キノコホテル、マリアンヌ東雲性誕祭
でじゃがたら、筋少、安室奈美恵など
幅広いカバー曲を披露!
毎年恒例になりつつある、キノコホテルの支配人・マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)の誕生日を祝う特別単独公演が12月19日、20日の2日に渡って、新宿LOFTで開催された。オリジナル、余興、カバーの三部構成で届けられたライブは、2日間で余興、演奏曲ともに全くの被りなしという誕生日を祝われているのか、キノコホテルの感謝祭なのかもはや境界線がわからない、最大級のおもてなしであった。
2日目に行なわれたライブでは、紫色の衣装に身を包んだイザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、ジュリエッタ霧島(電気ベース)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)がソリッドな演奏をスタートさせる中、スタッフに肩車されて賑々しくマリアンヌが登場した。「エレキでスイム」から、ガレージテイストのケメのプレイが冴える「肉体と天使」、サイケデリアが匂い立つ「完全なる支配」と、立て続けに演奏。初日の終演後、プロらしく今日のためにすっぱり帰宅したことを報告し、「昔だったら、大騒ぎして二日酔いで喉を潰して、ごめんなさぁい、とかいってたかもしれないけど、大人になったから」と、会場では笑いが起きた。オリジナルを届ける第一部は、マリアンヌの拡声器を通したノイジーな声が物々しい雰囲気を漂わせる「キノコノトリコ」で締めくくった。
第二部はマリアンヌはフロアに伸びた花道の先に座り、従業員達の余興を楽しむという趣向。支配人が愛でて止まないパンダの被り物を全員が装着し、「マツケンサンバII」のワンフレーズとともに再びステージに現れると、これまたおなじみになりつつある「BAR霧島」が一瞬開店。ジュリエッタが今日のために考案したライチのリキュールをベースに、グレナデンシロップを合わせたカクテルを支配人に試飲してもらうという流れだ。ちなみにカクテルの名前は昨日一般公開されたばかりの上野動物園のパンダにちなんで「シャンシャン」と名付けられるという、凝りようで、当日のLOFTでも限定で提供されていたという。さらに過去の性誕祭の映像を振り返り、3人で支配人に捧げる「OKマリアンヌ」(ビートたけし)を演奏して、余興というには濃厚な第二部が終了した。
しばしの休憩の後、事前に胞子(ファン)から募ったリクエストを基にしたカバー大会からなる第3部がスタート。青い制服に着替えた従業員、そしてブルーグリーンのラメのフィットしたワンピースにパープル系のチュチュ状の飾りとヘッドドレスという、華やかないでたちの支配人の姿に歓声もさらに大きさを増す。1曲目は、“会うとき以外はいつでも他人の二人”という、いわば不倫関係なのだが、恋愛の刺激と新鮮さという意味でまるで支配人が書いたと言われても違和感のない「他人の関係」(金井克子)には溜飲が下がる思いがした。他にも昭和の歌謡曲でありつつ、支配人が弾くどこかフレンチポップスのようなオルガン・リフが新鮮かつキャッチーな「きりきり舞い」(山本リンダ)。このカバーは今のキノコホテルのバンドとしての表現力も実感させてくれるお題で、間奏部分などは、70年代のグラマラスなデヴィッド・ボウイを思わせるアレンジでもあったのだ。
そしてチェンバロ風のサウンドが原曲に忠実な「木枯らしに抱かれて」(小泉今日子)のいじらしさ、続けて同時代のもう一方のスター、中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」も、原曲のあの80sのキラキラした印象とは違って、グルーヴィなリズム隊によるナマなアレンジが際立っていた。後半はパンク、ニューウェーヴの巨人達の名曲が続いたが、まさか、じゃがたらの「でも・デモ・DEMO」まで聴けるとは思いもしなかった。ファン層が厚いというか、バンドの懐が広いというべきなのか。筋肉少女帯の「釈迦」がポップに聴こえるほどであった。続くスターリンの「解剖室」では、再び支配人が拡声器を使ってノイジーな声と、それがまた増幅してカオティックに広がり、さしずめアタリ・ティーンエイジ・ライオットも真っ青な空間が出現していた。本編ラストはサビのシンガロングも起こった相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」。いやもう、どれだけ振り幅の大きいカバー大会なんだろうか。でも、これでもキノコホテル、そして支配人であるマリアンヌ東雲のルーツの一端でしかないと思うと恐ろしい。
同期も取り入れ90年代の渋谷を想起させる安室奈美恵の「TRY ME」で、胞子達の最後のジャンプ力を搾り取ったアンコール。大ラスは支配人が全身で電気オルガンを弾き、いたぶり、そして愛する「キノコホテル唱歌」で、約2時間半に及ぶ性誕祭は幕を閉じた。加齢というのも悪いものじゃない。こんなに様々な音楽をビビッドに受け取れる時間を生きてきたのだと思うと、少し前向きな気分になれる。と、同時にマリアンヌ東雲という稀有なアーティストの背景を知る貴重なお祭り騒ぎであることは言うまでもない。
また、2018年1月17日に発売となるアルバム『飼い慣らされない女たち~実況録音盤』のトレイラーも公開されたので、こちらもぜひチェックしてほしい。
2日目に行なわれたライブでは、紫色の衣装に身を包んだイザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、ジュリエッタ霧島(電気ベース)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)がソリッドな演奏をスタートさせる中、スタッフに肩車されて賑々しくマリアンヌが登場した。「エレキでスイム」から、ガレージテイストのケメのプレイが冴える「肉体と天使」、サイケデリアが匂い立つ「完全なる支配」と、立て続けに演奏。初日の終演後、プロらしく今日のためにすっぱり帰宅したことを報告し、「昔だったら、大騒ぎして二日酔いで喉を潰して、ごめんなさぁい、とかいってたかもしれないけど、大人になったから」と、会場では笑いが起きた。オリジナルを届ける第一部は、マリアンヌの拡声器を通したノイジーな声が物々しい雰囲気を漂わせる「キノコノトリコ」で締めくくった。
第二部はマリアンヌはフロアに伸びた花道の先に座り、従業員達の余興を楽しむという趣向。支配人が愛でて止まないパンダの被り物を全員が装着し、「マツケンサンバII」のワンフレーズとともに再びステージに現れると、これまたおなじみになりつつある「BAR霧島」が一瞬開店。ジュリエッタが今日のために考案したライチのリキュールをベースに、グレナデンシロップを合わせたカクテルを支配人に試飲してもらうという流れだ。ちなみにカクテルの名前は昨日一般公開されたばかりの上野動物園のパンダにちなんで「シャンシャン」と名付けられるという、凝りようで、当日のLOFTでも限定で提供されていたという。さらに過去の性誕祭の映像を振り返り、3人で支配人に捧げる「OKマリアンヌ」(ビートたけし)を演奏して、余興というには濃厚な第二部が終了した。
しばしの休憩の後、事前に胞子(ファン)から募ったリクエストを基にしたカバー大会からなる第3部がスタート。青い制服に着替えた従業員、そしてブルーグリーンのラメのフィットしたワンピースにパープル系のチュチュ状の飾りとヘッドドレスという、華やかないでたちの支配人の姿に歓声もさらに大きさを増す。1曲目は、“会うとき以外はいつでも他人の二人”という、いわば不倫関係なのだが、恋愛の刺激と新鮮さという意味でまるで支配人が書いたと言われても違和感のない「他人の関係」(金井克子)には溜飲が下がる思いがした。他にも昭和の歌謡曲でありつつ、支配人が弾くどこかフレンチポップスのようなオルガン・リフが新鮮かつキャッチーな「きりきり舞い」(山本リンダ)。このカバーは今のキノコホテルのバンドとしての表現力も実感させてくれるお題で、間奏部分などは、70年代のグラマラスなデヴィッド・ボウイを思わせるアレンジでもあったのだ。
そしてチェンバロ風のサウンドが原曲に忠実な「木枯らしに抱かれて」(小泉今日子)のいじらしさ、続けて同時代のもう一方のスター、中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」も、原曲のあの80sのキラキラした印象とは違って、グルーヴィなリズム隊によるナマなアレンジが際立っていた。後半はパンク、ニューウェーヴの巨人達の名曲が続いたが、まさか、じゃがたらの「でも・デモ・DEMO」まで聴けるとは思いもしなかった。ファン層が厚いというか、バンドの懐が広いというべきなのか。筋肉少女帯の「釈迦」がポップに聴こえるほどであった。続くスターリンの「解剖室」では、再び支配人が拡声器を使ってノイジーな声と、それがまた増幅してカオティックに広がり、さしずめアタリ・ティーンエイジ・ライオットも真っ青な空間が出現していた。本編ラストはサビのシンガロングも起こった相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」。いやもう、どれだけ振り幅の大きいカバー大会なんだろうか。でも、これでもキノコホテル、そして支配人であるマリアンヌ東雲のルーツの一端でしかないと思うと恐ろしい。
同期も取り入れ90年代の渋谷を想起させる安室奈美恵の「TRY ME」で、胞子達の最後のジャンプ力を搾り取ったアンコール。大ラスは支配人が全身で電気オルガンを弾き、いたぶり、そして愛する「キノコホテル唱歌」で、約2時間半に及ぶ性誕祭は幕を閉じた。加齢というのも悪いものじゃない。こんなに様々な音楽をビビッドに受け取れる時間を生きてきたのだと思うと、少し前向きな気分になれる。と、同時にマリアンヌ東雲という稀有なアーティストの背景を知る貴重なお祭り騒ぎであることは言うまでもない。
また、2018年1月17日に発売となるアルバム『飼い慣らされない女たち~実況録音盤』のトレイラーも公開されたので、こちらもぜひチェックしてほしい。
photo by にしゆきみ