【ライブレポート】<千歌繚乱vol.1
2>何にも捉われない、7つの自由なラ
イブステージ

注目の若手ヴィジュアル系バンドをBARKSがピックアップし開催されているライブイベント<千歌繚乱>。6月20日(火)には渋谷REXにて12回目の公演が行われた。
この日出演したのは乙女国家、ギザ、DAZ、DatuRΛ、BABOO、PIGLOW in GLOOMY、HOLYCLOCKの7バンド。BARKSでは彼らへのインタビュー記事も公開しているが、その内容でわかる通りいずれも「自分たちにしかない世界」を作り上げているバンドだ。今回、それぞれが独自の魅力を存分に発揮した当日のステージの模様をレポートする。
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トップバッターを務めたのは、「LOUD POP PARTY」というコンセプトを掲げるDAZ。2017年1月に始動したばかりの彼らは、始動すぐに発表したミニアルバム『LOUD POP PARTY』からの楽曲を披露。のっけから「BREAKOUT」でうねるビートにあわせ会場にはモッシュが起こる。ラップも入っている彼らの楽曲は、ヴィジュアル系と聞いて一般的にイメージされるものとは違い、ラウドの要素が強い。どの曲も勢いがあり、聴いているだけで元気になれるのも彼らならではの特徴だ。
「DAZは楽しいバンドです!」というMeZ(Vo)のMCの通り、ファンは曲にあわせて2ステップを踏んだり頭を振ったり自由にライブを楽しむ。とにかくDAZのステージは明るいのだ。ラストは「anytime」。これは全力で生きている人たちへのエールが込められた曲。イベントの始まりにも相応しいこの歌で、しっかりフロアを温めてくれた。
2番目に登場したPIGLOW in GLOOMYは、“囚人”をテーマにしたバンド。幕が開く前から不安感をあおる不気味なSEが流れ、彼らは一曲目の「赤子」から一気にDAZの作ったポップな世界を自分たちのダークな色に変える。ステージにはキャンドルが灯され、衣装も血しぶきの散った囚人服と雰囲気も抜群で、奏でられる楽曲の世界観をより深く伝えてくれる。ヴィジュアル系を“アート”だと捉える彼らだからこその表現だと言える。
終(Vo)の悲痛な叫びとつらら(Ba)の響かせる低音、そこにまとい(Gt)がギターで彩りを添え、ひと続きの悲しい物語を紡ぐように続々と披露されていく楽曲。余計なMCなどもなく、ひたすら観客を自分たちの世界に引き込んでいく。ラストの曲では激しく頭を振る場面もあり、観客を煽る。曲が終わると同時にメンバーたちは、何も言わず唐突にステージを去った。
続いて幕が開けるとそこにはウサギが。彼が「ここはBeroちゃんの夢の世界。最後までしっかりと楽しんで帰ってね」と述べ、“子供時代に戻れる魔法で夢の世界を描く”BABOOの面々がステージに登場した。ライブはおとぎ話のカーニバルのような「STARRY NIGHT」、代表曲「あっかんべー」でスタート。人形の王子様のような出で立ちのJOY(Gt)にカラスのような風貌のNINE(Ba)、可愛いウサギのPhantomを従えて、自由にステージを飛び回るBero(Vo)が作るステージはまるで絵本の世界に飛び込んだよう。
「あっかんべー」ではジャンプをして踊り、「CRY BABY」ではヘドバン。おもちゃ箱をひっくり返したようなカラフルでポップな楽曲にあわせ、観客も子どもにかえったようなにこやかな表情を見せる。楽しそうに演奏するメンバーの姿を見ていると、つられてこちらもついつい笑顔になってしまうのだ。この日披露された楽曲は“ヘンテコな呪文はあっかんべー”など、いずれも耳に残るキャッチーなフレーズが印象的だが、実は彼らの描く歌詞には社会への皮肉やどうしようもない孤独感などのメッセージも込められている。音源で歌詞に含まれた意味を味わってみると、彼らのイメージが変わるかもしれない。
4番目に登場したのはDatuRΛ。激しいパフォーマンスとともにメンバーがステージに上がり、怜央(Vo)が妖艶な仕草でマイクを手にすると疾走感の中に哀愁が漂うミディアムナンバー「秋雨ラメント」が始まる。曲名の通りしっとりとしたムードを作り上げたあとは、シャウトからの「imitation」でフロアを温める。楽器隊の激しい演奏に怜央が紡ぐエロティックな歌詞が絡みつき、これまでの雰囲気とは一転アダルトな世界に。「お前ら全部欲しい、もっとおいで」というMCのあとは、DatuRΛ流のダンスチューン「MASK」が披露され、だんだんと会場の熱が上がっていく。
怜央がはおっていたストールを脱ぎ肌をあらわにした「アクノハナ」では観客がフロアいっぱいにツーステップを繰り広げて踊り、そこからラスト「Liar」ではメンバーの煽りにあわせてヘドバンと折りたたみでフロアに大きな波が起こる。この日はしっとりとした楽曲からだんだんと激しくなっていくセットリスト。“セックス&ロックンロール”を掲げる彼ららしい、エクスタシーを感じさせるライブだった。
続くHOLYCLOCKは、透明感あるバラード「流星-瞳に映らない観測者-」からライブをスタート。DatuRΛの作ったアダルトな雰囲気が、一瞬にして星が降り注いでいるかのような神秘的な情景に塗り替えられた。そのままオリエンタルな雰囲気を持つ「憧憬-方舟に眠る君への手紙-」、ライブのキラチューンでヘッドバンキングが繰り広げられる「「ホラ、セカイニキミガイナイ。」」と、徐々に会場のボルテージが上がっていく。
「深く愛し合えたらいいなと思います、よろしくお願いします」という龍太朗(Vo)の丁寧なMCのあとは激しくも切ない「憐憫-記憶に眠る鎮魂歌-」が披露される。HOLYCLOCKは関西を中心に活動するバンドだが、関西バンドの派手で激しいイメージと東京バンドの洗練された雰囲気の両方を持ち合わせているのだ。この日披露された5曲はいずれもどこか神秘的。“聖なる時間”というバンド名の通り、引き込まれるようなステージを魅せてくれた。
「踊れ!」というキヨト(Vo)の声とともに、次に登場したのはギザ。その声に応えるように一曲目「復讐少女2」からフロアはジャンプで揺れる。今の社会への皮肉たっぷりのギザの楽曲からは「殺せ」「死んじまえ」など毒々しい言葉も飛び出すが、ファンもそれにデスボイスの応酬。メンバーもファンも心に溜まった毒を吐くことで自由になり、より一層会場の熱が上がっていくようだ。ジュエリー寺西(Gt)も生配信用カメラに向かって「ジュエちゃんで~す!」と叫ぶなどテンションマックス。MCでもそれぞれのメンバーの個性が発揮されたトークで笑いを誘う。
「さらば理性よビッチを殺せ」では手拍子、スティックライトが光る「俺はモテないのはパリピが原因に違いない」ではコール&レスポンスなどのほか、独特の振り付けなどもあり全曲通して体を使って楽しめるギザのライブ。特にラスト「復讐少女」ではサークルモッシュやウォールオブデスも起こり、ほかのバンドのファンだとか細かいことは何も関係なく会場全体を巻き込む一体感のあるライブを繰り広げた。
トリは乙女国家。事前に行われたTwitterを使った「RT投票バトル」企画にて最多リツイート数を獲得し、ほかのバンドよりも長い演奏時間を手にした乙女国家。そのためステージが始まる前からフロアにはグッズの国旗を掲げるファンの姿が多数見られ、既にテンションも上がりきっている。そのテンションに負けじと、初っ端からデスボイスから始まる「御国の為に」で激しく攻める乙女国家。続いての「アスペルガー」では逆ダイブの波も起こった。昭和歌謡の要素を感じさせる楽曲にミスター(Vo)の激しいシャウトがのり、楽器隊の面々は頭を振ったり激しいパフォーマンスを繰り広げる。そこへさらに“色々やる”パートのアルミが大きな旗や拡声器を振りまわしながら踊ったりと、とにかく派手なステージだ。
中盤の“国家演説”と呼ばれるMCパートではアルミが拡声器を使って「全身全霊をかけて建国を行うので一緒に盛り上がって欲しいと思う」と堂々とスピーチし、万歳三唱を呼び掛ける。集まったファンの大きな万歳の声のあとは怒涛の勢いで3曲を披露、ラストはライブの定番曲「エキゾチックショートヘアの女、東京につき」で今日一番の盛り上がりを魅せた。曲が終わるとメンバーと観客が一緒になって飛び跳ねながら笑顔で万歳を繰り返し、本日のイベントを締めくくるような大団円の中幕が下ろされた。
  ◆  ◆  ◆
今回の<千歌繚乱vol.12>はバンドごとにストーリーや雰囲気ががらっとかわるため、最初から最後まで見ていてもまったく飽きることなくバンドの競演を楽しめるイベントとなった。また、印象的だったのはそれぞれのバンドが自分たちの音や世界観に絶対的な信念を持っており、何かに遠慮したり気を遣ったりすることなく自由にライブステージを楽しんでいたこと。こうしたたくさんのバンドの魅力を一挙に味わえるのが<千歌繚乱>の魅力だ。
なお、次回の<千歌繚乱>は8月29日(火)に渋谷REXにて開催。こちらにはヴァージュ、グリモア、シェルミィ、DIMLIM、MEIDARA、メリーバッドエンドという6バンドが出演し、今回もライブ写真即売会やくじ引きなど多数の企画が用意されている。なお、BARKSでは追ってこの6バンドへのインタビューを掲載していく予定だ。現在チケットデリにて先行チケットも受付中。
文◎Yoko Hattori(BARKS)
セットリスト
■DAZ
1.Booting(SE)
2.BREAKOUT
3.Repain
4.Mr.murder
5.anytime
煽り
D.A.Z コール
END SE
■PIGLOW in GLOOMY
1.曲名なし(あかごのうた)
2.むかで
3.ぐるぐる
4.曲名なし(むさぼりマン)
■BABOO
1.STARRY NIGHT
2.あっかんべー
3.GIMME GIMME GIMME
4.CRY BABY
5.神様のいう通り
■DatuRΛ
1.秋雨ラメント
2.imitation
3.MASK
4.アクノハナ
5.Liar
■HOLYCLOCK
1.流星-瞳に映らない観測者-
2.憧憬-方舟に眠る君への手紙-
3.「ホラ、セカイニキミガイナイ。」
4.憐憫-記憶に眠る鎮魂歌-
5.WISH
■ギザ
1.復讐少女2
2.さらば理性よ、ビッチを殺せ
3.洗脳社会
4.俺がモテないのはパリピが原因に違いない!!
5.明日から本気出す‼
6.復讐少女
■乙女国家
1.御国の為に
2.アスペルガー
3.コミュニケーション障害
4.キンランドンス
5.ユケ、ススメ、兵隊サン
6.エキゾチックショートヘアの女、東京につき
<千歌繚乱vol.13>
開催日時:2017年8月29日(火)開場17:00/開演17:30
出演:ヴァージュ/グリモア/シェルミィ/DIMLIM/MEIDARA/メリーバッドエンド
会場:渋谷REX
料金:【先行チケット】3,500円 【一般チケット】3,800円 【当日券】4,000円
※ご来場の方に出演バンドのインタビューが掲載された「千歌繚乱ARTIST BOOK」を差し上げます
※当日会場ではバンドのレアグッズが当たる「バンドくじ」企画実施
※その日のライブの写真がすぐに手に入る「ライブ写真即売会」開催
チケット受付スケジュール:
【先行抽選受付】
7月6日(木)12:00~7月18日(火)16:00
チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/
【一般先着受付】
7月19日(水)12:00~8月28日(月)
チケット購入ページURL:
[イープラス]

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