【ライブレポート】geek sleep shee
p、THE NOVEMBERS、LILI LIMIT、<D
ECEMBER'S CHILDREN>最終夜「大切な
人に捧げます」

年末恒例イベント<DECEMBER’S CHILDREN>が、2017年は3日間4公演の規模で開催された。先ごろ、12月1日に六本木VARIT.で徳永憲沖ちづるを迎えて行われた<DECEMBER'S CHILDREN EXTRA>、12月2日に赤坂BLITZで開催された<DECEMBER’S CHILDREN ~supported by J-WAVE SONAR MUSIC~>のレポートを公開したが、続いては12月3日に赤坂BLITZで行われた<DECEMBER'S CHILDREN>の模様をお届けしたい。
音楽事務所moving on主催<DECEMBER'S CHILDREN>最終日夜の部にはTHE NOVEMBERSLILI LIMITgeek sleep sheepというハードでポップなメンツが集った。
先陣を切って登場したのはgeek sleep sheep。L'Arc-en-Ciel、ACID ANDROIDのyukihiro、MO'SOME TONEBENDER百々和宏凛として時雨の345という一騎当千のメンバーからなるスリーピースバンドだ。
シューゲイザー、グランジ、オルタナをハイエッジな現代的サウンドに蘇らせるgeek sleep sheepらしく、ハードでタイトな16ビートをローラーコースターのように鳴り響かせてステージは幕を開ける。1曲目は「feedback」だ。サビのフレーズで345のヴォーカルが加わり、曲はカラフルさを増す。ここで曲の表情がガラリと変わるのだが、それぞれのバンドから集うスペシャルバンドの醍醐味、化学反応を実感できる瞬間だった。
歪んだギターの音色が反響するなかリズム隊がヘヴィにうねる「planet ghost」。声もフレーズの一部として利用するトリッキーでアートなアンサンブルから、345の歌声がリードするドリーミンポップ、爆裂のギターサウンドまでを自在に横断する「GOHAN」。天上に登るような美メロが極上のアッパーなダンスチューン「lost again」。荘厳なSEを皮切りにせつなくも甘くまどろむラブソングを345が聴かせる「kakurenbo」。サビは圧巻のスケールを魅せる。
間髪を入れずにステージは進む。カーニバルのパレード感に溢れた「Strange Circus」はgeek sleep sheep流ハッピーチューン。賑やかなワクワク感にフロアが沸く。そしてLove and Rocketsのカバー曲である「MOTORCYCLE」ではダークながらポップにビートがうねり出す。そしてフィナーレはロマンチックなギターのアルペジオで始まる「hitsuji」。夢で会いましょう。そんな乙女心にキュンとくる甘く切ないラブソングだ。マジカルな魔法をかけるように観客を引き込み、やがて大迫力の爆裂アンサンブルを聴かせるエンディングで終了。ほとんどMCはなく、一気にgeek sleep sheepは走りきった。
ロックとエレクトロ、エンターテインメントとアートが融合したハイブリッドな新世代サウンドを聴かせる5人組のLILI LIMITが2番手で登場。サンプリングした声とリズムがフリーキーなビートとなって会場を包むなか、「A Short Film」でステージはスタート。このアートテクノ風エレクトロダンスミュージックはハッピーサッドな多幸感に溢れていた。
一転して「Observe」ではゴリゴリのファットなビートが前のめりに転がっていく。不穏な空気をはらむスリリングなサウンドのなかに、ちょっとしたスイートメロウなテイストが混じっているのが小粋だ。「Unit Bath」はバロック風な4つ打ちビートが立ったニューウェイブポップ。ここに生々しい人肌や生活の臭みを感じさせる歌詞が乗ってくるのは新鮮。無機質、無味乾燥といったテイストもエレクトロの魅力のひとつだが、ここでLILI LIMITが見せた生々しさはかなりひっかかりがあった。
続いては新曲が2曲。アフリカンビート風の土着的なリズムがドンドコと響くなか始まったのは「GET UP」。2010年代のシティポップの洒落も含んだこの曲の中毒性はなかなかのもの。クセになるビートが頭をぐるぐると回る。「enclose desire」はメロウネスでヘヴィ。そしてセクシー。重低音のベース音がザワザワと心を騒がせる。
ラストは狂騒感で圧倒する「ERAION」。スタジアムロック風のフレーズがこれでもかと鳴り響くなか、メンバーがどこかクールなのも面白い。もしかするとスタジアムロックやEDMのパロディなのかもしれない。そんなことも考えさせられた。LILI LIMITはまだ底を見せていないようだ。
フロアが温まったなか、トリを務めたのはオルタナティブロックシーンの最前線を走るTHE NOVEMBERS。デカダンなフェロモンを放ち、咆哮する爆音と繊細な歌心が同居するサウンドでこの夜も観客の心を捕らえた。
ステージは新曲(タイトル未定)で始まる。いきなりのドラマチックなバラードに胸がざわめく。美しき余韻が漂うなか、順低音が重層的に鳴り響き「Hallelujah」へ。「ハレルヤ」とは賛美、感謝、歓喜などの意味を持つ言葉。見たことのない場所で聴いたこともないような音を聴いているような錯覚にとらわれる。白昼夢……。歌が進むに連れて様々な音色、フレーズが折り重なっていき、空が開けるような祝祭感が訪れる。客席が照らされてのエンディングは、まだ2曲目にもかかわらず、ステージのオーラスのような圧倒的な迫力で迫ってきた。
美メロがロマンチックな「きれいな海へ」に続き、ゴリゴリしたベースがきいたハードなメタリックナンバー「1000年」。ノイズで塗りつぶすような荒れ狂うバンドサウンドは、心のヤバいところのスイッチを押すようでスリリング。
MCを挟まず次々とナンバーが繰り出されていく。ハードコアなギターカッティングが光るデカダンでソリッドなビートロック「dysphoria」では、ボーカル・小林祐介のシャウトがフロアを突き刺す。扇情的なTHE NOVEMBERS流ロックンロール「こわれる」ではステージを赤いライトに包まれる。彼らの激情は赤と黒がよく似合っている。混沌としたヘヴィさのなかにナイフの切れ味を忍ばせた「Blood Music.1985」(※曲名確認)でも小林のシャウトにフロアは圧倒される。そして「黒い虹」。演奏はどんどん加速していき、客電のついたフロアにドグマのような音の波が洪水のように押し寄せる。
「サンキュー」。小林のひと言でようやく演奏が止む。放心状態のようなフロアに小林がささやくように語りかける。「今日のイベントでは大切な人と同じステージに立てました。その大切な人に捧げます。アンコールのつもりで聴いてください」。ラストナンバーは小林の敬愛するL'Arc-en-Cielの「Cradle」(作曲:yukihiro)。この壮大なバラードでTHE NOVEMBERSのステージは厳かに幕を閉じた。
3組の出演者が三者三様のタフなロックを聴かせた『DECEMBER'S CHILDREN』の最終夜。激情型のストロングスタイル。そんな切れ味の鋭いバンドサウンドが鳴り響いた夜だった。
取材・文◎山本貴政

■<DECEMBER'S CHILDREN>2017年12月
3日@赤坂BLITZセットリスト

【geek sleep sheep】

01.feedback

02.planet ghost

03.GOHAN

04.lost again

05.kakurenbo

06.Strange Circus

07.MOTORCYCLE

08.hitsuji

【LILI LIMIT】

01.A Short Film

02.Observe

03.Unit Bath

04.Get Up

05.enclose desire

06.ERION

【THE NOVEMBERS】

01.新曲 (タイトル未定)

02.Hallelujah

03.きれいな海へ

04.1000年

05.dysphoria

06.こわれる

07.Blood Music.1985暗い虹

08.Cradle (L'Arc-en-Cielカバー)

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