おすすめ書籍:『「自分」を仕事にする生き方』はあちゅう(幻冬舎)

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第99回 はあちゅう問題 今年もいよいよ残すところ後3日なわけですが、正しいことをしようとしているように見える人が必ずしも正しいわけではないという事例を見ることが多かった年だったような気がします。
 世の中には基本的に色んなことに関する認識がズレている人というのが存在しているわけですが、そういう人たちがいつもとんちんかんなことばかりやってるかというと、そうではありません。たまに社会的に見て正しいことをやりだす時があります。そうした場合に社会的な正義を求めるタイプの人がそこに乗っかっていくことがあるわけですよ。そういう真面目な人は、バカな出来事とか間抜けな出来事にあまり興味がないわけで、その人のひととなりを基本的によく知らない場合が多いんですよね。だから、素直に支持してしまうと思うのです。
 ところが、相手は基本的にはズレてる人なので、そこでの正義とは別におかしな言動をとり続けるわけですよね。そうなってくると、本人に対する疑問が生まれ、そこに野次馬みたいな人が集まって面白がったり、何でもいいから叩きたい人が騒ぎだしたりして、本来の運動的なものがどこかにいってしまうことになることがあります。こういう流れに運動自体に悪意・敵意を持っている人が乗っかってきて、運動そのものが台無しにされてしまう恐れもあります。
 本来であれば、その人がズレてる人でも、その部分について正しいのであれば他と切り分けて考えなければならないのですが、世の中のたいていの人はそういうふうに合理的に考えられるわけではないのです。そういうことを踏まえて戦略的に考えるならば、運動を成功させるためには旗印的な人を選ぶ時に非常に厳しく吟味すべきなのだと思います。
 完璧な人間などいないわけで、誰だって過去の言動を探せばあげあしをとれるところは出てきます。そういった部分をほじくり返して、引きずりおろそうというのは卑劣な行為です。しかし、今している話はそういった話ではなく、現在進行形でズレた言動をしている人を変に持ち上げることの危険性の話です。そういった人と関わると本来の話がどっかにいってしまって、非常にくだらない印象を世間に与えて終わりになってしまう可能性が高いのですから。逆にその人を持ち上げてしまうことで、その人に攻撃が必要以上に集まってしまい、本人に過剰なダメージを与えてしまうわけで、本人のためにもよくないことでもあるのです。
はあちゅうさんの失敗 はあちゅうさんの件に関して言えば、メディア側が彼女の過去の発言や現在の仕事をよく検討して、「これはセクハラだと言われる可能性がありますよ」「無自覚なミソジニーがあるのでは」「電通時代のマチズモ的な社会観の影響から脱することができてないのでは」とかいう話をちゃんとして、認識がズレている部分を理解してもらい、そういった部分に関する自己批判を最初の段階で出していくように段取りをしていけば、こういう事態にはならなかったように思います。メディア側は、はあちゅうさんの知名度には関心があっても本人にはあまり興味がなかったのではないでしょうか。例えば、過去の童貞に関する発言に対する攻撃というふうにメディア側は主張していますが、童貞マガジン『チェリー』での発言に対する批判が現在進行形で起こっているという状況があったわけで、そのことを認識できていれば、このタイミングで対策もしないままに告発記事が出てしまえば反発がくるのは予想できたはずです。メディア側も自分たちの正義にばかり目が向いていて、はあちゅうさんを守ることを考えてなかったのではないでしょうか。上手い見せ方はあったはずなのです。そこを考えなかったのは色んな意味でミスだと思います。もちろん、彼女が受けたセクハラ・パワハラ被害と彼女の発言の中に内包されている問題とを比べたら、比べるのもバカバカしいぐらい彼女が受けた被害の方が悪質で甚大なものなわけですが、彼女の発言を疑問視している人たちがそれを考慮して現時点での彼女への批判を我慢できるかといえば、そういうわけではありません。正しい、正しくないじゃなくて、それができる人間はあまりいないという現実があるのです。そこを彼女を旗印的に利用しようとしているメディア側が考えないとダメなんじゃないでしょうか。そういう自分たちのミスが被害者叩きに利用されることになったり、彼女に対する批判を全て被害者叩き認定しようとすることで更なる反発をかったり、なんというか下手すぎるし、はあちゅうさんに対する本質的な部分での関心もなさすぎなのでは。その点においても、はあちゅうさんは気の毒だと思います。
 ズレた人を利用しようと雑に持ち上げた結果、問題の本質がグダグダになってしまうというのは、極めて日本的な間抜けな光景であり、なかなか変わらないとこなんでしょうね。
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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。
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