パッセンジャーズ、新メンバーによる
奇跡の生まれ変わり

元パッセンジャーズのギタリスト:森永淳哉のインタビュー記事がBARKSに掲載されたのが2015年のことだった(
)。この記事が反響を呼び、森永の元にも反応がいくつも届いたようだ。そして、これを機にパッセンジャーズが再結成へと動き出した。
森永とボーカルの大野美樹が25年ぶりに顔を合わせ、ベース(元ブロンクスの下田あきのり)とドラムはサポートメンバーという編成でライブを行ったのは2016年11月27日、渋谷のライヴハウス七面鳥だった。この日の対バンは元Jaco:necoのデビルのバンドDevilDalipop。実はデビルと大野は当時から仲が良く、現在も親交が続いているという関係から、ハコのコーディネートはデビルが協力したようだ。大野のボーカルはブランクの影響を多少感じさせたものの、暴力的なほどの激しさは健在で、その魅力は(そのビジュアルも含めて)驚くほど失われていなかった。
となれば、継続しての活動を期待してしまうのがファンの心理というものだが、現実はそう上手くはいかないものだ。活動方針を巡って森永と大野は対立。あっさり空中分解してしまう。なんともバンドマンらしいというか、25年経っても変わらないんだなーと妙な感慨に耽ってしまうが、残念ながら、パッセンジャーズという名前はここに封印されたということになってしまった。
しかし、森永はパッセンジャーズへの思いが再燃したのか、それとも何か思惑があるのか、ある企画をたてる。それが2017年12月16日、西川口Rで行われた「森永淳哉プレゼンツ PASSENGERS COVER LIVE “PASS-PORT”」だった。要するに、パッセンジャーズのトリビュート・ライブなのだが、ほとんどの曲で森永自身がギターを弾いてしまうという、本人によるトリビュートというなかなか珍しい形のライブとなった。“PASS-PORT”というのは、パッセンジャーズのファンクラブの名前。それを持ってくるとはなかなか粋なセンスだ。手前ミソながら、僕もギターを少し弾かせていただいた。
超満員のお客さんで大盛況となったこのライブは、パッセンジャーズの熱狂的なファンだというラジオ・ディレクターによって録音され、ラジオでも放送されることになった(1月8日、愛知北FM(UNITED NORTH FM)にて「PASS-PORT/6人のディーバ」として放送)。そのタイトルからも分かるように、シンガーには6人の女性たちが抜擢された。森永の地元の音楽仲間がいれば、バンドのメンバーが連れてきたシンガーもいる。LISA GOはかつて大野抜きのパッセンジャーズでサポートを担当したシンガーだ。
LISA GOが歌ったのは、パッセンジャーズのジャジーでブルージーな側面を代表する曲、「Ragtime Night」と「1年に1度だけのカーニバル」。そのやさぐれたボーカルは大野とはまた違う魅力を映し出していた。そして3曲目は知らない曲だった。最初、LISA GOの持ち歌かと思ったが、曲が進むにつれ、どこかで聴いたことがあるような気がしてきた。そう、これはパッセンジャーズの未発表曲「Rail Road」だったのだ。実は、パッセンジャーズには解散前に録りためた新曲がいくつもあり、それらは公式には未発表のままになっているが、いくつかの音源はYoutubeで聴くことができる。森永の粋な計らいというか、今考えれば、本気度の表れだったのかもしれない。
実は、森永はツイッターでこのライブで歌いたいシンガーを一般公募もしていた。それを見て応募してきたのがリッキーこと力武亜矢。彼女もまた熱狂的なパッセンジャーズ・ファンであり、パッセンジャーズのメンバーと一緒に演奏できるかもしれないという程度の気持ちで森永と連絡を取ったようだった。
リッキーはこの日のライブのトリを飾った。普段はハードロック系のバンドで歌っているだけあって、ステージングはこなれたものだし、何よりも”収まり”がいい気がした。そこにいることが自然に見えたのだ。打ち上げの席で僕は言った。「もうこのメンバーでバンド作っちゃえばいいじゃないですか」。正確には、もう作られていた。森永もやはり同じようなものを感じていたのだろうか。当日出演したメンバーの中からベーシストの山尾秀司とドラマーの南雲直樹を誘い、既に新バンドの結成が決まっていたのだ。
この時まだ決まっていなかったバンド名はRicky & The Gypsy Blueとなった。その後ろには(Passengers Reunion)と但し書きが付いている。そう、これはパッセンジャーズの流れを引き継いだ新バンド。パッセンジャーズ時代の曲を演奏しながら新曲も作り、新しいバンドとして進化を遂げていくのだろう。
パッセンジャーズは1987年にデビューしているが、その音楽性は当時は完全に理解されていたとは言い難い。プリテンダーズ的なキャッチーでコンパクトな楽曲。土臭く乾いたサウンド。情感むき出しのボーカル。程よくツボをついたギターワーク。ある意味、パブロック的だが、ハードロック的でもあり、ハイブリッドで洗練された音楽を作っていた。ようやくロックがお茶の間に浸透し、バンドブーム~イカ天の狂騒へと向かおうとしているシーンの中で、この音楽性は通好みだったし、レベルが高すぎたのかもしれない。その楽曲を今のシーンに再び問うことは意味があると思う。日本のロックシーンは成熟したが、昔ながらのロックと今のロックの間には断絶がある。懐かしいか新しいかしかないロックではなく、懐かしくも新しいロック。それができるのがこのバンドなのではないかという気がするのだ。
そのお披露目は1月21日、浦和ナルシス。新しいメンバーによって生まれ変わったパッセンジャーズのデビューステージだ。
1つのインタビュー記事がここまでの動きを作るきっかけになったことは自分でも驚いたが、これによってかつての熱心なファンがたくさん掘り起こされたことは嬉しかった。まだまだ求めている人はたくさんいるのだ。彼らの動きは今後も継続して追っていこうと思う。
文:池上尚志/ライター
Ricky and The Gypsy Blue ( Passengers reunion )

Vo:Ricky (力武亜矢)

Gt:森永淳哉

Ba : Shuji (山尾秀司)

Dr:Naoki (南雲直樹)

<Narciss PRESENTS「Sky is the limi
t!>

2018年1月21日(日)

@浦和ナルシス

open16:00 / start16:30

前売\3.000 / 当日\3.500

出演:Ricky and The Gypsy Blue (Passengers reunion)

※出演は19:30頃の予定(出番は前後する可能性があります)

EITA &The Super Rockets / gaizao / VEGION / 404 / プラチナ / 眼鏡ギタァ

【チケット】ナルシス予約[TEL 0488248771/MAIL narciss@zmf.co.jp バンド予約 / 当日券

※予約引換えは当日のOPEN30分前より

[問]ナルシス TEL 048-824-8771 [http://www.zmf.co.jp]

【会場アクセス】JR浦和駅西口:徒歩4分 浦和駅西口⇒県庁通り⇒左手「松屋」を過ぎてメガネ「和真」を左折⇒70Mほど先の右手「埼浴会館ビルB1」

http://http://zmf.co.jp/access/

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