サッカー習う子の“成長のチャンス”
を奪う「ガッカリな大人」ってどんな
人?

サッカー教室に通わせている親御さんには、熱心にお子さんの成長を応援していることと思います。しかし、それが時に、お子さんの成長に“ブレーキをかけてしまう”ことがあります。I.K.O市原アカデミー理事長(前京都サンガF.C.普及部長)だった池上正さんが解説します。

水泳やピアノと並んで子供たちに人気の高い習い事、サッカー。なでしこジャパンの活躍もあって、女の子が習うにも敷居が低くなりました。お子さんが長く続いた習い事の一つが、サッカーというご家庭もあるのではないでしょうか。
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組織の整ったチームであれば、監督がおり、その監督の指導方法を学んだコーチがおり、時には父兄も手伝うこともあり、子供だけでなく大人と触れ合う機会にもなります。
また、サッカーはチームスポーツなので協調性が磨かれ、強いチームに入ればそれなりの成功体験も。子どもだけで無く、親御さんも素晴らしい体験ができることも。
しかし、こういった“ポジティブだけ”な捉え方は、現在の「少年サッカーの問題」を真正面から見ていないのかもしれません。というのも、熱心なサポート体制が時に、お子さんの成長に“ブレーキをかけてしまう”ことがあるのです。
書籍『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』の著者であり、I.K.O市原アカデミー理事長(前京都サンガF.C.普及部長)だった池上正さんは、サッカー指導のど真ん中にいた人。
そんな池上さんは、同書の中で、「大人たちが子どもの成長のチャンスを奪っている」と指摘しています。
一体、どういうことでしょう。
試合に負けてしまったり、お子さんがミスをしてしまったりすると、お子さんに対して厳しく指導する親御さんがいらっしゃいます。
池上さんによると、「本当に頑張っていたのか」と詰め寄ってしまうことも。お子さんの成功体験への焦りからか、親の方が入れ込んでしまうパターンです。
考えてみればわかることですが、お子さん自身も何が悪かったかは、ある程度は分かっているもの。そんな時に親が出てきて、ああだこうだと指示を出してしまっては、その場しのぎの言い訳をついたり、失敗がトラウマになってしまうことも。
これではいけません。スポーツの良さの一つに「失敗を学べること」があると池上さんは言います。お子さんが習っているサッカーは、なかでも、ミスの多いスポーツです。親がそのことを理解せずに、ミスをほじくり返していては……。
人とボールが連動して動くサッカーでは、他者と関わるコミュニケーション能力と豊かな創造性が不可欠です。ところが、子どもたちが自ら考え、自立する機会を摘む日本の教育では、サッカーのフィールドで求められる人材が育ちにくいのが現状です出典(『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法 (教育単行本)』)
この他者と関わるコミュニケーション能力というのは、これからの時代、本当に大切になってきます。
AIの時代にサッカーから学ぶものとは
これからの時代は、皆さんも知っての通り、人工知能が私たちの生活に入ってくるめ、これまでの“当たり前”が通用しにくくなります。
仕事において単純な作業のほとんどを人工知能が対応してくれると考えられています。現在の小学生が就く仕事は、今ある職業の35%程度。65%が今ない仕事に就くという調査結果も出ています。
求められるのは、「問題解決能力、コミュニケーション能力、失敗から学ぶ力」など。つまり、人工知能が及ばない部分。
ですので、あれこれと親が子供に指示を出していては、自発的に考え、動く機会を奪ってしまうのです。もし、そういった環境下で長い時間を過ごすと……。
つまりは、お子さんの未来を見据えて、お子さんと距離を取っている親の方が、良い教育になっていることもあるのです。
失敗を成長の糧にして、子どもを伸ばそうとする大人。『失敗は恥ずかしいこと、悪いこと』というとらえ方の大人。つまり、21世紀を生き抜く力が何かを知っている大人に寄り添ってもらった子と、自分が育てられたように育ててしまう大人と過ごす子では、目には見えない『大人による格差』が生まれてしまいます出典(『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法 (教育単行本)』)
なんと、これは困ったものです。お子さんの成功体験や活躍のために入れ込みすぎ、「失敗=悪」という教え方をしていては、これからの時代を生き抜くお子さんのブレーキになってしまうのです。
心当たりのある大人の皆さんは、いま一度、サッカーの本質を考え、また、失敗することが、どれだけ人生に奥行きを持たせるかを、言葉にして伝えられるように努力してみてはいかがでしょうか。
サッカー指導のど真ん中にいた池上さんが指摘する、ガッカリ大人。そうならないように、気をつけたいものですね。

ウレぴあ総研

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