CIVILIAN・完全燃焼の『eve』ツアーファイナル 2017年12月21日 LIQUID ROOM

CIVILIAN・完全燃焼の『eve』ツアーファイナル 2017年12月21日 LIQUID ROOM

CIVILIAN・完全燃焼の『eve』ツアー
ファイナル 2017年12月21日 LIQUID
ROOM

開演を待ちわびる会場にアルバムの1曲目『eve』が鳴り響く中、メンバーが登場。

最前列とタッチしながら入場する有田清幸(Drums)に続いて純市(Bass)、そしてコヤマヒデカズ(Vocal & Guitar)。北海道から福岡まで全国7カ所を巡って東京に戻ってきた3人からは自信にあふれた神々しいオーラが感じられる。
「2017年12月21日のCIVILIANをはじめます。全国のファンのみなさん、東京へようこそ。」
1曲目は『一般生命論』。“誰かの言葉だけじゃ満たされない僕等は 命の使い道を決められずに彷徨った”。アルバム中でも1、2を争うキラーフレーズが突き刺さる。
続く『残り物の羊』で有田が手拍子をうながすと会場のボルテージは急上昇!
低音部を動き回る純市のベースが気持ちよく響く。
5月の渋谷CLUB QUATRO以来となる東京でのワンマン。ここでCIVILIANとしてのメジャーデビューシングル『愛 / 憎』を演奏。
「一緒に歌おうぜ!」とコヤマが叫ぶ。バスドラを踏みながら立ち上がって客席をあおる有田。
多彩なアイディアでギター1本と思えない音の厚みをつくりだすコヤマのギター、そしてソリッドな音色の純市のベース、ドラマチックに盛り上げる有田の緩急自在なドラムがCIVILIANのサウンドの肝。
3ピースバンドとしての理想的なバランスがCIVILIANにはある。
Lyu:Lyu時代の曲を披露

「ふざけたタイトルの曲」といってコヤマが紹介した『どうでもいい歌』。
「内容は全然どうでもよくないけど、みんなは好きに体を揺らせて楽しんでください。これはそのための歌だから」と言って、MCに客席が笑顔で包まれる。
“「ハロー この声はあなたに届いてますか」って そんな歌をそんな面してよくもまぁ歌えたもんだな”。
爽快な4つ打ちのリズムに乗せた歌詞。改名前のLyu:Lyuからもっとも変わったところは、外に向けたユーモアのセンスだ。
新作からの曲が続いたところでLyu:Lyuの『AM4:00のノック』。2010年の曲だが歌詞の鮮度はまったく落ちていない。
続く『ハロ / ハワユ』はコヤマの変名であるナノウ名義のボカロ曲として世に出た曲だ。CIVILIANのサウンドに乗せて歌われるとはじけるような陽性のオーラに包まれる。
“人生にタイムカードがあるなら終わりの時間は何時なんだろう”。
おおらかな音と孤独な想いのコントラスト。深いところでつながるような感覚があるからコヤマの歌詞は多くの人に愛されるのだろう。
“ラララ・・・”のコーラスで会場がコーラスする様子は、なにかとても美しい光景を目にしているようだった。
アルバム屈指の名曲『あなたのこと』

ここでMC。
「札幌からはじまったワンマン、気づいたら最後の日になっていました」、「ひとつでもみんなにいいものを届けようと思って、全てを届けるつもりで今日は歌います」と語るコヤマ。
「東京を走っている京王線に乗っているときにいつも考えていたこと」を歌詞にしたという『文学少年の憂鬱』。日常の風景を描きながら心の中を深くえぐっていく。
Lyu:Lyuのコアにある部分が今なお変わらずCIVILIANの中にあることを確認するような1曲だ。
アコギに持ち替えて歌う『自室内復讐論』は、Lyu:LyuからCIVILIANに改名して最初に発表した曲のひとつ。ベースとドラムのコンビネーションが冴える。
続けてはじまったのがアルバム屈指の名曲『あなたのこと』。
3人の作曲によるミドルテンポのバラードに乗せて歌われる切ない歌詞。
“自己否定の傘を被って『止まない雨だ』なんて嘯いて 傷付けない自分にしがみ付く”。
自意識の底を掘りつづけたLyu:LyuからCIVILIANになって彼らがどんな音を鳴らすのか?その答えとも言える1曲だ。
“あなたの痛みはあなたのもので 僕の痛みは僕のものだ”。
安易な共感や理解ではないけれど、CIVILIANの音に惹かれる誰もが、鋭利なナイフのような言葉の裏に隠された温かさと優しさを感じている。
涙なしには聴けないサビも含めてこの曲を聴いて救われる人がたくさんいるはず。
“確かにあるような気がしてたんだ 消えない 壊れない 無くならない そんなものが”。
会場が一体になったエモーショナルな演奏は間違いなくこの日のハイライトだった。
「素直に心を開放しよう!」

感動の余韻そのままに、人間同士の関わりを歌う『言わなきゃいけない事』へ。
“もしも心が透明ならば 誰も泣かずに済んだのに”。
音と会場が一体になった透明な空間を思いが溶け広がっていく。
ここで有田と純市がマイクを取って小休止。
「素直に心を開放して最高な空間をつくろう!」と純市が呼びかけると、大阪でMCがすべって凹んでいるという有田も「まだまだいけるか!?お前ら最高だ」と重ねて叫んだところでコヤマが戻り、最新シングルの『赫色-akairo-』へ。
中断でのリズムチェンジから怒涛のエンディングに突入し、間を置かずにベースのイントロから『ぜんぶあんたのせい』に入ると会場からは歓声があがる。
空間系のエフェクトを駆使した効果的なコヤマのギター。ベースの純市は途中でベースのストラップが切れるハプニングもあったがそのまま演奏を続ける。ぴたりと息の合った演奏で会場の熱気は最高潮に。
メジャー3rdシングル『顔』のカップリング曲『デッドマンズメランコリア』では、ヘビーなギターがダークな世界観を表現する。
会場がひとつになった『生者ノ行進』

いよいよライブも終盤へ。
「自分たちにとってとても大切な曲」と前置きして歌い出した『生者ノ行進』。
サビでは、会場を埋め尽くした観客が腕を振ってこたえる。
間奏で「Lyu:Lyuだった頃、こんな曲をやっているバンドは大嫌いだった。それに対しての答えがこの曲で、今はこの曲をつくって本当によかったと思っている」と話すコヤマ。
アルバムバージョンでは、観客が加わったライブでのコーラスがエディットして重ねられている。この日もコール&レスポンスを繰り返し、そのたびに歌声が大きくなっていく。
“頼りない足でも僕等は歩けるさ ほら一緒に歌おうぜ”。
「一緒に歌おう!」と呼びかけると大合唱が沸き起こる。
客席の1人ひとりが声を張り上げて思いのたけをぶつける様子は、CIVILIANの3人を先頭に行進する姿を連想させる勢いと熱気があった。
熱気が立ち込めたまま、立て続けにベースが疾走する『3331』へ。
ギターをかき鳴らしステージを縦横無地に動き回るコヤマ、そして有田のドラムソロからフィニッシュが決まると歓声が起きる。
Lyu:LyuからCIVILIANへの変化を象徴する『メシア』と『顔』

eveツアーファイナルのこの日。
アルバムのボーナストラックに収められた『メシア』は、Lyu:Lyu時代から歌われてきたファンにはおなじみの名曲だ。
eveに収録されているのはアコースティックライブだが、この日はオリジナルのバンドバージョンでの演奏。
凄惨なダークサイドをえぐる歌詞だが、不思議と辛らつな印象を感じない。
続く『顔』はCIVILIANになった最初の時期にできた曲。
心のひだを丁寧にほぐすような歌詞のストーリーが沁みる。
言葉が先行するLyu:Lyu時代からの彼らの個性は、言葉の強さゆえのカルマも同時に背負っている。
コンプレックスに悩む主人公が受け入れられる過程を描いたこの日の『顔』の演奏は、彼らがCIVILIANとしてその答えを見つけたことを物語っていた。
『メシア』から『顔』への流れは、長い時間をかけてメジャーデビューにたどり着いた3人の歩みを象徴するような一幕だった。
『eve』ツアー最後の曲』

全国8カ所を回るツアーの最後に選ばれた曲は『明日もし晴れたら』。
デビュー前の明日が見えない日々に書かれたというこの曲。
病んだ心を充電するようなゆったりとした曲調のこの曲を、大勢のファンの前で披露する日が来ることを、彼らは想像していただろうか。
「1stアルバム『eve』を末永くお願いします。」
eve=前夜というタイトルに込められた意味。たとえ特別な意味がなかったとしても、晴ればれとした3人の表情からは演奏できることとの喜びが伝わってきて、それが音にも現れているようだった。
アンコールで再登場した3人。
この後予定されている2マンツアーを告知してから、「バンドの中に流れている血液がやっと循環するようになった」と思いを語る。
「もっと良い曲を書けるようになりたい」とファンへの感謝を伝えるコヤマ。
アンコール1曲目にはLyu:Lyuの『ディストーテッド・アガペー』。
“何も渡せるものが無くて 仕方ないからこの身体を 細かく刻んで歌にしたよ”。
ロックでなければ歌えない歌詞。そのために3ピースバンドという形を選んだことではじまったストーリー。
Lyu:Lyuとして歩み出したときの曲という『暁』を披露してツアーファイナルは幕を閉じた。
CIVILIANたちの行進

満を持して表舞台に立ったCIVILIAN。彼らが記した最初の一歩として記憶に刻まれるツアーのファイナルとなったこの日。
誓い合うように、叫ぶように、光を残して去ったCIVILIANの3人。名残を惜しむように誰ひとり帰ろうとしないフロア。
そして3人の姿がステージに3たび現れる。
「すべて出し尽くした感じ」と語るコヤマが「3人で最初につくった曲」と紹介して歌いはじめたのは『空 -カラ-』。
彼らの原形を示すアップテンポのナンバーは、荒削りな中にもCIVILIANとしか言いようがない1曲で、Lyu:Lyu時代からのファンにとって最高のプレゼントになった。
残されたエネルギーを完全燃焼させるように1stアルバム『eve』ツアー・2017年12月21日のCIVILIANはここに完結。
1つの人格であるLyu:Lyuから、無名・匿名のCIVILIANへ。
ツアータイトルにもなった“Hello, civilians”には、コヤマ、純市、有田だけではなく、彼らの音に耳を傾ける1人ひとりがCIVILIANなんだという思いが込められている。
“顔”のない群衆ではなく、生きて呼吸する目の前のひとりに言葉と音を通じて触れること。
この日起きたことはそんな奇跡のような光景で、エモーションの在り処が定まったCIVILIANというバンドの腕を振って大股に歩いていく未来が垣間見えたツアーファイナルだった。
TEXT:石河コウヘイ
Photo:西槇太一

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