テレビアニメ『将国のアルタイル』のオープニングテーマ「螺旋のユメ」を含む3年6カ月振りとなるオリジナルニューアルバム『NOMAD』。本格的な活動を待ち望んでいたファンを安心させたいというメッセージも込められた本作について4人に話を訊いた。
“予想のもうひとつ上を来たな”
って感じてほしくて挑戦しました
『NOMAD』は新しいシドが感じられる作品でもあり、とても新鮮でした。久々のアルバムなのでテーマを設けたり、改めて意志確認したことはあったのでしょうか?
マオ
“新しいものをやりたいね”っていう認識は共通してありました。3年6カ月振りのアルバムなので、待っていた人たちが受け取った時に“安定のシド”でも喜んでいただけるとは思うんですが、“予想のもうひとつ上を来たな”って感じてほしいという想いが強かったので、新たなことに挑戦しようという方向に向かっていきましたね。
今年の5月には日本武道館で1年7カ月振りのワンマン公演を2日間開催しましたが、そのことは今回のアルバムに反映されていますか?
マオ
個々で感じたことはあるだろうし、日本武道館でツアーも発表されたので、そういう意味では4人ともライヴは意識していたとは思います。ただ、日本武道館のライヴがそのまま曲や歌詞に反映されているかといったら、それはまた違うかもしれないですね。
なるほど。では、選曲ミーティングで曲を選ぶ時は“今までのシドとは違う”というのがひとつの基準になったのですか?
マオ
それもありつつ“いい曲である”ということが大前提。“新しい”と言っても“変わったことやってるね”っていう基準ではなく、“この曲、攻めてるよね”みたいな、4人ともそういう意識で選んでいた記憶がありますね。
アルバムのタイトル“NOMAD”には“遊牧民”という意味がありますが、1曲目の同名曲は今までのシドとは違うエキゾチックでゴージャスなサウンドで包み込まれるような曲調だと感じました。
マオ
“NOMAD”はツアーをイメージした時にふわっと浮かんできた言葉なんです。シドは少しの間、活動を休んで、それぞれが違う動きをしていた時期があったので、それぞれの日々を生きてきた人たちがまたツアーで集まるという意味で、ファンも含めて“NOMAD”。“また大きな塊になって一緒に進んで行く”という意味が込められています。
では、攻めているという意味でアルバムに収録されている楽曲をピックアップすると?
明希
自分は今回のアルバムでロックとポップスをがっつり分けて、それぞれのサウンドを追求できたんじゃないかと思っています。その振り幅の広さを象徴しているんじゃないかと思うのが「スノウ」と「躾」ですね。
同じ人が書いた曲とは思えないですものね。
明希
そうですね(笑)。今回、ポップサイドの曲はメロディーもアレンジもキャッチーなものを突き詰めていったんです。ほんとに振り切って作ったので、両極端を表現できたなと思っています。
「スノウ」はシティポップス寄りの美しい曲ですね。
明希
ファンク寄りの曲があってもいいよねっていう話から派生して生まれた曲で、ジャズの要素も混ざっていますね。メロディーの良さが伝わって、口ずさんでもらえる曲になったらいいなと思っています。対照的に「躾」はいつもの自分らしさを出しています。自分のロックな側面を凝縮して作れたらいいなと思って作りました。
Shinji
ギタリストとして分かりやすくチャレンジしたのが「躾」ですね。特にギターソロは昔の自分だったら弾けなかったフレーズでかなり特訓しました。この曲、リフも難しいんですよ。リフだけ7弦ギターを使って弾いていたり、いろいろなギターが混在している曲なので、ライヴがどうなるか楽しみですね。
Shinjiさんの書いた「KILL TIME」もジャジーな曲で、楽器隊のスキルがフルに発揮されていますね。
Shinji
この曲は大人っぽい感じですね。楽器はリズム隊が特に難しいんじゃないかな。ギターは16分の刻みはわりと得意なので、むしろ「躾」のほうが難しかった。
じゃあ、攻めていると思った曲は?
Shinji
「低温」ですね。ギターの音もシンセっぽいので、“これギターなの?”っていう感じだと思うんですよ。それも自分の中ではすごく新しかった。間奏のギターソロはかなり狂ったような感じで弾いているんですけど、ライヴならともかくレコーディングで振り切るのってなかなか難しくて結構大変でした。
ライヴとスタジオではモードも熱量も違いますものね。では、ゆうやさんは?
ゆうや
言われちゃったんですけど、「低温」について語らせてもらいます(笑)。これはドラムも入っていないし、今までやったことがない方法論で振り切った曲です。普通じゃないことをやってみたくて、それがシドの新しい一面につながってくれたらいいなって。こういうタイプの楽曲を今後も突き詰めていくわけではないですけど、自分たちの新しい引き出しを提示できたと思っています。
陰りのある内省的な曲でスーッと世界に引き込まれていく感覚がありました。曲調にも驚いたけど、“低温”ってタイトルを付けるセンスもすごいなと。曲の温度感から付けたのでしょうか?
マオ
まさにそうです。最初は青白いイメージがあって笑顔や温かさも感じたんですけど、全体的には温度が低いなっていう。曲が短いので、この曲は歌詞というよりも詩を書いた感覚で。言葉がうまくはまった時は嬉しかったですね。
TVアニメ『将国のアルタイル』のオープニングテーマとしてオンエア中の最新シングル「螺旋のユメ」はアニメの内容に沿って書き下ろした曲ですか?
明希
原型となった曲にアニメ作品の色をどんどん反映させていきました。制作スタッフにいろいろなリクエストをいただいたので、期待以上の完成度の曲にしたいと思って楽しく作れましたね。
マオ
アニメサイドの方の熱量がすごく高かったんですよ。その熱に俺も応えたいという想いがあったので、原作をかなり読み込んだ上で歌詞を書きました。
ポップなんだけど、よく聴くとメロディーがぶっ飛んでるなと思いました。思わぬ展開をするというか。
マオ
先日のイベントのライヴで歌ったんですけど、歌ってみるとメロディーがめっちゃ多いんですよ。
マオ
まだ慣れてないから“次はこのメロが来る!”って歌っていてピリピリしました(笑)。またそれが楽しかったんですけど。