ガガガSP20周年で愛や想いのつまった
フェス「長田大行進曲2017」マキシマ
ム ザ ホルモンや銀杏BOYZからマイヘ
アまで熱く燃えた2日間をレポート

ガガガSP presents 長田大行進曲2017 2017.9.30(一日目) 神戸空港島 多目的広場内 特設野外ステージ
1997年、神戸にて結成。今年、バンド結成20周年を迎えたガガガSPが9月30日(土)、10月1日(日)の2日間、地元・兵庫県神戸市の神戸空港島にて『長田大行進曲2017』を開催した。ガガガSPの20年間の行いが良かったのか、絶好の秋晴れに恵まれた両日。全46アーティストが熱演を繰り広げ、3つのステージからは最高の音楽が鳴り続けた。
抜けるような青空の下、OPアクトとして登場した大阪紅牛會の賑やかな演奏で幕を空けた初日。NAGATAステージ、SUMAステージと2つに別けられたメインステージには、忘れらんねぇよ、KNOCK OUT MONKEY、花団、MOROHAと強烈な個性を放つ出演者が次々登場し、強い陽射しが照りつける会場をさらに熱くする。
大阪紅牛會 Photo by青木カズロー
忘れらんねえよ Photo by中尾友香
KNOCK OUT MONKEY Photo by青木カズロー
花団 Photo by中尾友香
MOROHA Photo by青木カズロー
会場後方に設置されたITAYADOステージでも、オメでたい頭でなにより、流血ブリザードなど、新進気鋭の個性派バンドたちがたくさんの観客を集めて笑いと熱狂を生み、青空の下に笑顔が溢れる会場。鳴り止むことのない音楽と、次々と起こる“何か”は観客を少しも飽きさせることなく、1日目の数時間を過ごしただけで、楽しい2日間になることを確信した。

流血ブリザード Photo by滋賀作そら
オメでたい頭でなにより Photo byニイミココロ
お昼を少し過ぎた頃、SUMAステージに登場したのはSA。「今日出てるバンドで一番年上です」「初めて観る人、怖いと思った?」とTAISEI(Vo)は冗談っぽく語ると、十分なキャリアを感じさせる重厚感と説得力のあるパンク・サウンドで会場中を圧倒。ラスト「GO BARMY KIDS」では突き上げる腕を横に降ろさせ、知らない同士が肩を組む。パンク・ロックが人と人を繋ぎ、連帯感が生まれた会場からは、終わった後もSAコールが止まなかった。
SA Photo by青木カズロー
グルーヴィーかつ、キレのある演奏に導かれるように集まって来た観客が笑顔でステップを踏んでいたのは、夜の本気ダンス。「1回目の長田大行進曲は、客として来てました」と、鈴鹿(Dr)がガガガSPへの想いを熱く語ると、パワフルかつダンサブルなビートで会場中を踊らせた4人。衣装のネクタイを投げ捨て、観客と一緒になって汗まみれになって踊る米田(Vo&Gt)が「自由に踊れ!」と煽ったラスト「戦争」では、「みなさんロックが好きですか?」の問いかけに、会場中が本気のダンスで応えていた。
夜の本気ダンス photo by 中尾友香
陽が暮れはじめた頃、ITAYADOステージのトリとして登場したのはメガマサヒデ。ガガガSPのコザック前田(Vo)と中学の同級生である彼は「「こんな曲作ったんや!」と前田を驚かせたくてやってきた気がする」と親友への想いを語り「火の鳥」を熱唱。共に戦ってきた戦友、リスペクトする先輩、彼らを目標とする後輩と、出演者全てに出演する意味と意義を感じたこのフェス。ステージ後方に沈んでいく夕陽が後光のように差す、美しすぎる自然の演出の中で始まった先輩バンド・フラワーカンパニーズは「深夜高速」、<夕焼けばかりじゃ涙が出るだろ>の歌詞がハマりすぎていた「ハイエース」と、惜しげなく披露した名曲たちが20周年を迎えるガガガSP、この日の出演バンドへのエールに聴こえた。
メガマサヒデ Photo byニイミココロ
フラワーカンパニーズ Photo by青木カズロー
「2年前、大学の学祭に来てくれたガガガSPにCDを渡して、ライブにも来てもらって。このステージに出られているのが本当に嬉しい」と喜びを語ったのは、ヤバイTシャツ屋さん。しっかり鍛え上げた歌と演奏でフィールドを溢れる観客を沸かせると、「ハッピーウェディング前ソング」や「貴志駅周辺なんもない」に会場中が声を合わせ、「あつまれ!パーティーピーポー」で最高潮の盛り上がりを見せる。“青春パンクブーム”と呼ばれる時代を共に歩んだ盟友・STANCE PUNKSの熱気と勢いに溢れる攻撃的なステージからバトンを渡され、登場したのはやはり同じ時代を共に歩んだ175R。「当時、俺たちの悪口を一番言ってたのがコザック前田だったけど、活動休止した時に一番連絡をくれたのもコザック前田でした」とSHOGO(Vo)が思い出話を笑いながら語り、最新型の175Rサウンドを聴かせると、代表曲「SAKURA」、「空に唄えば」で歌声を夜空に響かせ、観客の心を射抜いた。
ヤバイTシャツ屋さん Photo by中尾友香
175R Photo by中尾友香
夜もすっかりふけた頃、フィールドに溢れる観客の歓声で登場したのは、マキシマム ザ ホルモン。「握れっっっっっっっっ!!」で始まるやフィールドをめちゃくちゃに掻き回すと、「どのジャンルからも仲間に入れてもらえなかった私たちを受け入れてくれたのが“神戸変態シーン”という居場所だった。色んなオモロい光景を見せてくれてありがとう!」と、ホルモンらしい言葉でガガガSPへの感謝の気持ちを述べるナヲ(ドラムと女声と姉)。最高潮のテンションで一気に突っ走ったライブは、会場中の“恋のおまじない”で壮観な風景を生み、「恋のスペルマ」で再びフィールドを掻き回してフィニッシュ。最高潮の盛り上がりの中、ガガガSPにバトンを渡す。
マキシマム ザ ホルモン Photo by浜野カズシ
初日のトリとして、満を持して登場したガガガSP。ステージ上から、フィールドを観客が埋める風景を目前にした前田は「この状態を青春時代と呼ばずになんと呼ぶのでしょう?」と感慨深そうに語り、「青春時代」でライブが始まる。一言一言、一音一音を噛みしめるような歌と演奏にこのステージへの強い想いを感じていると、「あれから20年経って、こうやってステージに立ってることを嬉しく思います」と喜びを語る前田。さらに「神戸駅」「祭りの準備」、「月影」とこの日この場所で演奏する意味や必然性を感じる曲が続き、「死ぬまで生きてやろうじゃないか! それが本当のパンク・ロックや!」と前田が吠えて、山本聡(Gt)のギターイントロで「晩秋」が始まる。結成20周年を迎え、自らの意志や覚悟を再確認するように歌う<死ぬまで生きてやろうじゃないか>の言葉。本編ラスト、彼らの代表曲「線香花火」の力強さと説得力も凄まじいものがあった。アンコールの「つなひき帝国」では出演者がステージに集結し、はちゃめちゃな雰囲気の中で「また明日会いましょう」と前田が締めてフィニッシュ。祭りはまだまだ終わらない。
ガガガSP Photo by青木カズロー
ガガガSP Photo by中尾友香

ガガガSP presents 長田大行進曲2017 10/1/(2日目)神戸空港島 多目的広場内 特設野外ステージ
初日に続いて晴天に恵まれた2日目。NAGATAステージ、SUMAステージにはPAN、ドラマチックアラスカと、共に関西を盛り上げてきた盟友や後輩のステージが続き、兵庫県西宮市出身のKING BROTHERSはマーヤ(Gt&Screaming)がワゴン車の屋根に乗って登場したり、「これが長田大行進曲や!」と観客の頭の上を歩いて渡ったりと、破天荒なステージで観客の度肝を抜く。神戸の後輩であるセックスマシーンは、「強烈な個性を持つ2つ上の先輩に出会い、自分に何が出来るかを考えた」とガガガSPに受けた衝撃を語り、「サルでもわかるラブソング」で始まるステージで、そこから導き出した答えを全力で表現。尊敬する先輩バンドへの愛とリスペクトを込めた渾身のアクトは、胸に迫るものがあった。
PAN Photo by中尾友香
ドラマチックアラスカ Photo by青木カズロー
KINGBROTHERS Photo by岡部"tommy"智子
セックスマシーン Photo by中尾友香
6年前の『長田大行進曲』にも出演している大先輩バンド・eastern youthは、「天気も良くて良かったね。いい音楽があって、お酒なんか飲んだりして、最高じゃない」と吉野寿(Vo&Gt)が穏やかに語り、「青すぎる空」の力強く伸びやかな歌声と重厚な演奏で観客を圧倒。さらに「男子畢生危機一髪」、「踵鳴る」と続く名曲を一緒に口ずさんだり、体を揺らしたりとそれぞれのスタイルで楽しむ観客を見て「みんな違ってみんないい。自由に楽しんで欲しくて音楽やってるから、この状態が最高」と微笑み、始まった「荒野に針路を取れ」の勇ましく堂々とした歌と演奏は、会場中の心を震わせた。「僕たちはガガガSPが大好き! 中でもドラムの田嶋悟士、たーじんが大好きです!」のネタフリに、メンバー全員が田嶋のお面に手製のドラムを持って登場。「15年前、ガガガSPのコピーバンドとして結成。今日はコピーバンド代表として、青春パンクやりに来ました!」と始まったのは四星球。ガガガSPの「弱男」の替え歌「たじ男」では田嶋をイジり倒し、「Mr.Cosmo」では北島康雄(vo)の先導で観客が会場中を走り回ったりとやりたい放題のステージだったが、ガガガSPへの愛とリスペクトは観客にしっかり伝わったはず。
eastern youth Photo by平川啓子
四星球 Photo by中尾友香
「ガガガSPの直の後輩として12年、デビュー時からずっと面倒見てもらってます」と、先輩への感謝の気持ちを語ったかりゆし58は、ゆったりと力強い演奏と温かい歌声が熱気溢れる会場を優しく包み、「電照菊」で陽が落ち始めた会場に光を照らす。「泥水飲んでも汗水たらしても、今日みたいな日があるから、バンドやってることが無意味じゃないなと思います」とガガガSPの功績を讃えて歌った「ウクイウタ」は、先輩から学んだことを再確認しながら、自身や観客を奮い立たせているようにも聴こえた。「こういうバンドにこういうチャンスをくれて本当にありがとうございます」と感謝の言葉を述べながら、「ロックバンドが爆発するところ、見たくないですか? 前座で終わるもんか、簡単に終わらねぇぞ!」と、戦意むき出しのギラギラした姿勢で激しく攻撃的なステージを見せたのは、My Hair is Bad。「フロムナウオン」で椎木(Vo&Gt)がギターを掻き鳴らし、声を絞り上げて歌う姿はグッときたし、周囲のバンドや大人たちに牙を剥いていた若き日のコザック前田を見ているようでもあった。
かりゆし58 Photo by中尾友香
My Hair is Bad Photo by青木カズロー
すっかり陽も落ち、しっとりした雰囲気で登場した銀杏BOYZは、峯田和伸(Vo&Gt)がステージに登場すると歓声とどよめきが上がる。アコギを抱えて一人ステージに登場した峯田は「この歌を2001年のGOING STEADYに、コザック前田に、そして2017年の僕たちに歌います」と「光」を歌い始め、痛切な歌声とギターにバンドサウンドが重なると会場が一瞬で銀杏色に染まる。「恋は永遠」、「エンジェルベイビー」と最新曲で銀杏BOYZの現在を見せると「ガガガSPが結成した1997年、奇しくも東京ではGOING STEADYというバンドが結成されました」と昔を懐かしみ、応援し続けてくれたファンやコザック前田への感謝を述べる。「前ちゃん、ありがとさん」と照れ臭そうに語る峯田だったが、「夢で逢えたら」、「BABY BABY」と続く熱のこもったステージに戦友への感謝と祝福の気持ちが伝わってきた。
同じく戦友といえるサンボマスターも「20周年、祝えるのかーー!?」と観客を煽りまくり、「世界を変えさせておくれよ」で始まるハイテンションなステージで祝福。「ラブソング」、「YES」とメロウな曲でしっかり聴かせると、「本気見せてくれ、奇跡の日々を始めようぜ!」と始まった「ミラクルをキミとおこしたいんです」、愛と平和とロックンロールを叫んだ「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で強烈な盛り上がりを生み、2日間に渡って様々な出演者が様々な形で受け渡して来たバトンをアンカーの手に渡す。
銀杏BOYZ Photo by中尾友香
サンボマスター Photo by青木カズロー
2日間の狂宴を締めくくるのは、もちろん主催者であり、この日の主役であるガガガSP。20年を懐かしむように、前田の弾き語りでノスタルジックに始まった「あの頃の僕は君にとってどう見えるかい」から、「すばらしき人生」、「忘れられない日々」と20周年を迎えた現在、素晴らしかった2日間を噛みしめるように気持ちいっぱいに披露する4人。さらに「当たり前が当たり前じゃないことを、この2日間で感じていました」と語り始まった「国道二号線」、2017年の夏を完結させた「夏の思ひ出」では強烈な勢いと熱量を持つ鬼気迫る歌と演奏を見せ、観客を圧倒。「ガガガSPの今年のライブはこれで最後。それくらいの気持ちでやってます」と前田が語り、十分すぎる気合いや気概を持って演奏した、20年目の「卒業」は涙が出るほど素晴らしかった。主役として主催者として、十分すぎるステージを見せたガガガSP。アンコールでは「最後、みんなで歌おうや!」と「線香花火」を披露し、会場に響く観客の大合唱で『長田大行進曲2017』を大団円で締めくくった。
ガガガSP Photo by青木カズロー
ガガガSP Photo by中尾友香
たくさんのアーティストが神戸の地に集結し、それぞれがガガガSPへの愛や想いを込めた最高のステージを見せてくれた2日間。それはガガガSPが楽曲やライブを通じて、20年に渡って築いてきたものが間違いじゃなかったことを証明していたし、20年続けることの凄さや尊さを表していて、「信じるものを貫いた先には、明るい未来が待っている」と、集まった全ての人に勇気や希望を与えてくれる素晴らしいフェスだった。
ガガガSP Photo by中尾友香

取材・文=フジジュン

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