【椎名慶治 インタビュー】
活動20周年を迎えるというタイミング
で普段はやらないことをするのも面白
いかなと

アーティスト活動20周年を迎える椎名慶治のニューシングル「凹凸」(おうとつ)。ソロとして7年、そして高橋まこと(ex.BOØWY)率いるJET SET BOYSのヴォーカルとしての活動を経た、今の彼の歌声は未だ進化を遂げる真っ最中だ。そんな椎名に肉薄!

 2018年にアーティスト活動20周年を迎える椎名慶治。中学生で自作の楽曲を作り始めた椎名は、解散したSURFACEの相棒であった永谷喬夫と高校で出会い、オリジナルの曲を作り始める。“CDを作ったからどこかに送ってみよう”とオーディションに応募したことがきっかけでアーティストとしての道を進み始めた。
「“あっ、20周年か”と思った時に振り返ってみたけど、あまり思い出せなくて。デビューの時のことは衝撃もあったり、新しいことばかりだったから思い出せるんだけど。AXIAのアーティストオーディションにデモテープを送って、8,000組の応募者の中からファイナリストまで残ったんだけど、最後に落とされたんですよ。審査員長が武部聡志さんだったんだけど、そのあとに事務所が決まって、“お前たちのプロデューサーだ”って引き合わされたのも武部聡志さんだったっていう驚きのデビュー秘話を鮮明に思い出したくらいで(笑)。そこからは記憶が曖昧なんですよね。時系列がぐにゃりとしているような感覚で。ひとつひとつの出来事は覚えているんだけど、気付いたら解散まで駆け抜けてた感覚ではありますね」
 その武部聡志のプロデュースで制作されたデビューシングル「それじゃあバイバイ」がテレビドラマ『ショムニ』のオープニング曲となり、いきなり世を席捲する。初めて人前で演奏することになったデビュー曲はテレビの音楽番組での披露となり、目の前には3,000人の観客が。その光景と緊張感はとても鮮烈に記憶に残っているという彼は、そこから12年という時間をSURFACEとして走っていくことに。
「これがね、悔しかったことや後悔ばかり覚えてるんですよ。後味悪いようなことをずっと引きずっていたりする。音楽活動は辛いことばっかりだし、プレッシャーを感じ続ける日々だけど、それでもどうして続けているかって、やっぱり好きだから。好きじゃなきゃ続けられない。純粋に歌が好きだし、音楽が好き。それ以外は何もない。…カッコ良い(笑)。毎回、産みの苦しみもある。そして、出来上がった時の喜びも。でも、その喜びは忘れていくんですよね。瞬間の喜びは、次の制作の時には苦しみの中で忘れていくんですよ。その繰り返し。でも、“もうこれで満足だ”と思うほどの充実とか充足を感じたら、そこでもう次へ向かう気持ちにはならないとも思うから。やっぱり苦しんで、喜んで、苦しんで。それが力になってきたと思います、この20年」
 ソロアーティストとしての活動は今年で7年。そんな繰り返す苦しみのひとつをまた経て、想いを込めたシングル「凹凸」が完成した。プロデュースはソロ活動でともに歩み続ける山口寛雄。今回の「凹凸」を制作するにあたって、久しぶりに顔を合わせ、山口邸で制作を開始したが、しばらく会っていなかったとしても相変わらずのあうんの呼吸感で、求めていた音をすぐに掴み、想像していた音はどんどん楽曲へとかたちを変えていった。
「最初はまったくビジョンはなかったんです。JET SET BOYSのツアーが終わったばかりでもあったから。でも、スタッフから“秋口に出すのでバラードはどうでしょう?”という話があったんです。僕自身、バラードは得意なほうではないので、あまり出していないんですが、アーティスト活動20周年を迎えるというタイミングで普段はやらないことをするのも面白いかなとも思って、山口寛雄のところへ出掛けて。ソロでは“バラードだけど跳ねる音”という曲を作っていなかったから、“スウィングしているバラードは新しくていいね”ということでデモ作りしたら、本当にイメージはすぐに楽曲になっていきました。これが“あうん”ですかね(笑)」
 歌詞はJET SET BOYSでも一緒に歌詞の共作をしている、椎名の小学校からの同級生でもある作詞家の野口 圭に声を掛け、ともに作り始めた。
「言葉を上手い具合にやわらかく、でも重たさもあるような何気ない言葉のやりとりにしたいという想いがあったので、そこを野口とはたくさん話し合いましたね。なかなか着地点に辿り着けなくて、苦心しましたけど。何回も書き直して、書き直してようやく書けました。でも、答えが見えづらい歌なので、どうやって歌おうかって。自分で歌詞を書いてもいますし、楽曲制作もしていたんですが、いつもの自分通りで歌うと届かない感じがして。それでこの曲はねっとりと粘り気のあるような歌い方をしてみたら、すごく合いました」
 “歌での表現がJET SET BOYSとして活動する中でどんどん広がっている”と椎名。これまでSURFACEでもソロとしても、歌声の表現に関して考え込むことはなく、直感で歌ってきた。しかし、それはロック界の諸先輩たちと結成したJET SET BOYSでは通用しなかった。テクニカルな進化を、彼らとの活動を通してしてきたことに、改めて気付けた一枚なのだとか。そんなスウィングするバラードとともに収録されたのはライヴユースな「チッ!」。この曲にも想い入れがあると語る。
「ベストアルバムのツアーの時に、“これからもまだまだ頑張っていくよ”という宣誓のような新曲もやりたいと思って作ったんです。お客さんとやりとりしたいから、サビはずっと同じフレーズで歌おうと思って。実はこの曲は昨年12月に亡くなった橋口靖正と一緒に作ろうって言ってた曲なんですよね。その時からタイトルは“チッ!”で。橋口と作るはずだった曲をライヴで披露しようと。追悼の曲ではあるんだけど、重たく深く考えてほしくはなくて、一緒に盛り上がってもらいたい。みんなの中で橋口が記憶として残っていてもらいたい、そんな曲です」
 2018年への期待感を胸にこのシングルを聴いてほしい。

取材:えびさわなち

シングル「凹凸」2017年11月11日発売 UNIVERSAL GEAR
    • POCS-9172
    • ¥2,700(税抜)

ライヴ情報

『Yoshiharu Shiina LIVE 2017「Ballade」』
11/22(水) 東京・ラドンナ原宿
11/23(木) 東京・ラドンナ原宿
11/25(土) 大阪・Live Restaurant "Flamingo the Arusha"
11/27(月) 愛知・LIVE & DINING Breath
12/01(金) 東京・ラドンナ原宿 ※追加公演

『Yoshiharu Shiina Special Live 2017「BIRTHDAY」』
12/30(土) 東京・品川インターシティホール

『Yoshiharu Shiina Special Live 2017「COUNTDOWN」』
12/31(日) 東京・品川インターシティホール

『Yoshiharu Shiina 20th Anniversary TOUR「タイトル未定」』
[ 2018年 ]
6/30(土) 福岡・DRUM Be-1
7/07(土) 福島・郡山Hip Shot Japan
7/08(日) 埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
7/14(土) 大阪・心斎橋JANUS
7/15(日) 大阪・梅田Zeela ※男性限定
7/21(土) 北海道・DUCE
7/28(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
8/05(日) 東京・渋谷WWW X

椎名慶治 プロフィール

シイナヨシハル:1998年、SURFACEのヴォーカリストとしてシングル「それじゃあバイバイ」でメジャーデビュー。10年6月にSURFACEが解散するが、同年11月にミニアルバム『I』でソロデビュー。ソロ活動と平行して結成したAstronauts(May’n&椎名慶治)では『仮面ライダー フォーゼ』のエンディングテーマを歌い、さらにタッキー&翼への作詞提供など、活動の幅は多岐にわたる。現在、高橋まこと(ex:BOØWY)率いるJET SET BOYSのヴォーカルとしても活動中。2018年5月27日にアーティスト活動20周年を迎える。椎名慶治 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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