アニメ大好きライターが選ぶ! 2017年
「買ってよかった!」アニメサントラ
ベスト5

2017年にリリースされたアニメサントラの中から、オススメのアルバムをベスト5でご紹介します。

2017年にリリースされたアニメサントラの中から、アニメライターがオススメのアルバムをベスト5形式でご紹介。音作りのおもしろさや、アルバム単体として聴いた時の音楽的魅力をひとつの価値観として、悩みに悩んだ末に5枚を選ばせていただきました!
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TVアニメ「けものフレンズ」オリジナルサウンドトラック最初に推薦盤として紹介したいのが、本年度のアニメ作品を象徴する大ヒット作である『けものフレンズ』のサントラです。
本作で劇伴を担当したのは、立山秋航さん。立山さんは、ロックバンドのドラマーとしても活躍されている作曲家で、アイドルや声優への曲提供の他、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』や『くまみこ』といったアニメ作品のサントラも担当されています。
ドラマーとしてのバックボーンも手伝ってか、本作には打楽器を多用したパーカッシブな曲調の楽曲が数多く収録されており、今作の音楽的なイメージを決定付けると共に、アニメ本篇における大陸的なイメージを形作る上でも大きな効果を上げています。
メロディがそのままビートになっているような曲も多く、そのリズミカルな音世界には、聴いているだけで心が弾むような躍動感が溢れています。
一方で、ストリングスの不協和音が鳴り響く『スコールが来た!』、ハードなテクノサウンドを駆使した『セルリアン』のように、アクセント的にレイアウトされた異色のトラックもそれぞれが独自の個性を放っており、サウンドトラック盤の音世界をより個性豊かなものへと仕立て上げている点も聴き逃せないポイントです。
聴いているだけで各キャラクターの姿や劇中の名場面の数々が頭に思い浮かぶような印象的な楽曲に加えて、意外な音楽アプローチや、リズム重視の音作りの奥行きも楽しめる『けものフレンズ』のサウンドトラック。
作品を力強く支えると共に、インストゥルメンタルアルバムとしても本当によくできた良盤として、大推薦させていただきます!
夏アニメで注目を集めたあの作品
TVアニメ「メイドインアビス」 オリジナルサウンドトラック2017年の夏アニメで、アニメファンの話題を集めた作品が『メイドインアビス』です。
本作を彩るサウンドトラックを作り上げたのは、オーストラリア出身のケビン・ペンキン。多国籍なクリエイターを擁する音楽制作集団「IRMA LA DOUCE」に籍を置く、才気ある若手作曲家です。
本作の劇伴は、オーストリアのウィーンでレコーディングを行っており、そのスケール感と、シンセイサイザーとオーケストラ楽器を融合させたサウンドは、本作の大きな特徴となっています。
CD2枚組、全52曲と大ボリュームの作品ですので、収録曲のリズムやメロディは多岐に渡っており、作品全体の印象を一言でまとめるのは少々強引な気もするのですが、それでも敢えて書かせていただくと、全曲を通しで聴いてみた時に強く感じたのは、各楽曲を貫くテクノ的なミニマリズムの美しさでした。
反復されるビートやリフレインされるメロディ。それらが、幻想的であり、どこか神秘的な要素を感じさせる世界観を構築している。
ずっと聴いていると、自身の内面世界にダイブしてしまいそうになる催眠的な"深み"を聴き手に与える『To the Abyss!』や、リフレインされる鍵盤の音がエモーショナルな『Remembering Home』といった楽曲の数々は、本作のそうしたミニマルな側面を強く体現しているように思います。
一方で、変則的なビートが脅迫観念のように聴覚に迫りくる『Maul』、エキゾチックなリズムとダークな低音が不穏な空気を醸し出す『Tasukete』、或いは、ノイジーなインダストリアルテクノを連想させる『Crucifixion』のように、ハードコアなサウンドも収録されており、要所要所で起伏を付けるアルバム構成も思わず唸らされるポイントです。
オーケストラの人間味のある音色とメロディ、リズム共にハイクオリティなテクノサウンドが高次元で結合した大変素晴らしいサウンドトラックだと思います。個人的には、テクノやエレクトロニカといった電子音楽の他にも、ジャーマンプログレのような反復ビートが特徴のロック・ミュージックに近しいエッセンスを感じました。
完成度が高すぎるのと、音の密度がとてつもなく濃いので、アニメ本編と同様に通しで聴くとかなりの体力を消耗しますが、その中で"癒やし"となる『Underground River』と『Hanezeve Caradhina』という2つのヴォーカル曲の存在も本作における大きな魅力です。
BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS オリジナルサウンドトラック I今年、放映を開始した『BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』は、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた人気漫画『NARUTO -ナルト-』の続編にあたる作品。
劇中の音楽は、シリーズのファンにはお馴染みの高梨康治さん率いる音楽ユニット「刃-yaiba-」が担当しています。
同ユニットは、ハードロックを基調にしたバンドサウンドに、尺八や三味線などの和楽器を融合させた音作りが特徴で、そのハードかつ「和」の優美を感じさせる音楽性は今作でも健在。高梨サウンドらしい一本筋の通った力強い音を聴かせてくれます。
特に、アニメサントラのメイン曲としては珍しくヴォーカルと歌詞が入っているファーストトラック『風になれ』のストレートで太く、なおかつキャッチーなメロディは堪りません!
目を引くのは『風になれ』を筆頭とする"ロック"なトラックの数々ですが、その裏で、ストリングスの美しい音色で構築されたスロー、ミドルテンポな楽曲の数々もシッカリとした存在感を放っており、これらの楽曲が一枚のアルバムにパッケージされた際の緩急が生み出す構成美にもご注目ください。
アップテンポなトラックは、熱く激しくラウドに、そして、穏やかな楽曲では、どこまでも情緒的な音を作り出す。楽曲によって、コントラストがハッキリとしているからこそ、一つ一つのトラックがより鮮明に印象に残り、それらがまとまった際のサントラとしての完成度をより高めているように感じました。
歌モノで始まり、同曲のインスト版で締める構成も見事で、"アルバム"としてパッケージすることに強く必然性を感じられる一枚だと思います。
個人的には、本年度の"ロック"なアニメサントラとしてイチ推しをしたい作品です。漢字の割合が高めなトラック名の数々も、雰囲気タップリで素晴らしい。
あの大物がガッツリ参加した名作サントラ
TVアニメ「サクラクエスト」CD-BOX『SAKURA QUEST "BEST"』『花咲くいろは』と『SHIROBAKO』というヒット作に続いて、P.A.WORKSが送り出した「お仕事シリーズ」最新作『サクラクエスト』のサントラには、多様な音楽の楽しさがギュッと詰まっています。
ふとしたきっかけで寂れた田舎町の観光大使を務めることになった主人公が、仲間たちと力を合わせて町興しに挑み、その中で成長していく青春ドラマを描いた本作。
その劇伴を担当したのが、ボーカリスト、コンポーザー、そして、イラストレーターという様々なクリエイターによって結成されたスペシャルユニット「(K)NoW_NAME」です。同ユニットは、主題歌・劇中歌・劇伴と、本作の音楽面を全面的にバックアップしています。
(K)NoW_NAMEにとって、実質的なデビュー作となった昨年の『灰と幻想のグリムガル』と同様に、サウンドトラック盤も、歌モノとインスト曲をフルパッケージした「ベスト盤」という形態でリリースされており、CD4枚組の大作に。
勿論、どの曲のクオリティも高い水準で制作されており、非常に聴き応えのある作品となっています。
劇中で使用されたインスト曲に絞ってみても、金管楽器が鳴り響くジャジーな楽曲あり、スライド・ギターが印象的なブルージーなナンバーあり、シンセポップのような打ち込み曲があり……と、バラエティーに富んだ音楽ジャンルを取り込んだ個性豊かな楽曲が揃っています。
各種の音楽を旺盛に盛り込んだメロディとミクスチャー的な音作りは、このユニットならではの強みといえるでしょう。また、使用されている楽器もその豊潤な音楽性に比例して、バンドセットに、ホーンセクション、ピアノ、ストリングス、電子楽器など多岐に渡っており、それぞれの音色と響きを追うだけでも楽しむことができます。
アニメ本編の作風に合わせてか、どこかコミカルで明るいニュアンスを感じられるトラックが目立つのも本作のチャームポイント。パンクやメタルのエッセンスを取り入れた歌モノナンバーを軸足に、ロックなイメージが強い楽曲の多かった『灰と幻想のグリムガル』と聴き比べてみるのも一興です。
THE REFLECTION WAVE ONE - Original Sound Track2017年のアニメサントラのベストといえば、英国の大物音楽ミュージシャン、トレヴァー・ホーンが参加した『THE REFLECTION』の劇伴を挙げないわけにはいきません。
アーティストとして、また、プロデューサーとして、テクノポップやニューウェーヴの世界で数多くの大ヒット曲を生み出してきたトレヴァー・ホーンが、まさかのアニメサントラを制作ということで、アニメファンのみならず音楽ファンからの話題を集めた『THE REFLECTION』。
サントラ盤のジャケットも、アニメタッチに描かれたトレヴァー・ホーンの姿が大々的に描かれており、コンポーザーのアーティスト性が全面に押し出されたデザインとなっています。
収録曲の多くは、これまでにトレヴァー・ホーンが生み出してきた実験的でありながら、享楽的でひたすらに抜けの良いポップなテクノ、ニューウェーヴサウンドというよりは、グッとシリアスで荘厳な仕上がりに。
超人的な力を持つヒーローを主役としたアニメ作品の劇伴に相応しく、緊迫感やアクションシーンでの躍動感を演出する為のメロディとリズムは、「サウンドトラック」として非常に高水準かつ実直な作りといえるでしょう。
一方で、80年代のトレヴァー・ホーンのパブリック・イメージがそのまま現代に実像として甦ったかのようなテクノポップ曲の『My Daily Life』、自身が歌唱を担当する『Sky Show』といった明るい曲調の楽曲や歌モノナンバーもシッカリと収録されており、80年代のポップ・ミュージックファンには堪らない目配せもバッチリと行き届いている点は、何とも嬉しい限り。
ボーナストラック的に収録された『Sky Show』のリミックスバージョンと、9nineに提供したエンディング主題歌『SunSunSunrise』の英語詞でのカバーバージョン『Future Boyfriend』も、ただただ「カッコ良い……!」という極々ストレートな賛辞の言葉を送りたくなる出来となっています。
どこか懐かしく、そして、他方でどこか新鮮なサウンドを感じられる……コンポーザーの"らしさ"を存分に感じられるサウンドトラックであり、「トレヴァー・ホーン」と「アニメ」という斬新な組み合わせが生み出した良盤です。

ウレぴあ総研

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