【インタビュー】Tetsu [D’ERLANGE
R]、トリビュート盤を語る「まだまだ
天国には行かない」

D’ERLANGERが9月13日、自身初のトリビュートアルバム『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM 〜Stairway to Heaven〜』をリリースする。HYDEや清春、ACID ANDROIDやINORAN×TERU×HISASHI×ピエール中野×ERYなど、参加全15組は豪華そのものであり、D’ERLANGERのシーンに対する影響力の大きさを物語る。加えて、再始動前後におよぶ収録曲ラインナップが映し出したものはD’ERLANGERが今を生きているという事実だ。
BARKSでは『D'ERLANGER TRIBUTE ALBUM 〜Stairway to Heaven〜』について、企画意図からオファーに至るプロセス、参加アーティストとのコミュニケーション秘話まで、Tetsuにじっくりと話を訊いた。そこに浮かび上がる“D’ERLANGER自身が受けた刺激”と“D’ERLANGERというバンドのストーリー”。「すでに新しいことも思いついた」という絶大な効力まで発揮したトリビュートアルバムを解き明かすロングインタビューをお届けしたい。
   ◆   ◆   ◆
■まったく用意周到じゃなくて

■D’ERLANGERの悪い癖なんですけど(笑)
──トリビュートアルバムはいつ頃企画されたものでしょうか。
Tetsu:今年のツアー中ですね。もともと再結成から10年というのは、目指してたわけでも意識したものでもなく、もう10年も経つのか?みたいな感じで。ただ最近は周年に色々と盛り上がる風習があるみたいだし、バンドがさらにいい方向に向かうための節目として、トリビュートアルバムを出すのはどうだろう?という話になって。D’ERLNAGERとして過去に2回、トリビュートに参加(※2012年発表 BUCK-TICK TRIBUTE ALBUM『PARADEII–RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK』/2013年発表 『hide TRIBUTE SPIRITS VII -ROCK SPIRITS-』)した経験はあるけど、今までは自分たちのトリビュートアルバムを出そうなんて考えたこともなかったし、出したいって思ったこともなかったんです。でもリユニオン10周年という節目で、バンドとしてちょっと自信がついたのもあり、もしもD’ERLANGERがトリビュートアルバムというものをやってみたら、参加してくれる人がいるんじゃないかな?と思って。で、ツアー先から夜な夜ないろんな人に連絡して(笑)。
▲<J’aime La Vie TOUR 2017>
2017年6月30日(金)@TSUTAYA O-EAST


──ツアー中って……つい最近のことじゃないですか(笑)。
Tetsu:そうなんですよ、そこはまったく用意周到じゃなくて、D’ERLANGERの悪い癖なんですけど(笑)。ちなみに9月のD’ERLANGER主宰イベントは、今回のトリビュートの話とは別の段階で決まってて。そこにトリビュートアルバムの企画が浮上したんで、イベントのタイミングにリリースを合わせて急に動き出したというか。
──普通は1年がかりでリリースするものだったりするんですが(笑)。
Tetsu:もっと前に思いついて動いてれば、参加してくれたみなさんもだいぶ楽だったと思うんだけど(笑)。とにかく動き出そうってことで、まずはラインナップを出し、僕らから声をかけさせてもらって。相手から「ぜひやりたいです!」というようなリアクションをもらった上で、レーベルから正式にオファーして……という。そのやり取りも楽しかったですね。hideトリビュート盤では「限界破裂」、BUCK-TICKトリビュート盤では「ICONOCLASM」で参加してるんですけど、どちらも声をかけられたことが嬉しかったし、トリビュートする曲をどうアレンジするか考えるのも楽しかったんで、参加してくれるみなさんも僕らと同じように楽しんでくれるかなって。ま、締め切りはかなりタイトだったかもしれないけど(笑)。
──ちなみに声をかけたミュージシャンたちに共通するポイントはありますか?
Tetsu:まず、うちのメンバーの誰かしらと関係のあるミュージシャンってことですね。とはいえ個人のつながりだけじゃなく、ちゃんとD’ERLANGERを意識してもらえる人、というのが共通点かな。ただ、ラインナップを出した時点では、全部のミュージシャンからOKがもらえるとは思ってなかったんですよ。やっぱりスケジュールの都合もあるし。けど、ありがたいことに全員からOKをいただいて。逆に“これ、アルバムに全部入るのか?”みたいな心配をするほどでした。
──やはりD’ERLANGER先輩からのお願いは断れなかったというか(笑)。
Tetsu:そこは僕も気になったんですよ(笑)。アーティストが直接オファーするのは簡単で、「どう?」「やりますよ!」「ほんとに大丈夫なの?」「大丈夫ですよ!」で終わるんだけど、事務所のスタッフさんは大変だっただろうなって。だから中には「これは……断れねえな」みたいなのもあったかもしれない(笑)。
──ははは(笑)。
Tetsu:でも嬉しい、の一言に尽きますよ。みなさん快諾してくれて、ありがたいです。トリビュート盤を思いついた時は“やってくれる人なんているのかな……”って思ってたぐらいだから。
■俺たちは未来しか見るところがない

■大事なのは過去よりも今、ここから先
──あと驚いたのは、作品が初期の時代に偏ることなく再結成以降の曲もトリビュートされてることで。
Tetsu:それに関する面白いエピソードがあって。この企画が動き出した時、MUCCの逹瑯から電話がかかってきたんです。「トリビュートアルバムを出すって噂を聞いたんですけど」って(笑)。で、彼らにもお願いすることになったんだけど、「どうせみなさん『LA VIE EN ROSE』とか『BASILISK』の曲を選ぶでしょうから、うちらは『CRAZY4YOU』をやりますよ」って。それを聞いて「なるほど、そういう考え方もあるか」と思って。lynch.は「XXX for YOU」をトリビュートしてくれたんだけど、彼らも「再結成後の曲をやりたかったんです」って。
──彼らの世代にとってのD’ERLANGERは、まさに現在進行形のバンドなんでしょうね。
Tetsu:そうなんでしょうね。おかげでラインナップも絶妙なバランスになりました。
▲『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM 〜Stairway to Heaven〜』初回プレス盤
▲『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM 〜Stairway to Heaven〜』通常盤


──トリビュートされた音源を聴いて、どんなことを思いました?
Tetsu:ひたすら興奮しましたよ。でも、不思議な感覚でもあったかな。自分たちがトリビュートする側だった時って、トリビュートする相手を喜ばせたい気持ちがあって。それを受け取る立場というのはもちろん嬉しいんだけど、それを今、自分も体験してると思うと、ちょっと不思議な気分でね。これはこの立場にならないとわからないと思います、楽しんでトリビュートしてくれた曲を聴いて、こっちも楽しくなるっていう感覚というのは。みなさんのいろんな感情とそれを受け取る僕らの感情がぶつかり合って爆発する、みたいな感じというか。
──あと、やっぱり強いのはみなさんのD’ERLANGERに対する愛情で。
Tetsu:ありがたいですよ。それこそ口ではなんとでも言えるじゃないですか。だけどやっぱりこうやって音になると……愛情を感じますね。いや、ほんとにありがとうって。それでいて、どの曲にもちゃんと自分たちらしさが必ずあって。例えばSORA(DEZERT/ドラム)のプレイは、過去のライヴ映像をどれだけチェックしたんだ?っていうぐらい僕のアレンジを色々と取り入れてるんだけど、最後の一箇所だけ自分らしさを解放してて。
──リスペクトがありつつ、ちゃんと爪痕も残そうとしてる。
Tetsu:どの曲もそうですよね。その人でしかできないアプローチや主張がある。そこが僕らにとっては一番楽しいところですね。
──D’ERLANGERに対する思いの強さと対抗心がぶつかり合う作品だと思うんです。そこまで参加ミュージシャンを突き動かすものがこのバンドにはあるっていうことで。それは何だと思いますか?
Tetsu:何がそうさせるか……。ああいうデビューをし、伝説的な解散をし、空白があり、いきなり復活をし、気づいたら10年やっていて。この……“気づいたら10年”っていうところの自信と……なんだろう? ちょっと暑苦しい言い方ですけど“みんなで頑張ろうよ”とか“今を大事にしたい”とか、そういう気持ちが詰まったトリビュートアルバムだと思うんですよ。変にメモリアルというか、記念盤みたいなものにはならず、“これからも続いていくぞ”みたいなものになってるというか。それは参加してくれたみなさんからも感じるし。つまり、“これから一緒に行くぜ”みたいな感じがあって。で、僕が思うに──これは勝手な憶測ですけど、バンドって“ないものねだり”というか。他のバンドが良く見えたりするんですよ。“あいつのところは順調だな”とか“あいつのところは仲がいいな”とか。そういういろんなことがある中で、でも”バンドって一緒だよな”ってことが言いたいんですよ。”俺たちは未来しか見るところがねぇんだ”というか。大事なのは過去よりも今で、ここから先で。そういう気持ちで今バンドをやってるから……なんですかね。
──そうですね。D’ERLANGERは伝説のバンドではなく、現在進行形のバンドだからだと思います。
Tetsu:そうですね。この“〜Stairway to Heaven〜”っていうタイトルをつけた時はすごく安易に“これだけのラインナップだから、俺らは天国でのんびりしようか”みたいな気持ちがあったんですよ。でも、完成した作品を聴いて“いやいや。まだまだ天国には行かねえよ?”って思わされて(笑)。
──対抗心がメラメラと(笑)。
Tetsu:そうです。バンドって最高だなって改めて思いましたし、天国になんて行かずにまだまだバンド続けたいって思った。とにかく、“まだ負けねえぞ”って(笑)。
■それでも僕が声を大にして言いたいのは

■「バンドって最高だ」ってことなんですよ
──そう思ってしまう人たちがやってるバンドだからこそ、D’ERLANGERに対する多くの共感やリスペクトがあるのではないかと。今のD’ERLANGERのあり方もそうで。どこにも属さず自分たちでマネージメントしてる、いわば一匹狼。
Tetsu:確かに一匹狼ですね。
──そういうロックバンドとしてのあり方が憧れたり、勇気をもらえる存在でもあり。
Tetsu:僕も一匹狼が好きなんですよ。好きだけど、一匹狼のバンドとして存在し続けるためには、やっぱり愛が必要なんですよ。一匹狼でいようとすればするほど、支えてくれる人たちのありがたみを強く感じる。こないだ清春と会って今回のトリビュートアルバムのこととかいろんな話をして、「お互い一匹狼だよね」みたいな話もしたんだけど、やっぱり彼も同じなんですよ。一匹狼でいるためには、周りの人の支えと愛が必要だと。
──それは、今だからわかることですか?
Tetsu:そうですね。デビュー当時、僕はまだ19歳で、あの頃は何もわからないし、ただ突っ張ってた。取材なんて真面目に受けなかったし、テレビの収録はすっぽかしてた。それでも当時はバンドブームの絶頂期で、自分の知らないところで誰かが段取りをしてくれて、全部用意されてることをやって、僕らは天狗になって。でもブームが去った後、周りの人のありがたみを初めて知るんですよ。ただ、僕らの音楽に対する尖った気持ちっていうのは、あの頃からまるで変わってなくて。変わらずにいたいから一匹狼だし、でも一匹狼でいるからには、僕らには支えが必要だってことを今はわかってる。それがD’ERLANGERというバンドのストーリー。バンドってそれぞれだし、みんないいことも悪いことも経験するだろうし。それでも僕が声を大にして言いたいのは、「バンドって最高だ」ってことなんですよ。
──このトリビュートアルバムを通じて、さらに繋がりや親交が深まったミュージシャンもいるのでは?
Tetsu:あぁ、清春は間違いなくそうですよね。同学年なんで「敬語とかやめてくれよ」って言ったけど、「や、先輩なんで」って。彼も一匹狼だし、僕らのことを同じ一匹狼だと思ってて。だから共感し合うポイントが多いし、そのスピードも速いですよ。説明が少なくて済むし。もちろん後輩たちと話してても「あの時の野音を観たんですよ」みたいな思い出話になるんだけど、今がちゃんとあるっていうのがいいですよね。
──今回のトリビュートアルバムがD’ERLANGERの今後の活動に何かしら影響を与えるところはありますか?
Tetsu:すでに新しいことを思いついてて。今考えているのは、みなさんがやってくれたこのトリビュートを、自分たちでやってみるのも面白いかなって。
──トリビュートされた曲をさらに自身がカバーするみたいなことですか?
Tetsu:そう。あとは、今回の主宰イベントをもう一回やりたい。それこそトリビュートに参加してくれたみなさんが集まれるような。
──規模が大きなイベントになりそうですね。会場探しとかブッキングが大変そう。
Tetsu:そうですね。そこは今回のトリビュートみたいに思いつきでやれるものではないので(笑)。
──今後のD’ERLANGERのテーマは計画性ですかね(笑)。
Tetsu:本当にそう(笑)。とりあえずすごいアルバムができたんで、それを楽しんでもらいつつ、D’ERLANGERの未来にも期待してもらえればと思います。
取材・文◎樋口靖幸
■トリビュートアルバム『D'ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~』


2017年9月13日(水)発売

WPCL-12767 ¥3,000円(本体)+税

01.UNDER THE PRETENSE Remixed by YOW-ROW

02.LA VIE EN ROSE / HYDE

03.SADISTIC EMOTION / 清春

04.AFTER IMAGE / ACID ANDROID

05.DARLIN' / Psycho le Cemu

06.XXX for YOU / lynch.

07.dummy blue / Angelo

08.LULLABY / INORAN×TERU×HISASHI×ピエール中野×ERY

09.SO... / MERRY

10.an aphrodisiac / Justy-Nasty

11.1999-Shyboy story- / THE SLUT BANKS

12.Dance naked,Under the moonlight. / Rayflower

13.CRAZY4YOU / MUCC

14.MOON AND THE MEMORIES / DEZERT

15.EASY MAKE,EASY MARK / DIR EN GREY
■主催イベント<D'ERLANGER presents ABSTINENCE'S DOOR>


<D'ERLANGER presents ABSTINENCE'S DOOR #008>

2017年9月15日(金)EX THEATER ROPPONGI

OPEN / START 17:30 / 18:30

▼出演

D'ERLANGER、Angelo、DEZERT、D'ERLANGER feat. HYDE

SPECIAL GUEST:逹瑯 (MUCC)
<D'ERLANGER presents ABSTINENCE'S DOOR #009>

2017年9月16日(土)EX THEATER ROPPONGI

OPEN / START 16:30 / 17:30

▼出演

D'ERLANGER、lynch.、Psycho le Cému、D'ERLANGER feat. 清春
▼チケット

プレミアムシート ¥11,000- (税込・指定席・ドリンク代別・プレミアムGOODS 付)

スタンディング ¥7,000-(税込・ドリンク代別)

※未就学児童入場不可/小学生は要保護者同伴・有料

一般発売:2017年8月12日(土)~

(問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

■<D’ERLANGER 秋TOUR「J’aime La Vie deux TOUR 2017」>


09月30日(土)京都FAN J open/17:30 start/18:30

(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888

10月01日(日)浜松窓枠 open/16:30 start/17:00

(問)サンデーフォークプロモーション静岡 054-284-9999

10月07日(土)高知X-pt open/17:30 start/18:00

(問)DUKE高知 088-822-4488

10月08日(日)高松MONSTER open/16:30 start/17:00

(問)DUKE高松 087-822-2520

10月14日(土)金沢EIGHT HALL open/17:30 start/18:00

(問)FOB金沢 076-232-2424

10月15日(日)長野CLUB JUNK BOX open/16:30 start/17:00

(問)FOB新潟 025-229-5000

10月21日(土)郡山CLUB #9 open/17:30 start/18:00

(問)ニュース・プロモーション 022-266-7555

10月22日(日)柏PALOOZA open/16:30 start/17:00

(問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

10月28日(土)福岡DRUM Be-1 open/17:30 start/18:00

(問)GreeN Music 092-714-0230

10月29日(日)岡山YEBISU YA PRO open/16:30 start/17:00

(問)夢番地岡山 086-231-3531

11月03日(金・祝)仙台darwin open/16:30 start/17:00

(問)ニュース・プロモーション 022-266-7555

11月05日(日)札幌cube garden open/16:30 start/17:00

(問)WESS 011-614-9999

11月11日(土)umeda TRAD open/17:30 start/18:00

(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888

11月12日(日)名古屋Electric Lady Land open/16:30 start/17:00

(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

11月23日(木・祝)赤坂BLITZ open/16:00 start/17:00

(問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999

▼チケット

・オールスタンディング 前売:¥6,000(税込) / 当日:¥6,500(税込) ※ドリンク代別

<プレミアムシート> ※KIDS BLUE先行のみ / 札幌・赤坂公演のみ ¥10,000(税込) プレミアムグッズ付 / ドリンク代別

※未就学児童入場不可/小学生は要保護者同伴・有料

一般発売:2017年9月2日(土)~

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