【TRIPLANE】
取材:藤津 毅
紆余曲折を経てバンドサウンドに戻った
新曲「アイコトバ」はバンドサウンドが印象的でした。制作の上で考えたことは?
3rdアルバム『君に咲くうた』でシンプルな音作りの道がひと段落したっていう想いがあって…。そのアルバムのレコーディングを終えて、すぐに曲作りを始めました。今回はサウンド面で鍵盤を使わない曲にしようと思って作りましたね。今年の頭に抱負をみんなで話した時、歌ものとしてある一定のラインは自分たちの中で吸収したし、ネクストステージとして今まで得意としてきたバンドサウンド、それと2年ぐらいかけて学んできた歌ものとしての聴かせ方の境地、そこをミックスして次なるステージのTRIPLANEを…今の4人の関係などそのままに、意気込みをもっと出して、それでみんなに受け入れてもらえるバンドになろうと話し合いました。バンドサウンドと僕の歌との融合というか、今まではバンドサウンドの上に僕の歌があったけど、これからはミックスした状態でバンドとしての存在感も出していくというのが今年のテーマでしたね。
ループするリズムと、力強いギターが前面に出たサウンドになってますね。
ギターサウンドにしたいというのが、まずありました。そして、ループドラムのリズムをベースにして、アコギを弾いて仕上げていきましたね。今回はあまり音を重ねてないんですけど、まったく物足りなさは感じてません。メロディーはサビの抜けと、そこに向かうまでの導入というか、サビに入った時にドキッとさせるようなものを考えました。
歌詞を書く時に考えたことは?
デモテープの段階からループドラムが跳ねてて、そこにベースラインが四分でしっかりハマってきて…その時は仮歌だったんですけど、自分の中でアタックを持ってきたいところに破裂音の子音を持ってきたりして、歌が躍動的に聴こえるものになりました。だけど、歌詞では意味を乗せていかないといけないから、そうした中で意味を優先してしまうとリズミックな部分が抜けていくんだなぁって今回初めて気が付きました。その辺のことをすごく考えながら言葉をチョイスしていきましたね。
ダイドーブレンドコーヒー/ダイドーデミタスコーヒーのCMソングに起用されていますが、何かオーダーはありましたか。
CMは女優と狂言師がプロフェッショナルな立場でやっているというのがテーマで、そこからそれないものにしてほしいとオーダーされて。で、もともと僕の中で“アイコトバ”というキーワードが曲を作り始めた時からあって。意外とブレてないというか、その話を聞いた時にリンクする部分があるなと思いました。で、CMの内容を噛みくだいて遠距離恋愛の設定で書き上げたんです。
歌詞は情景描写と気持ちの変化が見事にブレンドされたドラマティックな世界に仕上がってますね。
歌詞から映像が浮かぶことと、ストーリー性がある中で音では躍動感を表現することを意識しましたね。
カップリング曲「イチョウ並木」はデビュー前からライヴで披露していたとか。
アマチュア時代からあった曲で、歌詞はその頃のままです。アレンジは今までやってきたようなピアノとストリングスを入れようと思ったんですけど、バンドメンバーとプロデューサーの笹路正徳さんと話し合って、昔のライヴ音源みたいなザックリした音の方が今回のカップリングにいいんじゃないかってことになりました。
歌詞はどういうイメージで書き上げていったのですか?
6年前ぐらい、バンドを組んで1年ぐらい経った頃にライヴ動員数も増えて、地元のラジオ局の人にも応援してもらってて、なんとなく母体ができつつあって、プロとして生活していくビジョンが見えてきたんですね。その頃、大学生だったんですけど、学校にイチョウ並木があって、そこでこれから先のことや付き合っていた彼女のことを考えて書いた曲です。今、歌詞を読み返すと、すごく青い時代だったなぁって思いますね(笑)。『アイコトバ』は紆余曲折を経てバンドサウンドに戻った最新の姿。『イチョウ並木』はガムシャラに音楽をやっていた昔の姿。あの頃の姿も受け入れて、ちゃんと歩いていかないといけないし、その上でしっかりとやっていかないとという意味で、新旧のTRIPLANEを入れました。