取材:石田博嗣

ホール内をゆっくりと旋回する心地良い肌触りのサウンド。浮遊感を含んだ音の粒に包まれる感覚を覚えながら、楽曲が紡ぐGRAPEVINEワールドの奥深くへと落下している。…最新アルバム『SING』を聴いて覚悟はしていたものの、やはり1曲目からトリップしてしまった。アルバムと同じく「SING」で始まり、「CORE」が続くという幻想的でドラマチックな流れが再現されたのだから、意識を持っていかれてしまっても仕方ないだろう。高音域で伸びていく田中和将のヴォーカルをフィーチャーしつつも、それぞれのパートが主役となって自己主張し、交錯し合うバンドアンサンブルが、さまざまな表情を描き出していた。さらにハードでブルージーな「Suffer the child」やグルーヴナンバー「冥王星」がプレイされると、そこに個々のエモーショナルな感情も加わり、クールで熱く、そして圧巻のパフォーマンスが繰り広げられる。その後も「想うということ」や「Wants」などが披露されると、ディープにうねるミッドサウンドをバックに切々と歌い上げる田中のナイーブな歌声と内省的な言葉に導かれるようにして、渦巻く音像のさらなる深みへと堕ちていっている自分がいた。しかし、ストーンズライクなギターが印象的なロックナンバー「女たち」から終盤戦に突入! 疾走感のあるアッパチューン「アンチ・ハレルヤ」などで客席を沸かせると、そのままエンディングに向けて一気に場内をヒートアップさせるのだ。GRAPEVINEワールドの静と動、柔と豪を堪能した2時間半。高揚感や一体感を味わったというよりも、自分と向き合って自分の世界に触れたようなライヴだった。
GRAPEVINE プロフィール

1993年に大阪で結成されたロック・バンド。バンド名は、マーヴィン・ゲイの楽曲「悲しいうわさ(I heard it through the grapevine)」から借用している。自主制作したカセットテープが注目を浴びて、1997年9月にミニ・アルバム『覚醒』でメジャー・デビュー。1998年5月、1stフル・アルバム『退屈の花』を発表。1999年、プロデューサー・根岸孝旨(Dr.ストレンジ・ラヴ)との出会いによって、ラウドに響く歪んだギター、タイトに刻まれるリズム隊の力強さが、一層チューンナップ。結果、彼らの哀愁を帯びたメロディと文学的な歌詞が醸し出す空虚感がより浮き彫りになり、1月リリースのシングル「スロウ」、4月リリースのシングル「光について」がスマッシュ・ヒットを記録し、その2作を含む同年5月発表の2ndアルバム『Lifetime』も好評を博した。洋楽志向のギター・サウンドと飄々としつつも揺るぎないスタイル、文学的な歌詞が変わらぬ人気を獲得。2003年12月、6thアルバム『イデアの水槽』をリリース。2012年9月には、デビュー15周年を記念したベスト・アルバム『Best of GRAPEVINE 1997-2012』を発表。2014年5月、アルバム『Lifetime』の再現ライヴ『IN A LIFETIME』を行なう。2015年10月には、新曲「EVIL EYE」をサプライズ配信し、12月に高野寛プロデュースによる両A面シングル「EAST OF THE SUN/UNOMI」をリリースした。2016年2月、14枚目のアルバム『BABEL, BABEL』を発表。GRAPEVINE Official Website
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