【インタビュー】トリビュレーション
「強いて言うならダーク・メタル」

スウェーデンからゴスでデカダンなブラック/デス・メタラー:トリビュレーションが本邦デビューを飾る。元ENFORCERのアダム・ザース(G)を擁するこの4人組は、前身バンドも含めると2018年で活動18年という長いキャリアを誇る。彼らの歴史とメンバーの変遷、そしてニュー・アルバム『DOWN BELOW』について、アダムとツイン・ギター・チームを組むヨナタン・フルテンに話を訊いた。
──トリビュレーションの母体となったのは、スラッシュ・メタル・バンドのHAZARDだそうですね?
ヨナタン・フルテン:HAZARDは俺達のホームタウン(アルヴィーカ)でスタートしたんだ。確か、みんな13歳とかそれぐらいだったと思う。結成は2001年だったよ。デモをいくつかレコーディングして、ラインナップの変更もあって、最終的には解散した。それが2004年で、その年にTRIBULATIONが始動したんだ。
──HAZARDが分裂して、TRIBULATIONとENFORCERになったそうですが。
ヨナタン:うん。TRIBULATIONはHAZARDから誕生した。一方、HAZARDのヴォーカルとドラム担当だったウーロフとユナスのヴィクストランド兄弟が、数年後にENFORCERを始めたんだ。確かウーロフが19歳ぐらいの時だったんじゃないかな。分裂の理由は音楽性の違いだったと思う。やりたいことが違ってきて、どちらに進むというのが決められなくてさ。俺達はよりハードでエクストリームな方向に進みたいと思っていて、彼等(ヴィクストランド兄弟)はスラッシュ・メタルやスピード・メタルをやり続けたいと思っていたから。
──最初のデモ『THE ASCENDING DEAD』(2005)の頃はどんな音楽性でしたか?
ヨナタン:当時の俺達が影響を受けていたのは、言うなればオールドスクールのデス・メタルだね。初期のENTOMBEDとか、フロリダ産のデス・メタル…例えば初期のMORBID ANGELとか。いや、MORBID ANGELは初期に限らないか。『HERETIC』(2003年)が出た頃にハマっていたから。かなり夢中になったよ。テーマとしては、ゾンビやホラーかな。(『THE ASCENDING DEAD』は)俺達がホラーの世界に踏み込んだ最初の作品だったけど、かなり青臭かった。まぁ、全員がまだ10代だったからね。
──ニュー・アルバム『DOWN BELOW』では、ゴスの要素がさらに強まると同時に、ダークな曲想の中でキャッチーな要素も増していると思いました。
ヨナタン:このアルバムには、これまでのどのアルバムにも共通する要素がある。ただ、それは違うアングルからのモノかもしれない。つまり、このアルバムのインスピレーションになったモノの多くは、バンド自身とその歴史からきているんだ。例えば、ファーストを制作していた頃、俺達はホラーのサウンドトラックにかなりインスパイアされていた。1970年代のイタリアのホラー映画だったら、ファビオ・フリッツィが作曲を担当した『サンゲリア』とか『ビヨンド』とか…(※後者の公開は1981年)。デス・メタルのコンテクストの中や曲と曲の間に、そういったサントラに影響されたメロディやギターを使っていたんだ。そうしたピアノなんかを今回の『DOWN BELOW』の中にも採り込んでいる。また、アトモスフェリックでミステリアスで、得体の知れない要素はセカンドにあった。非常にキャッチーなアルバムではあったけど、探求の側面とアトモスフェリックな側面は、もうその頃から存在していたんだよ。一方サードはロックン・ロールなアルバムで、メタリックなギター・ソロとかツイン・リードもあるけど、ゴスのヴァイブが前面に出てくるようになった。そういったモノ全部が『DOWN BELOW』にはある。どの要素も、より新しい存在に変化しているんじゃないかな。それとも、レベルが一段階アップしたと言った方がいいかもしれない。例えば「Here Be Dragons」は、これまで以上にキャッチーで、これまで以上にゴシックで、これまで以上にロックン・ロールで、これまで以上に奇妙になっている。「The World」も俺達が新しい領域に踏み込んだ曲だと思うよ。
──『DOWN BELOW』収録曲は、いつ頃、どのようにして書かれたのでしょうか?
ヨナタン:このアルバムの制作に入るまでの2年間、俺達はずっと忙しくしていた。ショーを沢山やって、ツアーを沢山こなし、新しい生活に慣れなくちゃならなかったからね。それこそがバンドがプロフェッショナルなレべルで活動していくことを意味していた。色々なことにたくさんの時間を費やしていたから、本来2016年の終わりに曲作りを始めるつもりが、2017年2月になるまで始まらず、結果的にスタジオ入りの時期にかなりバタバタすることになった。曲を書き始めてすぐに「うわ、時間がない」となり、相当に集中して曲作りに取り組んだんだ。結局、スタジオに入ったのは(2017年)8月のことで、前回よりもスタジオで過ごす時間が長くなった。いいことだ。おかげで曲作りとリハーサルとデモ制作の時に足りなくなっていた時間を取り戻せた。できるだけ良いものにしたかったからね。
──メイン・ソングライターは?
ヨナタン:曲も歌詞も、俺とアダムが50/50で書いた。俺は俺で書いて、彼は彼で書いて、それを持ち寄ってアイディアを試し、リハーサル・スタジオでまとめていく。オスカルとヨハンネスもかなり助けてくれたよ。アダムのデモをレコーディングしたのも、オスカルの家だったしね。彼は本格的なホーム・スタジオを持っていて、そういった分野が大得意なんだ。そうして、(2017年の)春と夏はずっとスタジオにこもってデモ録りを行なっていた。あれはとても良かったな。
──『DOWN BELOW』のプロデューサーは?
ヨナタン:レコーディングはマッティン・エレンクローナとストックホルムにある彼のStudio Cobraで行なった。この組み合わせで前のアルバムのセッションも何度か行ない、追加のレコーディングもやったんだけど、素晴らしい場所だったから今回はここでもっと長くやろうと決めたのさ。そこら中が楽器だらけだし、とても歴史を感じさせる雰囲気があり、まるでアンティーク・ショップにいるような感覚になれる、凄くクリエイティヴな環境なんだよ。ここで作られたモノは、何もかもスーパー・クールなサウンドに仕上がっている。
──トリビュレーションは初期よりコープス・ペイントをしてきましたが、そのためにブラック・メタル・バンドと間違われることはありませんでしたか?
ヨナタン:あのメイクはコープス・ペイントではないよ。MISFITSにインスパイアされたヤツだからね。コープス・ペイントというと、頭に浮かぶのは北欧のデス・メタル・バンドのイメージだ。俺達はああいった表現にハマったことはない。結果的に今では同じようなルックスになっているけど、そういう意図はないんだよ。そもそも俺達は自分達をデス・メタル・バンドだとは考えていないし、必ずしもそういうカテゴリー分けが必要だとも思っていない。俺達がやっているのはメタルだよ。強いて言うなら、“ダーク・メタル”で充分じゃないかな。
──今後のツアー予定を教えてください。

ヨナタン:今のところ決まっているのは、南米/ヨーロッパでのツアーと、夏のヨーロッパでのフェスティバル出演などだ。あと、アメリカでも何かやることになると思う。秋頃にね。もちろん日本にもまた行きたいと思っているんだけど、まだ具体的な計画はない。もし実現したら、次回は(東京と大阪だけでなく)もっと色々な場所に行きたいな。ありがとう、(日本語で)サヨナ~ラ。
取材・文:奥村裕司

トリビュレーション『ダウン・ビロウ』

2018年2月7日 発売

【CD】¥2,300+税

※日本語解説書封入/歌詞対訳付き

1. ザ・ラメント

2. ナイトバウンド

3. レディ・デス

4. サブテラニア

5. プルガトーリョ

6. クライズ・フロム・ザ・アンダーワールド

7. ラクリモーサ

8. ザ・ワールド

9. ヒア・ビー・ドラゴンズ

<ボーナストラック>

10. カム・ビカム・トゥ・ビー 

11. ワン・ハンドレッド・イヤーズ

12. ペイ・ザ・マン
【メンバー】

ヨハンネス・アンダーソン(ベース/ヴォーカル)

アダム・サース(ギター)

ヨナタン・フルテン(ギター)

オスカー・リアンダー(ドラムス)

アーティスト

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

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