BURNOUT SYNDROMES:熊谷和海が語る文
學と音楽

青春文學ロックバンド・BURNOUT SYNDROMES(バーンアウト・シンドロームズ)が、2018年2月7日に3rdシングル『花一匁』(はないちもんめ)をリリースする。本作は、TV東京系で1月より放送されているテレビ東京系アニメ「銀魂」銀ノ魂篇エンディングテーマに起用されている。

1st、2ndシングルともにTVアニメのオープニングに起用され注目を集めてきたBURNOUT SYNDROMESだが、今回の起用で、DOES、Base Ball BearSPYAIRBLUE ENCOUNTOKAMOTO’S、RIZEなど、錚々たるアーティストが楽曲提供してきた一大シリーズに名前を連ねることになった。

そこで本記事では、BURNOUT SYNDROMESとはどんなバンドなのかをあらためて整理するとともに、中心人物である熊谷和海にメールインタビューを行い、その”文學的”なルーツに迫ることにした。
(BURNOUT SYNDROMES『花一匁』SPOT映像)

BURNOUT SYNDROMES(バーンアウト・シ
ンドロームズ)とは?

BURNOUT SYNDROMESは、関西発のスリーピースバンド。略称は「バーンアウト」。
ミニアルバム『文學少女』以来、いしわたり淳治がプロデュースを手がけている。メンバーは、熊谷和海(Vo. & Gt. くまがい・かずうみ)、石川大裕(Ba. & Cho. いしかわ・たいゆう)、廣瀬拓哉(Dr. & Cho. ひろせ・たくや)。

2005年、熊谷と石川が同じ中学に入学。石川がゲームセンターで廣瀬をスカウトし、結成。2010年、TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK』主催イベント『閃光ライオット』で準グランプリを獲得。2016年メジャーデビュー。VIVA LA ROCKやCOUNTDOWN JAPANなど数々の大型フェスに出演。

メジャー1stシングル『FLY HIGH!!』、2nd『ヒカリアレ』は、ともにTVアニメ『ハイキュー!!』のオープニングテーマに選出。『ハイキュー!!』アニメシリーズのオープニングテーマを同じアーティストが担当するのは同番組史上初だった。両作ともにiTunesロックチャートで1位を獲得。

2016年11月リリースの1stアルバム『檸檬』はCDで、約一万枚を売り上げるスマッシュヒットを記録。2018年2月7日にはシングル『花一匁』(はないちもんめ)をリリースする。本作は、前作『ハイスコアガール』(デジタル限定配信)より半年ぶり、CDシングルとしては『ヒカリアレ』より1年4ヶ月ぶりの作品となる。
(左:期間生産限定アニメ版 右:通常盤)

では、BURNOUT SYNDROMESの魅力とは何なのだろうか?
たくさんあるが、本記事では3つに絞って紹介する。1つ目は、幅のある音楽性。2つ目は、MVのユニークさ。そして3つ目が、文學的な歌詞だ。

魅力1. 幅のある音楽性

BURNOUT SYNDROMESの曲を初めて聴く人は、まずはその重厚なサウンドとメロディの良さに引き込まれるだろう。音の強さにエモーショナルな歌声が乗り、洗練されていて、かつ泥臭い。NUMBER GIRLSUPERCARASIAN KUNG-FU GENERATIONBUMP OF CHICKEN世代にはドンピシャにハマる音だと言える。

その上で、バーンアウトをバーンアウトたらしめている理由のひとつが、クラシック、フォーク、ヒップホップなど幅広いジャンルからの引用。たとえば『サクラカノン』という曲ではパッヘルベルの『カノン』を引用し、『檸檬』という曲ではモデスト・ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』より『プロムナード』を引用している。こうした他ジャンルの音楽を取り入れることによって、幅の広い音楽性を確立している。

さらには、音楽以外のアート作品を融合・衝突させるところも魅力。歌詞については後述するが、たとえば『数學少女』の「数學と文學と音學の調和」という歌詞などは、その特徴が顕著に現れている。

魅力2. MVの面白さ

(BURNOUT SYNDROMES『ヒカリアレ』MV)

MVにも、BURNOUT SYNDROMESの個性は滲み出ている。『ハイキュー!!』オープニング曲の『ヒカリアレ』では、歌詞をCGや合成ではなくプロジェクターの光で投影したMVが話題になった。

タイポグラフィーにこだわり、MV上に歌詞を載せるアーティストは多いが、光で投影した歌詞を役者の体に浮かび上がらせる手法は珍しい。ちなみに、MVに出演しているのは女優として大活躍している武田玲奈。

また、さらに衝撃的だったのは、ドット絵で構成されたゲーム画面をMVにした『ハイスコアガール』。
(BURNOUT SYNDROMES『ハイスコアガール』MV)

この曲は、熊谷が敬愛する押切蓮介のゲーム・ラブコメ漫画『ハイスコアガール』へのトリビュートソングとして作られたもの。漫画にちなんで、数々の有名ゲームの「伝説のコマンド」や「ふっかつのじゅもん」などが歌詞のモチーフになった、遊び心満載の曲。

ゲーム仕様の特設サイトもオープンし、「音楽」と「ゲーム」という複数ジャンルの融合を見ることができる。
(ハイスコアガール特設サイトより)

魅力3. ”文學”的な歌詞

さて、”青春文學バンド”と言われるように、BURNOUT SYNDROMESの最大の特徴は、その文學的な歌詞だろう。たとえば『文學少女』という曲の歌詞は非常に面白い。
(BURNOUT SYNDROMES『文學少女』MV)

この曲には、川端康成、芥川龍之介、太宰治、梶井基次郎などの古典文学から、村上龍や村上春樹などの現代文学作品まで、名作小説のタイトルやフレーズが数多く引用されている。これほど徹底した引用は音楽作品には珍しく、彼らがいかに文學に強い影響を受けてきたのかがわかる。……いや、たしかに『文學少女』は極端な例かもしれないが、BURNOUT SYNDROMESのほとんどすべての楽曲からは文學の影響を感じることができる。

では、文學とは、文學的であるとは、いったいどういうことだろうか?

この問いに答えることはかなり難しいが、BURNOUT SYNDROMESの音楽と文學性を考える上では、「文学」ではなく「文學」という漢字で表記することへのこだわりについて考えることが有益かもしれない。

彼らが実際に意識しているかどうかは別にして、「文學」という漢字が強調するのは、その歴史性である。

ざっと振り返ってみれば、BURNOUT SYNDROMESが参照する小説は、村上龍や村上春樹などの例外を除けば、「文学」が「文學」と表記されていた頃の古典作品が多い。『人間失格』『蜘蛛の糸』(『新世界方面』収録)、『銀河鉄道の夜』(『プリズム』収録)、『檸檬』(『檸檬』収録)、また間接的には『或るK大生の死』(『文學少女』収録)などなど。

こうした古典作品を積極的に引用することは、文學の歴史に大きな敬意を示していることに等しい。だとしたら、文學の歴史に対する彼らのまなざしが、BURNOUT SYNDROMESの音楽をひもとく鍵になるのではないか? ここを深掘りすれば、彼らの本質が浮かび上がってくるのではないか?

そう考え、BURNOUT SYNDROMESの中心人物で作詞作曲をつとめる熊谷和海に、これまで影響を受けた小説5冊とその理由を聞いた。

次のページは「熊谷和海が影響を受けた5冊」

BURNOUT SYNDROMES:熊谷和海が語る文學と音楽はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

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