【Rie fu】
取材:榑林史章
外と内のギャップにスッと入って行ける
作品
ビートルズやアイリッシュのような英国のトラディショナルな音楽性と、エレクトロや4つ打ちなど新しいポップスのふたつの世界がミックスされたアルバムになりましたね。
そうですね。ふたつの世界観…古さと新しさの融合は、アルバムのテーマのひとつです。タイトルも“都会的なロマンス”という対照的な言葉の組み合わせでできているし。都会は人や物事が規則正しく動き、物理的な情報にもあふれているけど、そんな中で逆に人の気持ちにはすごく起伏があって。そういう外の環境と人の内面とのギャップ、その間や隙間にスッと入って行けるようなアルバムを作りたいと思って制作しました。
春らしく、軽快でポップな曲が多いのもポイントですね。
去年ライヴハウスやクラブに行くことが多くて、リズムに乗ったり音を体感するような直感的に楽しめる音楽のほうが、気持ちが解放されると感じたんです。それで、リズムを基盤にアコースティックとエレクトロを組み合わせたアレンジを中心にしました。
歌詞の面では、新生活を始める人たちに向けての応援歌になるようなものが多いと感じました。
確かにそう。曲作りをする時、いろんな人の背中を押してあげられるものを常に意識しているし。そういう意味でも、今作はありきたりな感じではない、私ならではの卒業や新生活への後押しとなる作品ができたと思いますね。
特に「ビジネス」という曲はそうですね。
私、絵を描いたり音楽を作るアトリエを持っていて、それがオフィス街のど真ん中にあるんです。サラリーマンやOLさんがすごくたくさんいて、みんな決まった時間に会社に来て、お昼を食べて…とルーティンな生活を送っている。そういう様子を客観的に見ているうちに、彼らへの応援歌を作りたいと思うようになって。実際にOLをやっているお友達の意見を歌詞の参考にさせてもらって作りました。
アトリエってたいていは郊外や田舎に作りますよね?
私はのんびりした性格なので、田舎にいたら何もしなくなってしまうんじゃないかと思って(笑)。それにこのアルバムのテーマでもある、周りの環境と自分の内面とのギャップ…ギャップが大きければ大きいほど刺激を感じることが大きいと思うんです。そういう環境に身を置くことで、私自身も刺激を受ける。創作意欲を高めるためにも刺激は必要ですからね。
東京で生まれた曲を中心に、ロンドン留学時代にできた曲も収録していて、それもギャップのひとつですよね。
そうですね。例えば、『Hey I'm Calling Up!』はノッティングヒルの街並み、パディントン駅やハイドパークといった具体的な情景をそのまま歌詞にしているんです。パステル調の薄紫や薄ピンク色をしたビクトリア調の家々が立ち並んで、すごくきれい風景なんですよ。東京とロンドン、同じ都会という部分で、別世界観がいい意味で入っているというか。東京にいながらロンドンに逃避行してもらえたらうれしいと思って。
m-floの☆Taku Takahashiさんやスカパラの茂木欣一さんも参加していますね。
コラボレーションは企画モノっぽくやるのではなく、あくまでも人と人として知り合って、そこから自然な形で共作が始まるのが理想。今回はそれができたと思います。他にもalutoの佐藤帆乃佳ちゃんがストリングスアレンジを手がけた曲や、高鈴の山本高稲さんがコーラスで参加した曲も収録しています。そういう部分も含めてアルバムを楽しんでほしいです。
アーティスト