【DAOKO リコメンド】
活動の軌跡と進化を示す2ndアルバム
8月にリリースした「打上花火(DAOKO × 米津玄師)」によって一層たくさんのリスナーに支持されるようになったDAOKOが、約2年9カ月振りとなるフルアルバム『THANK YOU BLUE』を完成させた。1stシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」から4thシングル「ステップアップLOVE」までの曲を多数収録したベスト盤的な側面を持ちつつ、新曲も異彩を放っている。
今作を語る上で、まず押さえておくべきなのは、彼女のキャリアの出発点となったニコニコ動画へのラップの投稿、通称“ニコラップ”だろう。そして、この点を踏まえた上で改めて実感させられるのは、彼女に対して“ヒップホップアーティスト”という呼称はまったく当てはまらないということだ。言葉を淀みなく放射し、想いをあふれ返らせる歌唱法は、紛れもなく“ラップ”。しかし、ブラックミュージック的なフィーリングを帯びているわけではなく、あくまで歌声を響かせるための手法としてラップを用いているところがDAOKOの音楽の独特さの一面であり、豊かな表現力を生む重要な武器にもなっていることが、このアルバムを聴くとよく分かる。
例えば「ステップアップLOVE(DAOKO × 岡村靖幸)」は、まさに彼女のラップの特性を示す好例ではないだろうか。ファンキーでソウルフルな色合いに満ちた岡村靖幸の歌声と融合することによって、彼女のラップが持っている“和的情緒”と言ってもいいくらいの雅な質感、瑞々しさが鮮やかに浮き彫りにされている。現在20歳の彼女の幼年時代にはラップはJ-POPのメインストリームに完全に浸透していたはずであり、ブラックミュージック的なフィーリングと結び付けてとらえる歌唱法ではないのだろう。ポエトリーリーディングを駆使したりもしつつ、想いを届けるための手法を的確に使い分けるスタイルは、これからも彼女の音楽を支える重要な柱となっていくに違いない。
そして、DAOKOの音楽を聴いて、やはり何と言っても印象に残るのは、あの独特なウィスパーヴォイスだ。“ウィスパーヴォイス”とは言うまでもなく“囁き声”であるが、彼女のそれは“小声”や“か細い声”にまったく該当しない。むしろ、深い情感を伴った力強い声として迫ってくるのが、特筆すべきところだろう。「ダイスキ with TeddyLoid」には、このような部分が分かりやすく表れている。音圧の強いシンセサイザーや骨太なビートが躍動する中、彼女のウィスパーヴォイスが凛々しく響き渡るさまがスリリング極まりない。その他、SONYワイヤレスヘッドホン『h.ear』シリーズタイアップソングとしてお馴染みの「同じ夜」も、彼女のウィスパーヴォイスが冴え渡っている曲として挙げておきたい。
このような今作についてさらに付け加えるならば、各曲の根底に脈打つ生々しい同時代感覚にも注目させられるという点だ。DAOKOと同じように2017年の世の中で暮らしている我々にとって、このアルバムに収録されている各曲は、決してファンタジーではない。“この感覚には覚えがある!”と思わずハッとする瞬間を、おそらく多くのリスナーが随所で噛み締めるのではないだろうか。膨大な情報が飛び交い、物質にもあふれた世界の中で暮らしていながらも、どこか満たされなさを抱えたまま漠然と日々を送り、悩んだり、迷ったり、笑ったり、泣いたり、時には開放的に歌ったり、踊ってもみたり…多彩な感情と行動を複雑に絡ませ合いながら生きているのが、この世で暮らす人々の大半だと思う。そんな我々と自然と重なり、共鳴を生み、美しい色合いも添えてくれるのが、このアルバム『THANK YOU BLUE』に収録されている14曲だ。
DAOKOは11月からライヴツアー『THANK YOU BLUE』をスタートさせている。日本国内の6カ所6公演の他、韓国と台湾公演も含むこのツアーは、彼女の進化をさらに加速する機会となるだろう。たくさんの観客と音楽を共有し、想いを交わし合う経験を重ねながら、また新しい何かを掴んでいくのだと思う。今後の彼女の活動も楽しみだ。
例えば「ステップアップLOVE(DAOKO × 岡村靖幸)」は、まさに彼女のラップの特性を示す好例ではないだろうか。ファンキーでソウルフルな色合いに満ちた岡村靖幸の歌声と融合することによって、彼女のラップが持っている“和的情緒”と言ってもいいくらいの雅な質感、瑞々しさが鮮やかに浮き彫りにされている。現在20歳の彼女の幼年時代にはラップはJ-POPのメインストリームに完全に浸透していたはずであり、ブラックミュージック的なフィーリングと結び付けてとらえる歌唱法ではないのだろう。ポエトリーリーディングを駆使したりもしつつ、想いを届けるための手法を的確に使い分けるスタイルは、これからも彼女の音楽を支える重要な柱となっていくに違いない。
そして、DAOKOの音楽を聴いて、やはり何と言っても印象に残るのは、あの独特なウィスパーヴォイスだ。“ウィスパーヴォイス”とは言うまでもなく“囁き声”であるが、彼女のそれは“小声”や“か細い声”にまったく該当しない。むしろ、深い情感を伴った力強い声として迫ってくるのが、特筆すべきところだろう。「ダイスキ with TeddyLoid」には、このような部分が分かりやすく表れている。音圧の強いシンセサイザーや骨太なビートが躍動する中、彼女のウィスパーヴォイスが凛々しく響き渡るさまがスリリング極まりない。その他、SONYワイヤレスヘッドホン『h.ear』シリーズタイアップソングとしてお馴染みの「同じ夜」も、彼女のウィスパーヴォイスが冴え渡っている曲として挙げておきたい。
このような今作についてさらに付け加えるならば、各曲の根底に脈打つ生々しい同時代感覚にも注目させられるという点だ。DAOKOと同じように2017年の世の中で暮らしている我々にとって、このアルバムに収録されている各曲は、決してファンタジーではない。“この感覚には覚えがある!”と思わずハッとする瞬間を、おそらく多くのリスナーが随所で噛み締めるのではないだろうか。膨大な情報が飛び交い、物質にもあふれた世界の中で暮らしていながらも、どこか満たされなさを抱えたまま漠然と日々を送り、悩んだり、迷ったり、笑ったり、泣いたり、時には開放的に歌ったり、踊ってもみたり…多彩な感情と行動を複雑に絡ませ合いながら生きているのが、この世で暮らす人々の大半だと思う。そんな我々と自然と重なり、共鳴を生み、美しい色合いも添えてくれるのが、このアルバム『THANK YOU BLUE』に収録されている14曲だ。
DAOKOは11月からライヴツアー『THANK YOU BLUE』をスタートさせている。日本国内の6カ所6公演の他、韓国と台湾公演も含むこのツアーは、彼女の進化をさらに加速する機会となるだろう。たくさんの観客と音楽を共有し、想いを交わし合う経験を重ねながら、また新しい何かを掴んでいくのだと思う。今後の彼女の活動も楽しみだ。
文:田中 大
DAOKO × 米津玄師
「打上花火」MV Short ver.
https://youtu.be/UUxhE_uyunE
DAOKO × 岡村靖幸
「ステップアップLOVE」MV
https://youtu.be/wsl8HS_lVHE
「同じ夜」MV
https://youtu.be/mXpCe5AITXY
アルバム『THANK YOU BLUE』
初回限定盤特典 DVD映像
https://youtu.be/fTy_svHKHQ4
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