【インタビュー】Ram、“自分らしく
”をテーマに作りこんだラブストーリ
ー『Just As I Am』

DIVA(AKB48派生ユニット)のメンバーを経て、2016年6月にR&Bシンガーとしてソロ・デビューを果たしたRam。秀でた歌唱力と美麗なルックスを備えたニュー・ヒロインの誕生はシーンに強いインパクトを与え、デビュー以降注目を集め続けている。そんなRamの1stフル・アルバム『Just As I Am』が1月24日にリリースされた。翳りを帯びたスタイリッシュ&セクシーな世界観と柔らかみやピュアさといったRamの人となりが溶け合った同作は、非常に魅力的なアルバムといえる。フル・アルバムを完成させて、いよいよ本格的な活動をスタートさせる彼女の最新の声をお届けしよう。
■曲を作る前にどういうストーリーにするかということを話し合いました

■それが、それぞれの曲のカラーがはっきりして深いものになっている理由
――まずは音楽的なバックボーンなどを、改めてお願いします。
Ram:私は小学校3年生くらいから芸能界の養成所に通うようになって、ダンスと歌を習っていたんです。その頃はあまり上手くもなくて、養成所の校長先生とかにも「あんたはダンスも歌も上手くない」とよく言われていました。「だから、キャラで売っていけ」と。そういう状態だったので、歌は好きでしたけど、自信がなくてあまり人前で歌うことはしていなかったんです。でも、発表会とかに出ても歌が上手くないと前のほうに出してもらえなくて、それが悔しかったし、オーディションで宇多田ヒカルさんの「First Love」を歌った時に、「あんたは、この歌を歌うのは10年早い」と言われたんですよ。それがすごくショックで、初めて歌の勉強をちゃんとしようと思って。それまではレッスンの一環として適当に歌の授業を受けていたけど、ちゃんと先生の話を聞いて、ちゃんと歌の練習をするようになりました。
――先生方の厳しさが、良い方向に導いてくれましたね。子供の頃からブラック・ミュージックが好きだったのでしょうか?
Ram:養成所ではダンスを習っていて、R&Bとかヒップホップで踊ることが多かったので、慣れ親しんでいたというのはありますね。ジャネット・ジャクソンさんとかの曲で、歌って、踊ってという感じだったんです。それで、お母さんに英語にフリガナをつけてもらったりして、歌の練習をしていました。ただ、自分で歌ったり、オーディションで歌ったりするのはJ-POPが多かったです。ずっと、そういう感じだったので、ソロ・シンガーでデビューしてR&Bを歌おうと決めた時は、それまでとは歌い方とかも全然違うので、すごく難しかったというのは正直ありますね。でも、R&Bに挑戦したいという気持ちが強くあったので、がんばりました……というか、今も勉強中です(笑)。
――自分がやりたいことをやるというのは大事ですよね。では、1月24日にリリースされた1stアルバム『Just As I Am』について話しましょう。本作を作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?
Ram:今回のタイトルにもなっているように、“Just As I Am=自分らしく”ということがテーマとしてありました。前作の『Ram』(2016.6.22リリース)はDJ PMXさんがフル・プロデュースしてくださったので、自分らしさの中の一部分しか出ていないなということを実感していたんです。今回はもっと自分らしさを出したいなというのがあったし、前作は男性リスナーの方からの反響がすごく大きかったので、もっと女性にも聴いて欲しいという気持ちがあって。それで、今回は恋愛ソングを多めにしました。それに、アルバムを通して歌詞が一つのラブストーリー仕立てになっています。歌詞を書いてくださったのは作家の方ですけど、最初に私がストーリーを全部書いて、それを作家さんに渡して、歌詞を書いていただきました。でも、作家さんが男性の方だったので、女性ならではの心理とか感情のちょっとしたニュアンスが伝わらないところがあったんですね。そういうところは、お話をさせてもらって、一緒に作っていきました。
――丸投げではなくて、自分の個性を入れられたんですね。楽曲に関しては昔ながらのR&Bではなくて、R&Bの洗練感や憂いなどの要素だったり、少ない音数で世界観を構築するというヒップホップ系のトレンドのアプローチなどを活かして、独自かつ魅力的な音楽を創りあげていることが印象的です。
Ram:ありがとうございます。それは曲を作ってくださった方達の力で、私の手柄ではないです(笑)。ただ、曲作りはお任せしましたけど、曲を作る前にどういうストーリーにするかということを作曲していただく人と話をしました。それで、たとえば孤独感を出すならこういう音楽で、こういう音像だよねということを話してから曲を作っていただいたんです。それが、それぞれの曲のカラーがはっきりしていて、なおかつ深いものになっている理由の一つになっているんじゃないかなという気はします。それに、使う音色にもすごく気を遣ってくださっていて、鳴っている音の一つ一つが強いから音数が少なくても成立していますよね。素敵なサウンドのうえで歌えて、自分は幸せだと思います。
――上質な楽曲が揃っていて、幅広い層のリスナーが楽しめる一作になっています。数名のゲスト・ミュージシャンが参加されていることも特徴になっていますが、ゲストの人選はどんな風に行なったのでしょう?
Ram:スタッフさんと話し合って決めたんですが、“はじめまして”の方ばかりで、最初はすごく緊張しました。ソロを始めるまではヒップホップ畑の方とは親交がなかったですし、男性の方が多いので、最初は会話とかにも入りにくかった。それに、ラッパーさんとかは見た目が怖そうな人が多いですよね(笑)。だから、どうしよう…と思ったけど、話してみると皆さん良い人だし、優しくてホッとしました(笑)。作業もスムーズで、コラボレートはすごく楽しかったです。ただ、ゲストの方に参加していただいているのは前作の「Ram」にも収録されている曲だけで、新曲は私一人で歌っています。
――そのバリエーションも楽しめました。もう一つ、シンガーソングライターの場合は曲作りや作詞、自身の個性といった全体でアピールできますが、シンガーは純粋に歌だけで勝負することになります。その辺りは、どう捉えていますか?
Ram:そのことは肝に銘じていて、歌には本当にこだわりました。自分が伝えたい風に歌えない部分もあって、それがすごく悔しくて、何度も何度も歌ったし、次の歌録りまでに、こういうところを鍛えようと考えたりしながら録っていきました。声質とかもかわいくなってしまったりして、「ここは、もっとセクシーに歌えない?」と言われて、自分としてはすごくセクシーに歌っているんだけどな…みたいな(笑)。でも、セクシーな歌というのはセクシーな気持ちになれば歌えるというものではなくて、セクシーに感じさせる歌い方というのがあるんですよね。色気に限らず、穏やかに聴こえたり、せつなく聴こえたりするのもそう。なので、いろんな表現の仕方を自分なりに研究したし、録りの現場でも「ちょっと違うね」ということになったら、「じゃあ、こういう感じはどうですか?」といって歌って、「うん、こっちのほうが良いね」というような話し合いをしながらレコーディングしていきました。
――自分を甘やかさずに、レコーディングを成長の場にされたことが分かります。
Ram:レコーディングすると普段の発声練習とか、歌の練習では分からなかったことがいっぱい出てくるというのがあって。だから、すごく勉強になるんですよね。そういう良いチャンスなので、ここで習得できるものはもう全部身につけようと思って、がんばりました。
――歌の表情が豊かで、それぞれが魅力に富んでいて聴き応えがあります。『Just As I Am』を作っていく中で、Ramさん的にキーになったなと思う曲をあげるとしたら?
Ram:「U & Me」と「Fade away」です。「U & Me」は、自分的に歌詞が一番せつないかなと思っていて。ストーリー的には「Party Out」の続きで、「Party Out」で出会った男性にパートナーがいたということを歌っていて、そのせつなさを歌で表現したいなと思って。でも、アップテンポなので、どうしても歌い方がちょっと明るくなってしまうんですよ。それを、声質も含めて、もっと悲しく、もっとせつなく…というところで、ちょっと大変な部分がありました。
――個人的には、それが良い結果に繋がっている気がします。せつない歌ですがドロドロしていなくて、透明感のある曲になっていますので。
Ram:嬉しいです(笑)。サビの部分とかが結構高音だったので、どう歌おうかなと思って。キーが高いからファルセットでしか歌えないけど、ファルセットで感情を出すのは難しいんですよね。それで、自分でいろんな歌い方を試してみて、“これかな”というのを見つけて完成させました。そんな風に「U & Me」は大変でしたけど、その分得るものがあった曲といえますね。「Fade away」は、歌を録るのに一番時間が掛かりました。もう、めっちゃ難しかった(笑)。歌のキーが低いし、しかもテンポが遅いし…という(笑)。ディレクターの方に、「やっぱり、遅い曲は苦手だよね」と言われながら歌っていました。低い声でせつない感じを出すのが難しいし、グルーブを感じながらリズム良く歌うというのもすごく難しくて。ただ単に低い声で歌うと、なんかもうアイドルが無理して低い声で歌ってるようにしか聴こえないと思って(笑)。しかも、この曲は全編セクシーにと言われて、“うーん…”みたいな(笑)。この曲は、本当に時間が掛かりましたね。
――でも、今回のアルバムの歌は全体を通して艶やかですし、濃厚過ぎないセクシーさが魅力になっていると思います。
Ram:今回のストーリーが大人の男性に恋をするというテーマなので、やっぱり子供っぽくてはダメで、女性の側も大人っぽくないと釣り合わないというのがあって、女性が背伸びしている部分を出したかったんです。前回のEPの時はフレッシュさとか、かわいらしさを表現した作品だったけど、今回は大人な感じのちょっと背伸びした女性像を描きたかったんですよね。それが、本当に難しかったです。ただ、大人の女性ではなくて“背伸びしている女の子”なので、セクシー過ぎなく感じてもらえるとしたら、ちょうど良いのかなという気はします。
■「Girls Party」はソロになって初めて録ったので歌も大変でした

■自分ではすごく明るく歌っているのに暗く聴こえてしまって
――「U & Me」「Fade away」以外にも注目の楽曲が揃っていて、たとえば「Break Upして feat.AYA a.k.a.PANDA」は女性ラッパーとの競演というスタイルになっています。
Ram:AYA.a.k.aPANDAさんのラップは、本当にカッコいいですよね。前回DJPMXさんにプロデュースしていただいた時は、最初に私の歌を全部録って、その後ゲストのラッパーさんを決めるというやり方だったので、AYAさんとは彼女がレコーディングする時に初めてお会いしたんです。AYAさんのラップを聴いて、女の人がこんなにカッコいいラップをするんだと思ってビックリしました。それを自分の作品に入れてもらえるのが、すごく嬉しかったです。この曲はラッパーさんが男性ではなくて、女性ですごく良かったなと思いますね。
――同感です。AYA a.k.PANDAさんのラップは、チャラ男にビリビリしている心情を見事に表現されてますし。
Ram:そうなんですよ。今回のストーリーとは離れた歌詞で、チャラ男さんに振り回されている女性の心情を歌っているんです。これも、せつない感じを表現しようと思って歌ったんですけど、この曲の歌録りは早かったですね。歌詞を見た時に思ったのが、これは普通に若い子のダメンズ好きな感じなんだろうなということだったんです。なので、わりと等身大の感じで歌えば合うんじゃないかなと思いつつ1回歌ったら良いテイクが録れたので、それを活かすことにしました。
――6曲目の「Girls Party feat. Kayzabro (DS455), DJ DEEQUITE」は、他曲とは一味違って音数が多くて、少し生感のあるサウンドが印象的です。
Ram:この曲は、ソロでやっていくことが決まった時に、一番初めにレコーディングした曲です。だから、サウンドが他の曲とは少し違っていますね。そういう意味では、『Just As I Am』を聴いてもらうと、「Girls Party」から入って今のテイストに変わっていった流れも分かってもらえると思います。この曲はソロになって初めて録ったので、歌も大変でした。「もっと楽しく、楽しく」と、ずっと言われ続けて。自分ではすごく明るく歌っているのに、暗く聴こえると言われて。そうかなと思って聴いてみたら、たしかに違うなと自分でも思うという(笑)。初めてで、自分の中で探りながら歌ったので、今聴くと自信のなさが垣間見えているなと思いますね。
――アゲアゲの曲を、少しアンニュイに歌っている感じがすごく良いなと思いましたよ。
Ram:ありがとうございます。この曲を歌うことで、J-POPとR&B/ヒップホップの違いをすごく勉強した感はありますね。歌のニュアンスも、リズムの取り方も全然違うということを実感できたんです。英語の発音も、すごく注意されましたし。……なんか、懐かしい(笑)。この曲を聴くと、懐かしさを感じます(笑)。
――懐かしさを感じるというのは、そこから進化した証ともいえますね。歌唱面では、「tears」は今回のアルバムのハイライトといえます。
Ram:……(笑)。
――あれ? その笑いは一体……。
Ram:いや、この曲も大変だったなと思って(笑)。「tears」は高音域が多くて、でもサビとかはファルセットだけでは弱いし、もっとせつなさを出したいなと思って、サビの部分はすごくがんばりました。この曲の仮歌を入れてくださった方がすごく上手くて、ハードルが高いというのもあったんですよね。その方とお会いした時に、「Ramちゃん、あの曲は本当にツラいから、がんばって」と言われたんです。「私、もう腕を振りながら、全身全霊で歌ったから」と。それで、“あんなに歌える人がツラいんだ……どうしよう?”みたいな(笑)。実際歌ってみたら、本当に大変でした(笑)。でも、今回のストーリーに出てくる女の子のせつない恋に対する最後の心情を描いた歌詞なので、想いが溢れた感じを出したくて、大切に歌いました。
――強く響く歌になっています。サビにいく前のパートで“噛みしめている感”を表現してから“パーン!”とサビにいく流れも絶妙ですし。
Ram:「tears」を録る時に、どこから録るか聞かれて、サビ前のパートから歌いますと言ったんです。この曲はここが一番大事だなと思ったので、サビ前のパートから録って、その後サビを録って、最後にAメロとかを録りました。「tears」は今回の曲の中で、一番最後に歌ったんですね。なので、どういう録り方をすれば良いかが、なんとなく自分の中で分かっていたんです。
――本当に得るものの多いレコーディングになりましたね。
Ram:そうですね。今回のレコーディングは、前回よりもさらに新しい自分を見つけることができたなと思っています。今の自分ができることを精一杯やりましたし、良い作品になったことも感じているので、ぜひ沢山の人に聴いて欲しいです。
――同感です。『Just As I Am』のリリースから始まる2018年は、どんな年にしたいと思っていますか?
Ram:やりたいことはいろいろありますけど、まずはライブをいっぱいしたいです。2月に私の地元の大阪で初めてライブをやれるので、すごく楽しみなんですよ。きっと、すごく緊張すると思いますけど(笑)。今まではラッパーさんが一緒だったので良い感じで盛り上がりましたけど、今度は一人だけなんです。なので、ちょっとトーク力も鍛えないと…と思っています(笑)。あと、前回のEPを出した時にBlues Alleyというところで、初めて生バンドで「Girls Party」と「Break Upして」を歌ったんですね。そうしたらまた全然違う曲になったし、バンドで歌うのはすごく楽しくて。そういう楽しみ方もできるなと思ったので、定期的にBlues Alleyとかジャズバーみたいなところで歌っていきたいんですよね。普段のライブも打ち込みのオケで歌う曲もあれば、生バンドで歌う曲もあるという形にするのも良いかなと思ったりもしているし。そんな風にいろんなことを考えて、今はすごくワクワクしています。とにかく今年はライブを沢山して、また音源もリリースしたいと思っているので、今後のRamの成長を見ていて欲しいです。
取材・文●村上孝之
リリース情報


『Just As I Am』

2018.01.24. out

VICL-64874 2,800yen (wo/tax)

01.Introduction

02.Party Out

03.Let's Move On feat. KOWICHI

04.Break Up して feat. AYA a.k.a.PANDA

05.U & Me

06.Girls Party feat. Kayzabro (DS455), DJ DEEQUITE

07.Fade away

08.tears

09.Outro

10.Fade away (Lutez remix)
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