【ライブレポート】リアム・ギャラガ
ー、初の日本ソロ公演で高めたアルバ
ムへの期待

<SONICMANIA>および<SUMMER SONIC 2017>大阪公演出演のために来日中のリアム・ギャラガーが8月17日、Zepp Tokyoにて今回唯一のワンマンライブを行った。日本で初のソロ公演とあって、当然ながらチケットは発売後すぐにソールドアウト。会場にはOASIS時代、そしてBEADY EYE時代のリアムを知る者から最近リアムを知った若いリスナーまで、幅広い層が集った。
◆リアム・ギャラガー ライブ画像
ほぼ定刻通りに会場が暗転すると、場内にはOASISファンには懐かしい「Fuckin' In The Bushes」が爆音で流れ始める。この曲はOASISの4thアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』収録のインストナンバーで、2000年の初出以降、OASISのライブではオープニングSEとして流され続けた馴染み深い1曲だ。このSEに観客は大興奮し、フロアのオーディエンスは一気にステージ目掛けて押し寄せ始める。
SEが後半に差し掛かったところで、アディダスのパーカーを着たリアムを筆頭に、バンドメンバーがステージに登場。相変わらず訛りの強い語り口調で一言話すと、そのまま2人のギタリストがあの強烈なフレーズを奏で始める……そう、OASISのデビューアルバム『DEFINITELY MAYBE』のトップを飾る「Rock 'N' Roll Star」だ! フロアの熱気はこの曲が始まったと同時に、一気に加速。真夏の暑さとはまた異なる、気持ち良いくらいの熱がZepp Tokyoに充満した。
リアムは片手にタンバリンを持ち、リズムに合わせて時々鳴らしてみせる。そして、いざマイクの前に立つと両手を後ろに回して、少し前かがみになって歌い始める……そう、我々がよく知る“あの”リアムの歌唱スタイルを目の前にするのだ。ギタリスト2人にリズム隊、そしてキーボーディストという編成はまさに中後期のOASISそのもので、可能な限り原曲に近いアレンジで「Rock 'N' Roll Star」をパワフルに演奏。それに負けじと、リアムのバカでかい歌声を場内に響き渡らせる。もちろん、オーディエンスもリアムやバンドメンバーを凌駕するほどの声量で大合唱。ああ、そうだ。これがリアム・ギャラガーというシンガーとの接し方だった。そんな懐かしさと嬉しさで、早くも胸いっぱいになった筆者も一緒に歌っていたことも付け加えておく。
ソニマニやサマソニ大阪公演が控えているので、詳細なセットリストはここまで。すでに海外公演では、10月6日にリリースが決定した1stソロアルバム『AS YOU WERE』からの楽曲群に加え、数々のOASISナンバーを演奏しており、この日のZepp Tokyo公演でもそれらの楽曲はたっぷり披露された。特にOASISの楽曲では常に大合唱が沸き起こり、曲が終わればフロアからリアムコールが発生するなど、オーディエンスの異様な歓迎ぶりに何度も胸を打たれた。
だが、ここで声を大にして伝えておきたいのは、そういったOASIS時代のクラシックナンバーのことではなく、ソロナンバーの数々についてだ。すでにYouTubeでミュージックビデオが公開済みの3曲(「Wall Of Glass」「Chinatown」「For What It's Worth」)もこの日のライブで演奏されており、スタジオテイクでは非常に作り込まれたバックトラックの上を、リアムの歌声が縦横無尽に響き渡る新たな魅力満載だったこれらの楽曲が、原曲のイメージを残しつつもあくまで「ロックバンドのフォーマット」で表現していたのが印象的だった。そして、それにより楽曲のメロディの質が改めて浮き彫りになるのだが……きっと“ロックンロール・スター”リアム・ギャラガーを期待してソロ曲に若干の肩透かしを感じていた一部のリスナーは、この日のライブでその思いを一新させられたのではないだろうか。
とにかく、メロディが親しみやすいものばかりで、ぶっちゃけOASIS時代の名曲と並んでもなんら違和感のないものばかりだった。「Wall Of Glass」は“これぞリアム!”と力強く叫びたくなるような王道感に満ち溢れたロックチューンだし、「Chinatown」での肩の力が抜けた優しさに満ち溢れたスタイルからはデビュー時のリアムからは想像できない大人の渋みすら感じ、「For What It's Worth」の泣きメロなんて一度聴いたら耳から離れないアンセム級なのだから。これ以外にもシンプルでわかりやすく、普遍性の強い新曲が豊富だったことも付け加えておく。ぶっちゃけ、ソロ楽曲のみでも1本のライブを構成できるんじゃないかと思えるほど緩急に富んだナンバーが多く、今回ライブで披露されなかった楽曲含め今後の披露に期待が高まるばかりだ。
ライブはアンコール含め、60分強というコンパクトな長さで終了。ラストナンバーではこの日一番のシンガロングが沸き起こり、最高潮のうちに幕を下ろした……と言ってしまえばキレイにまとまるところだが、この日を待ちに待ったファンからすれば少々もの足りなかったようだ。2014年3月のBEADY EYE来日公演以来となる日本公演だったこともあり、場内が明るくなり終演を告げるアナウンスが流れたあとも、フロアの観客はその場を動こうとせず、OASISの代表曲「Live Forever」を自発的に合唱し始めた。しかし健闘むなしく、リアムが再びステージに姿を現わすことはなかった。
これまでの海外公演の状況を調べる限り、セットリストの構成がそこまで大きく変わることはなさそうだが、この日演奏されなかったソロ曲やOASISナンバーがソニマニ、そしてサマソニ大阪で披露される確率はかなり高い。東京公演では高音に若干の不安があり歌唱的にはベストではなかったかもしれないが、ライブ中ステージ前方の観客と拳をくっつけるなどしてファンサービスも見受けられたので、コンディションはそこまで悪くなさそうだ。
さて、この先の2公演で本格的なソロキャリアをスタートさせたばかりのリアムは、どんなステージを、そしてどんなストーリーを我々に提供してくれるのか。ぜひここから数日間の彼の動向に注目しておいてもらいたい。そして、残念ながら今回の来日公演に足を運ぶことができないリスナーは、10月発売のソロアルバム『AS YOU WERE』に対して過剰なほどに期待を寄せておいてほしい。間違いなく、その期待を超える作品に仕上がっているはずだから。
取材・文◎西廣智一

撮影◎MITCH IKEDA
  ◆  ◆  ◆

▲アルバム『As You Were / アズ・ユー・ワー』
アルバム『As You Were / アズ・ユー・ワー』


2017.10.06 iTunes他で発売

¥2,200+税/WPCR-17915

※先行シングル「ウォール・オブ・グラス」収録

※国内盤情報は後日発表
シングル「Wall of Glass / ウォール・オブ・グラス」


2017.06.02 配信

M1.Wall of Glass

※J SPORTS イングランド プレミアリーグ エンディング・テーマ

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