【ライブレポート】<VISUAL JAPAN
SUMMIT 2016>2日目後半「みんな無名
だった。だけど…無敵だった」

10月14日(金)、15日(土)、16日の3日間にわたって千葉・幕張メッセ9-11ホールにて日本最大のヴィジュアル系音楽フェス<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten>が開催された。HYDE×YOSHIKIの共演が開催間近になってアナウンスされ、さらに興奮を煽ることになった2日目15日にもさまざまなドラマが生まれることになった。動員数は35,000人。この日、出演した全アーティストのレポート後半をお届けしよう。
hide with Spread Beaverのステージが終わり、約30分押しの16時20分にステージに登場したのはエンターテインメント集団の側面を持つバンド、カメレオだ。暗転の中、フラッシュリングを大量に点滅させ、全員がお面着用で初見の人が「誰?誰?」とザワつく中、「運命開華ディスコ」でメンバーもファンもジャンプ連発。「ニート姫」では恒例のビーチボール投げやX ジャンプで盛り上げ、YOSHIKIのカレーエピソードにちなんで箱カレーを飛ばすなどやりたい放題(?)。HIKARU(Vo)は「俺たちみんな、このイベントに出演している先輩たちに憧れてバンドを始めました。先輩たちが作ってくれたヴィジュアル系という文化を受け継いで、先輩たちの背中を追っかけて、いつか追い越してやろうと思ってます」と感謝。自由奔放なステージを締めくくった。
インステージに登場したシドは約10ヶ月ぶりにメンバーが集結してのライヴでもあった。同ステージ翌々日には、1年ぶりのシングルが2017年にリリースされることが発表になったが、この日を心待ちにしていたファンも多かっただろう。オープニングナンバーはShinjiがアコースティックギターを弾いての「モノクロのキス」で場内が大歓声に包まれる。ロック、ラテン、ジャズ、正統派バラードなど多様なリズムアプローチの楽曲を演奏するスキルがありながら、哀愁があり、歌モノであるという基本がブレないシドの音楽性は幅広い世代から支持されている。
ナチュラルメイクにカジュアルなスタイルのマオ(Vo)は「朝からいる人は?」と呼びかけ、ライブビューイングで楽しんでいる人たちにも「ポップコーン美味しい?」と問いかけ、「今日もシドはシドらしいライヴをしていきたいです」と切々と歌うバラード「hug」を披露。ゆうやのジャジーで洗練されたドラムが印象的なインディーズ時代の人気曲「刺と猫」が演奏されたこともファンを喜ばせた。
後半戦は「嘘」「妄想日記」など代表曲を連発。ライヴ後半で演奏されることが多いアッパーチューン「Dear Tokyo」では明希(B)とマオが肩を組み、サビでは合唱に。「もっともっとヴィジュアル系、盛り上がると思ってるんだけど、どう? 盛り上げるのはオマエらにかかってるんだけど、どう?」と煽り、Oiコールが巻き起こったアグレッシブなナンバー「眩暈」でステージを締めくくった。このイベントをキッカケに再びシドのストーリーが紡がれていくという意味でも意義深いステージであった。
ぎっしり満員の場内に温度もますます上昇していく中、第7弾アーティストとしてサプライズ発表されたHYDEとYOSHIKIが姿を見せるとメッセが揺れそうなぐらいの大歓声。この2人が共演することになるとは誰が予想しただろうか。真っ白なロングジャケットに身を包んだYOSHIKI、ハットをかぶり、全身黒のエレガントな装いのHYDE。白と黒のコントラストで見せるところからして期待を裏切らない。そして、本イベント開幕前から2人が何の曲を披露するのか、カヴァーなのか、この日のためのオリジナルなのか熱い注目が集まっていたが、YOSHIKIがピアノの前で奏でたのはL'Arc〜en〜Cielの2007年のヒット曲「MY HEART DRAWS A DREAM」だった。驚きと喜びが入り混じる声援の中、HYDEはファルセットをきかせた伸びやかで艶やかな歌声を響かせ、場内は興奮&陶酔モード、“夢を描くよ”という35,000人のシンガロングがメッセにこだました。
「HYDEさんとYOSHIKIのユニットです。今日は本当に来てくれてありがとう。最近、一緒に飲んだね」と2人で5時間も飲んだことを明かすとHYDEは「時代の話をしました。あれはホントですか?って」と沸かせ、YOSHIKIが「L'Arc〜en〜CielとX JAPANが一緒にいるって面白いね」と微笑み、「意識しなかったけど、よく考えたら。緊張してきた」とHYDE。その空気を解きほぐすようにYOSHIKIが「セルフィーでも撮ろうか」と提案し、再び大盛り上がりの場内の中、ハイスピードで連写するYOSHIKI。
そして2人が次に披露したのはX JAPANの代表曲「Say Anything」だった。YOSHIKIの美しいピアノの音色とHYDEの表現力豊かなヴォーカルが絡み合うコラボは本フェスが生んだドラマであり、大輪の2本の薔薇が咲き誇るような景色が目の前に広がった。
勢いに溢れた挑発的なライヴとパフォーマンスでオーディエンスを惹きつけたのはR指定だ。メンバーが敬礼のポーズをキメ、幕開けの曲は代表曲の「玉砕メランコリィ」。制服姿の女子が多く詰めかけることでも知られる彼ら。マモ(Vo)は「本日はV系シーンの神聖な場所に出していただき、ありがとうございます。最上級のラブソングです」とメンヘラ彼女に「生きろ〜!」とシャウトするナンバー「病ンデル彼女」で痛快な演奏を響かせた。ラストはデスボイス炸裂のファストナンバー「THE廃人間」。「いつか真ん中のあのステージに行ってやる!」と宙高くマイクを放り投げた。
19時をまわった頃にメインステージに登場したのはGLAYだ。結論から言えば、彼らならではの包容力と明るさ、力強さが会場全体を広大な会場をすっぽり包みこんでしまった。全員が赤と黒を基調にした衣装で登場したメンバーが弾き出したオープニングは、初日と同様、TERUがギターを弾いて歌う「デストピア」。スモークが派手にたちのぼり、華やかな照明の中、アッパーなロックチューン「Scoop」が放たれ、「愛してるぜ!」と叫ぶと怒涛の歓声が返される。久々に披露されたメジャーデビューアルバム曲「FreezeMy Love」でのTAKUROとHISASHIのツインギターの絡みも素晴らしく、このスペシャルな展開に場内大拍手だ。最新シングル「超音速デスティニー」がさらに場内の熱気を高めていく。
MCではTERUが「昨日、MCが3分も巻いてしまったので」と笑わせてメンバー紹介へ。そして小さなライブハウスに出演していた時代に神々しいオーラを放つYOSHIKIが見にきてくれたことがキッカケでエクスタシーレーベルと契約を交わしたことについて触れ、「この舞台に参加することになって、やっと無敵バンドに参加できます」と沸かせた。また、YOSHIKIにGLAYの曲を勧めてくれたのがhideだったことにも敬意を表し、「Joker」をカヴァーした。
この日のGLAYのステージのトピックは、何と言ってもhide with Spread Beaverのメンバーであり、GLAYのサポートキーボーディストを務めていたD.I.E.がスペシャルゲストとして呼びこまれたことだろう。リアルタイムで観たことがある人もいたかもしれないが、彼がサポートで弾いていたのは1998年までなので、今から18年以上前のこと。このサプライズに場内が沸き返ったのは言うまでもない。さらにTERUは、GLAYの「HOWEVER」を聴いたhideが「すごくいい詞でいい曲でオマエが感情込めて歌ってたから、俺もそういう曲を書きたくて「HURRY GO ROUND」を書いたんだ」と言ってくれたというエピソードを明かし、「それ以来、とても大切な曲です。俺たちもこんなに成長したよってhideさんに届けたい」とD.I.E.を混じえて「HOWEVER」が演奏された。hideが多くの才能あふれるアーティストをいかに発掘してきたかは知られるところだが、年月がたった今も宝石のように輝くエピソードとともに歌われた「HOWEVER」は感動的だった。
「その気になれば何とかなるもんだぜ! 幕張!」とTERUが叫んだ「生きてく強さ」、2曲を演奏して帰るはずだったD.I.E.が引き止められ、初期の代表曲「彼女の“Modern”…」をもう1曲、演奏することになるなど、嬉しいサプライズも盛りだくさん。JIROのグルーヴィーなベースと骨太なギターが絡み合う「ACID HEAD」では火柱が上がり、ラストは「誘惑」で至福に満ちたライヴを届けてくれた。
サブステージの締めを飾ったのは翌日に舞浜アンフィシアターで10周年ライヴを控えるLM.C。幕開けの曲はAijiのギターリフが冴える攻めのロックチューン「DOUBLE DRAGONだ」。maya(Vo)はユーモアたっぷりに「この順番、GLAYとX JAPANの間に挟まれて、俺たち、どうしたらいいんですか? さっきYOSHIKIさんに「盛り上げとくんで」って口が滑っちゃったのでよろしくお願いします!」と笑わせ、LM.C流のロックでキャッチーで踊れるナンバーを投下した。mayaが中学生の時に原宿でXファンのお姉さんに優しくされたというほっこりしたエピソードも混じえ、LM.Cヒストリーの原点を思わせるパンキッシュではじけたナンバー「PUNKY♥HEART」で開放感たっぷりのステージを締めくくった。
場内には身動きがとれないぐらいの人たちが集結し、異様な熱気の中、3日間にわたってイベントのヘッドライナーを務めるX JAPANのステージが幕を開けた。オープニングは「JADE」。重病だったと報じられていたPATAを心配していたファンも多いと思うが、復活を遂げ、あの重厚で深みと凄みのあるギターがSUGIZOとのアンサンブルで生で再び聴けるとあって、遠方から駆けつけたファンも少なくないはずだ。炎が上がり、スモークが噴射され、レーザーが飛び交うど派手な演出が似合いすぎるほど似合う世界基準のスケール感たっぷりのサウンドが鳴らされていく。
「<VISUAL JAPAN SUMMIT>、迎えることができました! 昨日も今日もヴィジュアル系万歳ということで、みんなで万歳三唱をしたいと思います」とToshIが呼びかけて万歳。するとYOSHIKIが「ビックリした(笑)。めでたい日だね。餅つき持ってきてください」と笑わせ、ToshIから「今日はHYDEさんとも共演して」と振られると「ホントに幸せ者です」と笑顔をみせた。さらに「そして最後はToshIと共演してます」の言葉に「とどめっぽいよね」と返すYOSHIKI。そんな2人のやりとりからも本イベントへの充実感が伝わってくる。「じゃあ、思い出の曲をやってみようか」とYOSHIKIのピアノに寄り添うようにToshIが「Forever Love」を情感たっぷりに歌い、彼らと共に歩んできたファンから感動のため息が漏れる。YOSHIKIがドラムセットに戻り、テープが勢いよく放たれた「紅」はhideがイントロのアルペジオギターを弾く姿がスクリーンに映し出され、大合唱となった。
また、2日目にも初日に続き、ドキュメンタリー映画『WE are X』のために書き下ろした曲「LA VENUS」がYOSHIKIとToshIによって触りだけ披露された。「ホントは(X JAPANの)アルバム制作がもうすぐ終わるはずだったんだけど、映画のために書いて。そろそろやばいね」と完成が待たれていることに触れるとToshIが「そろそろ出そう!」と返し、場内は拍手と笑いに沸いた。
感謝の言葉を述べたYOSHIKIが「気合入れていくぞ!」と叫び、ToshIが「何年か前の自分に、未来にこういう現実があるって言ってやりたい。みんなにもいろんなことがあると思うけど、これからも自由に突っ走って行けよ!」とメッセージし、近年のX JAPANの鋭さとヘヴィネス、ポップさが新作への期待を煽る「Born To Be Free」を投下、本編ラスト「X」では御本家の“We are X”とXジャンプが炸裂。幕張メッセが揺れまくる光景は壮観としか言いようがなかった。そして、シンガロングが響き渡った「ENDLESS RAIN」とSUGIZOのヴァイオリンソロからの「ART OF LIFE」でX JAPANのステージが幕を閉じた。
トリを飾るセッションバンド、無敵バンドが登場する頃には23時近くになっていて、やむなく涙を呑んで会場を後にするオーディエンスも増えていたが、ここからは<エクスタシー・サミット>を彷彿とさせる大お祭り騒ぎ。ToshI、TERU、マオが音頭をとり、先輩を“さん”付けしないで呼び込まないといけないというミッションにやや怯えつつも、じゃんけんで誰が最初に呼ぶか決め、次々にステージに集結する無敵のメンバーたち。最終的にほぼ全員がステージに揃い、24年ぶりだという光景にHISASHIは、「ようやく無敵になりました」とコメント。
ステージに無敵フラッグが振られる中、あの頃と同じようにセックス・ピストルズのカヴァー「アナーキー・イン・ザ・UK」が賑やかにカヴァーされた。YOSHIKIは「この無敵バンドの由来は“俺たちはみんな無名だった。だけど…無敵だった”で。これからも無敵で行くぞ! オマエらも無敵で行け!! 負けるな!!」と熱いエールを送り、ラストナンバーは同じくピストルズの「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」へ。
YOSHIKIが実現させたのはもちろん単なる<エクスタシーサミット>の再現ではない。単に伝説を生み出したわけでもない。そこにはヴィジュアル系というJAPANオリジナルの音楽/カルチャーを若い世代に引き継いでいってほしいという想いも強く込められていただろう。“浮いている”という表現はしばしばマイナスなイメージに受け取られるが、ある意味、浮かなければ独自なものも革新的なものも生み出せないのではないかと思う。このイベントが未来のシーンを活性化させることを願ってやまない。
取材・文◎山本弘子

写真◎VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten
■<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten>
2016年10月14日(金)、15日(土)、16日(日)

会場:幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

開場8:00AM/開演9:00AM/終演10:00PM(予定)

※10月16日(日)は終演9:00PM(予定)

※チケット全券SOLD OUT

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