堀込泰行『GOOD VIBRATIONS』インタビュー

堀込泰行『GOOD VIBRATIONS』インタビュー

ー 先程、ニュアンスを飛び越えた発想が出てきたと言われていましたが、特にどういう部分でしょう。

最初はもうちょっとクスっとなるような雰囲気の歌詞だったんです。櫻木さんの作ってきた歌詞で先程あげたいくつかの、耽美的で少し廃退的な美しさみたいなところに僕は惹かれて、もっとそちら側に歌詞を寄せていきたい気持ちが芽生えてきたんです。それにこの曲調とD.A.N.のサウンドを考えてもやはりそういう方が面白いんじゃないかと思って、歌詞をどんどんいじくっていったんです。

ー そしたら楽しくなってきたと。

そうです(笑)。

ー じゃあもしかして「穴に落ちるように突然」などは堀込さんの案ですか?

そうです。「穴に落ちるように突然」ってちょっと面白い表現かなと思ったので、言葉を変えたけど、櫻木さんが元々考えていた面白味のようなものを自分なりに残そうと思ったんです。

ー 大人だからこそ恋がしたいという発想は、大人だからこそ歌えることだと思うし、素敵な感覚だと感じました。

普通ならもうちょっと本当の愛とか大きな意味での愛みたいなことを大人は欲するというか、欲しなきゃいけないものだとされていると思うんです。でも実は大人だからこそ恋がしたい気持ちは、案外みんな持っているんじゃないかと思って。

ー 大人の本音みたいな。

そうそうそう(笑)。あえてそう言ってしまうのは面白いかなと思って。ちょっと細かい話ですが、最初に頂いた歌詞は「“あえて”恋がしたい」だったんです。

ー「もう大人になったんだ〜」に繋がる部分ですね。

そうです。でも “あえて”より、“だから”の方が、何て言うんだろう……感覚的にしっくり来たんですよね、僕としては。それで変えさせてもらいました。

ー この曲も歌詞から先に?

いや、曲からです。すごくシンプルなデモを櫻木さんに渡して、D.A.N.の三人が曲を膨らましてくれて、それに対して櫻木さんが歌詞をのっけてくれたんです。曲自体は出来るだけコラボしてくれるアーティストの自由がきくように、デモではピアノやアコースティックギターやドラム、あとは歌くらいにして。

ー 本当にシンプルですね。

そこからD.A.N.流に広げてもらいました。それは他のアーティストでも同じでしたけど。

ー 本当にコラボの良さが出ていますよね。この曲もトラックのクールさとミニマルさに彼ららしさを感じました。

そうですよね。繰り返しの心地よさがD.A.N.の魅力だと思っていたので、それが上手く自分の歌メロに反映されたと実感しています。

ー 今回、全曲コラボアーティストの方がサウンドプロデュースをされていますが、それぞれに化学変化が生まれたと思いますか?

思います。サウンドの毛色がそれぞれ違うので、僕がプロデュース出来る相手ではないというか(笑)、僕としては相手のサウンドや美意識を求めていたので、お任せしました。その中で自分が思ったことは伝えましたが、どの曲も良い意味での驚きがありました。例えばWONKとの“Dependent Dreamers”。僕が渡したデモはオーソドックスな古いR&Bを基調としたポップスみたいな感じだったんです。でもWONKらしくジャズ的にいじってきたので、仕上がりを最初に聴いた時はちょっとびっくりしたけど、気がついたらそこばかり聴きたくなるような面白い体験でした。

ー 最初と打ち込みのドラムが入った後では曲の色も変わってきますし、このEPの中で一番ツインボーカルが際立っているように感じました。

(長塚)健斗さんの方から「お互いの歌い分けを決めたいので、連絡をとりましょう」と言ってくれて、最初はメールでやりとりしながら僕から2つくらいアイデアを出したうちのひとつを選んでもらって、最終的な部分は会って決めました。

ー ヘッドホンで聴くと良くわかりますが、イントロとエンディングのLRのバランスも面白かったです。

あー、はいはい。彼らはMIXにもこだわっていました。結構そういう部分にもトリッキーな遊びを取り入れているあたりがWONKらしいですよね。

ー そうですよね!メロディは堀込さんらしいけどサウンドはWONKらしい!

うんうん!

ー tofubeatsさんとの“THE FLY”は曲調もそうですし、他の曲との音質の違いが興味深いです。

ちょっと歪んだ感じの声の質になっていますもんね。

ー “クモと蝶”(馬の骨)とも違いますが、歌詞では人間の性(さが)が持っているユニークさと怖さのバランスが、スパイシーに表現されていて。



本当はもう少し恋愛の歌というか、飛んで火に入る夏の虫的な、分かっているけど恋というものに振り回されて生きてしまうような(笑)、そういうことを歌おうと思っていたんです。でも書いているうちにちょっと違う雰囲気になってきたんですよね。食虫植物に蝿が捕らえられるように、例えばお酒に溺れる人とか女性関係に溺れる人とか。色々なものに溺れて快楽に舞い上がると良い気分にもなるけど、度が過ぎると泡のように消えてなくなる。そういう歌詞になりました。

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