に黙り込んだことにメンバー3人は気づいていたかしら。なにせ、これまで経験した“うわの空”をはるかに低く感じるくらい、成層圏を越えてもはや宇宙というところまで僕の意識は飛んでいたのだから。
報告を受けた市川さんは、「もったいないし、むしろ話題にしちゃって売ればいいじゃん」と言ってくれたのだが、そこはさすがにそうもいかないということで、優秀なスタッフ達が迅速に対応してくれたり、運良く生地の在庫があったりして、結果正しいデザインのものを当日の物販に並べることが出来た。これまた奇跡。こういう時、本当に事務所に所属しているありがたみを感じる。僕一人だったらどうなっていたか。蛇足に次ぐ蛇足、やぶ蛇に次ぐやぶ蛇、“絵に描いたような”を通り越して“図鑑に資料掲載されているような”独り相撲を取った挙げ句、何も解決出来ずに終わっていたんだろうな。関係各位全員をちょっとずつ嫌な気分にして。ああ恐ろしい。
他の人には言葉にしているが、こいつには中々恥ずかしくて伝えられてないので、あえてここで。木下理樹 (ART-SCHOOL) よ、感謝だ。
小さいステージのトリを二つ返事で受けてくれてありがとう。

「今日は全アクトの全曲を観てるんだけど、自分の演奏の前くらいはしっかり準備したいので、アートスクールは見ない! すまん!」も「おいおい~!」って言いながら受け入れてくれてありがとう。

にも関わらず、出番前のメンバーサークルに入れてくれてありがとう。

打ち上げの一本締めも (トシローさんに促されてだったが) やってくれてありがとう。

俺は本当にいつもお前に甘えてて、頼りにしてて、心配してて、馬鹿にしてて、だけどもやっぱり感謝してて、尊敬してる。

まだまだ長い付き合いだろうが、なんでも言ってくれよな。とか言って、出来ない事は絶対やらないけれども。いや、マジでやらないけども。でも遠慮なく言ってくれよな。
それでいくと、フルスクラッチもバンアパもありがとうだ。こういうイベントのステージの一発目を決めるのはとっても難しかったのだが、マサ (masasucks / FULLSCRATCH)もバンアパも本当に頼れる同世代で、木下も含めてだけど、「ええでー」「大丈夫よ」「いいよ」って、いつだって無条件。こういう近しい仲間達にこそ礼儀と仁義を尽くしながらやっていかなくっちゃなと改めて思えただけでもイベント組んだ意義があったというもの。
重ね重ね、ありがとう。
当然、もっとエモーショナルな感情もいまだに残ってて、これまでの流れを考えればそれをしたためるのも手ではあったんだけど、それはなんだかあの日のことを脚色してしまいそうなのでやめにした。
だって気づいたらもう十分吐き出してたんだもの。去年一年のこのコラムや最近の対談で、そして何よりあの日のステージの上で、僕はしっかりと語れたんだもの。あの日、コースト (2018年1月28日(日)@東京・新木場STUDIO COAST) のステージ上で、何も準備してたわけじゃなかったのに、限られた時間だったのに、誰かを攻撃したわけでもなく、誰かを妬んだわけでもなく、羨ましがったわけでもなく、臆病をさらけ出したわけでもなく、過信や慢心をみせたわけでもなく、自信を持って、少しだけ強くて、優しい気持ちで、僕はちゃんと語れたんだもの。それから、みんなの言葉も演奏も刺さりまくったし。もういまさら言葉にしたって意味ないさ。きっと最後の胴上げでかろうじて残っていた悪いものも全部はがれ落ちたよな。
だからもう過去の自分を語るのはやめにして、ロックギターをじゃーんって鳴らして、おりゃーってシャウトすればいい。そうしたら、僕はまたいつかどこかで意地をはって、いじけるかもしれない。いや、確実にいじける。その度に「“ゲージツカ”は元来女々しくてわがままなロマンチストなんだから仕方ないじゃないか」と嘯いて誰かを困らせるかもしれない。いや、確実に困らせる。でも、心配するな。僕はもう誰かと自分を比べたりしない。僕はもう感謝を忘れやしない。僕はもう昔の僕じゃない。だったら今度こそ、少しくらい間違ったっていいじゃないか。大丈夫さ。だからもう迷わずやろうぜ。
周りからすれば迷惑千万な話で我ながら情けないかぎりではありますが、皆様方のおかげでこの前向きなネガティブ野郎は心の底からそう思ってしまったようです。
迷わずやります。よろしくお願いします。
   ◆   ◆   ◆
<雑記>

7回あった「Transient Happiness」。市川さん曰く「ベボベが一番完成度高かった」とのこと。異議無し。
当日、楽屋にてホリエ君からもらった某氏からの伝言「(面識全くないとラジオやコラムで僕が言及している事を受けてだと思われる) 何度か喋ったことあるよって伝えといてください」。アジカン後藤君、取り急ぎ、この場を借りて、大変失礼致しました。
本文からも伝わるように、あの日からずっと「ステージで語るべき事は全て語り尽くしたし、きっと伝わったはず。さあ次へ向かおう!」と感慨にふけっていた僕ですが、昨日須藤君に「MC、早口過ぎて何言ってるかさっぱり分からなかったよ。あれじゃお客さんに伝わんないね」って言われました。合掌。
明け方手前まで一緒に飲んでた大木と一悟ちゃん (浦山一悟 / ACIDMAN)。最後は2人に連れられて、某バンドの打ち上げにお邪魔。そこで某氏から「俺、昔、お前の事大嫌いだったよ」と固い握手を頂戴。もはやデフォルト過ぎて、なんなら今後、“嫌われていない場合”は自分から聞き返しちゃいそうです。
「え、僕、フルカワユタカですけど、誰かと間違ってませんか? 元ドーピングパンダの、アイムロックスターとか自分で言っちゃって、すげえ感じ悪いで有名な、あのフルカワユタカですけど?」
   ◆   ◆   ◆
■全国ツアー<フルカワユタカ presents 『yesterday today tomorrow TOUR』>


2018年1月13日(土) 愛知県 伏見JAMMIN'

2018年1月14日(日) 大阪府 Shangri-La

2018年2月11日(日・祝) 静岡県 Shizuoka UMBER

2018年3月17日(土) 岡山県 岡山ペパーランド

2018年3月18日(日) 福岡県 INSA

2018年3月21日(水・祝) 宮城県 enn 3rd
■<yesterday today tomorrow TOUR extra> w/荒井岳史 (the band apart)

2018年2月12日(祝) 鹿児島県 Live HEAVEN

2018年2月18日(日) 福島県 Player’s Cafe

2018年2月25日(日) 北海道 musica hall cafe

2018年3月10日(土) 京都府 SOLE CAFE

2018年3月11日(日) 石川県 もっきりや

■<フルカワユタカ presents 「2×28」 feat.須藤寿(髭)>


2018年2月28日(水) 吉祥寺スターパインズカフェ

18:30開場 / 19:30開演

▼出演者

フルカワユタカ guest:須藤寿(髭)

▼チケット

前売¥3500+1drink / 当日未定(税込・全自由・整理番号入場)

■<フルカワユタカ presents『yesterday today tomorrow TOUR ファイナル』>


2018年4月13日(金) Shibuya WWW

18:30開場 / 19:00開演

▼出演者

フルカワユタカ

▼チケット

前売¥3990+1drink スタンディング

一般発売日:2018年03月17日 (土) 10:00

(問)DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00〜19:00)

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