【インタビュー】ザ・ナイト・フライ
ト・オーケストラ「ノスタルジックで
も新しい」

ソイルワークのビヨーン“スピード”ストリッド(Vo)とデイヴィッド・アンダーソン(G)、アーチ・エネミーのシャーリー・ダンジェロ(B)らが在籍するザ・ナイト・フライト・オーケストラの3作目『AMBER GALACTIC』の日本発売が決定した。ソイルワークもアーチ・エネミーもエクストリーム・メタルの範疇で語られるバンドであるが、ザ・ナイト・フライト・オーケストラが指向するサウンドはその2組とは全く異なり、1970年代後半から1980年代にかけてチャートを賑わせたAORやメロディック・ハード・ロックから影響を受けたものだ。
新作『AMBER GALACTIC』は前作『SKYLINE WHISPERS』より洗練された内容となっており、典型的なヘヴィ・メタル/ハード・ロックから少し距離のある曲調も増えてはいるものの、過去2作と同じく高品質のメロディック・ロック・アルバムに仕上がっている。6月下旬、ビヨーンが取材に応じてくれた。
――前作『SKYLINE WHISPERS』のキャンペーンは上手くいきましたか?
ビヨーン“スピード”ストリッド:もっとやれるならやりたかったよ。『SKYLINE WHISPERS』の時は、ヨーロッパではまだCoroner Recordsと契約していた。とても小さなレーベルだから最初の2枚のアルバムは知名度が低かったと思う。だからプロモーターにショーのブッキングをしてもらうのも大変だった。スウェーデンでは数回フェスティバルでプレイしたけど、スウェーデン国外では何もやらなかった。でも今回の『AMBER GALACTIC』からはNuclear Blastと契約したから、以前より楽になってショーの数も増えつつあるよ。最近もスウェーデン国外で初めてショーをやった。ドイツの<ROCK HARD FESTIVAL>でプレイしたんだよ。とても上手くいった。だから、うん、これからは色々と変わってきそうだね。
――新作『AMBER GALACTIC』のための曲作りはいつ行なったのですか?
ビヨーン“スピード”ストリッド:俺とデイヴィッドとで、ソイルワークのツアー中にちょっとやったよ。去年の夏に、オーストリアの森の中にいた時に(笑)、ツアー・バスで「Domino」を書いた。バスのバックラウンジで録音したソロをそのまま使っている。そういう風にツアー中に書いたのもあるけれど、ほとんどは家で書いたね。何回かバンドでジャム・セッションもやって、1回当たり1週間一緒に過ごすというペースでやった。このバンドにはプロデューサーが2人いる。リチャード・ラーソン(Key)とセバスチャン・フォースルンド(G、Key)だ。彼らは自分のスタジオを持っているから、すべての楽器とアンプとドラムスをセットアップしてジャミングして、これは良いと思えたらレコーディングしておこうと言って録音ボタンを押していた。そのやり方がこのバンドにとっても凄く良いレシピだと思う。スポンテニアスでありながらアレンジもきちんとやっている。
――『AMBER GALACTIC』は過去の2枚と比べるとより洗練され多様になったように感じましたが、どんなアルバムに仕上がったと感じていますか?
ビヨーン“スピード”ストリッド:“洗練された”という言葉が気に入ったよ、良い描写だ(笑)。そのとおりだと思う。一番の違いは、何だろうな…前より陽気に楽しめていて、1980年代初期の感触もあるかな。ハモンド・オルガンをカットしたのは意図的だった。ハモンドはザ・ナイト・フライト・オーケストラにはあまり合わないと判断したからだ。俺達が考えるレトロ・サウンドはもっと違うものだと感じている。ここ5~7年の間に、レトロ・ロック・シーンに沢山のバンドが登場してきているけれど、大抵が1970年代初期の雰囲気を再現しようとしている。レッド・ツェッペリンやブラック・サバス風だったり、ブルー・オイスター・カルト風だったりもするし、オカルトのテーマもよく採り入れている。でも俺達が捉えているのは1970年代後半から1980年代前半の雰囲気で、そこがとても際立っていると思う。俺達に似たことをやっているバンドはそんなに多くはいない。俺達はかなりユニークな存在だと思うし、ちょっと新鮮な空気を送り込んでいると思うんだ。サウンドにノスタルジックな感覚があっても新しいんだよ。そういうところを今回のアルバムも凄く上手く捉えていると思う。長い間忘れられていた作曲と曲作りとプロデュースのやり方を俺達は復活させている。大勢の人達が、そういうサウンドを聴きたいとずっと思っていたと思う。でも、そのサウンドは、ノスタルジックなだけでないし模倣でもない。これは先に向かって変化していくものでもあり、長く失われていたものを提供するものでもあるんだ。
――あなた自身は様々なシンガーから影響を受けていると思います。ヘヴィ・メタル、エクストリーム・メタル、クラシック・ロックといった様々な分野のシンガー達から。ザ・ナイト・フライト・オーケストラでの歌唱の面であなたに影響と刺激を与えているシンガーを何人か挙げるとどういう人達でしょうか?
ビヨーン“スピード”ストリッド:ルー・グラム(フォリナー)は昔から俺の最大のヒーローのひとりだよ。フォリナーの新しいシンガーのケリー・ハンセンも…といっても15年もいるから新しいわけではないけれど、彼も素晴らしいシンガーだよ。でも特にルー・グラムということになるかな。それから、ジェファーソン・スターシップのミッキー・トーマスも素晴らしいシンガーだ。ジェファーソン・スターシップの「Jane」での彼のボーカルはロックの全歴史の中でもベスト・ボーカルに数えられると思う。彼の声のトーンも凄く好きだ。そこからもかなり影響を受けているよ。それから、サヴァイヴァーのデイヴ・ビックラーも。彼もベスト・シンガーのひとりだよ。「Poor Man's Son」なんかを聴いてみると、歌うならこうでないと!と思わされるよ(笑)。特にこの3人だね。俺に凄く影響を与えたよ。このバンドではね。
――1曲目「Midnight Flyer」は最もハード・ロック寄りの曲で、ディープ・パープルやユーライア・ヒープを彷彿とさせます。
ビヨーン“スピード”ストリッド:「Midnight Flyer」はデイヴィッドが書いた曲で、かなり早い段階で書いていたと思う。俺はすぐに「これはザ・ナイト・フライト・オーケストラの曲としては、かなりインテンスなものになるぞ」と思った。前作の後にそういうものをやるとは思っていなかったけれど、俺はこの曲が本当に気に入った。凄くパワフルでね。レコーディングは、楽器のパートは全部ライブでやったよ。良い感じのグルーブで、ファンタスティックなキーボードが入っている。そして俺達のこれまでの曲で最もインテンスな曲になっている。ハード・ロックのフィールもあって、これを聴いたら皆ちょっとショックを受けるんじゃないかな。前のアルバムよりもタフになるのかなと。聴いていくと少しソフトになっていくのがわかるけれど、パーフェクトなオープニング曲になっていると思う。
――「Jennie」のオーケストレーションを用いたアレンジはカンサスを思わせます。
ビヨーン“スピード”ストリッド:これはセバスチャン・フォースルンドが書いた曲で、彼が歌った素晴らしいデモが作られていた。俺は「凄い、お前が歌うべきじゃないのか?」と言ったほどだよ。あまりにもそのボーカルが良かったから、俺は物凄いプレッシャーを感じたよ。最高のボーカルだ!と思った。でも本当に素晴らしいメロディだから、同時にこの曲を歌うのが凄く楽しみになったよ。。俺にはスーパートランプの雰囲気も凄く感じられる。特にバース部分がそうだね。凄くドリーミーなコーラスだし…。セバスチャンがこれを書いた時、彼には何かが起こっていたと思う。彼はこの女性に恋焦がれていたんじゃないかな。彼女の本名はジェニーではなかったと思うけど。俺達も、こういう女性を思い焦がれる曲というか、女性についてのストーリーを語る曲をやるのが好きで、そして、その女性はミステリアスな存在の場合がとても多い。「Jennie」もそういうミステリアスな女性のひとりだ。セバスチャンが思い焦がれていた女性だね。素晴らしい曲だ。
――「Josephine」はあなたのポジティブさ全開のボーカル、デイヴィッドの歌心のあるギター・ソロが印象的です。これもある種のラブ・ソングなのでしょうか。
ビヨーン“スピード”ストリッド:今回の収録曲には愛が沢山詰まっているようだ(笑)。こういう歌詞の書き方も長く行なわれていないように思えるんだ。こういう曲はパーティで流すこともできるけれど、実は歌詞にはシリアスなラブ・ストーリーが隠されていたりする。裏側では沢山の願望や現実逃避が描かれているんだ。この曲は、1980年代初期のどんなダンス映画にも合うと思う。俺はそういう風にこの曲を想定した。『フラッシュダンス』で曲を書いたのはロバート・テッパーだったかな?だが、俺は『サタデー・ナイト・フィーバー』の次に公開されたジョン・トラボルタの映画『ステイン・アライブ』のことも考えていた。シルベスター・スタローンの弟のフランク・スタローンが「Far From Over」という曲をやっているけど、そういう雰囲気もある。この曲がダンス映画で使われたら凄く嬉しいよ(笑)。最高だと思う。この曲の歌詞は、ミシガン出身の青い髪の女の子が東京で迷子になるという内容だ。彼女は自分探しのために東京に逃げてきたんだよ。
――実話に基づいているのですか?
ビヨーン“スピード”ストリッド:デイヴィッドが書いた歌詞だから、彼に訊いた方がいいよ(笑)。デイヴィッドは、時々俺を題材にした歌詞も書くんだ。俺の人生がどういう状況かとか、俺が自分の感情にどう向かっているかとか。とても興味深いし、とてもユニークだ。ギタリストが自分のバンドのシンガーを歌詞の題材にするなんて聞いたことがない(笑)。
――そうですね(笑)。ザ・ナイト・フライト・オーケストラとしての予定を教えてください。
ビヨーン“スピード”ストリッド:今はザ・ナイト・フライト・オーケストラでのツアーの可能性を探っているところだ。日本にも是非行きたいと思っている。それが、俺達が今準備していることだ。例えばフォリナーのようなバンドのサポートが務められたら最高だと思っている。それからフリートウッド・マックとも。もしかしたらゴーストとだってやれるかもしれない。かなり興味深い組み合わせになると思うよ。
取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Wayne Bregulla

ザ・ナイト・フライト・オーケストラ『
アンバー・ギャラクティック

2017年8月9日 発売
【50セット通販限定 CD+直筆サインカード】 ¥3,500+税
【CD】¥2,300+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ミッドナイト・フライヤー
2.スター・オブ・リオ
3.ジェミニ
4.サッド・ステート・オブ・アフェアーズ
5.ジェニー
6.ドミノ
7.ジョセフィン
8.スペース・ウィスパラー
9.サムシング・ミステリアス
10.サターン・イン・ヴェルヴェット
11.ジャスト・アナザー・ナイト
《日本盤限定ボーナストラック》
12.フライ・トゥナイト(ネヴァー・リワインド)
【メンバー】
ビョーン・ストリッド(ボーカル)
デイヴィッド・アンダーソン(ギター)
シャーリー・ダンジェロ(ベース)
リチャード・ラーソン(キーボード/パーカッション)
セバスチャン・フォースルンド(ギター/パーカッション)
ヨナス・カールズバック(ドラムス/パーカッション)

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