高橋 優
『世界で一番読まれたい手紙』
- 第31回 僕の安藤百福さんへ -

拝啓 カップヌードルをこの世に生み出してくれて本当にどうもありがとう。
「どんな人にもお手軽に、美味しいものを届けたい。そうしてお腹いっぱい食べてもらって、 たくさん喜んでほしい」たまたまつけていたテレビ番組の中から聞こえてきたあなたの言 葉に、僕は底知れぬ感動を覚えました。それが、僕にとってのあなたとの出会いでした。

あなたがこの世に送り出した数々の素晴らしい食べ物に関しては、僕が改めて取り上げる までもないほど世界中に浸透していて、僕自身も幼少の頃から何度となくお世話になって おります。ただ、あまりにも日常に馴染んでしまっているが故、どんな想いでそれが生み出 され、どれほどの苦労や時間が費やされて、それが我々のもとまで届けられているのか、ということに関して改めて考える機会がこれまでなかなかありませんでした。

そんな僕の心を強く揺さぶったのが冒頭に記しましたあなたのお言葉です。もはやあって当たり前と言って過言でないインスタント食品も、元を正せばこの世界にひとつとして存 在しないものでした。そこに、あなたの想いや発想が形になったものが創作され、沢山の 人々に想いが届き新たな幸せを生み出した結果が、現在の状況なのだと僕は思うのです。同 じく(と言うのは烏滸がましいのですが)、モノを作る人間として、あなたの想いや実際に成し遂げた数々の偉業に対し心から尊敬し多くのことを学ばせていただくのと共に、これを書いている今でさえ、僕はチキンラーメンを食べております。本当に美味しくて、お世話に なりっぱなしです。 敬具

あなたへの一文字・・・「杯」