今なお色あせぬ、“残酷な天使のテー
ゼ”という名のファーストインパクト
【エヴァンゲリオン・サウンド・ク
ロニクル＜壱＞】前編

1995年10月4日、庵野秀明監督のもと全26話のTVシリーズとしてスタートし、社会現象を巻き起こしたSFアニメの金字塔「新世紀エヴァンゲリオン」。その革新的かつこだわりに満ちた作風はいまだ色褪せる事なく、SFアニメの一つの到達点として今日まで語り継がれている。そしてそんな作風とともに強烈な存在感を放っているのが、テーマソングや劇伴といった音楽であることも忘れてはならない。そこで今回は、エヴァTVシリーズを彩った音楽の中から代表的なものをピックアップしながら、その魅力を振り返っていこうと思う。

数あるエヴァ関連楽曲の中で、まず最初に語らなければならないのは何と言ってもオープニング・テーマ「残酷な天使のテーゼ」だろう。どこか神々しさを漂わせるヴォーカル＆コーラスで幕を開け、歯切れのあるシンセブラスと小気味よいパーカッションが躍動感溢れるリズムを形作る。謎に満ちたエヴァの世界観を予感させる抽象的かつ哲学的な歌詞と美しいメロディーがなだらかな盛り上がりをみせ、“残酷な天使のテーゼ”というフレーズを皮切りにサビに突入。すると今度は蓄えてきたエネルギーを放出するかのように、疾走する旋律と力強い歌声で一気に畳み掛けていく…。高橋洋子の表現力豊かなヴォーカルと、及川眠子（作詞）、佐藤英敏（作曲）、大森俊之（編曲）ら作家陣の個性と才能が奇跡的な確率で融合を果たしたこの曲は、エヴァの作品世界を伝えるに相応しいナンバーとして大ヒットを記録。また、ドラマチックな曲展開と膨大な情報が盛り込まれた映像が見事なまでにシンクロしたオープニング・アニメは、もはやそれ自体が一つの作品と言っても差し支えのない完成度を誇り、当時のアニメファンや映像関係者を大いに驚かせた。

オープニングテーマと対を成すエンディングテーマには、ジャズの定番ナンバーとして有名な「FLY ME TO THE MOON」が起用された。この曲はTVシリーズだけでも全14ヴァージョンが存在し、歌い手やアレンジが異なるもの、さらにはインストヴァージョンまでもが各エピソードのエンディングを個性的に彩っている。何かと考えさせられることの多いエヴァという作品を観終えた脳をクールダウンさせるかのように、次回への逸る気持ちを優しく鎮めるかのように、ゆったりと浮遊感たっぷりに響く歌声とサウンドは絶品の一言。また、“MOON”すなわち“月”といえば、エヴァの作品世界を語る上でハズせないキーワード。そこからさらに思考をめぐらせることで、この曲の魅力が何倍にも膨れ上がっていく点もまた実に興味深い事実と言えるだろう。（text by center）