【Hilcrhyme】『Hilcrhyme Tour 201
5 REVIVAL』2015年5月17日 at NHKホ
ール

撮影:濱谷幸江/取材:石田博嗣

 年明け1月からMCのTOCとDJ KATSUのふたりで“イッタコトナイ”土地を回る『Hilcrhyme TOUR 2015「イッタコトナイ。」』を行ない、TOCのソロツアーをはさんで、3月末からはダンサーチームのTHUG-HOMEYとCLOPを加えた8人での“Hilcrhyme CREW”で全国ツアー『Hilcrhyme TOUR 2015「REVIVAL」』を開催するなど、計38本のツアー活動を精力的に展開してきた2015年の上半期。昨年のデビュー5周年だったり、初の武道館公演を弾みに、さらなる高みを目指して、今年のHilcrhymeの意識はこれまで以上に高まっているーー。
 
 『Hilcrhyme Tour 2015 REVIVAL』の最終公演はNHKホール。開演前から会場にはメンバーの名前を呼ぶファンの声が響き、すでに今日のライヴがアツいものになることを予感させる。そんな客席に向けて放たれたのは、ニューアルバム『REVIVAL』の1曲目を飾る「New Era」。Hilcrhymeの意思表明とも言える辛辣な言葉のラッシュが客席を焚き付け、続く「FLOWER BLOOM」で力強いメロディーが大合唱を引き起こし、「パーソナルCOLOR」では“自分の個性を誇り、可能性を信じて歩いていけばいい”というメッセージを届ける。そして、日常に起こる偶然の一コマを歌った「The Woman In The Elevator」「BAR COUNTER」でショートムービー風の映像とリンクさせ、観客をより深く楽曲の世界へ引き込むと、アカペラで始まった「春夏秋冬」と生まれ来る我が子への気持ちを綴った「鼓動」というラブソングの連弾で、場内をハートフルな空気で埋め尽くす。ホールならではの空間であり、映像での演出などを利用し、序盤にしてライヴのイニシアチブはHilcrhymeが握り、会場をひとつにしていた。

 中盤はソロタイムから。THUG-HOMEYと CLOPのそれぞれのチームがダンスパフォーマンスを繰り広げ、DJ KATSUが鍵盤も奏でるインストタイムへ。観せ場と聴かせどころが交錯する中、ヒップホッパーよろしく場内をパーティータイムに変えたTOC。DJ卓を操る姿も新鮮だ。その後、インターバル的な観客とのコミュニケーションタイムで一旦クールダウンするも、“俺たちと一緒にパーティーしてくれる人はどれだけいますか?”との声で「続・押韻見聞録 -未踏- 」から後半戦が幕を開ける。『イッタコトナイ。』ツアーでも一番の盛り上がりを見せたという同曲の小鼓と和笛が作り出すビートが会場の熱気を再び呼び覚まし、和テイストの流れを汲んだ「East Area」がさらに観客の高揚感を煽り立て、前半戦で作り出したホールならではの空気は、ライヴハウスさながらの熱量の高いものへと変わっていった。

 そして、“ここからラストまで一気にいきます”と宣言し、終盤戦のクライマックス。TOCのフリースタイルから始まったアッパーな「ルーズリーフ」が観客のボルテージを引き上げ、ダンサー陣がそれぞれ客席から盛り上げた4つ打ちのダンスチューン「トラヴェルマシン(DJ KATSU Electro Remix) 」の頃には客席はフロアーと化し、もはや会場はクラブのよう。観客はDJ KATSUが操るダイナミックなトラックに体を預け、TOCのリリックに、歌に呼応しながら床を揺らしている。ラストは「Summer Up」。そのタイトル通り、夏モード全開の開放的なナンバーが場内のテンションを最高レベルにまで引き上げた。

 最高潮の中で幕を下ろした本編。このツアーでは全てを本編に詰め込んでいるという理由からアンコールを行なっていなかったが、ファイナルであるこの日は特別に用意されていた。そこで今日のライヴが7月1日にDVDとしてリリースされること、今年の夏からスタートするアニメのタイアップが決定したことをアナウンス。観客の歓喜の声に包まれる中、さらにもうひとつ、Hilcrhyme CREW8人でのツアー活動が本日をもって終了することも発表された。約4年間一緒にライヴを作り上げてきた同じ新潟の同士たち、THUG-HOMEYとCLOPと別々の道を歩むことになるわけだ。もちろんこれは発展的な決断。TOCも“新潟を拠点にし、互いに切磋琢磨しながらそれぞれ活動していきます”と語気を強めて語っていた。

 Hilcrhyme CREW最後のパフォーマンスは本日2回目となる「パーソナルCOLOR」。この8人が初めてMVで共演した思い入れ深い楽曲であり、しかも同MVで着用していた衣装で臨むというサプライズ付きに、客席もいつまでも湿ったムードを引きずっていない。また、本編で披露された時は同曲のリリックであり、そのメッセージは観客ひとりひとりに向けられたものだったが、ここでのそれは彼ら自身にも向けているように感じたのは僕だけじゃないはず。そんな回顧的であり、発展的でもあるナンバーで大団円を迎えた本公演の最後にTOCが“これからを見ていてください、それぞれを。Hilcrhymeはまだまだいきます”という言葉を残した。2015年の彼らはこれまでに増してファイターなだけに、今後の展開に期待が高まったのも、僕だけじゃないだろう。

セットリスト

  1. New Era
  2. FLOWER BLOOM
  3. パーソナルCOLOR
  4. The Woman In The Elevator
  5. BAR COUNTER
  6. 春夏秋冬
  7. 鼓動
  8. THUG-HOMEY & CLOP Dance Performance
  9. ~R2(Instrumental)
  10. Swag in my skill ※TOCソロ
  11. 夜クライム –Short Ver.- ※TOCソロ
  12. Bird ※TOCソロ
  13. 続・押韻見聞録 -未踏-
  14. East Area
  15. NOISE
  16. 雨天
  17. LAMP LIGHT
  18. YUKIDOKE
  19. 大丈夫
  20. ルーズリーフ
  21. エール
  22. トラヴェルマシン(DJ KATSU Electro Remix)
  23. Summer Up
  24. <ENCORE>
  25. パーソナルCOLOR
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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