クアイフから君へ。大切な人に本当に
伝えたいこと
Photography_Kenya Chiba
Interview&Text_Sotaro Yamada
Edit_Satoru Kanai
クアイフ:
森彩乃(もりあやの:Vo./Key.)、内田旭彦(うちだあきひこ:Ba./Cho./Prog.)、三輪幸宏(みわゆきひろ:Dr.)からなる“絶対的、鍵盤系ドラマチックポップバンド”。2012年3月、音大クラシックピアノ科出身で数々のピアノコンクール受賞歴を持つ森彩乃を中心に結成。
森 : いよいよなので、本当に身が引き締まります。気合い十分です!
内田 : 良い意味での緊張や責任を感じていて、充実してますね。
三輪 : メジャーデビューを発表したのが去年の12月で、CDを出すのが今年の11月。ファンの方には「大変お待たせいたしました!」という気持ちです。自分としては割とすぐだったんですけど、みんなからしたらムズムズする期間だったと思いますね。
――以前あるインタビューで「バンドはメジャーでやっていけるのか?」というような話をされていたのがとても印象的でした。その問題意識に変化はありましたか?
内田 : 基本的にベクトルは変わっていないです。ただ、考えが深まった1年ではありました。以前は「コアな音楽ファンに評価されたい」という気持ちで音楽を作っていたんです。でも、自分たちが思い描いている理想といまやっている音楽が微妙にリンクしてないんじゃないか? ということに気付いたんですよね。きっかけは名古屋グランパスのサポートソングを担当させてもらったことだと思います。
理想としたものに近付くためには何をしなければいけないのか。そう考えると、「これも良くしなきゃいけない」「あれも変えていかなきゃいけない」そんなふうに改善点が見えて、歌詞やメロディの作り方、ライブのやり方が変わってきました。
『愛を教えてくれた君へ』と『いぬやし
き』のこと
内田 : 今回はTVアニメ『いぬやしき』のお話をいただいて書き下ろしたんですね。原作の漫画は読んでいたので、そこから感じたものを曲にしようと。この『いぬやしき』というアニメは、58歳の犬屋敷壱郎さんがロボットになってしまって、自分の存在意義を自問しながらいろんな人を助けていくというストーリーで、ジャンルとしてはSFアニメですよね。でも、誰にでもある当たり前の喜びや醜さを日常的なメッセージとして伝えているアニメだと思うんです。だから『愛を教えてくれた君へ』という曲も、ただ単に「誰かに会いたい」というだけのハッピーな曲にするのは違うなと思いました。たとえば1サビには「今の日々を愛さないで そこにぼくはいないんだよ」という歌詞があります。人間の汚さというか、本音の部分を隠さずに出したいと思ったので、こういう曲になりました。
――確かに、この曲は漫画のラストまで読んでから聴くとすごく腹に落ちるし、よりエモーショナルに感じられます。
内田 : それと、曲を書いていたときにぼくは祖父を亡くしているので、自分の生活が『いぬやしき』という作品とリンクした部分もあったと思います。『いぬやしき』のための曲ではあるけど、自分ともリンクしたのでいい距離感でつくれました。
――書き下ろしで作品をつくるとき、その対象と自分たちとのあいだで、なにか齟齬のようなものができることはありませんか?
内田 : いままでは、音楽に限らず日常生活でも「自分たち=自分たちが思っていること」だと思っていたんです。でも「自分たちが思っていること」は、環境が変われば変わったり、迷ったりするものですよね。ということは、自分の周りにいる人や物こそが、自分たちを写し出す鏡みたいなものなんじゃないかって思うようになったんです。正解はいつも自分たちの中にあると思っていたけど、答えは周りにもあるんじゃないか――。そう考えることで曲の作り方や距離感が変わってきて、齟齬のようなものはほとんどなくなりました。
――何がきっかけでそう思えるようになったんでしょうか?
内田 : クアイフに関わってくれる人が増えて、周りの人に助けられることが多くなったからだと思います。自然にいろんなことが見えてきて、そういう考えになりました。周りにいる人が自分を写し出す鏡だということで言えば、このメンバーに出会って音楽をやってることも偶然のようで必然性があって、それは運命なんだと思います。
「こんなに苦しくて悲しいことなのに、
誰にでも起こるのは不思議」(内田)
クアイフから君へ。大切な人に本当に伝えたいことはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。