【さユり インタビュー】
さユりが新曲で魅せた、
次のフェイズへと向かう自覚、
そして決意とは?
“酸欠少女 さユり”がここまでの活動で得た“自覚”と“確信”、そして“背負ってきた多くの想い”と、次のフェイズに飛び込む際に要した“決意”が合致し昇華された新曲「月と花束」(TVアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』EDテーマ)。彼女の強い意志や確信がエモーショナルさとともに聴く者を誘い、問い、察知させる。その真意を訊いた。
表題曲「月と花束」からは、従来以上のエモさと外側に向けての開けた発信を感受しました。
歌ってることはそう変わってませんが、従来ともっとも違ったのはその辺りの意識でした。これまで自分と向き合い、闘ってきましたが、その意味や意義は“どこか遠くの誰かと、きっとつながっているはず…”。そんな未知の人たちに向けてだったんです。対して今回は、その遠くの誰かが居る場所まで自分が行って、その中で“私はこう思う”を伝えてみたんです。
この曲からはどこか共闘っぽさも感じましたが、その心境の流れを教えてください。
“周りに変えさせてもらった”と言ったほうがしっくりくるかもしれません。これまでの自身の葛藤やジレンマに対しての闘いを続けていたら、いつしか人の居るところに辿り着いたとでもいうか…。そんな中、“しっかり自分と向き合わなきゃいけない!!”ことに改めて行き着いて。それが今回のTVアニメ『Fate/EXTRA Last Encore』のエンディングテーマの話が来た際に合致したんです。
その“人の居るところ”の“人”は聴き手やファン?
それもあります。そういった方々のために自分がやれることを考えた際に、自分のアイデンティティーや持っているものを薄めずに進んでいくべきって決意が生まれてきて。これまでは私に向けての想いや、私に求めているものを一方的に背負ってきたけど、1stアルバム(『ミカヅキの航海』/2017年5月発売)を完成させたあとぐらいから、“自分がどう生きたいか?”“これらを背負った先、私は何をしたいんだろう?”を自分に問いかけてみたんです。
そこで見えたものは?
今回の歌詞で言うと、燃料にしてみることで、それを太陽や灯火にしていく。そんな背負ったみなさんの想いを、かたちを変えて自分の在り方として魅せていくべきなんだろうって。
では、その背負ったたくさんの想いを昇華させたのが、この楽曲であったと?
そうですね。その背負った想いを大切にする手段を歌詞で紡いだ感じです。いわゆる聴いた方ひとりひとりが、そこから自分のやり方での進み方を見つけてほしくて。私のように生きる意味が分からなかったり、生きている実感が沸かない人たちが居ることを、ライヴやいただく手紙からすごく感じるんです。そんな私と似たみんながどうしたら生きる意味を見い出せるのかも、この曲では歌いたいなと。なので、同じような心境や想いの人たちの、“あぁ、こう生きてみるのもいいかも…”というヒントになれたらって気持ちもあります。
あと、この曲からは次のフェイズに飛び込んでいく、ある種の決意も察しました。
この曲を出すにはかなりの勇気がいりました。何かを得る代わりには、何かを手放さなくちゃならないわけで…でも、私はそれでも進みたくて。こういう曲を歌うことは決して私にとって簡単なことではなかったです。
歌詞にある《誰より険しく美しく》ともオーバーラップした、エモさと美しさが同居した歌唱も魅力的です。
そこは大事にしました。失うかもしれないけど選んだもの…自分はそれを信じたかったし。それは美しいものであるべきだから。その私が選択して紡いだ世界がきれいだと映ってもらえれば、それだけで進んでみる意味を持ってもらえるだろうし、スッと簡単に入り込める。美しさにはそんな力が宿ってるかなと。
初回生産限定盤に収録の「平行線-弾き語りver,-」は、アコースティックギター1本での歌唱ですね。
私を知ってもらえる多くのきっかけになった曲です。このアコギと歌が自分の作った最初のかたちなので、その濃度の高い状態を伝えたくて入れました。この曲も「月と花束」同様に“怖いけど、進んでみる”…そのメッセージ性は近い種類のものでもあるんです。
同盤に収録の「日向雨」は、“天気雨”ではなく“日向雨”なのも面白いです。
表現の面白さや字面のシンメトリーさもかわいく思って、このタイトルを付けました。晴れているのに雨というはっきりしない感じ。でも、それが大事だったりすることを描きたくて。世の中、分かりやすいものが好まれやすいですが、実際の心の中は分かりづらいし、いろいろとゴチャゴチャして成立している。そこに丁寧に曲として向き合ってみました。
期間生産限定盤に収録の「レテ」は何かを傍観している最中に浮かんできた、とりとめのない情景が見えてきました。
失うことを覚悟して進んだ「月と花束」に対して、この曲は“本当に失っていいの?”と自問自答している曲でもあります。街に向かう人を眺めながら、“みんな渓谷から人が居る街に進む時に大事なものを捨てていってるけど、それっていいのかな?”と。この“渓谷”は「月と花束」で出てくる“深い森”との対比でもあるんです。
通常盤に収録の「プルースト」ですが、これは小説家のプルースト?
そうです。プルーストの匂いから曲が呼び起こされる面が自分の音楽を作る原点と重なる部分でもあって、このタイトルを付けました。
この曲の歌詞にある《口をぱくぱくさせていた》の表現に、言葉にならない言葉を表す際の、さユりさんの描写メソッドのすごさを改めて感じました。
大事なものがあるって感覚だけはあるんだけど、その正体が分からない。分からないけど悲しい。その感覚を私なりに表したらこうなりました。何を失くしたかすら分からないから、ぱくぱくさせるしかないだろうと。言葉にできない。言葉として発せられない感覚や想いを、こういう表現にしてみました。
そう考えると今回の楽曲たちは全て「月と花束」に紐付いてますね。話を「月と花束」に戻しますが、この曲を聴いた方々がどのようなアクションを起こすか私も楽しみです。
聴いた方の中でかたちを変えて、燃料にしたり、糧にしたり、その人なりの進み方を見付けてもらえると嬉しいです。今回の曲は聴く人たちの意志や想いでかたちを変えていく曲でもあるので、少しでも能動的な感情になってほしいと思います。なので、ロボットが聴いてもまったく良い曲だとは思ってくれないでしょうね(笑)。生身の人間が居て、そこに物語や変わりたいという意思が少しでもあるから、この曲は意味を持つものだし。ぜひ聴いてくれた人の中で、その意味を膨らませてほしいです。
取材:池田スカオ和宏
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シングル「月と花束」2018年2月28日発売
Ariola Japan
- 【初回生産限定盤(DVD付)】
- BVCL-857〜8 ¥1,574(税抜)
- ※全面箔三方背BOX仕様
- ※酸欠少女キャラカード(3種の中から1種ランダム封入)
- 【通常盤】
- BVCL-859 ¥926(税抜)
- ※初回仕様限定特典:酸欠少女キャラカード(3種の中から1種ランダム封入)
- 【期間生産限定盤(DVD付)】
- BVCL-860〜1 ¥1,481(税抜)
- ※『Fate/EXTRA Last Encore』描き下ろしアニメジャケットデジパック仕様
- ※アニメ『Fate/EXTRA Last Encore』キャラカード2種封入
サユリ:人と違う感性・価値観に、優越感と同じくらいのコンプレックスを抱く“酸欠世代”の象徴=“酸欠少女”として、アコギをかき鳴らしながら歌う2.5次元パラレルシンガーソングライター。また、さユりは3人に分裂し生息しており、それぞれの活動領域は2次元・3次元とパラレルで神出鬼没。SNSやWEBを軸とした独自の2次元活動と、ライヴを軸とした3次元活動がクロスオーバーした、2次元と3次元の狭間=2.5次元を漂う。自分らしく生きていく姿や居場所を探し、日々息苦しさを抱えながら過ごしている若者の心情と共鳴する歌詞と、聴く者の心にスッと寄り添い、孤独をやさしく抱きしめて希望を感じさせる歌声により、10代〜20代の男女を中心に絶大な人気を得ている。さユり オフィシャルHP
「月と花束」特設サイト
「月と花束」MV(1番ver)
「月と花束」MV(2番ver)