Zepp Tokyoでのツアーファイナルが明
示した“いまのフレデリックがすごい
”理由

11月11日の岡山公演を皮切りに全国12か所を回った秋の全国ツアー『フレデリズムツアー2017~ぼくらのTOGENKYO~』が12月21日、即日ソールドアウトとなったZepp Tokyoで大団円を迎えた。
その前哨戦として、東名阪のCLUB QUATTROをソールドアウトにした10月の『フレデリズムツアー2017 QUATTRO編~僕のTOGENKYO~』。筆者が見ることができた、その東京公演では中盤に一度、やや長めのMCを挟んだけだけで、2時間のライブをほぼノンストップで演奏してみせ、フレデリックのライブ・バンドとしての底力を見せつけた。それは「音楽そのもので勝負したい!」という思いから、40分のステージをノンストップで演奏するという、彼らが今年の夏フェスで取り組んできたチャレンジを、2時間という長尺のライブに発展させたものだった。そんな挑戦は前述した底力に加え、フレデリックがライブ映えする、いわゆるキラー・チューンをいくつも持っていることも改めてアピールする、とても見応えがあるものになったのだった。
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
そんな渋谷CLUB QUATTRO公演を見たあと、現在のバンドの勢いを物語るように、その時すでにソールドアウトになっていたZepp Tokyo公演に対する期待とともに、これだけのライブを見せられた直後だ、ちょっとやそっとのことじゃ驚かないぞというハードルもぐグーンと上がった。が、同時に今のフレデリックなら大丈夫。きっと、これ以上にすごいライブ――それがどんなものか見当もつかなかったが、彼らはきっと見せてくれるに違いないという確信に近い予感もあった。
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
今年5月、それまでサポートだった高橋武(Dr)を正式メンバーに迎えたことについて、「バンドとしてできる幅も広がったし、個々のスキルも格段に上がったし、そのきっかけを与えてくれたのが武ちゃんだったという瞬間が多かった。正式に加わってもらってから、それを改めて感じています」と三原康司(Ba/ Cho)は言っていたが、その言葉を裏付けるように10月18日にリリースしたミニ・アルバム『TOGENKYO』は、新たなサウンド・アプローチがフレデリックの新しい時代の始まりを印象づけるとともに、バンドはここからまだまだ進化していけると期待させるものだった。ならば、ライブだって――。
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
果たして、彼らのキラー・チューンのひとつである「オンリーワンダー」で始まった、今回のZepp Tokyo公演は、ライブにおけるさらなる進化を見せつけるものとなった。いきなりシンガロングが起こった、その「オンリーワンダー」から、イントロを聴いただけで観客が歓声を上げた「KITAKU BEATS」につなげ、そこから三原健司(Vo/Gt)がギターをカッティングしたまま、バンドの演奏が「オワラセナイト」になだれこむ――というふうに、この日のライブもまた、曲の頭、あるいは演奏中に健司が客席を煽るような言葉を投げかけはしたが、MCらしいMCは序盤と「ソールドアウトすることができました」と観客に報告、感謝を述べた中盤に1回ずつ挟んだだけで、バンドの演奏は、ほとんど止まらずに進んでいった。
フレデリック 撮影=渡邉一生
その中で、せつなさを疾走する演奏に乗せた「ミッドナイトグライダー」、ハンドマイクで歌う健司がダイナミックなアクションを、そして赤頭隆児(Gt)のバリバリと鳴るギター・ソロを演奏に加え、彼らにはちょっと意外な攻撃的な一面を見せた「まちがいさがしの国」、ニュー・ウェーヴなファンク・サウンドに観客が体を心地よさそうに横に揺らした「スローリーダンス」といった曲の数々が、“クセになるダンス・ビート”というこれまで言われてきた一言には収まりきらない新たな魅力を持つ曲が、彼らのレパートリーに加わったことをアピール。また、ノンストップで曲と曲をつなげる際に聴かせるジャムっぽい演奏や、タイトなプレイで演奏を支えると同時に巧みなフレーズを織り交ぜ、高橋が作り出す心地いいグルーヴをしっかりと受け止めながら、隆児と康司が見せた熱いソロの応酬からもフレデリックがライブバンドとして、いまだ成長を続けていることは明らかだった。
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
しかし、この日のライブの見どころはそれだけではなかったところに大きな意味がある。彼らはこの日、照明、映像、特殊効果も使いながら、自分達のパフォーマンスを見せて、魅せるものに進化させたのだった。それはニュー・ウェーヴ風のセットにも表れていたが、序盤の4曲で一気に盛り上げたあと、「TOGENKYOへようこそ」と健司が言ってから、演奏した「うわさのケムリの女の子」でメンバーの姿を隠してしまうほどの大量のスモークが、スタンディングの1階フロアにもわーっと噴き出した時は度肝を抜かれたし、そこからの中盤の流れではレーザービームやミラーボールはもちろん、ステージにサイケな映像を重ねたり、演奏している自分達の姿を背後からとらえた映像をバックドロップに映し出したりながら、幻惑的な景色を作り出していった。
フレデリック 撮影=渡邉一生
ライブバンドとして演奏には自信がある。じゃあ、それをしっかりと見せたうえで、単に生身のバンドの姿を見せるだけで終わらずに観客を別世界に連れていけるようなステージにしたい――聴覚と視覚の両方を刺激するパフォーマンスからは、そんな思いが窺えたが、ひょっとしたら、そんな演出は来年4月30日に神戸ワールド記念ホールで開催するフレデリックにとって初のアリーナ公演を見据えたものだったのかもしれない……なんて思ったりも。そんなパフォーマンスに対して、観客も手を振り、手を叩き、飛び跳ね、声を上げながら精一杯応えていた。そんな客席を眺めながら、「いい景色ですね」と健司は満面の笑みを浮かべた。
「4人になったフレデリック、最高だと思うんですけど、どうですか? 今、人生最高の瞬間、更新しています」
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
そして、「まだまだ行けますか?!熱を見せてください!」と健司が呼びかけ、「かなしいうれしい」からラストスパートをかける。サビでテンポが倍になる「シンクロック」のアレンジが演奏をさらに加速させ、「リリリピート」「オドループ」といったキラー・チューンの連打に観客の盛り上りが一際大きなものに。そして、「あなた一人一人の力が必要なんです。TOGENKYOを一緒に作りませんか? 全員で作ろうぜ!」と「TOGENKYO」でダメ押しの盛り上げ、「僕らのTOGENKYOはZepp Tokyoにありました!」(健司)と本編最後を締めくくった。
フレデリック 撮影=渡邉一生
「TOGENKYO」を冠に掲げたツアーのファイナルだから、ここで終わってもよかったかもしれない。そこで終わったとしても物足りないと感じる人はいなかっただろう。しかし、「この景色をちゃんと連れていって、全部肯定したうえで自信に変えて、2018年は、やっていきたいと思います」(健司)と宣言したように、このライブをさらなる未来につなげるという意味で、どうしてもアンコールは必要だった。最後の最後を飾ったのは「たりないeye」。演奏する前に「2018年を進めるため、足りない気持ちを曲として、音楽で表そうと(今日は)来ました」と健司は語ったが、つまりフレデリックはバンドとして、まだまだ満たされていないということだ。その思いがバンドをさらに前進させ、成長させる。
10月の東名阪のCLUB QUATTROツアーがそうだったように、このZepp Tokyoワンマンもフレデリックにとって、大きなステップになるに違いない。来年の1月13日と14日には今回の全国ツアーの追加公演(「フレデリズムツアー リリリピート公演~みんなのTOGENKYO」)を行う予定だが、Zepp Tokyoワンマンを見た後だ。もちろん、期待とともにハードルも今回以上に上がっている。しかし、絶対大丈夫。今の彼らならもっとすごい景色を見せに連れて行ってくれるはずだ。

取材・文=山口智男 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)、渡邉一生
フレデリック 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)
ライブ情報
『FREDERHYTHM ARENA 2018 ~KOKYOのTOGENKYO~』
2018年4月30日(月・祝) 神戸ワールド記念ホール
 

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