【BARKS編集部レビュー】素晴らしい
Mezeのヘッドホン、特攻すべきは99N
EOか99Classicsか

Mezeというルーマニアのヘッドホンブランドを知ったのは4年前の2013年春だったのだけど、初見で「こいつはいい!」と感銘を受け、その思いを数モデルのヘッドホン・レビューとして記事にしていた。その後も、発表される新モデルがいずれも素晴らしいサウンドだったこともあり、私のMezeに対する信頼は揺るぐことなく特A級に君臨し、今もなおその評価は崩れていない。
ブランドを通して一貫しているのは、全帯域にわたって立ち上がりが鋭くスピード感がある点で、タイトに引き締まっているのでサウンドにメリハリがあり、密閉型にも関わらず閉塞感を感じさせない軽快さと爽快感がある。多くのモデルに共通しているのはエボニーを使用している点なのだけど、これがギターやベースなどでよく用いられる高級材ということもあり、硬質でレスポンスの良いエボニーの音響特性が、そのままMezeのトーンの美点を言い表しているかのようだった。
数千円から3万円弱の価格帯でラインアップされるMezeのイヤホン/ヘッドホンの中で、2015年末に登場したのが99 Classicsというフラッグシップモデルで、価格も43,000円(税込)というそれまでとは数ランク上の堂々たるもの。「高っけなー」と思ったものの、信頼のMezeがブランドを背負うフラッグシップを作り上げたとなれば当然スルーはできず、発売早々に99 Classicsを入手した。過剰な期待をもって手にしたものの、その完成度は贔屓目なしに素晴らしく、99 Classicsは勝手に上げた私のハードルをさくっと飛び越える大当たりの銘機だった。
接着剤を一切使用しない設計もマニア心をくすぐるもので、ハウジングはエボニーではなくウォルナットが使われているのもツボだ。ボディにウォルナット材を用いたベースは硬質で立ち上がりが速く抜けも良い芯のあるトーンが魅力なので、そんなスペックも私のプラシーボ効果を存分に加速させてくれる。ちなみに私はGold/ウォールナットを購入したが、Silverは材が変わってメイプルとなる。もちろんこちらも楽器御用達の好材だ。
そんな文句なしの99 Classicsだったのだけれど、発売後ほどなくして輸入代理店の取り扱い中止の憂い目に会い国内市場からすっかり姿を消してしまっていた。こんなに素晴らしいサウンドなのに、どうして世の中から消えちゃうの?と世の不条理さに釈然としない思いを抱えていたのだけれど、まさに果報は寝て待て。新たな代理店によってMezeの華麗なる復活となった。しかも販売価格を大幅に下げ、ニューモデルMeze 99NEOをラインナップに追加しての再登場だ。
▲左が99 classics、右が99NEO。
mezeのヘッドホンの中で、私にとってのベストサウンドは間違いなく99 classicsだ。極めてタイトでキレがいい中で、温かみとふくよかさをたっぷりと携えるその質感こそ、このモデルの最大の魅力だと思う。そもそもMezeヘッドホンのサウンドは清潔感のある小気味よい美音なのだけど、その魅力を保ったままグッと沈み込むような重たさをも表現に取り込んだのが99 classicsで、スレンダーだけど筋肉質、非常にスタイリッシュなサウンドとなっている。音量を上げると凶暴なまでの低域もぐいぐいと出せるようになる。実際の重量もシリーズ最大になってしまったけれど。
一方、99NEOは基本サウンドこそ99 classicsとほぼ共通なのだけど、耳を覆っているハウジング内で音が反響している感覚があり、ABSイヤーカップの材質が持つ固有振動数のピークが中域トーンに癖を与えている。シャープさと締りが希薄になっているものの、同時に湿度の低い箱庭的な空間の広がりができ上がることで、ぐいぐいと耳を刺激するような勢いのある音楽の楽しみ方が新たに加わっている。両者の形状こそ同じだが、ハウジング素材の違いによって生まれたキャラクターは随分と違うものになったようだ。
99 classicsのほうが音は明らかに明瞭で、オーディオ的なクオリティは一段上質と言わざるを得ないが、99NEOのにぎやかなサウンドワールドは、ロック~ポップスからR&Bまでを屈託なく楽しませてくれるエンターテイメント性の高いものでもある。手にする際は是非とも両モデルを聴き比べて、“どちらの音がグッとくるか”を確かめてみて欲しい。
text by BARKS編集長 烏丸哲也
MEZE 99NEO
価格:オープン(市場想定売価 24,800円前後)
・ダイナミックネオジウムマイラードライバー
・トランスデューサのサイズ:40mm
・周波数帯域:15Hz~25KHz
・入力感度:1kHz、1mW@103dB
・インピーダンス:26Ω
・定格電力:30mW
・最大電力:50mW
・ケーブル:取り外し可能ケブラーOFCケーブル
・プラグ:3.5mm金メッキ
・重量:260 g(ケーブル含まず)
・イヤーカップ:ABSプラスチック
MEZE 99Classics
価格:オープン(市場想定売価 29,800円前後)
・トランスデューサのサイズ:40mm
・周波数帯域:15Hz~25KHz
・入力感度:1kHz、1mW@103dB
・インピーダンス:32Ω
・定格電力:30mW
・最大電力:50mW
・ケーブル:取り外し可能ケブラーOFCケーブル
・プラグ:3.5mm金メッキ
・重量:260 g(ケーブル含まず)
・イヤーカップ:クルミ材

BARKS編集長 烏丸レビュー

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