【連載インタビュー】gibkiy gibkiy
gibkiy、kazumaが語る「僕はそれを
淫乱って言葉で表現した」

kazuma(Vo)、aie(G)、kazu(B)、sakura(Dr)といったメンバーからなるgibkiy gibkiy gibkiyが8月9日、2ndアルバム『In incontinence』をリリースする。1stフルアルバム『不条理種劇』より約1年半ぶり、1stシングル「I LOVE YOU」より約1年ぶりとなる渾身の『In incontinence』は、全国ツアーや数々の大型イべント出演を経て進化と深化を遂げた彼らの最新作となるもの。リーダーのsakura曰く「ある意味においては、これが4人の1stアルバム」だという濃厚なサウンドが渦を巻く。BARKSは錚々たるメンバーの音楽背景に迫りつつ、枠に収まり切らない刺激と精度の高さといった相反するサウンドが共存した『In incontinence』を解き明かすべく、4週連続パーソナルインタビューをお届けする。その第一弾はkazuma。
元Merry Go Roundの真と言った方が伝わりやすいだろうか? 現在、gibkiy gibkiy gibkiyのフロントマンとしてステージに立っているのがヴォーカリストのkazumaだ。言葉がほとんどなかったhighfashionparalyzeというユニットを経て、今、言葉とメロディ、そして何よりもその存在感で観る者を圧倒する。8月9日にリリースされる2ndアルバムに描かれた、『In incontinence』の世界への入口となるインタビューをお届けしよう。
   ◆   ◆   ◆
■戻ってきたと言うより
■殺し合ってる感じ
──前身バンドのhighfashionparalyzeではほとんど歌詞がなかったイメージが強いせいか、今回のアルバム『In incontinence』の歌詞を見て、kazumaさんはいつの間に全曲日本語の歌詞を書くようになったのだろうか?と思ったんですよ。
kazuma:それは個人的なことがいろいろあって。ある時に……highfashionparalyzeの後期、gibkiy gibkiy gibkiyがキッカケなんですけど、このメロディに言葉を乗せたら、言葉の力と歌が合体したら、もっと強いんじゃないか?と思って、そこで沸き上がるものがあったんです。
──これまでは歌詞のない曲の強烈なインパクトがあったので、今回はビックリしました。
kazuma:実はhighfashionparalyzeの中にも漠然と、ニュアンスとしての言葉はあったんですよ。コラージュ的なものとして。
──あぁ、確かに。
kazuma:もちろんこの曲は泣き叫んでいるほうがいいと思えばそうするし、極端な話、これは今しか歌えないと思ってピントが勝手に合った感じですね。
──全編通して、生々しいと申しましょうか……。
kazuma:生々しくなってしまうと思います。
──エロいと言いますか。
kazuma:コンセプトもそういうのもちょっとあったんですけど、単純に人間でしょ?っていう。アルバムタイトルを直訳すると“淫乱”っていうタイトルなんですけど、それって普通のことなんじゃないの?って。人間っていろんな欲求がある、そういう生き物でしょ? 喜怒哀楽も含めて……僕はそれを淫乱って言葉で表現した。
──歌詞はどのように書いていったものなんですか?
kazuma:当たり前にしてるようでしてないことを、なんかしてるんですよね、最近……。
──と言いますと?
kazuma:僕、普段、空なんか見なかったんですよ。でも、昼、夕方、夜、空をずっと見てたりとか、その時に季節感を含めて……記憶というか、思い出すじゃないですか? そういうものに近いんですよ。その時に、忘れられないことだったり、忘れてしまっていて思い出したこととか。その時に誰かを想って……それが家族だったり、友達だったり、いろんな人を想ったり。自分自身を……小っちゃいなぁと思いながら。そういう意味で血が通っているっていう言い方が一番近いのかな?
──なかなかこういう歌詞は書けないと思うんですよね。
kazuma:僕のこだわりとして、字面もカッコよくなきゃいけないっていうのもあるんですよ。より残酷に響く言葉、より優しく響く言葉っていうのを選んでます。
──そういう書き方って、gibkiy gibkiy gibkiyでの活動の刺激も大きいですか?
kazuma:それは大きいですね。なんて言うんですかね? sakura、aie、kazu……3人からそういうビームが出ているのを感じるし、そうしないと太刀打ち出来ない。
──そこはaieさんと2人でやっていたhighfashionparalyzeとは違う?
kazuma:あの時は、より前衛的に!っていうのが頭を支配してたんで。
──過去バンドをやってきた時の感覚が戻ってきたとか?
kazuma:戻ってきたって言うより……。
──新たに構築されてる感じですか?
kazuma:う~ん……殺し合ってる感じというか(笑)。
──殺し合ってる(笑)?
kazuma:バンドだからこそ、寄って寄って、寄ってるつもりでも、実は離れてるってことを思い出したんです。大きく言うと意識は変わらないんですけど、aieと2人でやってたものが自分を支配してた頃より、カッコよくなければ意味がない。gibkiy gibkiy gibkiyでも今までのロックバンド的な要素を出しつつ、それをぶち壊して、僕らにしか出来ないもので色の無いものを……。
──色の無いもの?
kazuma:“これはなに色です、なに色です”っていう括りで曲を作らない。僕の中ではNG無し。例えばデモで持ってきた曲がもの凄く明るくても、“え、それ違う”って言わない。まずやってみて、それをどうするか? 自分の歌に持っていく上で、赤くなきゃいけない、黒くなきゃいけないっていうことではなく、色が無い、心にくるものっていうのが僕の中ではテーマ。
──感覚的には解るんですけど、これ文字にすると非常に伝わりづらい気がします。
kazuma:感じないと意味がないと言うか、歌詞を見て、これいい歌詞だなって思っても、それは歌詞を見て思うことなんで、僕らがやってることは、歌はもちろん音、音楽なんで、そこで全体を感じて欲しい。
■死ぬ気で向かわないと
■愛の形すら存在しないような気がして
──曲に触発されて出来た歌詞なんですか? それともkazumaさんの引き出しにあったものを曲に合わせていった感じですか?
kazuma:そういうものもありますけど、スタジオで“せーの!”で音出して、そこでパン!と出てくるもののほうが多いですね。
──この言葉が合う!とか直感で思ったり?
kazuma:これでどうメロディを付けようか?っていうのもありますけど(笑)。でも音が鳴った瞬間、あっ!と思ったものは、やるべき。1音でもカッコよかったら。
──highfashionparalyzeのときよりも、直感が研ぎ澄まされた感じがします、さらに。
kazuma:そうじゃないとダメじゃないですかね。多分熱量は上がってます。それが良いのか悪いのか、僕にもわからない。さっきも言ったけど、gibkiy gibkiy gibkiyをやり出していろんな人と関わって、その刺激もあると思うんですよ。
──歌詞を書く上で影響を受けた人とか作品ってありますか?
kazuma:ベタな感じですけど安部公房作品。不条理なやつが大好きなんで。あとジェイムズ・ジョイスの“フィネガンズ・ウェイク”は解けないパズルというか……。僕、どっちかって言うとSF派なんですよね。SFだったり、リアリズムだったり。あと(サルバドール・)ダリの絵のタイトルが大好きです。もの凄くカッコよくて、作品タイトルだけの本とかもあるんですよ。若い頃は見よう見まねですけど、アホみたいに長いタイトルってあったじゃないですか(笑)?
──ありましたね(笑)。
kazuma:あれってそういう影響を受けてますね。
──なるほど。
kazuma:対比が絶対あって……そこに凄く冷たいものと凄く温かいものと人間性みたいな(笑)。そういうのがカッコいいなと思っちゃったんですよね。
──ほかにも好きな絵とか画家とかがいらっしゃるんですか?
kazuma:やっぱりダリが好きで。(ルネ・)マグリットもエゴン・シーレも好きですね。
──あぁ、なんかkazumaさんっぽい気がします。
kazuma:エゴン・シーレのデッサンの状態が好きです。ハンス・ベルメールも人形よりデッサンの方が好きです。いびつな感じに何故か惹かれますね。
──あの、突然ですけどkazumaさんの理想の女性像というか、女性に対するイメージってどんなものでした?
kazuma:なんだろうなぁ? なんか刷り込みかもしれないんですけど、まぁるくて可愛いもの。っていうものが自分にとっての女性像みたいな感じでしたね。
──gibkiy gibkiy gibkiyの歌詞で描かれる女性像ってどんなものなのかな?と思って、その根本は今教えていただいた女性像もある?
kazuma:多分、そういう部分は入っちゃってますよね。手を伸ばしても届かないものもあるし、失くすものもある。
──女性から感じるものってどんなものなんでしょうか? 例えば母性だったり、いびつな存在だったり……。
kazuma:いびつですね。
──エロい存在だったり。
kazuma:出来たらエロくあり、ちょっとフェティッシュ寄りと言うか……矛盾しちゃうんですけど、可愛らしい、守らないと死んでしまうものも好きだし。その手だけが好きとか。それだけで異性を感じる。それぐらいの勢いでいたいというか(笑)。それがフェティッシュというか……江戸川乱歩の『人間椅子』だったり。
──今回のアルバムで書いた歌詞ってラブソングですよね?
kazuma:愛の詩です。ラブソングって言うとちょっと恥ずかしいんですけど、愛の形ですね。愛なのか恋なのか……いろんな形があると思うんですけど、人を好きになるっていうことの根本に、死ぬ気で向かわなきゃダメだっていうのがあると思うんですよ。きっと死ぬ気で向かわないと、その愛の形すら存在しないような気がして……。男と女では違うと思うんですけど、僕は女の人のほうが恋愛に対してのパワーというか、エネルギーが強いと思うんですよね。
■化け物でなければ
■ステージ上での説得力に欠けてしまう
──新しいアーティスト写真ではkazumaさん、うさぎの被り物を着用してますがこれにはどういう意味が?
kazuma:そのまんまです。うさぎには失礼ですけど淫乱の象徴として。そこはベタなんですけど。以前タコを被ったじゃないですか?
──ありましたね。
kazuma:なんか被らなければっていう使命感があります(笑)。
──被ってない時は塗ってますしね(笑)。
kazuma:そうしたいんでしょうね。なんとなくツアー中に時間があって、気づいてたら黒くなってました。
──コワイですけど(笑)、kazumaさんだから納得させられる部分もあるというか。
kazuma:なんとなくイメージがあると思うんですよ、僕がやってきたことで……僕の風貌でイメージがあって。それがヴィジュアルなのか、ゴスなのか、パンクなのか、ハードコアなのか、いろんな要素があって、だけど一番強いものってジャンルではない。そこでさっきの話と繋がるのがNG無し。死を叫ぼうが、愛を叫ぼうが、同じだと。だから、いわゆる先入観だけで語られるようなダーク系ではないです。
──でもパッと見た感じの印象だけでいえば、gibkiy gibkiy gibkiyってちょっと怖いバンドですよね。
kazuma:それはしょうがない。マイノリティの自覚もあるし、だからこそ全力で叫んで、全力でやる。怖いって思われても当然、逆に嬉しかったりしますけど(笑)、そういった化け物でなければステージ上での説得力に欠けてしまうのかな、と。僕はそういうアーティストが好きだし、そうでなければっていうのはありますね。別に普通じゃいけないんじゃなくて、普通でいいと思うんですよ。普通だけどもの凄ければ。
──アルバム発売と同時にツアーが始まりますが、けっこうな本数廻りますね。
kazuma:僕、今回はそんなに廻ると思ってなかったんですよ。
──どうですか? 改めて決定しているスケジュールを見て。
kazuma:実はこういうツアーって、僕にとってはgibkiy gibkiy gibkiyの最初のツアーが、20年ぶりくらいだったんですよ。前回大丈夫だったんで今回もまぁ、なんとかなるかな、と(笑)。
──若手のバンド“黒百合と影”と一緒というのも楽しみですね。
kazuma:バンドと言うより個人的にメンバーを知っていて、もの凄くエネルギーを感じて、人間的に面白さを感じたんですよね。だからきっといい刺激をもらえると思う。
──最後に音やライヴを待っている人たちへ、ひと言お願いします。
kazuma:僕らは伝わると信じてやっているんで、それをそのまま感じて下さい。
取材・文◎荒川れいこ (zoisite)
■2ndアルバム『In incontinence』
2017年8月9日‬発売
PMGG-004 3,000円(税抜)
01.無中無
02.血と宙の完結
03.愛という、変態
04.とある澄んだ春の朝に
05.告白
06.だらりと垂れる
07.頭蓋、紛い
08.straitjacket
09.suspend
10.淫乱分子
■全国ツアー<2nd album “In incontinence” release tour “ dyeing ”>
8月08日(火) 東京・池袋 手刀
※cast : ZIZ / gibkiy gibkiy gibkiy
8月09日(水) 東京・池袋 手刀
※cast : 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
8月24日(木) 愛知・名古屋 HeartLand
※ワンマン<avantgarde barbarian III>
8月25日(金) 神奈川・川崎 CLUB CITTA’
※<CHAIN THE ROCK FES.2017>
8月28日(月) 茨城・水戸 LIGHT HOUSE
※cast : 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
8月30日(水) 宮城・仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
※cast : 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
9月01日(金) 北海道・札幌 DUCE
※cast : 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
9月08日(金) 大阪・梅田 Zeela
※cast : ZIZ / revenge my LOST / gibkiy gibkiy gibkiy
9月12日(火) 福岡・福岡 DRUM SON
※cast : ZIZ / 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
9月13日(水) 広島・広島 SECOND CRUTCH
※cast : ZIZ / 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
9月15日(金) 石川・金沢 vanvanV4
※cast : ZIZ / 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
9月16日(土) 新潟・新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
※cast : ZIZ / 黒百合と影 / gibkiy gibkiy gibkiy
(問)gibkiy.com
■<dyeing tour final one-man “avantgarde barbarian IV”>
2017年9月26日(火) 渋谷Glad
開場 19:00 開演 19:30
▼チケット
前売 ¥4,500 当日¥5,300(税込/D別)
一般発売:8月26日(土)10:00~発売
(問)Glad 03-5458-2551
【ツアー会場先行販売 (A)】
8月8日 池袋 手刀 公演終了後〜各ツアー会場物販 (整理番号シャッフル)
【e+プレオーダー (B)】
プレオーダー受付期間:8/10(木)12:00~8/12(土)18:00
プレオーダー入金期間:8/15(火)13:00~8/17(木)21:00
※入場順:ツアー会場先行販売分(A)→e+プレオーダー(B)→e+一般(c)

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