ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』~
    節目の年にタッグを組むペヤンヌマキ
    ×安藤玉恵にインタビュー

    女たちのドロドロした関係を生々しく描き、醜くも可笑しい女の実態をあぶり出す作風で話題の「ブス会*」。共に40歳を迎えた主宰のペヤンヌマキと女優の安藤玉恵が、節目の年にタッグを組む新シリーズ『ペヤンヌマキ✕安藤玉恵 生誕○周年記念ブス会*』を立ち上げた。その第一弾『男女逆転版・痴人の愛』では、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を現代に置き換え男女逆転させて描く。40歳で独身の洋子(安藤玉恵)が美少年ナオミ(福本雄樹)と出会い、翻弄され身を滅ぼしていくというストーリーだ。本公演に先駆けて7月に行われたリーディング公演では、原作の構造を生かしつつもペヤンヌ独自の切り口で女性ならではの問題を描き、多くの女性客の共感を得た。12月のこまばアゴラ劇場での本公演ではどのような深化を遂げるのか? 脚本・演出のペヤンヌマキと主演の安藤玉恵に話を聞いた。
    その年代ならではのテーマを世に問う
    ──この「周年企画」はペヤンヌさんからのご提案だそうですね。
    ペヤンヌ はい。『お母さんが一緒』(2015年)が終わったころだったと思いますが、40歳を目前にして気が抜けた時期があって。私、なぜか自分は90歳くらいまで生きると思ってるんですが(笑)、40歳以降のビジョンがまったく立ってなかったので、目標を見失ってどうしたらいいのかわからないという状態になってしまったんです。これから50年の計画を立てなきゃと思ったときに、節目の年に安藤さんと一緒に舞台をやる企画を立ち上げれば、それが自分の励みにもなるなと。
    安藤 話を聞いて、すごく面白そうだなと思いました。私のなかでは40歳は節目で、これからどんどん明るくなりそうだという予感があって。長生きしたいのもペヤンヌさんと一緒なので、40周年、50周年と公演を重ねながら、どっちが先に死ぬかみたいな(笑)。
    ペヤンヌ 「どっちが長生きできるか」じゃないの?(笑)
    安藤 80歳になってもやってたら面白いですよね。そのときの年齢が作品にすごく出ると思うんです。40周年記念公演は今しかできないし、50になったら今度は肉体の衰えとか、その年代ならではのテーマが出てくると思う。それをきちんと世に問えるような作品を作りたいです。
    ペヤンヌ そのときそのときの年代で自分が悩んでいることや面白いなと思っていることをやれば、自然と社会的なテーマを持ったものになるのかなと思っています。
    ペヤンヌマキ
    ──今回の『男女逆転版・痴人の愛』は40歳の独身女性が主人公で、その年代の女性ならではの問題が描かれています。
    安藤 企画の段階で、今これをペヤンヌさんが書いたら物凄いものができるんじゃないかなという予感がありました。自分の内臓を抉り出してそれに言葉を載せたような、彼女にしか書けない重いもの。リーディング公演で使った台本には、原作の引用のなかにちょっとずつ「自身の声」が入っていて、それがやっぱり面白かった。「結婚なんて面倒くさい」というセリフとか。原作の譲治さんの気持ちと自然にマッチしていて。
    ペヤンヌ そうですね。原作からそのまま抜き出しても予想以上にマッチしてた(笑)。
    安藤 『痴人の愛』は文学の最高峰とされてますけど、読み解いてみたら実はこれぐらいの話なんじゃない? と。嫉妬して相手の跡をつけちゃったり、わりと俗っぽい行動をしますよね。
    ペヤンヌ そんなに高尚な感じじゃないんですよね。普段自分が考えてることにかなり近いというか。
    安藤 世間一般の人はみんな痴人だってことになっちゃいますよね。そういう新しい提示の仕方ができるんじゃないかなと。

    安藤玉恵

    文学作品を舞台で表現する難しさ
    ──リーディング公演は非常に好評だったようですが、本公演に向けてどのように深化させようと?
    ペヤンヌ 構成は基本的に変えず、見せたいシーンを付け足していくという感じになると思います。リーディング公演では原作の言葉をそのまま引用して語りで表現することができましたが、本公演では語りだけじゃなく役者と役者の空気や絵で見せる部分が大きくなるので、文学作品をどう表現するかという難しさを感じています。
    ──具体的にはどんなシーンが追加される予定ですか?
    ペヤンヌ それはお楽しみにということで(笑)。
    安藤 ペヤンヌさんのフェティッシュな世界が広がるかなとは思ってます(笑)。
    ──官能的なシーンも?
    ペヤンヌ それはあの……もちろんあります(笑)。リーディング公演は言葉中心だったので、エロい部分はご想像にお任せします的な感じでしたが、本公演ではもうちょっと攻めていこうかなと。企画のきっかけの一つとなった、福本くんと山岸門人くんの艶っぽいシーンも増やしてみたいですし。リーディング公演では山岸くんには3役やってもらったんですけど、本公演では更に役が増えるかもしれません(笑)。それから、洋子とナオミの立場が逆転していく過程を、もっとじっくり描きたいですね。ナオミを愛でようとしていた洋子が次第に言いなりになっていくところや、最初は可愛らしかったナオミがどんどんのさばっていくところとか。リーディング公演ではナオミの少年時代が結構一瞬だったので、少年時代の夢のようなひとときをもうちょっと描きたい。
    安藤 そのほうが後のシーンとの差が出るもんね。
    彼をダメンズにしたのは私
    ──洋子のナオミに対する感情は、恋愛感情とか母性本能とかいろいろ混ざっていて複雑ですよね。
    安藤 そうですね。私自身は、若い男の子を家に住まわせたいとかいう欲望がまったくないので(笑)、リーディングでは自分とはかけ離れたキャラクターとして演じていました。ただ「母性」ということに関してはわかります。立派に育ててあげたい、困ったときは助けてあげたい……そういう気持ちはすごくわかる。
    ──原作では主に男性の肉欲が描かれていますが、洋子のナオミに対する性欲というのは?
    安藤 触りたいとか、性欲に近いものは感じていると思います。でも基本的には「居てくれればいい」という感じ。
    ペヤンヌ 「眺めていたい」という感じですよね。それがちょっとエスカレートすると「触りたい」になるけど、眺めていられれば結構満足。女性は慎ましいんですよね、オジサンと違って(笑)。オジサンはすぐ触るじゃないですか。金払ってるんだからいいだろみたいな感じで。
    安藤 (笑)。女性はお金払ってても触れない。グイグイとは行けませんね。
    ペヤンヌ 相手に嫌がられたときに自分が傷つくんじゃないかという臆病な気持ちもあるし。
    安藤 そうそう。洋子は最初のほうはそれこそ小鳥に餌をやる感覚で、ナオミにおいしいものを食べさせてそれを眺めて喜んでるんですよね。でもそのうちナオミが鳥籠から出てきてあちこち食い散らかしはじめる。そこで洋子は「そうさせてしまったのも私」と言うんです。それは「母性」ゆえかもしれないですね。お母さんって子どもが非行に走ると「私の育て方が悪かった」と考えるじゃないですか。洋子も「彼はもともとそういう素質はなかったかもしれないのに私の育て方のせいでこうなってしまった」と考えてしまう。彼をダメンズにしてしまったのは私です、と。
    安藤玉恵
    ──ナオミ役の福本雄樹さんが非常に魅力的なので、洋子が翻弄されるのも説得力があります。
    安藤 福本くんは、最初は普通の好青年という印象だったんですけど、舞台に立つとどんどんかっこよくなっていって。イケメンというのはこういう人のことを言うんだなと。
    ペヤンヌ 福本くんの場合は役になっているときが一番かっこいい。役者としてすごく魅力的ですよね。あと、悪いことをやらせたときの色気が半端ない。
    安藤 実生活でもそうなんじゃないかと思ってしまいますよね。
    ぺヤンヌ 実は福本くんにダメ出しされたセリフがありまして。ナオミが洋子からお金をせびるシーンで、「場所代が高くて結構お金がかかるんだよね」というセリフがあったんですが、「『結構』とは言わないですね。『少しかかる』と言って、たいした金額じゃないと思わせるパターンのほうがこの場合いいですね」と。ああそうかと思って書き直した(笑)。
    安藤 実際そういうとこあるんだよ、きっと(笑)。
    キーワードは「痴人」
    ──リーディング公演では古民家ギャラリーという場所をうまく利用されていましたが、アゴラ劇場だとガラリと変わりそうですね。
    ペヤンヌ 今までのブス会*は具象セットが多かったんですが、今回は抽象セットにしてどこにでも見えるようにしたいなと思ってます。企画の最初の段階から、どの場所でも上演できるものにしたいと考えていて。今回は三人芝居で皆さん力のある役者さんなので、場所さえ確保できれば想像で補完して観ていただけるものができるんじゃないかと思っています。

    ペヤンヌマキ

    安藤 今回は特に「日本中の女性を元気にしよう」という勢いでやりたいと思っているので、東京だけじゃなく地方にも行きたいですね。セットが大変じゃなければ身軽に行けるかなと。年齢や性別を問わず幅広い方に観ていただきたいです。文学寄りでもあるので硬いものが好きな方にも受け入れられやすいと思うし、間口の広い作品になると思います。目指しているところは大きいですよ。
    ──最後に、今作で一番観てほしいポイントは?
    ペヤンヌ 痴人、ですね。どこまで痴人になっていくかを観ていただきたいです。
    安藤 自然に痴人になりたいですね。不自然な形じゃなくだんだん変化していくような。観ている方が「そうなるよね」と共感できるような痴人を目指してます。最終的に観てる人もみんな痴人になったら面白いですね(笑)。
    ぺヤンヌ 私もあなたもみんな痴人。
    安藤 (笑)。原作とはまったく違うことになるとは思うんですけど、なにしろ明るいですからね。それがいいんじゃないかなと。
    ぺヤンヌ そうですね。痴人になって堕ちて堕ちて堕ちても、最後に一筋の希望が見えるというか。
    安藤 ラストは痴人のピークといえばピークですけどね(笑)。
    ぺヤンヌ 堕ちたままだと救いがないですから、救いを持たせようとああいうラストに。90まで生きていかないといけないので、希望は忘れないようにします。
    取材・文=渡辺敏恵  写真撮影=荒川潤

    公演情報

    ペヤンヌマキ✕安藤玉恵生誕40周年記念ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』
    ■脚本・演出:ぺヤンヌマキ(原作:谷崎潤一郎『痴人の愛』)
    ■出演:安藤玉恵 福本雄樹(唐組) 山岸門人 / 浅井智佳子(チェロ演奏)

    ■会場:こまばアゴラ劇場 東京都目黒区駒場1-11-13 http://www.komaba-agora.com/
    ■日程:2017年12月8日(金)~19日(火) 計16ステージ
    ■タイムテーブル:
    12月8日(金)19時30分 ※プレビュー公演
    12月9日(土)休演日★過去作品上映
    12月10日(日)14時/18時
    12月11日(月)14時/19時30分
    12月12日(火)19時30分
    12月13日(水)14時/19時30分
    12月14日(木)休演日
    12月15日(金)19時30分
    12月16日(土)14時/18時
    12月17日(日)14時/18時
    12月18日(月)14時/19時30分
    12月19日(火)14時
    ※開場は開演の30分前、受付開始は開演の45分前
    ★過去作品上映
    12月9日(土)12時「お母さんが一緒」、15時「女のみち2012再演」、18時「お母さんが一緒」

    ■料金 (40周年記念価格)
    ○一般シート(入場整理番号付自由席)前売4000円/当日4500円
    ○ブスシート(入場整理番号付自由席/1~2列目ベンチ席)前売4000円/当日4500円
    ※プレビュー公演=一般シート・ブスシート共に前売3800円/当日4300円
    ★上映会(入場整理番号付自由席)前売・当日共に 1500円
    ■チケット一般発売 10月14日(土)10:00~
    ■問い合わせ ブス会* 080-7943-2251(10:00~20:00) info@busukai.com
    ■公式HP http://busukai.com

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