TOKYO MUSIC CRUISEに「帰ってきた」大
人たち。

大人は忙しい。大学生の頃は「サブカルの帝王」と呼ばれたアイツも、今やすっかりエンタメとは疎遠になってしまったようです。音楽にしろ映画にしろ、大人になるとそれらに費やせる時間も限られてきますから。こんな仕事をしていると、自分がピーターパンにでもなったような気がして、たまに寂しくなることがあります。「みんな変わっちまったな・・・」と、やさぐれてしまうこともしばしば。

けれども、8月12日から二日間に渡って開催された大人の音楽フェスTOKYO MUSIC CRUISE 2017(以下、TMC)には、かつて音楽を愛してやまなかった大人たちの姿がありました。東京タワーを間近に臨む『ザ・プリンス パークタワー東京』という格式の高い場所で、彼らはまるで初めてCDを買ったキッズみたいに目を輝かせていたのです。
いや、「かつて」というのは語弊があるかもしれません。みんな忙しいだけで、元々持っている音楽愛は失われていなかった。むしろ以前よりも音楽に対する思いが増しているかたもいたでしょう。今回はそれがはっきり分かり、その事実だけで僕は十分に嬉しかった。
音楽の内容で考えても、TMCのようなイベントは貴重だと思います。ここまで真面目にアーバンな音楽を追求したフェスティバルは極めて稀。Nao Yoshioka一十三十一(ひとみとい)も、それぞれのスタイルを遺憾なく発揮していました。オーセンティックなR&Bやソウル・ミュージックと接することができる、数少ない場所でしょう。原体験にディアンジェロがいた身としては、こういうイベントは本当にありがたい。後追いで彼を知った二十代の僕よりも、彼が青春の只中にいた今の三十代・四十代の先輩方にとっては、それこそ「帰りたい場」であるはず。
ハイソでリゾート的。緩くてエモいプリンス芝公園。
最近の音楽フェスでは、無料ステージが設けられることが珍しくありません。フリーミアム時代に即した変化だと思います。音楽が軽んじられてしまう可能性はゼロではないけれど、「誰でもそこで鳴っている音に接することができる」という意味では、悪いことばかりでもないのかなと。

実際、TMCの『パークステージ』では自由に音楽を楽しむ人たちの姿が見られました。近くを偶然通りかかった外国人グループ、音楽の英才教育を施そうとしているお父さんとその子供、ビビッドなカラーのワンピースに身を包んだ女の子二人組。音楽の周りにある景色って、本来はこれぐらい多様なものだったのでは。
素敵だったのは、結婚して30年以上経つと言うご夫婦。一緒にKelpie & Chappyのライブを観ていたのだけれど、羨ましくなるぐらい仲が良かったんです。ベタベタするわけでも、気まずい空気が流れるでもなく、ただ一緒に音楽を聴いている。ベン・E・キングの『Stand By Me』のカバーに揃って感動する姿には、どうしたって憧れてしまいます。こんなふうに年を重ねてゆきたい。

Kelpie & Chappyの素朴かつパワフルなアコースティックセットを聴きながら、「いつかは僕も…」と決意を固くしました。
シンガーのKelpieと、ギタリストのChappy。
ブルーノ・マーズの『That’s What I Like』のカバーも披露。

同じく『パークステージ』にて、昼間と夕方の二部構成でリラックス・ヨガのセッションがありました。夕方の部は雨もパラついていたのですが、かえって気持ちが良かったです。都会の喧騒を忘れるほど、静かでリラクシングな空間が広がっていました。
リラックス・ヨガ、昼の部の様子。

両手に抱えきれないほど悩みはありますが、もうどうでもよくなりました。この日のパークステージに広がっていた景色を見ていたら、心が少しだけ軽くなったのです。ここに来て良かった。

(次ページにてライブレポ)

音楽愛にあふれていた、TOKYO MUSIC CRUISE 2017はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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