【インタビュー】rem time rem time
、Jun Gray Records第四弾の深遠な味
わい「『エピソード』って名のとおり

現在のロックシーンの第一線で活躍している少なくない数のバンドを輩出した東京の、もうひとつのロックタウン八王子を拠点としている5人組rem time rem time。2015年1月の結成から精力的に活動を続けてきた彼らが満を持して、PIZZA OF DEATH RECORDSのレーベル内レーベルJun Gray Recordsから1stフルアルバム『エピソード』をリリースする。
透き通るような表現の中にちゃんと芯もある女性ヴォーカルと、聴けば聴くほど味が出るセンス抜群のバンドサウンド。その組み合わせを“唯一無二”と自負するメンバー達だから、もちろん音楽そのものの魅力で勝負したいと考えているに違いない。だから、なぜ満を持してなのか、その理由は、ここではくどくどと説明しない。しかし、インタビューを読んでいただければ、メンバー達がどんな想いで、アルバムを完成させたかは必ず伝わるはず。それを噛みしめながら、『エピソード』を繰り返し聴いていただければ、そう、味わいはより一層増すことだろう。ついに完成させたアルバムをひっさげ、「2018年は駆け上りたい」と抱負を語るメンバーと、彼らを見守ってきたレーベルプロデューサーJun Grayに話を訊いた。
   ◆   ◆   ◆
■バンドを立て直す

■2017年は必死に動いていた
──2017年はrem time rem timeにとって、どんな1年でしたか?
初鹿:いろいろ思いついたことを、とにかくやってみようっていう怒涛の1年でした。
鈴木:バンドを立て直すところから始めて、それがようやく落ち着いたところと言うか、本当に1年かけて立て直してきてたんですよ。“思いついたことをやってみよう”っていうのも、バンドを立て直すにはそうすることが必要だったからなんです。
初鹿:2016年にいろいろあったんですけど、2017年9月にシングル「プロローグ」を自主でリリースして、ツアーしたのもバンドが止まっていないってことをアピールしたかったからなんです。そのツアーが11月にファイナルを迎えて、やっと今回のアルバムリリースを発表してっていう。
▲1stフルアルバム『エピソード』


──では、『エピソード』の制作は、バンドを立て直しながらだったんですか?
鈴木:制作自体は2016年の暮れには、ほぼ終わっていたんですよ。2016年の暮れに結成メンバーの香森快(G)が急死してしまったんですけど、その前から、前のベースが年内中に抜けることが決まっていて。つまり2017年は、メンバーが2人いない状況からのスタートだったんです。そこから、どう立て直すかってことだったんですけど、メンバーがひとり亡くなっているんで、周りもライヴに誘いづらいっていうのもあり、本数も減っていってしまって。それで、まだ活動を続けているってことをアピールしたいと思って、2017年は必死に動いていたって感じなんです。
──ということは、『エピソード』は、もっと早くリリースする予定だったんですか?
Jun Gray:そうです。Jun Gray Recordsから2017年3月にXero Fictionってバンドをリリースしたんですけど、本当は同じタイミングでリリースしようと思って、2016年にレコーディングを進めていて。香森の死はその最中の出来事だったんです。だから、よくここまで立て直してくれたなっていうのはありますね。
──そういうことだったんですね。バンドを立て直すための活動を、今後につなげることが2018年だと思うんですけど、その第一歩が『エピソード』だと。『エピソード』を聴かせてもらって、じわじわと聴き応えのある作品だと思いました。聴けば聴いた回数だけ、いろいろな発見があって、味わい深さも増すような作品になっていると思うのですが、アルバムの話の前に、rem time rem timeというバンドがどんなふうに始まったのか、まず聞かせてください。結成は2015年の1月だそうですね?
鈴木:はっち(初鹿)は前にやっていたAntiQuesというバンドが活動休止してから、ずっと弾き語りのライヴをやっていたんですけど、彼女がバンドをやらないのはもったいないと思って、「バンドやろうぜ」と声を掛けたのがrem time rem timeの始まりです。その時は俺も含め、全員が他にバンドをやっていて、片手間バンドだったんですよ。でも、やるんだったら、エモだったり、激情ハードコアだったりっていう下地の上に、いい歌を乗せるっていうのをやりたいと思って。曲を作り始めたら段々、いいじゃんってなっていって、本格的に活動するようになったんです。
初鹿:最初は亡くなった香森もいたんですよ。
──じゃあ、初鹿さん、鈴木さん、香森さんの共通点がエモや激情ハードコアだった、と?
初鹿:と言うか、元々、専門学校の同級生で。
鈴木:それぞれに好きな音楽は全然違いましたね。俺がもう一個やっていたのが激情ハードコアバンドだったんですよ。だから、そういうバンドを2人に聴かせたり、逆に歌もののバンドを聴かせてもらったりしながら、やるからには今までいないようなバンドをやりたいね。それがおもしろいんじゃないってところから始めたんです。
▲初鹿利佳(Vo, G)


──歌もののバンドって、たとえば?
初鹿:チャットモンチーのコピバンを高校生の時ずっとやっていたんですよ。あとメレンゲとかLOST IN TIMEとか。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとかELLEGARDENとか、ストレイテナーとか、そのへんも好きでしたし、ハナレグミとか、クラムボンとか、歌が伸び伸びとしているバンドも好きでしたね。
──前にやっていたバンドもそういう感じだったんですか?
初鹿:もうちょっと静かな感じでした。音数も最後のほうは3ピースだったんで、少な目で。最初は香森も一緒にやっていたんですけど、途中で抜けて3人になって、割と静かめな……何て言うんだろうね?
鈴木:まぁ、歌ものかな(笑)。
初鹿:ですね(笑)。
──鈴木さんは激情ハードコアバンドをやっていたそうですが。
鈴木:ずっとエモとか、激情ハードコアとかが好きで、貸しスペースとかスタジオでやるライヴを中心に活動していました。
──どんなバンドが好きだったんですか?
鈴木:日本のバンドで言うとENVYとか、There is a light that never goes outとかが好きでした。レーベルで言ったら、Dischordとか、俺、Ebullitionってレーベルが一番好きなんですけど、ポストハードコアとかハードコアとかが超好きで、ずっと追っていました。パンクシーンも好きで、高校生の時はSnuffy Smileの企画ライヴに行ったり、自分のバンドのライヴにSnuffy Smileのバンドを呼んだりして、ホント、スタジオライヴをやっているバンドが好きみたいな感じでした(笑)。
──じゃあ、はっちさんと組んだバンドではそれとは違うものをやりたい、と?
鈴木:それも含めてですね。歌ものも好きだったんで、それといい具合に合わさったらいいなと思っていました。
──鈴木さんは歌ものでは、どんなバンドが好きだったんですか?
鈴木:ストレイテナーは一緒にね。
初鹿:コピバンやったりね(笑)。
鈴木:メレンゲも好きですし。
初鹿:きのこ帝国
鈴木:ああ、きのこ帝国も好きですね。普通にアイドルも好きですし(笑)。
──このジャンルじゃなきゃダメっていうのは……。
鈴木:全然ないです。自分がカッコいいと思うものなら何でも聴きますね。
■エモや激情ハードコアの影響が濃いから

■そもそも普通の曲にはならないんです
──その後、大房さん、田中さん、福田さんはどんなタイミング、どういうつながりでバンドに加わったんですか?
大房:3人の中では僕が最初で、結成年の10月に入りました。その2ヵ月前に『八王子NOW』という八王子のバンドが集まったコンピレーションアルバムが出たんですけど、その前からrem time rem timeのことが好きで、ライヴをよく見にいっていたんですよ。そのコンピが出た頃からツアーを一緒に回ったり、一緒に飲んだりっていう機会が段々増えてきて、ツアー中だったんですけど、rem time rem timeのドラムが抜けるから「やらない?」と誘われて、二つ返事で「やります」って入ることになりました。はっちさんに関しては、俺が高校生の頃から出ている八王子のライヴハウスMatch Voxのブッカーだったので、お世話になっていたっていうのもあったし。ただ、うり坊さん(鈴木)のことはずっと知らなくて(笑)。
鈴木:俺はライヴハウスにほとんど出ていなかったんで、はっちとは親友で、対バンもしてたけどシーンは全然別って言うか。
初鹿:人見知りだしね(笑)。
大房:この人は誰なんだろう?って。でも、飲んだらメチャメチャ話せる人で。
▲鈴木嵩明(G)


鈴木:そこから飛んで、2017年になるんですけど、2016年に香森が亡くなって、サポートを頼んでいたのが福田君で。彼は元々、はっちが前にやっていたバンドで一緒にツアーを廻っていたんです。香森のことも知っているから、サポートを頼んで、そのままメンバーにならない?と誘いました。
──そして、田中さんが2017年10月に加わった、と。
鈴木:(田中)友彬も元々、はっちと同僚と言うか。
田中:一緒にMatch Voxで働いていたんです。
初鹿:PAと照明を担当していたんですよ。
鈴木:前のベースが抜けるタイミングで誘ってって感じですね。
大房:今のメンバーは八王子で一緒にやってきた、すごく仲良かった人達が集まっているんです。
──そこが大事だったんですか?
鈴木:そうなんですよ。メンバーが亡くなるって、けっこう重いじゃないですか。香森のことも知っていて、俺達の状況もわかっている人じゃないと、一緒にバンドはできないって、福田君と友彬を誘ったんです。
──福田さんと田中さんは、助けてあげなきゃと言うか、力を貸さなきゃという気持ちもあったわけですか?
田中:そうですね。
福田:最初はサポートだけのつもりだったんですけど、いろいろやってきた中で「メンバーとしてやってほしい」って言ってもらえたのがうれしかったっていうのもあるし、自分も彼らのために何かしたいっていうのもあったし。
▲福田昌義(G)


──ところで、3人はどんな音楽を聴いてきたんですか?
田中:完全にバラバラですよ。
大房:僕はJ-POPのバンドばかり聴いてました。
初鹿:ラウドのバンドやってたじゃん?
大房:それは、その時たまたま好きだったんですよ。
鈴木:ダカダカダカって(笑)。
大房:いいんですよ、それは(照)。
初鹿:高校生の時だっけ?
大房:いや、違います違います。専門学生の時に。
鈴木:いいじゃん。好きなら好きって言えば(笑)。
大房:いや、今考えるとなんでやってたんだろうって思うから(笑)。元々、Mr. Childrenとか、スピッツとか、サザンオールスターズとか、親が聴いていた影響でずっと好きだったんですけど、高校生になったときにバンドっていうものを意識するようになって、the band apartとか、UNCHAINとか、WRONG SCALEとか、そっちに走って。rem time rem timeの前にやっていたバンドは電子楽器を使っていたんですよ。その影響でエレクトリックパンクって言うんですかね。80kidz とか、DE DE MOUSEとかも聴き始めてからのrem timerem timeなんです。
──田中さんは?
田中:中学でバンドを始めたんですけど、その時はメロコアでしたね。NICOTINEHi-STANDARDが好きでした。20歳になった頃からアメリカのハードロックも聴きはじめて。ボン・ジョヴィとか、ニッケルバックとか。フー・ファイターズも好きでした。そこらへんから幅広く聴くようになりました。
福田:僕も最初はメロコアでした。Hi-STANDARDがめちゃめちゃ好きでした。そこからラウド……スリップノットとか、KORNとか、超好きな時代があって、そこからさらにポストロックっていうジャンルに出会ったとき、こういう音楽があるんだって。それこそビョークとか、レディオヘッドとか。元々、J-POPって言うか、歌ものも好きだったんで、歌ものの中に、そういうジャンルを取り込んだらおもしろいんじゃないかと思うようになりました。今はうり坊ちゃんと一緒で、カッコいいと思ったらどんなジャンルでも、たとえそれがアイドルでも聴きます。
鈴木:アイドル、今、カッコいいもんね。
──そういうメンバーそれぞれの幅広いバックグラウンドは、今、曲やバンドサウンドを作るうえで役に立っていますか?
鈴木:それはかなりありますね。エモや激情ハードコアの影響が濃いから、そもそも普通の曲にはならないんですけど、そこにさらに、各々のバックグラウンドが反映されて、よりおもしろいものになっているっていうのはあると思います。
──曲作りはどんなふうに?
初鹿:大体、うり坊か私がフレーズを持ってきて、そこから楽器陣が広げて、それに私がメロディーをつけるってやり方が多いですね。
──3人はどんなことを考えながら、2人が持ってきたアイディアを広げていくんですか?
鈴木:それ聞きたいです(笑)。
大房:俺、オケに対して足しちゃう人間なんですよ、アプローチ的に。このバンドに入ってから引き算を教えてもらいました(笑)。そのうえで、自分のバックグラウンドからこういうフレーズがあるって、引きつつ足しつつ繰り返してってみたいなことが多いです。
鈴木:元々ピコピコ系だから足しちゃうクセがあるって言うか。
大房:前のバンドでは4つ打ちのうえに、さらに足していく作業が多かったので。逆に今はずっと引き算です(笑)。
田中:俺は極力、歌の邪魔にならないようにすることがこのバンドでは大切かなって。あとは、ベースなんで、リズムとメロディーをつなぐ役目だと思って、そこをうまいことやるように意識しています。
■透明感がすごい

■もうスッケスケじゃないですか
──鈴木さんと福田さんのギターのアンサンブルって、歌とは別の、もうひとつの聴きどころだと思うんですけど。
鈴木:そうですね。そこはかなりタイトに。うちはギター3本なので、まず俺ともう1人のギターで大体作って、そこにはっちのギターを足して、引き算して、歌が入って、さらに引き算してっていう感じで作っています。もちろん、歌の邪魔にならないようなギターは意識しています。絶対、歌を立てなきゃいけないっていうのが、このバンドの曲作りの大前提のルールとしてあって、逆に言えば、それさえ守れば何をしてもいいんですけど、そこはかなり詰めていますね。
初鹿:今回のアルバムはほとんど、前のギターと考えたフレーズなんですよ。
鈴木:香森とは2人で何回もスタジオに入って、細部まで……この音がなきゃ曲が成立しないっていうものしか入れていない。それぐらい削ぎ落として、お互いにちゃんと混ざるように作っています。もちろん、曲によってアプローチは全然違って、たとえば歌とギターが同時にふたつの主旋律を奏でる曲もあるんですけど、基本的には歌を邪魔しない。それと速弾きはしない(笑)。一つ一つのフレーズで、じわじわと聴かせることを意識しています。
▲田中友彬(B)


──歌を邪魔しないことが前提というのは、それだけ初鹿さんの歌が魅力的だからということだと思うのですが、彼女の歌のどんなところに魅力を感じているんですか?
鈴木:聴いたら一発で(彼女の魅力が)わかると思うんですけど、まず歌声と言うか、声質だけで言ったら透明感がすごい。もうスッケスケじゃないですか(笑)。
初鹿:スッケスケって、なんかイヤな言い方だな(笑)。
鈴木:ごめんごめん。もちろん、元々、声は好きだったんですけど、俺が一番好きなのは、はっちがつけるメロディー。すごいふわっとしているけど、ちゃんと芯がある。めちゃめちゃいいんですよね(笑)。
初鹿:イエイ(笑)!
鈴木:弾き語りで活動していた時は、純粋にファンとして聴いていましたね。このバンドを始めた時にJunさんから「弾き語りの曲もバンドでやれば?」って言われたんですけど、俺は「絶対やりたくない」と言ったんです。それは弾き語りとして完成されていたから、ファンとして汚したくなかったんですよ、俺は。
Jun Gray:違うアレンジでってことでしょ?
鈴木:そうですそうです。それぐらいパーフェクトな歌だったので、俺はもう、絶対手をつけたくないから、やりませんって断ったんです。弾き語りや歌もののバンドのライヴ、けっこう見てますけど、いまだにはっちの歌を超える人はいないから、(このバンドを)やっているんだろうなって思ってます。
初鹿:ヒグチアイは大丈夫(笑)?
鈴木:めっちゃ良かったけどね。なんでヒグチアイを出す(笑)? いや、めっちゃいい人はいるけど、それでもやっぱり一番いいんじゃない?メロディーが。
初鹿:ありがとうございます。
鈴木:ちょっとぉ(照)。何だろうね、メンバーを褒めるこの気持ち悪い感じは。日本酒をいっぱい飲んでからやるやつだよね。翌日、覚えていないっていうやつでしょ(笑)。
──ははは(笑)。普段、そんなことは言わないですもんね、きっと。
鈴木:言わないですね(笑)。でも、歌に関しては「信頼している」っていつも言っているんで。こっちのオケがどんなものでも、ちゃんと歌をつけてくるって言うか、いいメロディーを乗せてくるんですよ。そこに関しては、本当に信用しているし、はっちも何でも持ってこいって感じだし、じゃあ、俺らも任せるわって。だからこそ成り立っているところはあるかもしれないですね。バンドとして。
▲大房雄太(Dr)


──Junさんはrem time rem timeのどんなところを見込んだんですか?
Jun Gray:最初ははっちの声でした。自分のレーベルから出したいアーティストを探しているとき、紹介してもらって、前にやっていたAntiQuesのミュージックビデオを見た瞬間、声にヤラれたんです。歌詞の世界観も良かったし。rem time rem timeの曲は、そんなはっちの歌が軸になっているんだけど、2人のギターの絡みをはじめ、楽器隊もそれに負けないくらい抜群にセンスがいい。好きですねぇ(笑)。俺、そんなにエモって詳しくないんですよ。畑が違うから。だけど、彼らが出す音は、誰でも聴けるキャッチーさを持っている。そこは強みだと思うし、そこは計算しているところでもあるんだろうとは思うけど。
鈴木:そこはかなり計算していると言うか、狙っていると言うか。エモとか激情ハードコアとかって歌もそっち寄りだったら、いくらメロディーが良くたって、それでしかなくなっちゃうじゃないですか。そういうものに、キャッチーないいメロディーが乗っているっていうのを、俺は知らないと言うか、出会ったことがなかったんで、それをどうしてもやりたかったんです。
──さて今回、『エピソード』というアルバムを完成させて、どんな手応えを感じていますか?
初鹿:やっとできたっていう、それしかないです。マスタリングの時に5曲目ぐらいで私、泣いちゃって。音を確認しなきゃいけないのにまともに聴けませんでした(笑)。
鈴木:「あとはお願い」って部屋から出ていって、え、マスタリングなんだけどって(笑)。
初鹿:すべてが詰まったアルバムだと思います。1曲1曲聴き直しながら、この曲こうだったなとか、こういう意図で作ったなとか、この時、ツアーに行ったなとか、ツアーで歌詞を間違えちゃったなとか、いろいろな思い出があります。本当に『エピソード』って、その名の通りのアルバムができたと思いますね。うちらを知っているバンドマンが聴いたら、いろいろなものが詰まっていることをわかってくれると思うし、初めての人でも、わかってもらえるアルバムだと思うんですよ。うちらのやりたいことと言うか、いろいろなジャンルの曲が入っているけど、軸にはちゃんとうちらの音楽があるってことを。今のうちらも、今までのうちらも入っている、しっかりギュッと詰まった10曲になったと思います。
──アルバムを作るにあたって、今のrem time rem timeと、そこに至るまでのすべてを詰め込んだものにしようという大きなテーマがあったわけですね?
鈴木:最初に作った「遠くへ」から、最新の「yellow」まで入っているんで、確かに全部詰め込もうというのはあったかもしれないです。
初鹿:気持ち的にはべストみたいな感じですね。
鈴木:そうそうそう!
Jun Gray:どのバンドでも1stアルバムって、それまでライヴを積み重ねてきたベスト感が出ると思うんだけど、『エピソード』はより一層ね。この人達はいろいろなことを乗り越えて、ここまでやっと来てくれたから。バンドができてから今までの想いが詰め込まれているっていう気がします。
■手応えしかないと言うか

■今、バンドがめっちゃ強い状態
──最新曲の「yellow」はたぶん、前のギタリストのことを歌ったものですよね?
初鹿:そうですね。これは絶対入れたかったです。
鈴木:重すぎるかなとも思ったんですが、現在の5人で初めて作った曲でもあったんで、そういう曲があるのに入っていないのは不自然だよねっていうのはありました。それも含めてrem time rem timeなんで。
──現在のメンバーでレコーディングしたのは……。
鈴木:「yellow」だけです。
──大房さんは……。
大房:全曲、叩いています。
鈴木:ベースは「yellow」以外は前のベーシストで、ギターは香森と福田君が半々ですね。
Jun Gray:その意味では、香森が残していったものもでかいよね。
▲Jun Gray


──歌詞は初鹿さん?
初鹿:はい、全曲。
──日々の生活の中で感じる葛藤や、それに対する自問自答が主なテーマになっていると思うんですけど、歌詞はどんなところから?
初鹿:曲を聴いて、まずイメージが湧くんですよ。たとえば朝とか、夜とか、季節は何とか。そこから考えていって、この曲はやさしいからそういう歌詞をつけたいとか、この曲は切ないから哀しいから、冬のイメージで書こうとか。ひとつ軸が頭の中にできると、わーって書ける時があって、「いつか」は八王子RIPSというライヴハウスで働いていたPAの人に書いた曲なんですけど、その人に書こうと思った瞬間、ぶわーって全部書けたんですよ。
鈴木:そういう誰かに向けた曲もあるんですよ。
初鹿:けっこうありますね。「自分とジブン」はメンバーにムカついたときに書いた曲です(笑)。“もっとちゃんとしろよ、おまえら”っていう気持ちを書きました。
鈴木:その曲ができて、スタジオで合わせたとき、「どう?わかる? 歌詞を聴いて何とも思わなかったの? そういうところだよ!」って、メンバーにブチ切れてたもんね(笑)。
初鹿:けっこうそういうのが詰まってますね。1曲目の「汽笛を鳴らして」は働いていた八王子Match Voxをやめるとき、Match Voxのみんなや八王子のバンド達に向けて書いた曲です。全曲そういうのがあります。そうしないとたぶん書けない。弾き語りから始まる「たった一言で」は、誰かに言われた一言を引きずっている自分って何なんだろうって思いながら書きました。
鈴木:歌詞が上がってきたとき、たまにヒヤッとすることがある(笑)。あ、自分も気を付けないとなって。
初鹿:ははは(笑)。
──メンバーに対する鬱憤を晴らすことが、歌詞を書くモチベーションになっているわけではないんですよね(笑)?
初鹿:そうではないです。そう考えちゃう自分って何なんだろうっていうのもあるし。
▲Jun Gray Records


──歌と歌詞が大きな魅力であると同時に、それだけ強い歌に負けないバンドサウンドも聴きどころだと思うのですが、歌を邪魔せずに、それに負けないバンドサウンドにするサジ加減はどんなふうに?
鈴木:そのバランスは歌が取ってくれているのかな。こっちはやりたい放題やったやつを送って、その合間を縫って、歌をつけているというイメージがあります。もちろん歌を邪魔しているところは直していきますけど。
──初鹿さんは演奏に対して負けないようにと意識しているんですか?
初鹿:負けないようにと言うよりは、上に乗せるって感じなんですよ。歌が演奏と一緒という感じにならないようにしています。そのうえでキャッチーでわかりやすいメロディーをつけたい。ギターフレーズがいいから、それを邪魔しないようにと言うか、ホント、上に乗っかる感じなんです。
鈴木:うまく乗りこなしている感じだよね。
初鹿:逆に、なんでこの歌、入っているんだろうぐらいの感じを私はやりたいですね。この演奏なのになんでこの歌なの?みたいな。ありきたりなメロディーは作りたくないんで、そこはいつも意識しています。たとえば、「sleepy record」がそうですね。
鈴木:「sleepy record」は俺がエモい曲をやりたいってなりすぎちゃって、作ってる時は、これはさすがに歌をつけられないだろうってなったんですけど、1回投げてみたら、上手に乗りこなしてきて、すごいって思いました。歌が入ることを考えて作ってはいるんですけど、ギターはキラーフレーズにしたいからフレーズ作りはかなり練っています。ただ、キラーフレーズってたぶん、カッコいいだけだと耳に残らないと思う。ちょっとダサいぐらいが一番残るんですよ。だから、ギターもよくよく聴くとちょっとダサいなってフレーズがあると思うんです。それをちょこちょこ入れていると言うか、それをうまくギター2本でやって隠していると言うか、でも、耳に残っているでしょっていうのはかなり意識しています。その上にいい歌が乗ると、より隠れるから。さっき言ってもらった、「聴くたびいろいろな発見がある」っていうのは、俺の狙い通りすぎてガッツポーズなんです(笑)。
──大房さんは引き算するフレーズ作りを今回、徹底してやったのでは?
大房:これがなくなったらもうダメです、ってところまで引き算する作業を金物(シンバル)一個に対してもやりました。
鈴木:一音一音、意味のないことはやってほしくない。なんでそのフレーズを入れたの?と聞かれたとき、ちゃんと意味を説明できるものじゃないと俺はイヤだから、そこまで磨けってことは常にメンバーに言っているんですよ。
大房:必要最小限の一発で説得力や意味を持たせるという自分の中での考えが今回、ものすごく深まったので、その意味ではものすごく成長できた10曲でした。
──田中さんは「yellow」をレコーディングするうえでは、どんなアプローチで?
田中:ノリが独特なんですよ。それを出すのが大変でした。ギターも同じことをやっているんですけど、若干違う。そこを嚙合わせるのが難しくて、なおかつドラムも変わったフレーズなので、そこの接着剤になることもしなきゃいけないと思いました。言葉では伝わらないと思うので、そこはホント、聴いてくださいとしか言いようがないです(笑)。
──ライヴを重ねながら、このバンドにふさわしいフレースやプレイが身についてきたところもあるのでは?
田中:「yellow」は、まさにそうでした。こういうことをやったら馴染みそうだというフレーズを入れてみたんですよ。
──福田さんと鈴木さんのギターは、どっちがリードで、どっちがリズムというのは決まっていないんですよね?
鈴木:決めてないです。どっちも攻める時もあるし、どっちが前に出て、どっちが下がるかは、曲によって違うんですよ。
福田:うり坊ちゃんがやりたいことに対して、俺はその中で最大限のことをやろうと考えています。彼がこう来るなら、俺はこう行こうって常に意識しながら。でも、ギタリストとして闘争心もあるから(笑)、そのうえで存在感を出すようにはしています。ギターが3人いるから、音数が必要以上に多くならないように抜いたうえで、歌もいいけど、ギターのメロディーもすげえいいって言われるのが理想なのかな。なおかつ、前のギターのフレーズも生かしつつ、メンバーは変わったけど、昔の面影も残っているよねって思ってもらえるようなものは意識しています。
鈴木:俺はすごくやりやすいです。だから、福田君には、ああしてほしい、こうしてほしいとはあまり言わないですね。
──さて、そんなアルバムをひっさげ、2018年はどんな活動をしていこうと?
初鹿:リリースツアーが3月2日の下北沢SHELTERから始まって、ファイナルが7月にあるんですけど、その後にもすぐ音源も出したいと思っていて。
鈴木:何も決めてないんですけど、すぐにバーンと出して、2018年は1年遅れた分を取り戻すと言うか、駆け上がりたいです。今、メンバー5人の気持ちもしっかりまとまっているんですよ。元々、知った同士っていうのもあると思うんですけど、手応えしかないと言うか、今、バンドがめっちゃ強い状態だと思えるので、2018年はさらに強くなりたいと思っています。
取材・文◎山口智男
■1stフルアルバム『エピソード』


2018年1月24日リリース

PZCJ-8 ¥2500(wtihout tax)

01.汽笛を鳴らして

02.yellow

03.empty

04.たった一言で

05.いつか

06.自分とジブン

07.pool

08.雨と金木犀

09.遠くへ

10.sleepy record
■1stフルアルバム『エピソード』リリース記念ミニライブ&サイン会


2018年1月28日(日) 14:00~

場所:タワーレコード八王子店

▼参加方法

タワーレコード八王子店、町田店、横浜ビブレ店、吉祥寺店、立川立飛店にて、1月24日発売(1/23入荷)のrem time rem timeアルバム『エピソード』購入者(予約者優先)より、先着順でサイン会参加券を差し上げます。サイン会参加券をお持ちの方は、ミニライブ終了後にサイン会にご参加いただけます。

※イベント観覧はフリーです(どなたでもご観覧いただけます)。

■<rem time rem time「エピソードツアー」>


3月02日(金) 下北沢SHELTER

3月10日(土) 小田原姿麗人

3月11日(日) 大阪村CLAPPER

3月21日(水・祝) 柏DOMe

3月24日(土) 名古屋Party'z

3月25日(日) 奈良NEVER LAND

4月01日(日) 横浜F.A.D

4月02日(月) 松本ALECX

4月07日(土) 三重 鈴鹿ANSWER

4月08日(日) 静岡UMBER

4月14日(土) 京都GATTACA

4月15日(日) 高松TOO NICE

4月21日(日) 長野 伊那GRAM HOUSE

4月22日(日) 吉祥寺WARP

5月03日(木) 京都GROWLY

5月10日(木) 八王子RIPS

5月26日(土) 八戸ROXX

5月27日(日) 盛岡club change

5月31日(木) 府中Flight

6月02日(土) 甲府KAZOOHALL

6月09日(土) 新潟Live Hall GOLDENPIGS -RED STAGE-

6月10日(日) いわきclub SONIC

6月23日(土) 名古屋RADHALL

6月24日(日) 大阪Pangea

【ツアーファイナル】

7月06日(金) 新代田FEVER

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