氷室京介フィルムコンサートツアー開
幕、空気感と感動を全国へ

あれから1年。フィルムコンサートツアーが開幕した
 氷室京介のフィルムコンサートツアー『THE COMPLETE FILM OF LAST GIGS』が21日、東京・調布市グリーンホール大ホールで初日を迎えた。昨年のファイナル4大ドームツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』の興奮を全国に届けようと、そのツアー最終日の模様を劇場でノーカット上映。音響や照明も駆使して、全35曲3時間半に及んだ当時の臨場感を伝えた。ツアーは10月20日の金沢市文化ホールまで全37公演が開催される。

サンクチュアリ

 『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』を終えた1カ月後、ドキュメンタリー映画のイベントで氷室京介のメッセージが読み上げられた。それは以下のようなものだった。
 「ライブの最終日から1カ月が経ちますが、いまだ心地よい余韻を感じながら、ファンの皆がこうやって集えるサンクチュアリのような空間を作ってくれた事に感謝します」
 あれから1年が経つ。ファンはきっと当時の記憶を心に残して、日々の生活を送っていることだろう。この間、前述のドキュメンタリー映画の上映や『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』映像作品リリースなどがあった。それは、ライブというサンクチュアリが凍結された間も、氷室と繋がっている証を求めて実現されたものにもみえる。
 『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』は、これまでにない光景が広がっていた。とりわけ最終日となった2016年5月23日・東京ドーム3日目はまさに日本のロック史上に新たに刻み込まれた伝説だった。超満員5万5千人の観衆の一糸乱れぬ歓声と手拍子、そして叫び。そのエネルギーはステージ側にも伝播し、想像を超えるグルーヴが生まれた。“ラスト”ということも相まってその空間は域を超えていた。
 一方で氷室は冗談や照れ笑いを浮かべるなどの茶目っ気も見せながらも、バンド時代やライブ活動無期限休止を決めた想い、ミュージシャンの交友など包み隠さずに話した。それは長年連れ添った友人に語り掛けるようでもあった。
 この東京ドーム3公演で16万5000人を動員。そのチケットを求めた予約応募総数は40万件だった。見られずに涙をのんだファンも多かった。その感動と高揚感を、当時あの場で共有できなかったファンにも伝えたいと企画されたのが今回のフィルムコンサート『THE COMPLETE FILM OF LAST GIGS』。
 当然、あの場にいたファンへはもう一度、あの空間に触れてほしいという思いがある。それも含めて、この機会も“サンクチュアリ”の一つである。

熱気に包まれる会場

フィルムコンサートツアー初日のもよう。大歓声に包まれた
 フィルムコンサートツアーとなった7月21日は氷室のソロデュー日。梅雨明けした都心はうだるような暑さに包まれていた。たしか昨年の東京ドーム公演も同じように暑かった。
 午後4時の開場時間。ホール2階にのびる階段はファンで埋め尽くされていた。会場には氷室が着ていた衣装の展示やグッズなども販売されていた。平日にも関わらず、午前中からグッズを求めるファンが列を作っていたという。
 開演時間が近づくと、ホールはファンで満たされていた。ステージ中央には、当時と同じモニターが2台、スポットライトを浴びていた。高鳴る鼓動。あの時と同じように高揚感に包まれる。オープニングの映像が流れる。総立ちになるファン。思い思いに歓声を挙げる。過去のライブ映像が猛スピードで駆け抜ける。
 そして大きなスクリーンに映し出された氷室は歓声を浴びながら歌い出す。「Dreamin’」。演奏が始まった瞬間、ステージを囲むように設置されたライトが当時と同期するように様々な色を放ち、辺りを目まぐるしく照らす。総立ちの会場、手を挙げる観客の先に、当時の記録が映し出されている。

臨場感

 当時の臨場感を伝えるため、映像だけでなく、音響や照明にもこだわった。『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』など長年、氷室に携わったコンサートスタッフが参加している。
 音響は、既設設備だけでなくステージとバックに専用スピーカーを設置。重低音が胸に響き、映像に収録されている東京ドームならではの反響音はかえって臨場感を与える。会場の歓声は映像から発せられる歓声と重なりより大きなものになっていた。
 照明はこの日、23台が設置。当時のステージ照明と同じものを使い、滑らか且つダイナミックなライティングがおこなわれた。会場全体が暗くなるなかでステージ上部に青色(暖色)のライトが灯る曲間のライティングも再現されるなど細部のこだわりが見えた。途中、スモークが焚かれたなかで反射する光も高揚感を煽った。
 そして、映像は、ディレクターHiguchinsky氏が、3月にリリースされた映像作品とは全く別の編集をおこなったものが使われた。氷室が目を潤ませたシーンだけでなく、こんなにも笑顔を見せていたのかということを改めて感じさせた。曲間では会場全体を捉えたシーンにするなどその場にいるような感覚に導く工夫がなされていた。
 また、オープニングやエンディング、そしてアンコールを求めているシーンでは、その時の氷室の様子を捉えた舞台裏の映像も流れていた。悲鳴を上げる体をケアリングをしながらも清々しい表情で会話をしている姿が印象に残った。

映像を超えた氷室の言霊

 フィルムコンサートは「Dreamin’」から熱気に満ちていた。しかし、雰囲気をがらりと変えたのは、「IF YOU WANT」と「LOVER’S DAY」だった。当時も鬼気迫る氷室の圧巻の歌声に心を奪われたが、魂を込めて歌われるバラードは“時”という時空を超え、まさにその場にいるような感覚を与えた。映像ながらも観客の想いを飲み込み、更に深みを与えているようだった。
 その後に続く「CLOUDY HEART」を挟んでからの「LOVE & GAME」「PARACHUTE」「BANG THE BEAT」「WARRIORS」というアッパーな流れは完全に理性を失わせた。あの頃に戻り、今、『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』を生で体感しているようだった。それは映像に重ねて涙ぐむファン、歓声を挙げるファン、一緒に歌うファンの姿にも表れていた。
 「CLOUDY HEART」など大島俊一が奏でるダイナミックなシンセの音色、「PARACHUTE」や「KISS ME」などYTによる優雅なギターグルーヴ、「魂を抱いてくれ」などしっかりとした規律性のなかで燃えるDAITAのギターサウンド、時折はにかみながら孤高と弾く西山史晃のベース、そして、迫力の打音のなかでもグルーヴを生ませるCharlie Paxsonのドラミング、これらを大音量でもう一度味わいたかった――。
 そうした思いはファンの歓声に表れていた。それぞれの会場規模でできる最大限の演出。そして、ファンの熱量。映像に閉じ込められたあの空気感は、これらと相まって再び、解き放たれている。まさに氷室京介の“矜持”を異なる角度から映し出していた。
 フィルムコンサートツアーはこの日を皮切りに全国を巡り、10月20日の金沢市文化ホールでファイナルを迎える。
 (取材=木村陽仁)

ツアー日程

フィルムコンサートツアー「THE COMPLETE FILM OF LAST GIGS」
7月21日(金)調布市グリーンホール大ホール
7月31日(月)前橋市民文化会館大ホール
8月3日(木)相模女子大学グリーンホール
8月5日(土)栃木県総合文化センター
8月9日(水)南相馬市民会館ゆめはっとホール
8月10日(木)仙台電力ホール
8月11日(金)盛岡市民文化ホール大ホール
8月13日(日)秋田市文化会館大ホール
8月16日(水)リンクモア平安閣市民ホール
8月19日(土)わくわくホリデーホール
8月20日(日)帯広市民文化ホール大ホール
8月24日(木)新潟市音楽文化会館
8月27日(日)コラニー文化ホール大ホール
9月2日(土)宮崎市民プラザオルブライトホール
9月4日(月)大分・iichiko音の泉ホール
9月6日(水)長崎市民会館文化ホール
9月7日(木)熊本森都心プラザ・プラザホール
9月8日(金)鹿児島市民文化ホール第二
9月10日(日)米子市公会堂
9月11日(月)岡山市民会館
9月12日(火)周南市文化会館
9月13日(水)JMSアステールプラザ大ホール
9月16日(土)サンポートホール高松
9月17日(日)高知市文化プラザ・かるぽーと
9月18日(月)ひめぎんホール・サブホール
9月25日(月)ロームシアター京都サウスホール
9月26日(火)森ノ宮ピロティホール
9月27日(水)森ノ宮ピロティホール
9月28日(木)あましんアルカイックホール大ホール
9月29日(金)びわ湖ホール中ホール
10月3日(火)静岡市民文化会館中ホール
10月4日(水)市川市文化会館 大ホール
10月9日(月)名古屋文理大学文化フォーラム大ホール
10月10日(火)岐阜市民会館大ホール
10月13日(金)三重県文化会館中ホール
10月19日(木)ホクト文化ホール中ホール
10月20日(金)金沢市文化ホール
https://ticket.tickebo.jp/pc/lastgigs04/index.html

参考・セットリスト

KYOSUKE HIMURO LAST GIGS
2016.05.23 TOKYO DOME
1.DREAMIN’
2.RUNAWAY TRAIN
3.BLUE VACATION
4.TO THE HIGHWAY
5.BABY ACTION
6.ROUGE OF GRAY
7.WELCOME TO THE TWILIGHT
8.MISS MYSTERY LADY
9.“16”
10.IF YOU WANT
11.LOVER’S DAY
12.CLOUDY HEART
13.LOVE & GAME
14.PARACHUTE
15.BANG THE BEAT
16.WARRIORS
17.NATIVE STRANGER
18.ONLY YOU
19.RENDEZ-VOUZ
20.BEAT SWEET
21.PLASTIC BOMB
22.WILD AT NIGHT
23.WILD ROMANCE
24.ANGEL
Encore-1
25.The Sun Also Rises
26.魂を抱いてくれ
27.IN THE NUDE
28.JELOUSYを眠らせて
29.NO.N.Y.
Encore-2
30.VIRGIN BEAT
31.KISS ME
32.ROXY
33.SUMMER GAME
Encore-3
34.SEX&CLASH&ROCK’N’ROLL
35.B・BLUE

MusicVoice

音楽をもっと楽しくするニュースサイト、ミュージックヴォイス

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着