【BUMP OF CHICKEN】BUMP OF CHICKE
N 幕張メッセ国際展示場ホール9・10
・11 2008年2月24日

撮影:古渓一道/取材:高木智史

優しさや温かさ、熱意や高揚感。それらがBUMP OF CHICKENのメンバー、ファンの双方同じバランスの熱量で作られたライヴだった。それは彼らとファンの想いがひとつに合わされなければ到底無理なことで、それを形として観ることができたのは、ある意味奇跡かもしれない。 会場までの道にびっしりと並んだ2万強の長蛇の列。その数多のファンはBUMP OF CHICKENのたった4人の姿を観るため、楽曲を聴くため、思いの深さを感じるために並んでいる。そんな状況になっていることは分かっていたのだが、実際に目の当たりにするとそれだけで凄まじいパワーを感じてしまった。そのパワーは会場が暗転し、スクリーンに映像が浮かんだ途端、大歓声となって解放される。まずは藤原基央(Vo&Gu)がその声を聞くべく耳に手をやり、ファンの声にならない声を聞く。そして、ひとしきり消化したかのように、ひと呼吸おき、音が鳴らされた。冷静ながらも情感がこもったヴォーカルとそれぞれのプレイ、ドラマティックな楽曲に次第に喜びの表情を浮かべ、揺れ、跳ね出す観客と、その反応を確かめるように見渡すステージ上のメンバーがいた。中でも直井由文(Ba)は演奏中、何度もメンバーやファンの近くに寄り、音の調和と観客の温度を確かめている。そんな彼の態度がオーディエンスとのパイプラインとなり、小気味良い絶妙な間を作りながら、ファンの意識が自然と曲に乗っていくように楽曲をつなげていっているように思えた。BUMP OF CHICKENは聴く者を圧倒し、惹きつけるといったものではなく、楽曲や自分たちの想いに触れられるよう、意識が入り込む隙を作ることができるバンドなのだろう。だからこそ、自分たちも演奏、歌に集中することができ、観客は純粋な気持ちでライヴを感じることができるのだ。 そんな雰囲気を感じながら、中盤ではスローテンポの楽曲を中心として、サウンドをシンプルにし、より歌を色濃くする。この日、藤原は何度も“楽しい”とファンに言葉を投げかけ、気持ちを露にしていた。他のメンバーも飾りっ気のない言葉で応援してくれるファン、このツアーのことを語る。その仕草や言葉を聴いていると、BUMP OF CHICKENというバンドはずっと昔から変わらない姿勢で活動してきたのだろうと、そんなバンドの原風景を垣間見れたような気がした。今この瞬間もどこかの地で自分たちのありのままの姿を見せようと彼らはライヴを続けているのだ。
BUMP OF CHICKEN プロフィール

96年、幼稚園からの幼なじみで結成された藤原基央(vo&g)、増川弘明(g)、直井由文(b)、升秀夫(dr)の4人から成るBUMP OF CHICKENは、数々のコンテストを荒しまくり、99年3月に<ハイラインレコーズ>からデビュー・アルバム『FLAME VEIN』を発表、活動を本格化する。続いて00年3月には2ndアルバム『THE LIVING DEAD』をリリースし、地道なライヴ活動の甲斐あって、着実に彼らの音楽が認知され始める。(現在は2作品とも廃盤となり、再発盤が発売されている)。

当時、メンバー全員が弱冠20歳とは思えないほどの円熟味、安定感を感じさせるプレイが圧巻であった。なかでも、フロントマンでありソング・ライティングを手掛ける藤原基央の存在が、このバンドを支えているといっても過言ではないだろう。詩人の「山田かまち」を彷彿させる文芸的な歌詞、感情をストレートにぶつけたメロディ——それは過剰に生々しく、いたってリアルな世界を築く。言葉の弾丸を音の銃に詰め込みブッ放す……まさしくそんな感触だ。因みにインディーズ〜メジャーでリリースされている作品全てに隠しトラックが収録されている。

00年9月、<TOY'S FACTORY>から1stシングル「ダイヤモンド」でメジャー・デビュー。翌01年3月にはメジャー2ndシングル「天体観測」が55万枚を超えるビッグ・セールスを記録し、日本のロック・シーンを背負って立つ存在となっていった。その後、02年2月には、本作を含むメジャー1stアルバム『jupiter』を発表、シングルとアルバムを通じて初のオリコン週間チャート初登場1位を獲得し、その地位を不動のものとした。また、同年夏には、BUMP OF CHICKENの楽曲の世界観・メッセージをもとに制作されたフジテレビ系ドラマ『天体観測』が放送され、インディーズ時代の作品を中心に数多くの楽曲画使用された。

03年3月に、彼らが以前からファンでもあった『ONE PIECE』の映画『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』主題歌に、メジャー6thシングル「sailing day」が起用され、若者のみならず、下は幼稚園生、上は子供を持つ親までの様々な年齢層のファンを引き込んだ。そして04年5月29日、彼らの地元でもある佐倉市民体育館にて完全招待制フリー・ライヴを行い、<スペースシャワーTV>で全国に生中継された。(余談だが、このライヴの際、会場のヴォルテージが最高潮に上がった瞬間、体育館の底が抜けるというアクシデントが起こり、ライヴが一時中断した。)04年8月には、藤原自身がジャケット写真を描いたメジャー2ndアルバム『ユグドラシル』をリリースし、本作もオリコン週間チャート堂々1位を獲得した。

06年3月には、藤原基央が書き下ろしたナムコの人気RPG『TALES OF THE ABYSS』用のサウンドトラック集『SONG FOR TALES OF THE ABYSS』をMOTOO FUJIWARA名義でリリース。その後、山崎貴監督との出会いからコラボレーションが結実するタイアップが実現。07年11月に公開された大ヒットを記録した映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』主題歌を担当。映画の台本と仮編集映像を見て書き下ろされたメジャー13thシングル「花の名」は、映画の素晴らしい内容とも相俟って、この年を代表する大ヒット・シングルとなり、同時発売されたメジャー13thシングル「メーデー」と共にオリコン週間チャート初登場1位、2位を独占するとう快挙を成し遂げた。

07年12月、前作から約3年4ヶ月ぶりとなるメジャー3rdアルバム『orbital period』をリリース。デビュー9年目にして今もなお、購買層を拡大し続け、また若者からの絶対的な信頼と指示を受け続ける。このバンドが発信し続けるメッセージは、これからも多くの人々に大きな感動を与えるであろう。それだけ彼らが創る音楽の影響力の大きさは計り知れない。まさに、“時代が必要とした奇跡のアーティスト”——それがBUMP OF CHICKENなのだ。BUMP OF CHICKEN オフィシャルHP

OKMusic編集部

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