【ライブレポート】the GazettE、暴
発する本能に衝き上げられた<SPOOK
Y BOX 2>第二夜“LUCY”

10月31日、the GazettEのハロウィンライブ<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>の豊洲PIT公演第二夜“LUCY”が開催された。
<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>は“静寂の狂気と暴発する本能が混ざり合う両極の二夜”というテーマのもと、the GazettEが持つ二面性を表現するハロウィンコンセプトライブだ。10月30日に行われた“アビス”ではメンバーが白衣を着用し名もなき病棟をイメージしたセットの中で、静かな狂気を感じさせる楽曲のみで構成されたライブを行った。そして続く10月31日の“LUCY”は「暴発する本能」をテーマに、事前に公開されたトレーラー映像にもあったとおり“何処までも激しいライブ”を行った。
怜悧なドクターに扮した“アビス”の衣装とは異なり、この日のメンバーは血塗られたシリアルキラーへと変貌。RUKI(Vo)は赤いシルクハットを被りチェーンソーを手にした“CHAIN KILLER”、麗(G)は金髪のロングヘアに鉈を捧げ持つ“MAD SISTER”。そして葵(G)はガスマスクで顔を覆い鉄の爪を身に付けた“DEADLY CRAW”、REITA(B)は全身を有刺鉄線で覆った“PSYCHO SLUGGER”、戒(Dr)は鎖鎌を武器に特徴的なアイメイクを施した“PHANTOM RIPPER”と、徹底したサイコホラーなスタイルだ。昨年のハロウィンライブ<the GazettE HERESY LIMITED THE DARK HALLOWEEN NIGHT [-SPOOKY BOX-]>ではメンバーそれぞれが「CREEPY DEAD PUPPETS」というダークなキャラクターに扮していたが、そのときの衣装にもどことなく通じる。今回も「CREEPY DEAD PUPPETS」として、メンバーのキャラクターにぴったり合った衣装だ。
この装いだけでも既に前日との差が明白なのだが、ライブの雰囲気もがらりと変わっている。“LUCY”一曲目はハイスピードナンバーの「RAGE」。憤怒をテーマに書かれたこの楽曲で、初っ端から本能が暴発する。MCも煽りもなかった前日と違い、RUKIも「本気でかかってこい!」とファンへ叫ぶ。続いて「RAGE」と同じく最新アルバム『DOGMA』に収録されている「DAWN」でぐんぐんと気持ちがかきたてられていく。歌詞にある通り、まさに“激情絡み合う狂宴”の始まりだ。
死や救いについて考えさせられた“アビス”のセットリストとは異なり、この日のライブは「HEADACHE MAN」「GABRIEL ON THE GALLOWS」のように怒りや侮蔑などの生々しい感情がむき出しの楽曲で構成されている。MCではRUKIが「底なしの地獄へようこそ。今夜愛しいお前たちの首を狩りに来ました。生きて帰るか殺られるかはお前ら次第だ!」とシリアルキラーよろしくファンを煽り立てる。もちろんファンも大きな声でそれに応え、間髪入れずに繰り出される激しい楽曲に身を投じていく。
REITAもデスボイスで応酬する「CLEVER MONKEY」、RUKIが「今夜は死にたがりが多いようだな、まだまだこれからだ!」と言って始まった「Maggots」などハードな楽曲が続く。そんな中でも冷静に正確なビートを刻む戒。葵と麗はいつもより感情的にギターを奏でているように見える。そしてファンは演奏にあわせ頭を振り続ける。ステージもフロアも動きが止まる隙は、皆無だ。
そのままの勢いでライブも後半に近づき、「VERMIN」ではフロア後方までモッシュの渦が巻き起こる。メンバーの「fall down」というコーラスに合わせて無数の人がまるで“害虫(VERMIN)”のように飛び跳ねる様は圧巻だった。そんなファンを見てRUKIは不敵な笑い声を上げてエモーショナルなナンバー「The $ocial riot machine$」を歌い始める。だがもちろんここまで闘ってきたファンはその複雑なリズムにも振り落とされることはなく、フロアの盛り上がりはさらに高みへ。「DISCHARGE」では「まだまだ死ぬには早いぜ」というRUKIの言葉に呼応するように、この日一番激しいヘッドバンキングと折りたたみの波が起こった。
まさに怒涛の一時間。これほどまでに激しいセットリストは未だかつてなかったかもしれない。ここまでフロアを煽り続けてきたRUKIからも「最高だ豊洲!」の言葉が飛び出す。そして「ここを地獄に塗り替えて見せる。本当の地獄へようこそ!」の言葉で始まったのは、「関東土下座組合」。これが無ければ“暴発する本能”は完成しないだろう。メンバーたちは一気にステージ前方へのりだし全員でファンを煽る。フロアでは激しい“土下座ヘドバン”が何度も何度も繰り返され、熱気は最高潮に。メンバーもファンも一体となって、この何処までも激しいライブが終幕を迎えた。
もちろん本編が終わったからといって、ここまで上げに上げられた熱気が冷めるはずもない。メンバーが幕間に消えてすぐに起こったアンコールに応え、再びステージに上るthe GazettE。そこで戒は「コンセプト関係なしに、これが俺らの姿。後先考えずに全員ここに首を置いてかえりましょう!」と宣言。そして肉声で「かかってこい!」と叫び、獣のように本能をむき出したファンに向け「INSIDE BEAST」を繰り出す。最高のアンコールの幕開けだ。もちろん体を止める隙は与えてくれない。続く「Psychedelic Heroine」で皆がもみくちゃになるくらい踊り暴れたあとは、MC。
RUKIは「4公演やって改めて思ったんですが、視覚的にもバンドの二面性を表現できるのはとても嬉しいし、刺激を受けた」と<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>を振り返る。そして「こういうことができるのがヴィジュアル系の魅力なんじゃないかと思います」とも。ヴィジュアル系バンドは、楽曲の世界観を美しいメイクや衣装でさらに深く表現できる。RUKIが言うとおり、この<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>はヴィジュアル系の良さを体現できたコンセプトライブだったと思う。MCの最後には「またこうしておもしろいことやれたらと。近い未来、またヤバイことするんで楽しみにしててください」と今後を期待させる一言も飛び出す。前日の“アビス”でも「the GazettEには今回の公演で魅せる二面性だけではなくもっと色んな姿があるので、どんどん魅せていきたい」と語っていたため、否が応にも期待は高まる。
「今夜も聴かせてくれ」といって始まったアンコールラストは前日と同様、「TOMORROW NEVER DIES」。「死ぬな」と直接的に語りかけてくるこの楽曲は、この2デイズを締めくくるに最もふさわしいものだったと思う。そしてこの日もまだライブを終えたくないファンたちからダブルアンコールの声が起こり、最後の最後にお馴染みの踊れるナンバー「LINDA 〜candydive Pinky heaven〜」が演奏された。the GazettEの楽曲に表現されているように、不条理や理不尽な世の中で憤りを覚えることもあれば死に思いを馳せることもあるかもしれない。だが明日は必ず来るし未来も必ず来る。例えば昨日は今日のライブが楽しみで生きていられたし、今日のライブが終わってもまた新たな楽しみが待っている。ラスト二曲にはthe GazettEがそんな思いを託してくれているのではないかと思えた。
the GazettEはこの公演終了後に、来年2月28日に<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>の模様を収めたDVD&Blu-rayを発売、3月10日には来春リリースとなるニューアルバムに収録される新曲を公開することを発表。その発表を聴いたファンからは未来を楽しみにする大歓声が上がっていた。

RUKIが本公演で語っていたように、今後どのような“ヤバイこと”が起こっていくのかに期待したい。
取材・文◎服部容子(BARKS)
セットリスト<THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY>第二夜“LUCY”


2017年10月31日 豊洲PIT

01.RAGE

02.DAWN

03.HEADACHE MAN

04.BEFORE I DECAY

05.GABRIEL ON THE GALLOWS

06.VENOMOUS SPIDER’S WEB

07.CLEVER MONKEY

08.Maggots

09.COCKROACH

10.VERMIN

11.The $ocial riot machine$

12.UGLY

13.BLEMISH

14.DISCHARGE

15.関東土下座組合
EN01.INSIDE BEAST

EN02.Psychedelic Heroine

EN03.Filth in the beauty

EN04.ATTITUDE

EN05.TOMORROW NEVER DIES
WEN01.LINDA 〜candydive Pinky heaven〜
■『the GazettE HALLOWEEN NIGHT 17 SPOOKY BOX2 THE DARK HORROR SHOW アビス/LUCY LIVE AT 豊洲PIT 2017.10.30-10.31』(DVD・BD)

2018年 2月28日発売

詳細は後日発表


■NEW SONG「タイトル未定」

2018年3月10日発売
■NEW ALBUM『タイトル未定』

2018年春 リリース予定

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