街全体がデザインミュージアム! 革
新的なクリエイティブフェス『DESIG
NART 2017』をレポート

東京の街全体を舞台に、デザインとアートの領域を横断するフェスティバル『DESIGNART(デザイナート) 2017』(期間:2017年10月16日~10月22日)が開催中だ。今回が記念すべき第一回目の開催となる。
「デザイナート2017フィーチャー」に選出されたデザイナーのピエール・シャルパン個展「From the studio」。今回が東京初個展となる。 [map:30] @ワールド北青山ビル1階 エントランス
感動を与えてくれるモノやコトを表し、その素晴らしさを発信・共有していく活動そのものを示す造語「デザイナート」。世界中の良質な伝統産業やものづくりを通じて、 “感動のある暮らし”を伝えたいという意志が込められた本企画。そのみどころをレポートしよう。
会場となる72の施設が点在する主なエリアは、表参道から原宿、渋谷、代官山、六本木。展示作品もデザインにアートから、インテリアやファッション、テクノロジーと幅広い。期間中は展示作品をその場で購入することもでき、コンセプトである「Emotional Life〜感動のある暮らし〜」を体感することができる仕組みとなっている。
What is normalをテーマに、オランダ人デザイナーベルトイアン・ポットの「Masks」シリーズを中心に構成された個展『Rope Works』 [map:42] @CIBONE Aoyama
広範囲に及ぶ会場巡りを手助けするのは、無料のトラベルアプリ「ON THE TRIP(オン ザ トリップ)」。DESIGNARTオリジナルの公式オーディオガイドを聞いて作品への理解を深めるとともに、会場近辺の歴史的建築物なども巡ることができる。まさに、ショートトリップ気分でフェスを楽しむことが可能だ。
建築家の長坂常による作品。アンティークのちゃぶ台を、あえて素材感や制作過程が読みとれる状態で漆塗りを施した。ロイヤルブルーの絨毯が印象的な「カラー」の店内に展示。 [map:25] @kolor
デンマークの人気インテリアブランド「HAY」。キッチングッズに焦点をあてた「HAY KITCHEN MARKET」として展開。最もお買い得なDESIGNARTとも。 [map:40] @ifs未来研究所 未来研サロン WORK WORK SHOP
意外性に心がオドる。
国とジャンルを超えたコラボレーション
『DESIGNART』の魅力のひとつに、場所✕表現者の掛け合わせによる面白さがある。
『DESIGNART』にて行われたのは、出展会場とデザイナーやアーティストを、それぞれのコンセプトにあった者同士で引き合わせる「マッチング」だ。デザイン・アートの分野で活躍しているメンバーによる人脈と知見を活かしたマッチング。そこから生まれたユニークな化学反応は、先の東京五輪を見据えた上での「国際交流」や「日本文化の再発見」といった課題を目に見える形に落とし込んでいる。
[map27] @MACKINTOSH
英国を代表する老舗ブランド「MACKINTOSH」が手を組んだのは、秋田の伝統工芸である「わっぱと川連漆器」だ。正統派ブリティッシュスタイルが整然と並ぶ店内で、わっぱと漆器が置かれた光景にはじめは度肝を抜かれるものの、その不思議とうまい具合に融合している状況に魅了されていく。
[map:3] @フレッドペリーショップ東京
テニスウェアブランドからスタートした「FRED PERRY」は、デザイナー清水久和によるテニスをテーマにした家具シリーズを展示。「イギリスの産業革命時代の工場をイメージした」という店内で、テニスラケットの特徴をそのまま椅子に転じた「ラケット・チェア」(天童木工)や、テニスロッカーをモデルにしたラック、そして本物そっくりのテニスボール型の小物入れがユニークな魅力をふりまいている。
若いアイデアが自由に交錯
プロトタイプに秘められた未来
『DESIGNART』はビジョンのひとつとして「若手支援」も掲げており、積極的に後進の躍進を後押ししている。
島影圭佑が開発した眼鏡型デバイス「OTON GLASS」。視覚的な文字情報を音声に変換することで「読む」行為をサポートする優れもの。 ⁅map:67] @ORANGE BRAINERY
“アイデアのまちあわせ場所”をうたう多目的スペース「ORANGE BRAINERY」は、『プロトタイプ展 〜未来のデザイン〜』を展開。デザイナーやアーティストに限らず、様々なジャンルのクリエイターの試作品や、クラウドファンディングで実現を目指すアイデアなどの「プロトタイプ」にフォーカスし、トークイベントやプレゼンテーションでアイデアを実現するための課題を来場者とともに探っていく。
ペットボトルのキャップをボルト・ナットととらえて様々な形に組み立てるデザインプロジェクト「CAP NUT」。」 [map:56] @100 BANCH HARVEST
“次の100年につながる新しい価値の創造に取り組む”として実験区「100 BANCH(東京渋谷ヒャクバンチ)」は、若い世代とともに取り組む実験的なプロトタイプやアート作品を展示。パナソニックとの共同プロジェクト「FUTURE LIFE FACTORY」では、味と健康にこだわったオリジナルレシピのドライフルーツバーを提供し、“次代の豊かな暮らしのアイデア・体験”を提案する。
[map:31] @KASSETTE OMOTESANDO
コーヒースタンドを併設したギャラリー「KASSETTE OMOTESANDO」では、デザイナーの松山祥樹が「Small World Project」を展示している。多くの人がバイクで魚を売り回るインドネシア。その漁村地域では炎天下による魚の値崩れや売れ残り、食中毒などの問題が頻発しているという。この課題に対し、松山が提案したのがバイクの電源で稼動する小さな冷蔵庫だ。先進国でも使えるモデルにと、機能性だけでなくデザイン性も高い冷蔵庫を、活動の概要とともに紹介している。
モノ持たぬ時代だからこそ、
日常に美のひとときを
『DESIGNART』始動の発端には、「低単価の家具や洋服が当たり前になり、本当に心から気に入ったものと寄り添う機会が少なくなってしまったのでは」という危機感がある。冒頭で述べた「Emotional Life〜感動のある暮らし〜」というコンセプトを体感するにはインスタレーションが最適だ。
イタリア発のトップ家具ブランド「B&B ITALIA TOKYO」は、異なるアプローチで二つの空間を展開する。
[map:35] @B&B ITALIA TOKYO
若手建築家・沖津雄司が提案するのは、光のインテリアプロダクト「lightflakes」。ペットボトルと同じ素材からなるレンズで出来た「lightflakes」を精緻に組上げると、自然光は幾重にも透過、反射され、美しいオブジェとして空間を演出する。
[map36] @ B&B ITALIA TOKYO
もう一方では、平山展子率いるファッションブランド「レスイズモア プラス(Less is more+)」と、植物学者をテーマにしたユニット「ボタニスト(BOTANIST)」の花畑知香が独特の世界観を展開。相反する「強さと儚さ」というテーマを、映像表現も駆使しながら表現し、アートとデザインの要素を服という日常に取り入れ、時代を超える可能性を追求している。
[map:55] @TOMORROWLAND渋谷本店
セレクトショップ「TOMORROWLAND」はテキスタイルデザイナーの香月裕子と組み、独自にセレクトしたインテリア用品と、香月のテキスタイル作品を融合して展示。折り紙をモチーフにしたクッションや、枯山水をモチーフにしたラグには、古来より日本の文化にひそむ日本人のあそび心を表現している。
さて、ざっと本企画をポイントに沿って紹介したが、まだまだほんの一部である。作品目当てで巡るか、作家目当てで巡るか、会場目当てで巡るか、はたまた自由気ままに流れで巡るか。その楽しみ方も人それぞれで、新たな出会いや発見も未知数である。すでに来年の開催が予告されている『DESIGNART』。世界屈指のミックスカルチャー都市・東京で、ぜひ自分だけの“お気に入り”を見つけてほしい。
イベント情報

DESIGNART 2017
会期:2017年10月16日(月) 〜10月22日(日)
会場:表参道・外苑前/原宿・明治神宮前/渋谷・恵比寿/代官山・中目黒/六本木・広尾
出展箇所70箇所以上
主催:DESIGNART 実行委員会

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