【sukekiyo】『sukekiyo 二〇一四年
公演「別れを惜しむフリは貴方の為」
』2014年5月2日 at 日本青年館

撮影:中村 卓/取材:荒金良介

 京(Vo)が新たな表現を求めて始めたsukekiyoが1stアルバム『IMMORTALIS』を発表した。今作は従来のDIR EN GREYファンを突き放した作風でもなく、かと言って、同じかと言われたらそれは断じて違う。作品発表から2日後に行なわれた東京公演2日目を観て、他の何者でもないオリジナリティーの発露に驚いた。

 場内は終始水を打ったような静けさ。観客は椅子に深く腰掛けたままステージを凝視する。DIR EN GREYのライヴでは絶対にあり得ない光景だ。メンバー全員が黒の衣装に身を包み、過度な演出を控えた簡素なステージは自ずと楽曲の世界観に真正面から向き合うことになる。華麗に舞いながら叫び、歌い、囁き、オペラ歌手のごときハイトーンを駆使して、複雑な感情の綾を表現する京のヴォーカルと存在感。そこに寄り添い、絡まり合うバックの演奏は音源以上に豊かな広がりと色彩をもたらしていた。京がソロではなく、"バンド"と位置付ける理由の一端が分かる気がした。

 プレイも楽曲を忠実に再現したものから発展させたものまで自由自在で、sukekiyoの底流にある研ぎ澄まされた繊細さと底の見えない妖しい魅力にどんどん引き込まれ、五感全てを働かせて必至で追いつこうとする自分がいた。一瞬でも目を逸らしただけで、眼前の景色が過ぎ去るような心地良い緊張感に支配されっぱなし。気付けば長編映画にどっぷり浸った感覚に陥り、“おやすみ”と京が最後に呟いた唯一の言葉で目が覚める不思議な体験を味わった。前代未聞の蠱惑的なサウンドスケープ、ぜひとも現場で体感してほしい!

セットリスト

  1. SE.destrudo
  2. aftermath
  3. elisabeth addict
  4. hemimetabolism
  5. latour
  6. hidden one
  7. nine melted fiction
  8. SE
  9. 304号室、舌と夜
  10. 烏有の空
  11. scars like velvet
  12. the daemon’s cutlery
  13. vandal
  14. 斑人間
  15. zephyr
  16. mama
  17. in all weathers
DIR EN GREY プロフィール

ディル・アン・グレイ:カテゴライズ不能かつ不要なロックバンド。1997年の結成当時から全米デビューを果たした現在に至るまでの間、音楽的にも視覚的にも変化を重ねてきた一方で、徹底的に自分たちのロックを追求しようとする姿勢は変わっていない。いくつものトレンドが生まれては消え、消費されるだけの音楽が存在理由を失っていく中、彼らの創造するものがジャンルや国境の壁を超えながら共鳴を集めている理由は、まさにそこにある。DIR EN GREY オフィシャルHP

sukekiyo プロフィール

スケキヨ:DIR EN GREYの京(Vo)が、詩集、写真集、絵、イラストに続く新たなプロジェクトとして結成。他のメンバーは匠(Gu&Piano)、UTA(Gu)、YUCHI(Ba)、未架(Dr)。13年年末のシークレットライヴ2本を経て、14年元日、世界111カ国のiTunes Storeにて「aftermath」のミュージックビデオを配信し、本格始動を開始。sukekiyo オフィシャルHP

OKMusic編集部

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