フー・ファイターズを今、見ておくべ
き意味とは

お熱いのがとっても苦手という人、或いは「日本のロックが最高なのに、なんでわざわざ歌詞もよく分からない外タレ聴かなきゃいけないわけ〜?」という人もいるだろう。でもね、そんな人にこそお姉さんは食い下がって声を大にして言いたい。
「男になりたいなら、男前女子になりたいなら、そして音楽が好きなら、一度はフー・ファイターズのライブを体感してみて欲しいのよ!」と。
世界中のロック・ファンの心を熱くさせ続けているバンド、 フー・ファイターズ(FOO FIGHTERS)。その魅力はズバリ、‘熱さ’だ。
彼らの生み出す熱量は結成から23年経つ今も世界トップクラスが故、世界の名だたるフェスティバルを総なめにし、どの国、どの会場においても、その場にいるオーディエンスの心をぐっと鷲掴みにして瞬時に熱狂の渦を巻き起こすことができる、現存する数少ない正真正銘のロック・バンドなのだ。
日本のロック・シーンを牽引するMAN WITH A MISSIONのジャン・ケン・ジョニー氏が、‘世界で一番リスペクトしているアーティストはデイヴ・グロール’と公言しているように、普段私たちが耳にしている多くの日本人ミュージシャンにも影響を与えていることもあるだろう。
そしてまた、日本のみならず、世界中のロック・ファンを飽きさせることなく魅了し続けているのには、その熱さの裏側にあるストーリーが他に類を見ないものであることに加え、途轍もなく人間くさいことも要因しているはずだ。
フー・ファイターズが生まれた根底にあるのは、カート・コバーンの死だ。30代以前の世代はリアルタイムではないので知らない人も多いだろうが、カートの死によって世界はニルバーナという音楽史に残る偉大なバンドをも失った過去がある。
ニルバーナのドラマーだったデイヴ・グロールは、そうした過去の絶望から這い上がってフー・ファイターズを結成し、ドラムではなくフロントに立ってギターを弾き始めた。しかしニルバーナというバンドは時代の象徴であったグランジ・ムーヴメントを牽引していた真っ只中において、メンバーの自殺という衝撃的な終わりを遂げたことにより、行き場を失ったファナティックなファンたちのやり場のない怒りや悲しみの矛先は一気にデイヴに向けられることとなり、フー・ファイターズとしての新たな活動は茨の道となってしまった。
フー・ファイターズには、そうした苦難を新たな仲間と共に詞とメロディーに封じ込めて、絶叫することで乗り越え、現在のポジションを確立した経緯がある。
だからこそ、彼らは支持されている。なぜなら、人々が苦難を乗り越えるために必要とするパワーを与えてくれる強力な楽曲の数々とポジティブに心を奮わす迫力のパフォーマンスは、聴き手の心にダイレクトに響き、時に寄り添い、時には背中を押して一歩踏み出す勇気を与えてくれるからだ。
彼らの熱量を感じられるベストな方法は、もちろんライブを観ること。しかし、残念ながら見知らぬあなたをライブに引き連れて行くことはできないので、今日のところはひとまずライブの代わりに彼らの遊び心満載のMUSIC VIDEOを観ていただきたいのだが…。
フー・ファイターズはファンを喜ばせようとするあまり、ふざけ過ぎでしょと突っ込みを入れたくなるMVを作ることもしばしば。少年ならぬ悪ガキのハートを持ったままのロックスピリッツの塊のような彼らを単なる変なバンドと誤解して欲しくないので、近年のエピソードを中心としたフー・ファイターズの23年史概略をまずはご紹介しよう。
■バイオグラフィ
1994年にアメリカ・シアトルで結成。1995年にアルバム『Foo Fighters』でデビューし、これまでにスタジオフルアルバム8枚が発売され、世界累計3000万枚を売り上げた。
6月に入り、9枚目となるアルバム『Concrete and Gold』を9月にリリースすることを突如発表、さらにファン向けのデイヴ最新メッセージでは、その新作は‘ここ(US)から福岡まで、間違いなくステレオを吹っ飛ばす爆音’なので、今からスピーカーを買うために貯金をしておくようにとファンを促している。(このメッセージは日本だけではなく全世界のファンに向けてのもの。なぜ福岡なのかは謎であるが、日本を気に掛けてくれているということだろう)。
世界の賞レースにも名を連ねる彼らは、グラミー賞では1996年からリリース毎に毎回ノミネートされ、2001年にアルバム『There Is Nothing Left to Lose』で最優秀ロックアルバム初受賞を皮切りに同賞は計4回、ミュージック・ビデオ賞は11回、ベスト・ハードロック・パフォーマンス賞3回と数多く受賞しているものの、最優秀アルバム賞含む主要4部門をまだ獲得していない。
■メンバー
メンバーは、デイヴ・グロール(Vo./G)、クリス・シフレット(G.)、ネイト・メンデル(Ba.)、テイラー・ホーキンス(Dr.)、パット・スメア(G.)、そしてつい先日、サポートメンバーだったラミ・ジャフィーが正式加入して6人編成になった。新メンバーのラミと2010年に出戻ったパット以外の4人は20年以上バンドに籍を置いている。
■近年のエピソード
<2006年>
4月、オーストラリアのタスマニア州で起きた炭鉱事故時、炭鉱に閉じ込められた作業員2人がフー・ファイターズを聴きながら救助を待った。それを知ったデイヴは「彼らが助け出されたら、コンサートのチケットとビールを振舞いたい」と語り、オーストラリア・ツアーで約束を果たす。
<2007年>
イギリスのハイドパークでの単独公演にQUEENのブライアン・メイとロジャー・テイラーが飛び入り参加。
<2008年>
イギリスのウェンブリー・スタジアム公演でバンドのヒーローであるレッドツェッペリンのジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズをゲストに招き共演。
<2011年>
初の自伝映画「バック・アンド・フォース」を公開し、過去のメンバーも出演してバンドの歴史と内実をさらけ出して話題に。
<2015年>
イタリアのチェゼーナのファン1000人がバンドを招聘するために「Learn to Fly」を演奏したのに応えてライブを行うことを公言。その4ヶ月後に果たされた約束の日の1曲目は「Learn to Fly」だった。
同じく2015年、11月13日にパリで起きたEagles of Death Metal公演襲撃事件に寄せ、非道な殺人事件に際し世界中の音楽ファンがショックを受ける中、誰よりも先に声をあげ、行動で示したのはフー・ファイターズだった。「時折この世界に起こる暗闇の時にいても、自分たちの放つ音が一筋の光を誰かにもたらすことが出来るかもしれない」という想いを込めて自らの新曲5曲を無償提供すると同時に、友人でもあるEODMやそのクルーと家族のサポートとなる寄付金を募るチャリティ団体サイト「SWEET STUFF FOUNDATION」へ導く道を事件後僅か10日あまりで用意。このメッセージ性の強いアクションはまるで「音楽は負けないし、俺らも負けないし、お前ら音楽ファンも負けるなよ」という注意喚起であり、世界に衝撃を与えた。
なんだかんだと前置きが長くなってしまったが、ここまで読んでくださったのならば、彼らがふざけたバンドではないことをお分かりいただけたことだろう。
しかし、曲はあなたの心で感じるもの。だから説明はせずに、曲に込められたメッセージをキーワード化してお届けすることにしよう。
■覚醒「All My Life」
■憧れ「My Hero」
■決別「Best of You」
■不屈「Saint Cecilia」
■愛 「Everlong」
■気づき「Run」
フーファイ・ファンにとっては王道である6曲をピックアップしたけれど、時代ごとに新しいチャレンジをし続けている進化系バンドなので、アルバムを通して聴くことをお薦めする。
そして今、彼らをリアルで見ておくべき意味があるとすれば、それは3つ。
世界のトップをひた走るロック・バンドであること、90年代のグランジ時代を牽引した伝説のバンド・ニルバーナのメンバーであったデイヴ率いるバンドであること、そしてホンモノのロックを体感できることだ。
もともとライブバンドである彼らは精力的にライブ活動をしていることでも知られているが、今年は2年前のデイヴの骨折によってドタキャンした欧州最大の音楽フェスティバル、グラストンベリー・フェスティバル(イギリス・サマセット)へのリベンジ出演に注目が集まる今夏、ここ日本でもフー・ファイターズを体感できるチャンスがあるのだ!
8月19日(土)・20日(日)の2日間に渡って開催されるSUMMER SONICのヘッドライナーとして19日には大阪会場に、20日には東京会場に出演することが決まっている。ツアーでの来日が10年以上ない彼ら。この機会を逃さずに、どうかフー・ファイターズの熱さを体で感じて欲しい!

文=早乙女‘dorami’ゆうこ
イベント情報

SUMMER SONIC 2017 東京公演
2017年8月19日(土) / 20日(日)
会場 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
開場/開演 開場AM 9:00 / 開演AM 11:00

SUMMER SONIC 2017 大阪公演
2017年8月19日(土) / 20日(日)
会場 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
開場/開演 開場AM10:00 / 開演AM 11:00

SONIC MANIA
日程:2017年8月18日(金)
会場:幕張メッセ
開場 8:00PM / 開演 10:00PM

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