【sans visage インタビュー】
sans visageとしての
一本筋がありつつ
曲ごとに違う色を出せればいいなと
the band apart主宰の『asian gothic label』が、初の新人バンドをリリース! sans visageの1stアルバム『moments』は、ハードコア、ポストロック、エモなどを若き感性で咀嚼した要注目盤だ。
バンドは2013年結成ですが、当時はどんな音楽をやろうと?
Kamiyama
バンド名の由来でもあるSed Non Satiataというフランスのバンドや、アメリカのEngine Down、Suis La Lune、Snoras、Kaospilot、Dominicなどの北欧の激情ハードコアバンドの影響を感じつつも、3cm tourやakutagawaのような日本的なわびさびもある、みたいな音を出したいと思ってました。結果、今はあんまり当時意識していたバンドっぽい感じではないし、何かに寄せようという意識も徐々になくなり自由にやってます。
ちなみに激情系の音楽にはまったきっかけは?
Kamiyama
中学3年の頃ですね。特にはまったきっかけとしてはSuis La Luneというバンドを聴いて、きれいなポストロックだけど、シューゲイザーっぽい要素もあり、歌は泣き叫んでいて。今まで聴いたことがない音楽だったから、“何だこれは!?”と思って、その周辺のバンドを聴いたりネットで辿っていったりという感じです。激情系以外だと、中学の頃に残響レコードのバンドが流行って、そういう人たちがどういう音楽を聴いているのかなというのが気になって辿る感じで、stiffslackやtoosmell recordsなどの個人のレコ屋に、情報発信を頼りに聴き漁りました。いいなと思ったバンドのレーベルをチェックしてく感じで、そこで自分がやりたい音の軸みたいなものが形成された感じですね。
Nakagawaさんは?
Nakagawa
中学、高校の頃にtoeが好きで、それからenvyを聴いたのが初めての激情系音楽ですね。当時はMyspaceの“Friend”のところに推しのバンドも掲載されていたので、それをカチカチして聴いてました。あと、Kamiyamaからお薦めのバンドを紹介されて、それを聴いたりして。俺らの世代だと残響レコードがグイグイ来てたから、the cabs、cinema staffが好きという人は多いですね。
もともと4人でバンドを始めたそうですが、現3人体制になって音も変わりました?
Kamiyama
2年前の8月に3人体制になったんですけど、この3人になって僕以外のふたりも歌うようになりました。あと、演奏はシンプルになって、音もでかくなりましたね。
Nakagawa
4人の頃はギターのアルペジオで絡めるパートも多かったけど、今はバシバシドカン!という感じです(笑)。海外バンドと日本で対バンする機会も多いんですよ。向こうのバンドは音がでかいから、負けてられない!と思ってタフになったのかもしれない。
なるほど。これまでにオーストラリアのBlind Girlsとスプリットを出してますが、これはどういう経緯で?
Kamiyama
日本にバンドを呼んでいる方から“君たちと音楽性が近くてカッコ良いバンドがいるから、一緒にツアーやらない?”と言われて。その流れで出すことになり、2017年2月にはオーストラリアツアーにも行きました。
海外ツアーの感触はどうでした?
Nakagawa
最高でしたね! ライヴは5本だったけど、彼らの地元であるゴールドコーストで毎日泳いだりして。会場はバーみたいな場所が多くて、普通に飲みに来た人が観てくれたりして、そのラフさもいいなと。
お客さんの反応はどうでした?
Kamiyama
良かったですね。人の温かさを感じました。
Nakagawa
演奏が終わったら“お前ら最高だよ、よく来てくれたな!”って、すごく喜んでくれたから。
そして、今作はthe band apart主宰レーベルから初の新人バンドとしてのリリースになるのですが、もともとメンバーの原 昌和さんとは知り合いだったそうですね。
Kamiyama
3年前に1度、原さんとお会いする機会があって。原さんの地元の友達と仲が良い岡山の友達がいて(笑)。僕と岡山の奴と原さんの地元の友達と3人で、流れで原さんの家に行くことになったんです。初対面で“こういうバンドをやっているんで聴いてください!”と言って。そしたらレーベル企画の野外イベント(2017年5月開催。the band apart、toe、YOUR SONG IS GOODが出演)に出ないか?というびっくりするオファーをいただいて、本当に嬉しかったですね。
Nakagawa
曲が終わったらワーッ!と拍手が起きたし、ありがたかったですね。ものすごくいい経験でした。
今作の話になりますが、楽曲はライヴでやってきたものばかりになるんですか?
Kamiyama
半分はデモやこれまでのリリースに入っている曲で、あとは新曲ですね。今回は名刺代わりというか、sans visageとしての一本筋がありつつ、曲ごとに違う色を出せればいいなと。ずっと叫ぶ曲だけではなく、歌も入れたくて、「22」「life」「sway」で久々に歌いました。最近は怒りのイメージを彷彿させるような曲調が多かったので、切ない曲も作りたいなと思って。基本哀愁を感じる曲が好きで…思いが届かない感というか。
想いが届かない感?
Nakagawa
エモいってことでしょ?
Kamiyama
そう! 届かなさがエモかなと(笑)。
はははは。楽曲も一本調子じゃなく、メロディーが豊かな点もこのバンドの大きな魅力だなと思いました。歌詞はほぼ日本語ですけど、意識していることはありますか?
Kamiyama
何かの作品にインスピレーションを受けて書くことは今のところあまりなくて、自分が感じたことだったり、悲しいことを想像したりして書いてます。書いた歌詞は外に向けて誰かに伝えるよりも、自分に言い聞かせるような感じです。内省というか、自分は情けないなぁ、変わらないとなぁ、そうならないようにしないとなぁ、もっとこうなりたいなぁとか。ネガティブかもしれないけど、前を向きたいという気持ちを歌詞に書いてます。
ラスト曲「past」は過ぎ去った思い出を振り返るような内容になってますよね?
Kamiyama
4年前に作った曲なんですけど、昔を振り返りがちな性格で。忘れたくないと思っても、日々生きる中で忘れてしまうこともあるじゃないですか。その気持ちを歌にしようと。歌詞もいろんな瞬間を歌っているから、このアルバム名にしました。基本、おセンチ野郎ですからね(笑)。
取材:荒金良介