【Hilcrhyme】『Hilcrhyme LIVE 201
5 「白昼夜 at 大阪城野外音楽堂」』
2015年8月23日 at 大阪城野外音楽堂

撮影:濱谷幸江/取材:石田博嗣

 Hilcrhymeがデビュー前にやっていたクラブイベント『熱帯夜』、その白昼版とも言える本公演。全国ツアー『Hilcrhyme TOUR 2015「REVIVAL」』の最終公演だった3月のNHKホールでのライヴを最後に、ダンサーチームのTHUG-HOMEYとCLOPを加えた8人での“Hilcrhyme CREW”としての活動を終了し、再び2人体制となった彼らだが、昨年のデビュー5周年、初の武道館公演もあり、様々なタイミングが重なって、今一度ここでデビュー前の彼らであり、Hilcrhyme結成前の2人にとって活動の基盤だった“クラブ”に立ち返ったとも考えられる。

 快晴に恵まれた大阪城野外音楽堂には3,000人のオーディエンスが集まった。チケットはソールドアウト。“昼間に野外で、クラブのようにDJスタイルで爆音を流したい”という想いで開催されたこともあり、ドリンクブースにはアルコールも用意されていて、さらにDJ KATSU推薦ということで新潟から『ハワイアサン』も出店! しかも、場内では15時の開場時からDJ KATSUがDJプレイで入場してくる観客をお出迎えし、「春夏秋冬」のリミックスなどで会場を温めていた。

 開演10分前なるとステージバックのLEDビジョンに開演時間までの残り時間がカウントダウンされていき、それが“0”となった時、TOCが登場し、“楽しんでますか〜?”の声でいよいよ開演。オープニングナンバー「トラヴェルマシン REMIX」から大合唱を誘う。その後も1MC+1DJという基本スタイルで会場を盛り上げていくわけだが、今日のためにリミックスが施された、いわゆるクラブチューン化した楽曲が頭から3曲次々と投下されていたのが興味深いところ。まさに大阪城野音は、太陽の下のクラブパーティーとなっていた。

 そして、“今日はいろんなスタイルを見せようと思ってます”とTOCが宣言。するとニューシングル「言えない 言えない」のカップリング「I’m Ready」を初披露し、“懐かしい曲やるよー!”と「No mic No life」などを矢継ぎ早にプレイしていく。最新曲から懐かしのナンバーまで、それはHilcrhymeの全てを魅せているかのようであり、中でも「次ナル丘ヘ」での《俺たちが俺たちであるために to the next…》というリリックは、現在の彼らの意思表明のようにも受け取れた。

 前半戦を1MC+1DJというスタイルで果敢に攻めると、30分のブレイクタイムに。とはいえ、その間、ステージ上ではTOCがターンテーブルを操り、SHINGO 西成の「大阪UP」などのアゲアゲのナンバーをかけるなど、会場をクールダウンさせることはなかった。

 ステージにバンドメンバーが登場し、TOCの“休憩はよろしいでしょうか? ここからはまた違うグルーブが、みなさんの耳とハートに届くと思います”の声で後半戦がスタート! さっきまでのDJスタイルとは打って変わって、生バンドによる躍動的なグルーブが客席を大きく揺らし始める。また、生々しいバンドグルーブに刺激されるように、歌であり、ラップで届けられるメッセージに、より感情や体温が乗っていたことも言うまでもない。特に「二〇一一日本ニテ記ス」や「SH704i」は、2015年という激動な時代を背景にして、より言葉が重く響いてきたし、「NOISE」や「New Era」では、Hilcrhymeのアイデンティティーやスタンスが何倍もリアリティーを増して届いてきた。

 再びDJスタイルとなったアンコール。陽が暮れかかった会場にペンライトの白い光が揺れた「蛍」、ストーリー仕立てのPVをLEDビジョンに流しながら初披露したニューシングル「言えない 言えない」で客席をひとつにすると、バンド編成で「ライジングサン〜電光石火〜」、そして「RIDER’S HIGH REMIX」を演奏して、ついに大団円。最高潮の盛り上がりの中、白昼のクラブイベントは幕を下ろしたのだった。

 デビュー6周年のスペシャルライヴの意味もあった本公演だが、1MC+1DJのDJスタイルという核の部分をしっかりと表現した上で、バンドスタイル、DJ、と3つのスタイルを披露し、メッセージ性の強いラップナンバーからメロウなラブソングまで堪能できるHilcrhymeの可能性を改めて実感したし、何よりも “to the next”であり、“次ナル丘ヘ”に向かおうとしている彼らの姿が垣間見れた。ライヴ中にTOCが“長い目で…っていうか、子供を見る目でHilcrhymeを見ていてもらいたいです”と言っていたが、新たなスタートを切った彼らの今後の動向には、もはや目が離せない。

セットリスト

  1. 【DJスタイル(1MC+1DJ)】
  2. トラヴェルマシン REMIX
  3. ルーズリーフ REMIX
  4. LITTLE SAMBA〜情熱の金曜日〜 REMIX
  5. I’m Ready
  6. No mic No life
  7. LAMP LIGHT
  8. 次ナル丘ヘ
  9. 友よ REMIX
  10. ポンピラ
  11. TOKYO CITY(OSAKA CITY) REMIX
  12. Summer Up
  13. 【DJ】DJ TOC
  14. 【BAND STYLE】
  15. Lost love song
  16. Kaleidoscope
  17. もうバイバイ
  18. No.109
  19. 二〇一一日本ニテ記ス
  20. SH704i
  21. FLOWER BLOOM
  22. Moon Rise
  23. 臆病な狼
  24. NOISE
  25. New Era
  26. <ENCORE>
  27. 言えない 言えない
  28. ライジングサン〜電光石火〜
  29. RIDER’S HIGH REMIX
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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