【師弟対談】フルカワユタカ × TGM
X、「フルカワの状態がいいってこと
を教えたい」

2018年1月10日に3rdアルバム『Yesterday Today Tomorrow』をリリースするフルカワユタカ。そして今作のプロデュースを手掛けたFRONTIER BACKYARDのTGMXこと田上修太郎は、DOPING PANDAのインディーズ時代に、アルバムのプロデュースを中心に彼らをバックアップした要人かつ恩人である。彼の存在なくては今のフルカワはないとも言える田上との13年ぶりの共同作業について、両者の対談が実現。2人の出会いから今だから話せる当時のエピソードとともに語ってもらった。
なお、1月28日に東京・新木場STUDIO COASTで開催されるアニバーサリーイベント<フルカワユタカ presents「5×20」>にはFRONTIER BACKYARDをはじめとする約10組の先輩や後輩、同時代を駆け抜けた朋友が、フルカワユタカのソロ5周年とキャリア20周年を祝う。こちらもお見逃しなく。
   ◆   ◆   ◆
■周りが僕のキャラを面白がったりすることで

■むしろ本性が引き出される──フルカワユタカ
──まずフルカワくんに聞きますけど、アルバム『Yesterday Today Tomorrow』の構想はいつ頃からあったんでしょうか。
フルカワ:2ndアルバム (『And I’m a Rock Star』/2016年リリース) を出してツアー廻ってる時がスタートラインですね。その時まず活動の次のステップとして目標みたいなものを作ったほうがいいだろうと、とりあえず2018年1月28日の新木場STUDIO COASTを押さえて。でもその頃はまだプロデューサーを立てるとかCOASTをアニバーサリーイベントにするとかっていう話にはなってなくて。
──そこから田上さん (TGMX/FRONTIER BACKYARD) をプロデューサーに迎えることになった経緯は?
フルカワ:何年か前の呑みの席で、田上さんには言ってたんですよ。「何か一緒にやりたい」って。それこそ自分の作品だけじゃなく、いろんな絡みの中でプロデュースみたいなことをやりませんか?って。でも昔の僕はその逆で、誰かと一緒に音楽を作ると自分が薄くなっちゃう気がして。それこそドーパン (DOPING PANDA) の最後なんてミックスまで自分でやるようになって、ドン詰まって解散して……。
──毎回その話になりますね(笑)。
フルカワ:や、その話が今回も重要で。そこでぶつかって解散して、ソロとして始めたものの最初は上手く行かなくて。でも去年、ベボベ (Base Ball Bear) とか市川さん (LOW IQ 01) とか、今までと違う立ち位置に自分が立ってみて思ったのは、周りの人が僕のキャラを受け入れたり面白がったりすることで、むしろ自分の本性みたいなものが引き出されるんだっていうのを知って。
──イジられてナンボだと。
フルカワ:っていうことを思った時、そういえばインディー時代の自分はそうだったなと。いつも田上さんが自分の魅力を引き出してくれていたと。その後の僕は田上さんから離れて自分の世界を作ってたけど、今になって自分がそういう人間なんだってことに気づいて。で、今回のアルバムをプロデュースしてもらう話になりました。
──一応おさらいしておきますが、田上さんとフルカワくんのそもそもの関係は?
田上:僕は昔、SCAFULL KINGっていうバンドをやってたんですけど、そのライヴにまだ誰も知らないDOPING PANDAを出してるうちにどんどん仲良くなって。でもその頃の僕はSCAFULL KINGに音楽的な限界を感じてて、バンドよりプロデュース業みたいなことに興味を持ち始めてたんです。で、DOPING PANDAは若くてソリッドな音楽をやってたけど、もっとクセの強いものをやったほうがいいっていうのを言ってて。レーベルも同じだったし、先輩ノリで。
──そこから田上さんが当時のDOPING PANDAをプロデュースすることになったと。
田上:DOPING PANDAを使って音楽の冒険というか実験をしたかったんです。で、『PINK PaNK』と『WE IN MUSIC』というアルバムをガッツリやったんですけど、その2枚で彼らはブレイクしてメジャーに行って。ちょうど僕もその頃はFRONTIER BACKYARDとして活動してて、メジャーに彼らが行くと興味がなくなってしまったというか。今思えばなんてことないことなんだけど、当時の僕はメジャーアレルギーみたいなのがあったんで、メジャーに行くならフルカワにプロデュースを頼まれても断ろうって思ってたぐらい。で、そんなDOPING PANDAが終わってしまい、フルカワがDIY的な活動を始めたのを付かず離れずの距離で眺めてたんですけど、さっきフルカワが言ったように「一緒にやりたい」って相談されて。そこからですね。
■なぜか僕はパンツ一枚で正座して

■話を聞くみたいな──フルカワユタカ
──まだ単なるバンドマンの先輩後輩っていう関係だった頃、お2人はどんな付き合いだったんでしょうか。
田上:まず僕はフルカワのことが好きだったし、フルカワも好きだって言ってくれるんで、「じゃあ俺ん家のそばに住め、なんなら引っ越し代も貸してあげようか?」っていうところから始まって(笑)。たしか部屋探しも一緒に行った気がする。
──弟みたいな感じだったと。
田上:もちろんフルカワだけじゃなくて他のメンバー2人もそうで、僕が歳上のぶん、いろんなことを教えてあげたかったのと、あと僕らより若い世代の感覚を知りたいっていうのもあって。だからよく遊んでたし、フルカワを連れまわしていろんな人に紹介して。
フルカワ:遊んでましたね、毎晩のように。例えば夜中の2時に電話かかってくるんですよ。こっちは風呂入って髪が濡れてる状態なのに(笑)。で、田上さんに限らず先輩たちの溜まり場みたいなバーがあって、そこに行くとTOSHI-LOWさん (BRAHMAN/Vo) がいたり。で、なぜか僕はパンツ一枚で正座して話を聞く、みたいな。あと、沖縄にも着の身着のままで連れて行かれたり(笑)。
田上:沖縄も「行くぞ」って言ったら旅行費ないっていうからみんなで出し合って。
──話を音楽に戻します(笑)。さっき話に出た『PINK PaNK』と『WE IN MUSIC』は、当時プロデューサーとしてどういう作品にしようと思ってたんですか。
田上:まず誰もやったことないことをやろうっていうのが念頭にありました。当時だと日本でシンセとか打ち込みをやってるロックバンドがほとんどいなかったんで、それをやろうと。最初フルカワはちょっと嫌がってましたけど、だんだん面白くなってきたみたいで。もちろん3人でやってるバンドなんで、シンセを入れるとライヴがやりにくいっていうのがあったと思うんですけど。それをメジャーに行ってから自分たちで咀嚼して、上手く自分たちの中で収めるこができて。古い言い方だけどダンスロックっていうのを作り上げたのは最初じゃないかなと、僕もちょっと自負してるところがあって。
──あの2枚というのは、ドーパンの土台というか背骨のようなものというか。当時田上さんと出会ってなければ、ああいうサウンドアプローチには……。
フルカワ:なってなかったですね。こんな話、したことないですけど、メジャー行ってからもずっとそれがコンプレックスで。田上さんとエンジニアの及川さんって人がいるんですけど、その2人がいなかったらこうはなってないという強迫観念があって。今でこそなくなってきたけど、メジャーに行ってからもずっとそれがあって。
──もともとああいう音色に対して、フルカワくんは……。
田上:全然興味はなかったですね。
フルカワ:最初は嫌がってました。3ピースのバンドがなんで打ち込みなんだ?っていう。
田上:フルカワが作ってくるメロディはすごくいいんですけど、これを普通に演奏しちゃうと単なる“いい音楽”で終わっちゃうと思って。だからクセのあるアレンジがいいなって。僕もプロデュースはDOPING PANDAが初めてだったし、それが正解なのかわからなかったけど、とにかくやろうと。
──サウンドのみならず、バンドそのものをプロデュースしてたんですね。
田上:そうですね。当時のセットリストの曲順まで僕が決めることもありましたから(笑)。
フルカワ:だから3人だけで話し合ってると怒られましたからね。「なんで3人で決めちゃうんだよ」って。
■「変なところから帰ってきたぞ」

■「こいつ、面白いぞ」って──TGMX
──そして今回13年ぶりにタッグを組んだわけですが、どんなアルバムにしようと思いました?
フルカワ:まず田上さんに言われたのは、とにかくパソコンで曲を作るのはやめようと。曲が良くても音像がペタっとしてる感じがして、それは人が挟まっていないからだって。なのでまずスタジオで大きな音を出して、そこでからアレンジを考えていこうと。
田上:フルカワの1stとか2ndを聴いた印象もあるけど、僕がドーパンでやった時みたいに、スタジオでやりとりすることが必要だと思って。あとはなるべくライヴ映えするような曲。だからフルカワのライヴを何回か観に行って、メモをとって、フルカワのいいところとダメなところをいっぱい書き出して(笑)、それを元にいろんな提案をして。
フルカワ:ドーパンも最後の方は僕がパソコンで作ってたんで、久しぶりでした。あと田上さんとアレンジを詰めていくスピード感も。知恵熱が出るんじゃないかっていう感じで。
田上:サポートしてくれた人たちが大変だったと思うんですけど、思いついたことをすぐ伝えるスピード感は大切で。下手に考えちゃうと僕もフルカワもお互いに自分の方に引っ張ろうとしちゃうんで。
──だから過去2枚の作品とはまるで違うものが生まれて。とくに印象的だったのは、どの曲でもフルカワくんがギターソロを弾きまくってるところで。そういえばソロになってからあんまり弾いてなかったなと。
フルカワ:それもライヴでギターを弾いてる僕の姿が田上さんのイメージの中にあったからだと思います。1枚目のソロはドーパンを倒してやる、みたいな怨念というか(笑)。全部パソコンでチャレンジしたアルバムで。2枚目は書きためてたものを集めるっていう日記的なところがあって。だから今回は全然違いますよね。田上さんとやるって決めてから全部書き下ろしてますし。
──多彩なゲスト参加のアイディアは?
フルカワ:もちろん田上さんからです。僕1人だったらあんまりゲストとか呼ばないんで。
田上:フルカワの状態がいいってことを僕の周りにも教えたかったんですよ。しかも周年のアルバムだっていうのもわかってたんで、いろいろ結びつくように。盤だけじゃなくて、フルカワユタカのわりとデカい意味のプロデューサーとして立てればいいなって思って。
──つまり、彼を連れ回してた頃と同じようなことをしたかった。
田上:そうですね。「こいつ、面白いぞ」って。「変なところから帰ってきたぞ」って。
フルカワ:ははははは。
──いろんな人ですごく賑わってるアルバムですよね。フルカワくんの周りにこんなに人が集まってるのはソロになってから初めて……。
フルカワ:や、人生で初めてかもしれない(笑)。
田上:そうだろうね、たぶん(笑)。
フルカワ:幼稚園、小中高、大学……大学はちょっといたかな。たぶんずっと木下 (理樹/Art-School/Vo) しかいなかった人生なんで(笑)。
取材・文◎樋口靖幸 (音楽と人)

撮影◎にしゆきみ
■<フルカワユタカ presents「5×20」>


2018年1月28日(日) 東京・新木場STUDIO COAST

開場13:15 開演14:00

▼出演 フルカワユタカ and many bands & musicians

ACIDMAN / ART-SCHOOL / Keishi Tanaka / the band apart / FRONTIER BACKYARD / Base Ball Bear / ホリエアツシ (ストレイテナー, net) / 夜の本気ダンス / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS (※50音順・敬称略)

▼チケット

スタンディング 4,800円(税込)

※「スタンディング」「整理番号付」「ドリンク代別途徴収」

※3歳以上要チケット

一般発売:2017年11月25日(土)

(問)DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00) http://www.diskgarage.com/

【プレイガイド】

・e+ http://eplus.jp/furukawayutaka18/

・ローソンチケット http://l-tike.com/ 0570-084-003 Lコード:72823

・チケットぴあ http://pia.jp/t/ 0570-02-9999 Pコード:346-255
■アルバム『Yesterday Today Tomorrow』


2018年1月10日(水)発売

NIW137 3,000円(+税)

01. revelation

02. シューティングゲーム

03. busted

04. 僕はこう語った

05. days goes by

06. デイジー

07. DAMN DAMN

08. nothin' without you

09. バスストップ

10. no boy no cry

プロデュース:TGMX(FRONTIER BACKYARD)

▼ゲストヴォーカル

M1:LOW IQ 01

M5:UCARY & THE VALENTINE

M8:米田貴紀(夜の本気ダンス)

M9:荒井岳史(the band apart)

▼作詞

M7:須藤寿 (髭)

【アルバム特典】

▼オフィシャルサイト特典

フルカワユタカ 描き下ろし年賀ポストカード(新年コメント&サイン付) / ギターピック

▼タワーレコード特典

2017/02/10 渋谷WWW X ライブ映像 2曲入り DVDR(収録曲: transient happiness / beat addiction)

▼disk union特典

2017/02/10 渋谷WWW X ライブ映像 2曲入り DVDR(収録曲: サバク / I don't wanna dance)
■全国ツアー<フルカワユタカ presents 『yesterday today tomorrow TOUR』>


2018年1月13日(土) 愛知県 伏見JAMMIN'

2018年1月14日(日) 大阪府 Shangri-La

2018年2月11日(日・祝) 静岡県 Shizuoka UMBER

2018年3月17日(土) 岡山県 岡山ペパーランド

2018年3月18日(日) 福岡県 INSA

2018年3月21日(水・祝) 宮城県 enn 3rd

■<yesterday today tomorrow TOUR extra>


2018年2月12日(祝) 鹿児島県 Live HEAVEN

2018年2月18日(日) 福島県 Player’s Cafe

2018年2月25日(日) 北海道 musica hall cafe

2018年3月10日(土) 京都府 SOLE CAFE

2018年3月11日(日) 石川県 もっきりや

w/荒井岳史 (the band apart)

▼チケット

3,300円 (+1ドリンク代別)

全自由/整理番号付

一般発売:1月13日(土)予定

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BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

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