チャットモンチー、実験的でユーモア
溢れた姿勢見せたツアー最終

全国ツアー『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』の最終公演(撮影=上山陽介)
 チャットモンチーが7月9日に、東京・EX THEATER ROPPONGIで全国ツアー『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』の最終公演をおこなった。橋本絵莉子(Vo、Gt、Key)の体調不良で延期になっていた、6月30日の東京公演の振替。すっかり元気になった姿で全17曲を完走。キーボードやシーケンスを用いて、いつもと違うスタイルのアレンジを施した演奏で観客を魅了した。音楽が好きという気持ちを武器に、実験的で楽しくユーモア溢れた2人の姿勢を存分に感じさせる公演で全18本のツアーを締めくくった。

メカットモンチー

ライブのもよう(撮影=上山陽介)
 ステージには古いMacや原付バイク、どこから持って来たのか、消火栓などのアンティークとともに、ドラムセットやキーボードが雑然と並び、まさしく秘密基地といった感じ。観客は、秘密基地で繰り広げられる2人の自由な楽器遊びをのぞき見る雰囲気だ。
 福岡晃子(Ba、Dr、Key、Cho)が「見てわかるように、みなさんの知らないチャットモンチーがここにいます。通称“メカットモンチー”です。このツアーからの形態でCD音源にもなっていないので、きっとみなさんどの曲かわからずポカーンとしてしまうと思いますが、それでOKです。ノッてくれたら嬉しいけど、イントロ当てみたいに楽しんでくれてもOKです!」と今公演が一味違った趣であることを説明。橋本も「OKだよ〜!」と呼びかけた。
 ライブは、序盤から驚きに満ちていた。まずは、ピコピコとしたシンセアレンジで聴かせる曲からスタートだ。ヘッドフォンを装着した2人が、それぞれキーボードを操って音を鳴らすと、ちょっと懐かしさのあるシンセのサウンドが会場に充満した。
 「レディナビゲーション」、「隣の女」、「恋の煙」という3曲は、打ち込みのドラムとベース、サンプラーから放たれるサンプリング音に歓声が沸き、橋本のいつもよりちょっとクールな歌い方が、人力テクノといった雰囲気のサウンドとマッチ。2人の次なる展開の一端を垣間見たようで、次に何を見せてくれるのかと期待が高まった。
 中盤の「とまらん」は、ひとつのドラムセットを2人で叩くという、変則的な演奏方法で観客を沸かせた。バスドラを福岡が、スネアなどの上ものを橋本が叩き、福岡はさらに鍵盤を弾いて橋本は歌うというスタイル。息ぴったりで仲の良い2人だからこその演奏に、客席からは「おお〜!」と歓声が沸く。
 「突然やりたくなっちゃったんだよね。うちらってそういうバンドじゃん?」と笑う福岡。お互いに笑い合いながら実に楽しそうで、見ているこちらも笑顔になった。このコーナーでは橋本が「酔っ払ったときに作った曲」と紹介して、アコギと歌、福岡がキーボードとベースという編成で「いたちごっこ」を演奏。さらに「染まるよ」は、アコギとベース、エレクトリックピアノの演奏で披露した。

2人だからこその自由

ライブのもよう(撮影=上山陽介)
 後半は、橋本がギターをエレキに持ち替えて、シンセとドラムとエレキギターで、「変身」や「消えない星」などを披露。シンプルな演奏ゆえに歌が前に出て来て、演奏や歌の熱がダイレクトに客席へと伝わる。「majority blues」では、曲が進むに連れて演奏が激しさを増し、それに比例して橋本の歌声もどんどんエモーショナルさを増していった。観客は静かにステージを見つめながら、その熱い歌と演奏に聴き入った。
 その流れでPerfumeのカバー「TOKYO GIRL」も披露した。ツアーを通して各地でカバーを披露しており、この日の選曲は「東京なので」と理由はシンプル。Perfumeのメンバーも、2人がカバーすることをとても喜んでくれたとのこと。そんなカバーを振り返った2人は、「聴くだけ食べるだけ、じゃないみたいな、こうやって作ってるんだと、勉強になった」と福岡。橋本は「九州ではGO!GO!7188さんをカバーしたんだけど、ボーカルのユウさんの声が高くて。私も巷では高いって言われてるけど、さらに高くて大変だった」と、エピソードを披露した。
 MCではツアーを振り返った。橋本が「九州では、9年ぶりに行ったライブハウスもあって嬉しかった。楽屋が模様替えしていて、あっこちゃんはそういう細かいところまで気づいてすごいです」と語り、福岡は「私は、(体調不良の時に)えっちゃんちに看病に行ったことかな(笑)。そうしたらえっちゃんが、“おみいさん(徳島の郷土料理)作って〜”って」と橋本とのエピソードを明かした。
 終盤戦は、最新シングル曲の「Magical Fiction」をはじめ、「こころとあたま」~「湯気」などを演奏。福岡の跳ねるビートに合わせて橋本はギターを弾いたりシンセを弾いたりして、キュートさがありながらまっすぐで力強い歌声を披露してくれた。そして「やっぱり最後はこの曲だよね」と、代表曲「シャングリラ」を披露した。福岡はベースを弾いて、橋本の隣に寄り添いながら並んで歌う。サビ前で橋本の「せーの」に合わせて、観客の大合唱が広がった。
 アンコールには、スチャダラパーとのコラボによる“スチャットモンチー”名義で発表した「M4EVER」を披露。キャップをかぶってラッパー気分の2人。福岡はラジカセの代わりにキーボードを肩に乗せて、アニとボーズのラップを歌う。かわいく楽しくユーモアもタップリの2人に、手拍子と歓声が沸いた。
 福岡は「明日からどんな体制でやるかは決まっていません。でも好きなことをやります!」と力強く意気込んだ。
 メンバーが2人だからこその自由さと、音楽が好きという気持ちを武器に、実験的で楽しくユーモア溢れた音楽でファンを楽しませて来たチャットモンチー。この日もすべての演奏を2人でこなし、さらにシンセを採り入れたメカットモンチーという、新たな表情も見せてくれた。これからまたどんな○○モンチーを見せてくれるのか? 今から楽しみだ。(取材=榑林史章)

セットリスト

01.レディナビゲーション
02.隣の女
03.恋の煙
04.バースデーケーキの上を歩いて帰った
05.とまらん
06.いたちごっこ
07.染まるよ
08.変身
09.消えない星
10.majority blues
11.TOKYO GIRL
12.Magical Fiction
13.こころとあたま~湯気
14.風吹けば恋
15.シャングリラ
Encore
EN-1.M4EVER
EN-2.満月に吠えろ
全国ツアー『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』の最終公演(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)
ライブのもよう(撮影=上山陽介)

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