<第35回 昭和の歌人たち>開催、永
六輔特集でジェリー藤尾、デューク・
エイセスら熱唱

2017年9月7日、千葉県松戸市の「森のホール21 大ホール」で、<第35回 昭和の歌人たち>(主催:日本音楽著作権協会)が開催された。<昭和の歌人たち>は、2006年より開催され、昭和という激動の時代を舞台に、日本の音楽史に大きな足跡を残してきた作家達に焦点をあて、その作品と人物像を時代背景に触れながら紹介していくコンサートである。
石澤典夫、由紀さおり
今回のテーマは、“永六輔”。司会は、元NHKアナウンサーの石澤典夫と歌手の由紀さおりが務めた。出演は、石井聖子、大江裕、加藤登紀子九重佑三子、ジェリー藤尾、田辺靖雄デューク・エイセス中川晃教森山愛子という錚々たる顔ぶれ。それぞれが、永六輔に対する想いを語りながら、“栗田信生とJ’sバンド”と、胡弓・楊興新の演奏で、永六輔が作詞を手掛けた曲を歌い上げる。
田辺靖雄
由紀さおり
永作品には、「心に届く、しっかりとしたメッセージがある。だからどんな時代になっても、皆さんの胸に響くのかな、と思います。亡くなられてから1年を過ぎましたが、まだ信じられない。そのへんに出てきてくださるのではないかと思えるんです」と由紀さおりが語りかけ、出演者全員で「上を向いて歩こう」を歌い、開催の口火を切った。続いて、第1回レコード大賞(1959年)受賞曲「黒い花びら」を田辺靖雄が、「黄昏のビギン」を由紀さおりが披露。
石井聖子
デューク・エイセス
その後は、“永六輔のプロフィール紹介コーナー”、永六輔が放送作家として参加した“『夢であいましょう』(NHK/1961年〜1966年)特集”、永六輔と、作曲家・いずみたくが旅をして作った、全都道府県のご当地ソング“『にほんのうたシリーズ』(1965~1969)特集”など、盛りだくさんの内容となった。『夢であいましょう』のテーマソングを歌った坂本スミ子の娘・石井聖子による、「夢で逢いましょう」や、惜しくも今年で解散となる、デューク・エイセスと由紀さおりによる「女ひとり」が聴けるのは大変貴重である。

出演者からは、永六輔に寄せる想いや、当時を振り返る様々なコメントを聞く事ができた。
ジェリー藤尾
ジェリー藤尾が「遠くへ行きたい」のレコーディングにて、「難しい歌です。レコーディングは夜8時から翌朝7時までかかりました。当時は同録(歌と演奏の同時録音)で、一箇所間違えると頭からやり直しなので、バンドの皆さんに怒られた、怒られた」と当時を振り返る。デューク・エイセスのリーダー・谷道夫は、「永さんといずみさんと、ほんっとによく旅行をしました。日本風旅館の部屋に皆で雑魚寝もしました。夕食が済むと、お膳を片付けて皆で車座になって、川柳大会をしたり、なぞなぞ大会をしたり、楽しいひとときでした」と思い出を語る。
ゲストで登場した永麻里、永拓実
永六輔の次女・永麻里と永麻里の次男である永拓実も登場。永拓実が書いた本『大遺言:祖父・永六輔の今を生きる36の言葉』(小学館)を紹介しつつ、永六輔の私生活や人物像などにも迫った。永拓実は、「作品に関して言うと、弱い立場の人に同じ目線で寄り添う人だなと思います。僕とっては普通のおじいちゃんで、尊敬していた訳でもなくて、いつも相撲を見てて……。この度やっとすごい人だったんだとわかって良かったです。こんなふうに言って怒ってるかも」と話し、観客から笑みがこぼれた。永真理は、「1人の人として、とっても面白い人生だったのでは、と思います。時代の流れの風に乗って、色んなことをした人生。歳を取ってからも本当に好奇心の塊で、そのままの勢いで、自分の名前を冠したラジオ番組が終わった10日後にあちらに逝っているので、お見事でした、と言いたくなる人生です」と、父・永六輔に賛辞を送る。
加藤登紀子
最後も「上を向いて歩こう」を全員で歌い締めくくった。永六輔の作詞家としての主な活動は、1959年から1969年までの約10年間で、意外と短いことにも驚かされる。これほどの名曲を多く世に送り出し、生涯現役を貫き、まさに、日本の音楽史のレジェンドとして相応しい人物だと感じさせるコンサートだった。永六輔のライフワークの一つといえる『にほんのうたシリーズ』。自分の故郷はどんな風情が描かれているか、聴いてみてはいかがだろうか。

<昭和の歌人たち>の観覧は応募招待制で、日本音楽著作権協会のホームページにて、不定期で告知している。

取材・文:仲村 瞳

<第35回 昭和の歌人たち>

2017年9月7日(木)@森のホール21 大ホール
[セットリスト]
01.「上を向いて歩こう」出演者全員
02.「黒い花びら」田辺靖雄
03.「黄昏のビギン」由紀さおり
04.「夢で会いましょう」石井聖子
05.「遠くへ行きたい」ジェリー藤尾
06.「おさななじみ」デューク・エイセス
07.「いつもの小道で」九重祐三子、田辺靖雄
08.「ウエディングドレス」九重祐三子
09.「帰ろかな」大江裕
10.「こんにちは赤ちゃん」森山愛子
11.「誰かと誰かが」ジェリー藤尾
12.「芽生えてそして」由紀さおり
13.「いい湯だな」デューク・エイセス
14.「筑波山麓合唱団」デューク・エイセス
15.「女ひとり」デューク・エイセス、由紀さおり
16.「見上げてごらん夜の星を」中川晃教 ※胡弓演奏・楊興新
17.「生きるものの歌」デューク・エイセス
18.「一人ぼっちの二人」田辺靖雄
19.「二人の銀座」大江裕 森山愛子
20.「レットキッス」石井聖子、中川晃教、大江裕、森山愛子
21.「二本の糸」加藤登紀子 ※胡弓演奏・楊興新
22.「上を向いて歩こう」出演者全員

■永六輔(作詞家、放送作家、タレント)
1933年、東京都・浅草生まれ。早稲田大学在学中からテレビやラジオの放送作家として活動し、NHK『夢であいましょう』など数々の人気番組を送り出す。作曲家・中村八大の依頼で作詞を始め、’59年「黒い花びら」が第1回日本レコード大賞を受賞。‘63年、「上を向いて歩こう」が全米ヒットチャートで3種連続第1位を獲得。以降、「見上げてごらん夜の星を」、「こんにちは赤ちゃん」など数々のヒット曲を飛ばし、ラジオパーソナリティーやエッセイストとしても活躍した。2000年菊池寛賞、’13年毎日芸術賞特別賞、’16年日本レコード大賞特別功労賞を受賞。

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